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芽生え始めている“10番”の自覚。流経大柏MF柚木創は「いいからオレに出せよ」のマインドを貫く1年に向かう

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流通経済大柏高の10番を背負うMF柚木創(3年=tfaジュニアユース出身)

[4.21 プレミアリーグEAST第3節 流通経済大柏高 2-2 鹿島ユース 流通経済大柏高G]

 このチームの10番を背負うのであれば、やるべきことはハッキリしている。誰よりも個性を出して、誰よりもピッチの上で目立って、誰よりもチームの勝利に貢献する。自分ならそれができると信じているから、とにかくこの1年は輝きまくってやる。

「率直に嬉しかったですし、自分が欲しかった番号でもあったので、10番をもらった時は『自分がチームを勝たせなきゃいけないな』という自覚もより芽生えましたね。まだ結果は出せていないですけど、これから先ももっと自覚を持ってプレーしていけたらなと思っています」。

 例年以上に個性派が居並ぶ、2024年の流通経済大柏高(千葉)が誇るナンバー10。MF柚木創(3年= tfaジュニアユース出身)の創造性あふれるプレーは、とにかく攻撃的なチームにカラフルな彩りを加えていくはずだ。


「自分たちの代は下で繋ぐことで特徴が出せていると思うので、前半は自分を中心に揺さぶりながら攻撃できて、それが得点に繋がったと思うんですけど、後半は相手が結構シンプルに蹴ってきたので、勝っている状況なのに相手に合わせてしまったかなという印象です」。

 柚木は終わったばかりの試合をそう振り返る。鹿島アントラーズユース(茨城)と対峙した、プレミアリーグEAST第3節。前半に柚木のCKからMF稲田斗毅(3年)が先制点を奪い、さらに25分にはMF和田哲平(3年)も追加点をゲット。流経大柏は2点をリードして後半に折り返す。

 ところがハーフタイムを挟むと、前線にターゲットを投入して長いボールも増えた相手の圧力に、少しずつ全体のラインも下がり気味に。徐々に流経大柏も蹴り返す展開を強いられ、結果は2点を返されてのドロー決着。チームを率いる榎本雅大監督と柚木は試合後、短くない時間をかけて2人でいろいろと話し合っていた。

「さっきも柚木にも喋ったんだけど、『オマエがチームの中心選手なんだから、『困ったらオレに出せ』ぐらいでいいんだ』と。『何で蹴るサッカーになったの?』とかじゃなくて、『いいからオレに出せよ』と。『オレが点数獲らなきゃ』『オレがチームを勝たせなきゃ』というぐらいじゃないと、プロへの道はないと思うんですよね」(榎本監督)。

 指揮官の想いは、もちろん強く感じている。「エノさん(榎本監督)にも言われたんですけど、10番としての自覚をもっと出していかないといけないことは自分でもわかっていますし、もっと貪欲にゴールを狙いに行ってもいいのかなとは思っています」。自ら口にした『10番の自覚』。今年の柚木が一番強く自分の中に刻み込んでいるテーマであることは間違いない。

 この日のポジションはドイスボランチの一角。「あそこのポジションは結構得意としているところですし、もう1枚のボランチの稲田くんが守備のできるタイプなので、前でプレーできるポジショニングが取れていると思います」。相方のDF稲田斗毅(3年)との連携も取りつつ、注力するのはやはり攻撃面で違いを生み出すことだ。

 だからこそ、チームとしての戦い方を貫き切れなかったことには心残りがあるという。「フォワードにターゲットはいたので、そこに蹴るのも1つの選択肢とあったかもしれないですけど、自分たちには下でボールを持ってナンボの選手が多かったので、もっと自分がボールを触ることで、『蹴るサッカーではなくて、下で繋ぐサッカーをしよう』ということを示せたら良かったかなと思います」。そこは指揮官が言及したことにも繋がっていく。「いいからオレに出せよ」のマインドを、本人も改めて見つめ直したようだ。



 昨シーズンの柚木は、U-17日本代表やU-17日本高校選抜に選出され、所属チームでもプレミアの舞台でコンスタントに出場機会を得るなど、一気に活躍の幅を広げることに成功した。

「去年はこれまででも一番のびしろがあった時だと思っていますし、いろいろなところに選ばれて、プレミアもこの代で一番試合に出ているので、去年で凄く経験値を得られた分、今年はそこで得たものを誰よりも示していかないといけないのかなと思います」。

 いろいろな選手と一緒にプレーした中で、印象に残っているのは同じポジションを主戦場に置く、昌平高(埼玉)のボランチだったという。「自分が一緒にやってビックリしたのは昌平の大谷(湊斗)選手ですね。1人剥がしてから自分にボールを付けてくれるような選手で、自分で打開するというよりは、もうディフェンスがいない状態で前を向いてプレーできたので、彼みたいに1人2人剥がしてくれるようなボランチはやりやすいなと思いました。マッチアップの可能性もありますし、昌平戦は楽しみですね」。

 鹿島ユースのキャプテンマークを巻き、この日も左サイドバックでフル出場したDF佐藤海宏(3年)も、昨年の『国際ユースサッカーin新潟』に臨むU-17日本代表の活動でともに戦った間柄。「今日も相手のキャプテンは、新潟の代表の時に一緒だったので、試合をやっていて楽しかったです。そういうのって楽しいですね」。少しずつ広がっていく他チームとの選手の輪も、柚木にとっては小さくないモチベーションになっているようだ。

 高校ラストイヤーの今シーズン。このチームに来た意味を、この番号を背負う意味を証明するための1年にする覚悟は、もう十分に整っている。

「もちろん三冠というところは目指しつつ、何か後輩たちにいいものを残していければと思っています。後輩の中には自分を参考にしている選手もいなくはないと思うので、個人としても参考にしてほしいですし、自分たちの代から下の代はまだ全国を経験していない代なので、まずはちゃんと全国に出て、全国の厳しさや雰囲気を味わせてあげたいなという想いはありますね」。

 創造性と機動力を兼ね備える鋭利なアタッカー。流経大柏の10番を託された柚木創の躍動は、圧倒的な攻撃力で勝負することを掲げる今年のチームがネクストステージへ進むためにも、絶対に欠かせない。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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