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大舞台での失態に自覚深めた西尾隆矢「もう僕はサッカーで表現するしかない」C大阪の“世界基準”誇りに再出発へ

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DF西尾隆矢(C大阪)

 AFC U23アジアカップを制したU-23日本代表のDF西尾隆矢(C大阪)が4日深夜、大会開催地のカタールから羽田空港に帰国し、報道陣の取材に応じた。今大会は初戦・中国戦(○1-0)で前半途中に一発退場処分を下され、その後の3試合は出場停止。パリ五輪出場権がかかる準決勝イラク戦(○2-0)で復帰し、終盤出場で守備固めの役割を全うしたが、全体としては大きな悔しさが残る大会期間となった。

 大会初戦の不用意な退場劇ではあった。それでも、チームメートからの信頼が揺らぐことはなかった。

 西尾はC大阪U-23の一員として出場したJ3リーグ戦を含め、プロキャリア通算148試合でイエローカード5枚、レッドカード0枚というデータが示すように、普段はフェアでクリーンなプレーを信条とするCB。思索的なパーソナリティーは周囲も知るところで、その反省の深さは言葉以上に伝わっていた。

 一発退場後には自身の立場よりも、支えてくれている人々の存在に思いを馳せたという西尾。「一番気にしたのは本当にチームに迷惑をかけたなということ。そして日本から応援してくれている皆さん、『頑張ってこいよ』と声をかけてくれたセレッソの監督、選手の皆さんに迷惑をかけたなと反省した」。今大会中にはキットマネージャーの手伝いまでしていたことが公式Youtube『TeamCam』で明かされていたが、その振る舞いも日常の延長にあったという。

「いつもやっていることで、レッドカードが出たからといってやっていたわけでもなく……」。“雑用係”の経緯を問うと、戸惑い気味に明かした西尾は次のように言葉を続けた。

「僕は日頃からいつも言っているんですが、サッカー選手だからといって全部服(ユニフォーム)が用意されているというのが嫌いで。『サッカー選手だから俺らはサッカーだけやっていればいい』というものではないと思っています。いち人間として当たり前のことをやっているだけなので、チームのためにこれをやりましたという意識では全然ないです」

 そうした姿が日常だったからこそ、出場停止中のトレーニング参加も、出場停止明けいきなりの途中出場も、チームメートに当然のように受け止められたのであろう。そして西尾にとって、五輪予選という大きな注目を集める場での失敗は、今後のキャリアを見据える上でこれ以上なく貴重な教訓となった。

「ポジティブに捉えればあれがあったからいろんな考えが変わった。しっかりともっと自覚を持たないといけないというところもすごく感じた。決してやってはいけないことだったが、いまはポジティブに捉えるしかないと思っている。これからああいう経験をしないようにチームに戻ってからやっていかないといけないなということを心の深いところで感じた」

「今回の代表期間は自分にとって忘れられない1か月間だった。悔しすぎるというか、嬉しさもあったけど、正直なところ悔しさのほうが大きかったのは事実。でもこれでへこたれるようじゃダメだし、ここからチームでまた這い上がって、少しでも代表活動に呼んでもらえるようにやらないといけない。もう僕はサッカーで表現するしかないので、セレッソに戻ってチームの勝利に貢献できるように頑張らないといけない」

 ここからは再びJリーグでの戦いが始まる。今季のC大阪は開幕から5勝5分1敗の3位と躍進中。西尾自身も今大会が始まるまでの間、第2節から5試合連続のフル出場で好調の一翼を担い、9試合の出場にとどまった昨季からの成長を印象付けてきたが、そのような環境でさらなる成長を遂げていく構えだ。

 西尾はこの日、明日から再び身を置くことになるチームの環境について、誇らしそうに語った。

「セレッソはすごくレベルが高いと思っていて、練習の強度もそうだし、技術面でもすごい選手がたくさんいるので、もう毎日毎日の練習で緊張しているくらい。代表期間が楽だと言ったら失礼だけど、本当に自チームのほうがまだまだレベルが高い。(香川)真司さんもそうだし、清武選手もそうだし、世界的なプレーヤーがたくさんいるので。チーム全体としてすごい経験をさせてもらっているなと思う」

 その環境でもまれた経験が、日本サッカーのために役立つ機会はあるはずだ。「一日一日レベルアップしていると実感しているし、試合に出ている出ていないかかわらず、そういう練習を積み重ねれば“チリツモ”(『塵も積もれば山となる』)で、大きいものに変わっていくと思う。日々の練習を100%以上やり続ければチャンスは来るのかなと思う」。まずはひたむきに日々の練習と向き合い、その先にある再チャレンジのチャンスを待つ。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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