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苦しくても最後に勝つメンタリティを携えた「鹿島っぽい」チームが新たな歴史を切り拓く!鹿島ユースはFC東京U-18との激闘をPK戦で制してクラセン初優勝へ王手!

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鹿島アントラーズユースは激闘をPK戦で制してクラセン初優勝に王手!

[7.29 クラブユース選手権(U-18)準決勝 鹿島ユース 1-1 PK4-2 FC東京U-18 ニッパツ三ツ沢球技場]

 どれだけ苦しんでも、どれだけ追い込まれても、最後には必ず勝っている。このエンブレムの付いたユニフォームに袖を通した選手たちには、そのマインドが刻み込まれていく。初の戴冠までは、あと1勝。ここまで来たら、もうみんなで頂上まで駆け上がるしかない。

「今日はちょっと耐える時間も長かったですけど、苦しくても最後に勝つというメンタリティのところも含めて、本当に『鹿島っぽい』戦いができたかなと。理想を言えば、もうちょっと内容の部分で求めたいところはありますけど、連戦の中で勝ち切ることはトーナメントを戦ううえで大事なので、その面では一番良い結果だったと思います」(鹿島ユース・中野洋司監督)

 終盤に追い付かれても、PK戦で勝ち切ってファイナル進出!第49回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会は29日に準決勝が行われ、ニッパツ三ツ沢球技場で鹿島アントラーズユース(関東4)とFC東京U-18(関東5)が激突したプレミア対決は、1-1でもつれ込んだPK戦の末に、鹿島ユースが勝利を引き寄せ、初優勝に王手を懸けた。31日の決勝ではベガルタ仙台ユース(東北1)と対戦する。


 この両チームはちょうど1か月前に当たる6月28日にプレミアリーグEASTで対戦しており、その時はFC東京U-18が2点を先行したものの、残り5分から鹿島ユースが3点を奪って大逆転勝ちを収めている。FC東京U-18にとってみれば「プレミアで凄い逆転劇をされて、みんな凄く悔しい想いをしたアントラーズに、この早いタイミングで来たリベンジの機会」(北原槙)。まず、その前提は語り落とせない。

 ただ、試合は「自分たちも今年は点が獲れていますし、相手も前線のタレントが多いところもあって、もう少し点が動くかなというのは自分の感覚の中でありました」と鹿島ユースのキャプテンを務めるDF大川佑梧(3年)が話したように、決勝進出を巡る一戦ということもあって、やや落ち着いた形で立ち上がる。

 鹿島ユースは右のMF中川天蒼(3年)、左のMF平島大悟(2年)とボールの収まるサイドハーフに展開しながら、2トップのFW高木瑛人(1年)とここまで得点ランキングトップに立つFW吉田湊海(2年)で勝負する形を徹底。一方のFC東京U-18はDF鈴木楓(3年)とDF松野泰知(2年)の両センターバックから丁寧にボールを動かしながら、こちらも左右の両翼、MF北原槙(1年)とMF菅原悠太(3年)が前へのスイッチを入れていく。

 前半11分は鹿島ユースに決定機。高い位置で相手ボールを果敢に奪ったMF大貫琉偉(2年)のシュートは、クロスバーにヒットしたものの、良い守備から良い攻撃をボランチが体現。前半21分にはFC東京にビッグチャンス。中盤でMF田邊晴大(3年)が縦に付け、MF田中希和(3年)が巧みな浮き球でラストパス。抜け出したFW尾谷ディヴァインチネドゥ(3年)が狙ったループは枠を越えるも、双方が際どいシーンを作り出す。

 38分。試合が動く。鹿島ユースは高い位置まで右サイドバックのDF朝比奈叶和(3年)が駆け上がり、中川がクロス。エリア内へ飛び込んだ平島が粘り強く押し込んだボールは、ゴールネットへ到達する。背番号10がこの舞台で大仕事。前半は鹿島ユースが1点をリードして、40分間が終了した。





 後半もいきなりの決定機は鹿島ユースに。1分。左サイドからDF岩土そら(1年)が最高のアーリークロスを送り込むと、マーカーと入れ替わった高木は右足一閃。強烈なシュートは、しかしクロスバー直撃。点差を広げるまでには至らない。

 すると、以降は「後半はもう1個ギアを上げるというか、もっともっと自分たちのサッカーを出そうというところで、もっと前の意識をみんなが持ったと思います」とキャプテンのMF二階堂凛太郎(3年)も話したFC東京U-18が、同点に追いつくべくアクセルを踏み込む。

 7分には決定的なチャンス到来。尾谷が身体を張って時間を作り、左サイドを切り裂いた北原の折り返しに、フリーで走り込んできた田中のシュートは、枠の左へ逸れたものの好トライ。14分にもスローインの流れから田中が繋ぎ、二階堂が打ち切ったミドルは鹿島ユースGK菊田修斗(3年)がキャッチ。24分にも北原、尾谷と回ったボールから、菅原が右足で枠へ収めたシュートは菊田がファインセーブ。さらに佐藤由紀彦監督はドリブラーのMF友松祐貴(2年)も投入し、圧力を高め続ける。

 30分。FC東京U-18の意地が結実する。GK渡邊麻舟(2年)が大きく蹴ったフィードが相手陣内で弾むと、飛び出したGKより一瞬早く尾谷がヘディング。ボールはゆっくりと、確実に、無人のゴールへと転がり込む。「自分の一番のストロングの身体能力の部分を出して、得点が獲れたのは良かったと思います」と口にしたストライカーの同点弾。1-1。スコアは振り出しに引き戻された。





「逆に自分としては、崩されてやられるより、ああいう形の失点の方がうまく切り替えられるところもあります」(大川)。追い付かれた鹿島ユースは、踏みとどまる。勢いを増すFC東京U-18のアタックにも、大川とDF元砂晏翔仁ウデンバ(2年)の両センターバックが冷静に対応し、大貫とMF福岡勇和(2年)で組むドイスボランチも運動量を落とさず、セカンド回収に、プレスバックに奔走。2失点目は許さない。

 40+6分。鹿島ユースにラストチャンス。右サイドで獲得したCKを大貫が蹴り込み、元砂が高い打点で合わせたヘディングは、しかし枠の右へ逸れると、ほどなくしてタイムアップの笛が聞こえる。前後半80分間を終えて、決着つかず。大会規定により延長戦は行われず、決勝へと進出する権利はPK戦で争われることになる。

 若鹿の守護神は責任を感じていた。「自分のミスで失点してしまったので、どうにか取り返せないかなと思っていました」(菊田)。1人目はお互いに成功。2人目も先攻の鹿島ユースは成功。後攻のFC東京U-18。キッカーのフェイントに一度は逆に動きかけたものの、何とかとどまった菊田は、必死に飛び付いたボールを力強く弾き出す。

 3人目も双方が成功。4人目も鹿島ユースはきっちり沈め、迎えたFC東京U-18のキック。「上に蹴るのは難しいと思うので、『下に来たら絶対に止める』という気持ちで飛んだら、ちょうどドンピシャで止められました」。完璧なセーブを繰り出した菊田が走り出すと、あっという間に笑顔のチームメイトの輪に飲み込まれていく。



「こうやってタイトルが懸かった試合はサッカー人生の中でもそんなに多く経験できることでもないので、こういう試合を勝ち切ることこそが、自分たちをより成長させてくれるかなと思います」(大川)。真夏の激闘は鹿島ユースに軍配。ただ、執念で追い付き、最後の最後まで気持ちを見せて戦い抜いたFC東京U-18の奮闘にも、拍手を送りたい。


 今季の鹿島ユースは、勝負強い。プレミアリーグEASTでも前半戦は首位ターン。今大会もシビアな試合を5つ勝ち切って、決勝へとたどり着いている。チームを率いる中野洋司監督の言葉が興味深い。

「やっぱりメンタリティ的に、『鹿島っぽい』選手が多いかなとは凄く思います。悪い時は悪いなりに声を掛けたり、チームの中の整理はある程度できているのかなと。なので、最後は勝ちを持ってこれるというか、大川を中心にピッチの中でよく声も掛けていますし、その中でうまく修正できたり話せるところが、今年のチームの勝負強さに繋がっているのかなと思います」。

 加えて彼らを見ていて感じるのは、冷静な部分と情熱的な部分を、絶妙なバランスで合わせ持っているところだ。試合中は極めて落ち着いて、勝利のためにゲームを運んでいく一方で、この日の勝利後もそうだったが、ピッチ外ではとにかく元気なエネルギーが際立っている。

 キャプテンの大川は、2025年のチームについて、こう語っている。「本当にこの3学年の特徴は、ふざける時はふざけるヤツが多くて、それが自分たちの良さでもあり、直していかないといけない部分でもあって(笑)。ただ、やるってなった時にチームのまとまりが出れば、自分たちは日本一強いと思っていますし、今日のゲームみたいにこういうチームのまとまり方ができれば、そう簡単に負けるようなチームではないかなと思います」。

 まとまりという意味では、ゴール裏で声援を送り続けたアカデミーの選手たちの応援も見逃せない。「今日はジュニアとジュニアユース、ユースのここに入れなかった選手が来てくれて、あの応援があったから最後にPK戦も勝ち切れたことは、選手が一番よく感じていると思うので、ジュニアの時から聞き続けた応援というのは、選手にとっても力をもらえるんじゃないかなと思いますね」(中野監督)「アントラーズの良さはああいうところだと思いますし、鹿島らしい一体感は自分たちも感じられているので、ああいうふうに応援してくれる人たちの分まで、自分たちがやらなきゃいけないなと思っています」(大川)。

 まさにクラブ一体での勝利を掴み取り、決勝を戦う権利を手繰り寄せた鹿島ユースだが、そもそもこの大会の決勝進出自体が、昨年までアカデミーのコーチを務め、今季からトップチームへ移った曽ケ端準GKコーチが高校3年生だった1997年以来、28年ぶり。そこで勝てば、意外にも初優勝ということになる。最後の決戦に向けて、大川が言葉に力をこめる。

「正直、今日も自分の中では前日から緊張で寝れないような重圧を感じている中で、逆にそういう重圧を感じられることもいいことなのかなって思っています。こういう経験は自分を成長させてくれると思いますし、アントラーズはタイトルを獲っていかないといけないチームなので、もう勝つことだけを考えて、次の1試合に全力で挑みたいと思います」。

 逞しき若鹿がまっすぐに突き進んできた全国行進も、残るはあと1試合。掴み取る。日本一の栄冠を。みんなで優勝カップを掲げる瞬間を。2025年、夏。鹿島ユースの新たな歴史は、21世紀に生まれた彼らが、力強く切り拓く。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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