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死闘に次ぐ死闘の“通称ゾンビ”韓国代表…常勝ドイツ知る指揮官は自信の笑み「そうやってステップを踏んでいく」

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韓国代表のユルゲン・クリンスマン監督

 アジアカップを戦う韓国代表のユルゲン・クリンスマン監督は5日、準決勝ヨルダン戦の前日会見に出席し、ドイツ代表のエースストライカーとしてW杯とEUROを制した経験をもとにトーナメントで勝ち進む秘訣を明かした。

 クリンスマン監督は1990年、ドイツ代表のエースストライカーとしてイタリアW杯を優勝。その後も94年のアメリカ大会、98年のフランス大会に出場し、W杯通算10得点を記録した。また96年には欧州選手権(EURO)制覇を経験。監督としても2006年のドイツW杯で母国を3位に導いた他、14年にはアメリカ代表を率いてブラジルW杯に出場した実績を持つ。

 韓国代表の監督には昨年2月に就任。大会前の国際Aマッチ8勝7分2敗という成績を受け、国内では大きな批判にさらされている。そうした中でこのアジアカップに挑んできたが、グループリーグは1勝2分と大苦戦。決勝トーナメントも1回戦サウジアラビア戦、準々決勝オーストラリア戦ともに終盤までビハインドの状況を強いられる中、起死回生の同点劇から勝ち上がってきた。

 またグループリーグ第2戦以降はいずれも後半アディショナルタイムに得点しており韓国国内では“ゾンビサッカー”というネットミームも誕生。さすがの勝負強さを見せているとも捉えられるが、この表現はいまや海外メディアまでもがこぞって使う今大会の韓国代表の代名詞となっている。

 ヨルダン戦を翌日に控えたこの日の会見では、欧米メディアからクリンスマン監督に対し、難しい国際トーナメントとの向き合い方に関する質問が上がった。指揮官は「私の経験から少し話したい」と切り出しつつ、期待とプレッシャーの中で戦うにあたって死闘が続いている状況を整理していた。

「トーナメントの始まりはいつも難しいものだ。それはどの国にとっても、トーナメントに参加するすべての国にとってそうだ。トーナメントに入っていくための方法を見つける必要がある。そして結果や状況に応じ、おのずと自信をつけていくんだ。どんどん自信をつけていく。もちろんベスト4まで勝ち進めばそうなる」

 そうした中、クリンスマン監督はカタールW杯のアルゼンチンを例に挙げた。1年前の世界王者はグループリーグ初戦でサウジアラビアに敗れたが、大きな重圧のかかる第2戦のメキシコ戦に勝利。決勝トーナメントでもオランダとのPK死闘を制しながら、決勝戦のフランス戦まで第激闘を勝ち上がっていった。

「アルゼンチンを振り返ってみれば、サウジアラビア戦の敗戦からW杯が始まった。次のメキシコ戦ではどんなにナーバスになっていたか。彼らは大きなプレッシャーを感じていたはずだ。大変だ。メキシコを倒せなかったらワールドカップでこの先にはもう進めないかもしれないとね」

 続けて言い切った。

「だから、それも過程なんだ。私はいつもトーナメントに出場するときは最初の数試合をこなせばうまくいくと信じている。どんどん自信をつけていくからね。私たちは非常に困難な試合を乗り越え、ドラマのような瞬間を過ごしたことで自信をつけている。そしてみんなが熱狂し、国全体が後押ししてくれている。誇りを持ってくれることで、ポジティブな雰囲気に変わるんだ」

「そうやってステップを踏んでいく。とても心理的なもの、精神的なものだ。だから私はいつもトーナメントは何よりもまずメンタルだと言っている。だから、まずは自信をつける。そしてマラソンに備えるんだ。いまはマラソンの終わりに差し掛かっている。私たちはすべて勝つ。それが私たちのゴールだ」

 ときおりおどけた笑顔も見せながら、堂々のスピーチを壇上で披露したドイツ代表のレジェンド。今大会では試合中の失点時にも、ベンチに座ったままにこやかな表情を見せている場面が目立っているが、苦戦続きの現状にも動揺はなく、リラックスした様子でアジアファイナルのかかる試合に臨んでいくようだ。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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