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[MOM4666]日大藤沢MF中村龍剛(1年)_成長した守備と得意のスルーパスを表現。“憲剛の息子”ではなく、「中村龍剛を評価されるために」

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日大藤沢高MF中村龍剛(1年=FASCINATE JY出身)は攻守両面で勝利に貢献

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.20 関東ROOKIE LEAGUE Aリーグ第1節 日大藤沢高 3-1 市立船橋高 時之栖裾野G] 
 
 日大藤沢高(神奈川)は上のカテゴリーに帯同している選手やけが人もいる中で各選手が特長を発揮し、会心の白星。指揮を執った河内健奨コーチは悩んだ末、MF中村龍剛(1年=FASCINATE JY出身)をマン・オブ・ザ・マッチに指名した。

 中村は序盤からリーダーシップの高さを感じさせる振る舞い。積極的に発信して周囲を動かし、また相手にボールを保持される時間が増える中でベンチに戦い方を提案したりしていた。「みんなが元気ない時とかには、やっぱり自分がしっかりとチームを鼓舞して、守備でも、攻撃でも奮闘するっていうことは常に意識しています」というボランチは、周囲を巻き込みながら対応。また、攻守両面で印象的なプレーを見せた。

 まず光ったのが守備面だ。判断の速さも活かし、素早いアプローチとセカンドボールへの反応。市立船橋高の仕掛けのパスをカットし、タックルを決めるシーンもあった。その守備は、高校進学からの短期間で、課題意識を持って改善してきたものだという。

「日藤(日大藤沢)の最初の練習の時に、全然守備できなくて。それが凄い悔しかった」と中村。「この開幕戦に向けて日々の練習でも結構守備行ったり、際のところで負けないところをちゃんと意識してきました」と説明するように、登録168.5cmで細身なMFは球際の部分などで取り組んできたことを表現していた。

 そして、自信を持つスルーパスでゴールを演出した。前半33分、自陣から距離の長いスルーパス。走り込んだMF富田周平よりも相手GKがわずかに速く触ったが、ボールは距離を詰めていた富田の足に当たり、そのままゴールへ吸い込まれた。

 このゴールは、チームメートも唸らせた中村の絶妙なスルーパスと、富田の動き出し、スピードによって生まれたモノ。中村は「練習の時から(左ウイングの富田)周平の裏とか、もう1人のウイングの裏とかは常に見てるようにしていたんで。周平のいい動き出しがあったし、自分も風とかも考えて、キーパーの前にどう落とすかみたいな。一瞬の判断ですけど、今までスルーパスはこだわってきたので出すことができました」。このシーン以外にも空間を上手く活用したパスで決定機の起点となったほか、随所で正確な1タッチパスなどを通していた。

前半33分、距離の長いスルーパスで2点目を演出

「スルーパスはやっぱ見て欲しいです。あとは、今日はあんまなかったんですけど、ゴールへの絡み、崩しってところは結構意識してるんで。(成長させてきた)守備も見てもらいたいですね」

 その中村の父親は川崎F、日本代表で活躍した名手、中村憲剛だ。河内コーチや大会関係者から「似ている」と評される中村のプレー。ただし、本人は“中村憲剛の息子”としてではなく、自分の力でその名を広める意気込みだ。

「『中村憲剛の息子』って結構言われるんですけど、その中で中村龍剛を評価されるためにこれからもやっていきたいです。これまでも結構言われてきて、ちょっと悔しい思いをしながらもここまでやってきたんで、もっと中村龍剛として成長したいなと思います」

 昨年度のインターハイ3位、選手権出場の日大藤沢は選手層の厚いチーム。高校サッカーですぐに活躍できるという甘い考えは、ない。特長の技術力も、判断力も、スピードもまだまだレベルアップの必要性がある。同級生との競争も激しい中、「上を見過ぎず」(中村)地に足をつけて、まずは1年生チームで成長、活躍すること。注目されることを理解した上で、それを乗り越えるための日々を過ごす。

「全国選手権に出る。まずは出ることが自分の夢で、そこでしっかりと優勝をこのチームみんなで勝ち取れるように、日々の練習から頑張っていきたいなと思います。(今後は)自分はポジション、ボランチなんで。抽象的になっちゃうかもしれないですけど、やっぱり攻撃と守備でしっかりと違いを生み出せる選手を目指しています。(将来は)しっかりとプロになって、有名になって、活躍できるように」。

 日大藤沢へ進学した理由は「自分は結構、勉強との両立を意識して、家族もそういう文武両道っていう方針なんで」。練習参加した際に佐藤輝勝監督や河内コーチと会話し、チームの目指すスタイルや人間性の向上が自分の考えと合致。サッカーも、勉強も本気で取り組み、高校3年間や将来、夢を実現させる。



(取材・文 吉田太郎)
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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