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大岩Jパリ五輪へ異例の急ピッチ対応「日ごとに状況が変わってくる」6月遠征の欧州組・OA合流は慎重に交渉へ

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U23アジア杯から帰国した大岩ジャパン

 AFC U23アジアカップを制したU-23日本代表が4日深夜、羽田空港に帰国し、チームに帯同していた山本昌邦ナショナルチームダイレクターが報道陣の取材に応じた。当初は1月に行われる予定だった今大会はA代表のアジア杯開催で4月にずれ込んだため、パリ五輪本大会までの準備期間はわずか。山本ダイレクターは「通常に比べて期間が1/3くらいしかない。3倍速くらいの感覚でさまざまな準備をしていかないといけない」と危機感をにじませた。

 パリ五輪最終予選を兼ねるU23アジア杯を制したU-23日本代表はアジア王者としてパリ五輪に出場することが決定。1996年のアトランタ大会から続く連続出場を8回に伸ばした。今大会ではグループリーグ第3戦で韓国に敗れる屈辱を味わったが、続く決勝トーナメント初戦で開催国カタールを延長戦の末に撃破。準決勝と決勝は無失点で突破し、したたかに勝ち抜く戦いぶりが目立った。

 2004年のアテネ大会を指揮した経験を持つ山本ダイレクターは取材に対し、「この大会の難しさは準々決勝にある。準々決勝のプレッシャーやストレスは異次元のものがある中、経験の少ない世代だったが、重圧に押しつぶされそうな雰囲気の中でもみんなで団結して乗り越えた。コーチングスタッフが上手く選手を温存しながら、テストしながら、全員が使える状況で準々決勝を迎えられたことが戦略的にうまくいった最大の要因」と勝因を総括。「準決勝は比較的に戦力で余裕があったし、サポーティングスタッフも多い中、病気で離脱することなく、選手の怪我もほぼない状況で決勝まで持ってこられたのは監督を中心としたマネジメントが大成功だった」と大岩剛監督の手腕を称えた。

 今大会ではオーストラリアがグループリーグで敗退し、勝負どころの準々決勝で韓国、サウジアラビアが敗退。五輪初出場のウズベキスタンが決勝に進み、アジアの勢力図の変化を感じさせる大会となった。山本ダイレクターは「W杯常連と言われている国が脱落していく中、我々が連続出場できた。それも選手にとっては重圧だったと思う」と振り返りつつ、「うまく乗り越えられたのは自信になるし、選手たちが成長していった姿が印象的。一人一人が強くなり、チームも強くなるというのが僕が見ていても実感できた。いい大会になった」と手応えを語った。

 もっとも、ここで安堵している暇はないようだ。他地域では欧州と北中米カリブ海の予選が22年7月に終わっており、昨年7月のアフリカ予選、同9月のオセアニア予選、今年2月の南米予選で代表国が決定済み。今月9日にはアジア・アフリカの大陸間プレーオフが残るものの、予選がずれ込んだアジア代表は五輪本大会へ急ピッチでの準備を迫られる。大会IDや施設利用など五輪特有のルールもあるため、複雑な対応が必要になるようだ。

 またメンバー選考も大急ぎで行われることになりそうだ。水面下では今回招集できなかった欧州組の所属クラブとの招集交渉が行われており、移籍の動向にも細心の注意を払わなければならない状況だが、50人規模のラージリスト提出期限は間近。その後も本大会までの間、段階的にリストの絞り込みを行う必要があるという。

 大岩剛監督は「決勝戦が終わってからこの短い間でもコーチングスタッフでミーティングをしたし、日ごとに状況が変わってくると思う」と急ピッチでの対応をほのめかしつつ、「オーバーエイジのこともそうだし、明日明後日からJリーグも再開するので見極めて選んでいきたい」とすぐにでも動いていく姿勢だ。

 6月の国際Aマッチウィークには海外遠征を予定しているが、今大会での予選突破を待って正式なマッチメークが可能となったため、依然として対戦相手は発表されておらず、ようやく「なんとかできる状況が見えてきている」(山本ダイレクター)という現状。ここでオーバーエイジ組を揃えられるのが理想だが、山本ダイレクターは「終わったばかりなので監督とも相談して、本番から逆算してどういう準備がいいのかになる」と合流は明言しなかった。また五輪仕様のメンバー編成についても「そこで無理をする必要はない。最善の準備をした上で本番の7月、8月にいい状態で進めたい」と慎重な見通しを示した。

 その一方、メンバー選考の優先順位は確定している。同時に行われるA代表の北中米W杯2次予選よりも五輪代表を優先する方針だという。山本ダイレクターは「優先順位的には基本はA代表が優先だが、今回は9月の最終予選に向けて、6月の試合は突破が確定しているというところで五輪活動に必要な選手は出す」と明らかにし、可能な限り五輪代表にベストメンバーを招集する姿勢を示した。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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