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浅野拓磨「得意なプレーじゃない時も…」進化続けるポストプレーとゴール前の落ち着き

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日本代表FW浅野拓磨(ボーフム)

[10.13 MIZUHO BLUE DREAM MATCH 日本 4-1 カナダ デンカS]

 ストライカーとして最年長という立場にあるものの、いまもなお進化し続けていることを示す一戦となった。日本代表FW浅野拓磨(ボーフム)はカナダ戦で、第2次森保ジャパン発足初戦・ウルグアイ戦以来となる先発出場。相手のハイプレスを避けた縦パスやロングボールが次々と入ってくる中、持ち前の体幹を活かしたポストプレーで存在感を放っていた。

 この日のカナダは5-3-2の守備ブロックを固めつつ、中盤ではマンツーマン気味に対応し、日本のパスワークを狩り取る狙いが明白。そんな中、日本はリスクを避ける意味合いもあってか、一発で攻撃のスイッチを入れるべく、最前線の浅野を狙った縦パスやロングボールを何度も繰り出していた。

 これはFW上田綺世(フェイエノールト)が先発起用された6月のエルサルバドル戦、9月のドイツ戦でも多く見られた攻撃スタイル。しかし、ポストプレーを持ち味の一つとしている上田とは違い、浅野は相手DFの裏に抜けるボールを得意とするタイプであり、相性の悪い攻め筋のようにも思われた。

 ところが、浅野は屈強な相手CBを腕を使いながら制しながら次々にボールをキープ。ワンタッチで味方につける場面もあり、28歳にして新たな一面を見せていた。

 試合後、報道陣にその姿を指摘された浅野は「『俺のこと理解してるのかな?』というくらい俺に放り込んでくるので……(笑)」と苦笑い気味に振り返りつつ、ポストプレーへの意識を明かした。

「その中でもやれることをやるしかないなと。もちろん自分の強みはその中でも消さないように、スペースに出られる時は自分の特徴を活かして出ていくというのと、得意なプレーじゃない時もどうにかしてチームのためにプレーするというのは意識として強くなっている。強みだけでチームを助けるというよりは、苦手な部分でも100%でプレーすれば勝つこともある。それがゴールにつながったり、結果につながったりするので、ステップバイステップです」

 そんな浅野はこの日、自身が見せたポストプレーの出来にも「自分としてはもっともっとチームを助けないといけないと試合中から思っていた。できたとは全く思っていない」と冷静に振り返る。あくまでも苦手なプレーであることは踏まえた上で、少しでもレベルアップしようとしてきた意識がいまのパフォーマンスにつながっていたようだ。

「10本あって10本負けるのではなく、10本のうち1本でも多くチームを助けるために何が必要なのか。その瞬間の判断だったり、コンディションが影響するけど、チームのために100%でプレーしようという意識は常にある。その中で負けることもあれば、勝つこともあって、それがチャンスにつながることもあれば、ゴールにつながることもある。僕としてはできたことよりできなかったことが記憶に残っているので、悔しいし、まだまだだと思う」

 そうした苦手なこととも向き合う姿勢は、この日、得意なプレーが発揮されたと言えるワンシーンにも表れていた。

 それは前半42分の3点目の得点シーン。浅野は持ち前のスプリントで相手DFにプレッシャーをかけ、その勢いのままボールを奪い切ると、そのまま敵陣まで独走状態に持ち込み、ラストパスからFW中村敬斗(スタッド・ランス)のゴールをお膳立てした。

 浅野はこの場面について「2度追いして、そこでボールを取れるとは思わなかったけど、全力で追うことによってああいうのも生まれる。シュートまで行きたかったけど、自分の足がついてこなかった」と振り返りつつ、「足がついてこなかった中でも自分でも冷静だったなと思うのが、1回止まって味方の動きを見ることができたこと」と成長の跡を明かした。

 この場面に代表されるゴール前での落ち着いたプレー選択は「僕にとってすごく課題なワンプレーだった」と浅野。しかし、そのことを自覚しつつ、ひたむきに改善に励んでいたという。

「今までは無理をしてシュートまで行ってしまったり、相手が来ているにもかかわらず止まれないことがあった。コンディション的な問題もあるけど、止まれずに無理やりボールを失うのが僕の課題だった。あそこでは落ち着いて1回止まって、味方の動きを見ることができたので良かった。それで結果的にゴールも生まれて、チームの勝利に貢献できて良かった」

 自身のストロングポイントを突き詰めつつ、ウィークポイントとも向き合う。その姿勢が大いに表れたカナダ戦でのハイパフォーマンスだった。

(取材・文 竹内達也)
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竹内達也
Text by 竹内達也

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