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“偽SB”の現状を詳しく語った暫定主将MF遠藤航、長友ら不在のチーム内議論にも手応え「雰囲気は静かだけど…」

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日本代表MF遠藤航(シュツットガルト)

 キリンチャレンジカップ・ウルグアイ戦(△1-1)で新たに披露され、なかなか機能しなかった日本代表のビルドアップだが、ゲームキャプテンを務めたMF遠藤航(シュツットガルト)は「トライすることが大事」と前向きに捉えている。カタールW杯で浮かび上がったボール保持の課題を乗り越えるべく、「新しいオプション」として位置付けているようだ。

 第2次森保ジャパンの初陣という位置づけで行われた24日のウルグアイ戦。日本代表はカタールW杯までの4年半でメイン布陣だった4-2-3-1のシステムを引き続き採用しつつ、攻撃の組み立てに大きな変化を見せた。新任の名波浩コーチの指揮の下、両サイドハーフが大外に張り、両サイドバックが中央に絞る“偽SB”と呼ばれる仕組みのビルドアップを試みたのだ。

 ところが試合が始まると、ぎこちなさもあったポジションチェンジにウルグアイの守備陣が危なげなく対応。新たなトライが実を結ぶ場面はそれほどなかった。それでも26日の練習後、報道陣の取材に応じた遠藤は「もちろんそんな全部がうまくいかないと思ってやっている」と想定内だったことを強調し、「クラブでやっている選手から話を聞いたりしているけど、やり続けていけばだんだん代表の色が出てくると思っているので、大事なのはトライし続けることだと思う」と前を見据えていた。

 試合から2日間が経ち、課題の整理も徐々に進みつつある様子だ。その一つはポジションチェンジのタイミングや頻度だという。

「攻撃の動かしのところでちょっとサイドバックが中に入ってというところで、そのタイミングがどうだったのかとか、全部入るのが本当に効果的なのかっていうところで、そこの使い分けが絶対にしなきゃいけないと思う。あとは中盤も常に(相手の)間で顔を出しながら、シンプルなボールを出し入れをもっと入れてもいいのかなっていうところがある」

 中盤が組み立てに関わるにあたっては、中に絞ってきたサイドバックとのポジション被りも懸念される。実際、遠藤は「2ボランチでやっているので全部入っちゃうとボランチと被るというところで、僕もちょっとモリ(守田英正)を高い位置に出して、アンカー気味にやったタイミングでサイドバックを中に入れたりとか、逆に落ちて3枚作ったりとかやったりした」と振り返り、「そこら辺をうまくボランチが主導なのか、サイドバックが主導なのか、お互いポジショニングを見ながらやらなければいけないと思う」と注意点を挙げた。

 またサイドバックが中に絞ったタイミングでの他のポジションの動きにも言及。「一つ言えるとしたら、サイドに入った時の一つ横のサポートと、斜めにフリック気味でつけられる場所に人が立っているということ。ただ(ウルグアイ戦の)前半とかは特にそこの動かし方を気にしすぎちゃって、裏への動きが少なかったかなというのはある。だからそこは10番(トップ下)だったり、この前だったら1トップの拓磨だったり、モリが高い位置に入ってるのであれば、そこからサイドバックとセンターバックの裏に走る動きも必要。それが一つあるだけでも、もうちょっと薫や律がプレッシャーをそこまで受けない状況で前半からも(ボールを)受けられたと思う」と反省点を仔細に述べた。

 もっとも、こうした新たなトライ自体には「僕はポジティブに捉えている」と重ね重ね述べた。遠藤はカタールW杯後、かねがね攻守のオプションの必要性を指摘しており、今回のビルドアップもその一つになるのではないかと期待を示す。

「日本人は結構そういう『ああしようこうしよう』みたいな戦術の理解度は高いと思っているので、今までずっと積み上げてきたベースである4-2-3-1であったり、4-1-4-1であったり、3-4-3だったり、そこに戻ろうと思えばすぐ戻れる。今はそこにプラスして新しいオプションをチームとして持てるかどうかというところだと思う。オプションが増えれば増えるほど、相手は捕まえづらくなると思うし、自分たちもより相手の状況によってどの引き出しを使うか、どう良さを出していくのかというところにフォーカスできる。(ウルグアイ戦の内容は)そこまでネガティブではないし、むしろポジティブに考えながらトライしている」

 またそうしたトライを進めるにあたって、選手間のディスカッションも活発に行われているようだ。長友佑都、吉田麻也らこれまで議論の中心になっていた選手が今回の活動では不在。とくに長友を欠くチームでは「雰囲気で言ったら静かだなと思うけど……(笑)」と遠藤も認めるところだが、「サッカーに対してはみんな真面目だし、そういうああしたいこうしたいみたいな意見を言うのが普通みたいな雰囲気はある」と前向きに話す。

「この前の試合終わった後も結構みんなそれぞれで、戦術がどうだったか、どうやったらうまくいくかみたいなことを話しているので、そこら辺の雰囲気というか、サッカーに対する姿勢は悪くないと思う」

 そう言葉を続けた遠藤は「それがもうスタンダード。意見を言わないほうがどっちかっていうと問題。途中から入った西村拓真とかも試合中にポジショニングをどうしたらいいかみたいなことを普通に聞いてくるし、それが普通だと思う」と断言。「そういう話し合いを常にしていくということが最終的に代表が強くなっていくために必要なこと。すごい盛り上げ役がいるかと言われたらそうではないかもしれないけど、でも別にそれはそれで、新しい若い選手たちのこの雰囲気はそれでいいと思っている」と新たなチームの雰囲気にも手応えを語った。

(取材・文 竹内達也)

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