beacon

[MOM4665]神戸U-18MF濱崎健斗(2年)_前節で味わったPK失敗からの名誉挽回。2点を演出してチームを勝利に導いた新10番のさらなる成長欲

このエントリーをはてなブックマークに追加

ヴィッセル神戸U-18の攻撃を牽引したMF濱崎健斗(2年=ヴィッセル神戸U-15出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.14 プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 0-3 神戸U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド(人工芝)]

 いつも以上に気合は入っていた。チームに白星をもたらせなかった1週間前の記憶は、ちゃんと自分の中に刻み込んでいる。名誉挽回。汚名返上。今度こそ10番としての仕事を完遂して、絶対に誰よりも輝いてやる。

「チームの人たちもとても良い声掛けをしてくれましたし、自分は開幕戦のPKの借りを返すためにも、もっと質にこだわっていかないとチームを助けることはできないと思ったので、静学戦に向けてこの1週間はとりあえず得点に絡むところは意識して練習してきました」。

 ドロー発進となった開幕戦を経て、アウェイでの2試合目に必勝を期すヴィッセル神戸U-18(兵庫)のナンバー10。MF濱崎健斗(2年=ヴィッセル神戸U-15出身)は強い決意を携えて、この日のピッチに向かっていた。


「その日は結構落ち込みましたね」。濱崎が口にした“その日”とは、プレミアリーグWESTの開幕戦が行われた4月6日。ホームのいぶきの森球技場に大津高(熊本)を迎えた一戦は、神戸U-18が2点を先制しながら、追い付かれる展開を強いられたが、後半のアディショナルタイムにPKのチャンスが巡ってくる。

 決まれば“サヨナラゴール”濃厚のビッグチャンス。だが、キッカーを務めた濱崎のキックは、相手GKの好守に阻まれてしまう。「チームメイトがPKを獲得してくれたので、最後のチャンスでチームを助けるために自分が蹴ったのに、あそこで外してしまってチームにも迷惑を掛けましたし、自分的にもPKだけではなくて、もっと他のところで点を決めていればチームを楽にできたなとも思いました」。試合後はピッチに座り込む姿も印象的だった。

 チームを率いる安部雄大監督は、濱崎についてこう言及している。「彼がいろいろなアクセントを生み出してくれることはどの試合でも変わりないことですし、前節みたいなアンラッキーなこともあると思うんですけど、彼に対する信頼は何も変わらないですね。思い切ってやってくれたらいいなと思っています」。周囲も彼の想いはわかっている。それだけに今節へ向けて10番が抱えるチームの勝利への意気込みは、並々ならぬものがあった。

 加えて相手が相手だったからこそ、考えていたことがあったという。「静学はドリブルが凄いチームとしてとても有名で、上手い選手も何人もいるからこそ、そこで『自分が一番上手さを見せないとアカンな』と思っていたので、誰よりも目立とうと思って、いつもより気持ち多めにドリブルしようと思っていました」。このあたりに濱崎が持つサッカー選手としての本質が滲む。



 静岡学園高(静岡)と対峙した第2節。前半16分にはMF藤本陸玖(2年)のスルーパスから、抜け出したFW大西湊太(2年)の折り返しが濱崎に届くも、シュートはヒットせず。1点をリードしていた45+2分にも岩本の縦パスを引き出し、反転から枠内へ打ち込んだシュートはGKにキャッチされたが、得点への意欲を前面に打ち出していく。

 後半10分。右サイドで前を向くと、もうその視界にはゴールしか映っていなかった。「あそこでボールを受けた時には、『ぺナの近くだからドリブルしよう』と決めていましたし、自分は左利きなので右で持ったらカットインが得意で、もうあそこは行ける感じもしたので、自分の持っている技術で行きました」。果敢に仕掛けて放ったシュートはDFに当たったものの、MF瀬口大翔(2年)がきっちりプッシュ。チームに貴重な2点目が記録される。

 その5分後。大西からのパスを引き出した濱崎は、ここもすぐさまベクトルをゴールの枠へ向ける。「あの時もペナ付近でしたし、自分でゴールを決めたかったのでシュートを打ちました」。今度は相手のGKにセーブされたボールへ、FW吉岡嵐(3年)がきっちり反応してフィニッシュ。10番の積極性が実り、神戸U-18は大きな3点目をゲットする。

 3-0で突入した試合終盤の42分。第4の審判員が掲げた交代ボードに、10の数字が表示される。「3-0で勝っていて、フルで出られるかなと思ったんですけど、監督に交代と言われて、『点、決めれんかったな……』って。そこは決められた事なので、もちろんチームのことを考えれば『そこはしゃあないかな』とは思いつつ、ゴールを決めたかったですね」(濱崎)。

 ノーゴールで終わった自身への悔しさが、ベンチへと帰ってくる表情にハッキリと浮かび上がる。ただ、指揮官の中ではそんな濱崎の心情も想定内だ。「あれは毎回です(笑)。アイツはムキになるんですよ。そこは彼の良さでもあって、“自己中”とムキになるのは違うと思うんですけど、彼は自分自身に矢印を向けているからムキになるのだと思っていますし、その負けず嫌いは大事なことなので、まだまだ伸びしろがあるのかなと」。そう紡いだ言葉に安部監督の指導者としてのスタンスが垣間見える。


 2節目で手にした今季のリーグ戦初勝利。濱崎も「1節は引き分けたので、勝ち点を早い段階で多めに取っていきたかったところで、今日は自分たちのサッカーもできて、圧倒するというところでも3点差を付けられて、良いゲームができました。この勝ち方は自分たちの自信になりましたし、とても大きいと思います」。

 とはいえ、2試合を終えてまだ本人は手にしていないものがある。「もうゴールです。得点、欲しいです」。

 次節以降も良い意味でムキになって、ゴールを狙いに行く姿は容易に想像できる。チームの勝敗を担う役割を託された、2024年のヴィッセル神戸U-18を左足で牽引する背番号10。濱崎健斗が備えるサッカー選手としての確かなプライドは、きっとチームを勝利の光の射す方向へと導いていく。



(取材・文 土屋雅史)

●高円宮杯プレミアリーグ2024特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

TOP