15日、FA杯は準決勝の1試合を行い、トッテナムとチェルシーのロンドンダービーがウェンブリースタジアムで行われた。前半から攻守が目まぐるしく入れ替わる、スピーディーでスリリングな試合が展開される。前半、トッテナムが多くのチャンスをつくったが、43分にFWディディエ・ドログバが1チャンスを生かして、チェルシーが先制する。後半の立ち上がり、試合を決定づけるミスが起こる。MFフアン・マタのシュートはゴールラインを割っていなかったが、ゴールと判定され2-0とチェルシーがリードを広げた。その後、MFガレス・ベイルが1点を返されても、3日後に欧州CLのバルセロナ戦を控えるチェルシーの勢いは落ちなかった。立て続けに3点を加えて、5-1で大勝。リーグ戦でも4位を争うライバルを圧倒し、決勝に駒を進めた。

　立ち上がりからボールをポゼッションするのはチェルシー。最終ラインからボールをつなぐものの、前線へのパスは連係がうまくいかずに、なかなか通らない。逆にトッテナムは、ベイル、MFアーロン・レノンの2人のドリブルを中心とした速攻から、チャンスをつくり出す。前半18分には、ハーフウェーライン付近からベイルが一気にボールを縦に運ぶ。同20分にはMFスコット・パーカーが持ち上がりPA内でシュートを打とうとしたが、MFフランク・ランパードがブロック。こぼれ球をDFアシュリー・コールがクリアーし、ピンチを凌いだ。

　同25分にもトッテナムはレノンがPA内でシュートを打つが、DFにブロックされる。縦への早い攻撃でチャンスをつくっていたトッテナムに対し、チェルシーが同27分に決定機をつくる。DFカイル・ウォーカーからボールを奪ったMFサロモン・カルーが一気に縦に抜け出す。DFの隙間を縫うようにマタへパスを通したが、マタはボールをコントロールしきれず、GKカルロ・クディチーニに抑えられる。同30分にも左右に大きくボールを動かしたチェルシーは、右SBジョゼ・ボシングワのクロスをFWディディエ・ドログバが合わせたが、オフサイドを取られる。

　同35分にはPA内に侵入したレノンが、DFダビド・ルイスを抜き去るが、折り返しを蹴り切れない。そこから一気にチェルシーがカウンターに出て、カルーがシュートを打つがー、大きく上へ。その直後にも、トッテナムはFWエマニュエル・アデバヨルが左からクロスを上げると、ゴール前でMFラファエル・ファン・デル・ファールトが合わせる。これが逆サイドに流れたところをレノンが再び折り返す。再びファン・デル・ファールトが頭で捉えたが、ゴールライン上でカバーに入ったDFジョン・テリーがブロックする。さらに同40分にも右サイドからファン・デル・ファールトのクロスにアデバヨルが飛び込むが、わずかに届かず。しかし、ボールは左ポストを叩き、あわやゴールとなった。

　チャンスの数で圧倒していたトッテナムだったが、先制点を得たのはチェルシーだった。ランパードからのロングボールをDFウィリアム・ガラスを背負いながら受けたドログバは、力強く反転し、左足シュートを振り抜くと、ボールがネットに突き刺さった。前半は1-0とチェルシーがリードして折り返す。

　リードを奪ったチェルシーは、後半も良い入りを見せる。後半4分、マタのシュートでCKを得ると、ランパードのクロスをダビド・ルイスが頭で合わせる。これをクディチーニが弾き、DFレドリー・キングがヘッドでクリアしたボールを拾ったマタが再びシュートを放つ。これはクディチーニが触り、DFベノワ・アス・エコットがゴールライン手前で止めていたが、マーティン・アトキンソン主審はゴールを認め、チェルシーがリードを広げた。

　同11分にはトッテナムも自陣からボールをつなぎ、MFスコット・パーカーの縦パスからアデバヨルが抜け出す。ダビド・ルイスを振り切り、GKと1対1になったアデバヨルが、ドリブルでGKペトル・チェフをかわしにかかる。アデバヨルはチェフに倒されたが、ゴール前に詰めていたベイルがこぼれ球をけり込み、トッテナムが1点差に追い上げた。この場面でダビド・ルイスが負傷し、チェルシーはDFガリー・ケーヒルをピッチに送る。

　1点を返されたが、この日のチェルシーの勢いは止まらない。後半23分にはカルーのパスからドログバがゴールを狙うが、シュートはDFがブロックする。CKからドログバが落としたボールを交代出場したケーヒルが左足で狙ったが、シュートは枠の上を越えて行った。

　同29分にハリー・レドナップ監督は動き、ファン・デル・ファールトを下げて、FWジャーメイン・デフォーをピッチに送り出す。しかし、その3分後に追加点を挙げたのはチェルシーだった。マタからのロングボールを最終ラインの裏で受けたMFラミレスが、巧みにボールを浮かせて飛び出してきたGKの頭上を抜き、3-1とリードを2点差に戻した。さらに同35分にも、MFフランク・ランパードが約30mの距離から強烈なFKを叩き込み、4-1と差を広げて勝利を決定づけた。後半ロスタイムにも、マタのループパスを受けたMFフローラン・マルダがシュートを決めて5-1で勝利したチェルシーが、5月5日に行われる決勝への切符をつかんだ。

トッテナム 1-5 チェルシー
[ト]ガレス・ベイル(56分)
[チ]ディディエ・ドログバ(43分)、フアン・マタ(50分)、ラミレス(77分)、フランク・ランパード(81分)、フローラン・マルダ(90+4分)