[MOM5183]鹿島ユースGK菊田修斗(3年)_小6時にスクール在籍もU-15のセレクションに落選した「因縁の相手」との特別な再会。失点を帳消しにする2本のPKストップで決勝進出の立役者に!
鮮やかな2本のPKストップを披露した
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.29 クラブユース選手権(U-18)準決勝 鹿島ユース 1-1 PK4-2 FC東京U-18 ニッパツ三ツ沢球技場]
自らのミスで喫した失点の借りを返す絶好のチャンス。集中力は研ぎ澄まされていく。11メートル先の相手を見据え、心を落ち着かせる。大丈夫。止められる。みんなの想いも全部背負って、オレがチームを決勝へと連れていく。
「気づいたらもう手に当たって、気づいたら走り出していました。もう嬉しすぎましたし、『ああ、よかった……』と。もうそれだけです。自分がやらかして、今までみんなが頑張ってきたものを無駄にしなくて良かったなと思いました」。
鹿島アントラーズユース(関東4)のゴールマウスを任されている、ポテンシャル抜群の正守護神。GK菊田修斗(3年=ジェファFC U-15出身)が強い気持ちで繰り出した2つのPKストップが、実に28年ぶりとなるチームの決勝進出を逞しく引き寄せた。
「自分のミスで失点してしまったので、どうにか取り返せないかなと思っていました」。菊田は何とも言えない感情の中で、必死に自分自身を保ちながら、ピッチに立っていた。FC東京U-18(関東5)と対峙したクラブユース選手権準決勝。終盤まで1点をリードしていた鹿島ユースは、後半30分に同点に追い付かれる。
失点は一瞬の判断の迷いから生まれていた。相手GKのフィードが伸び、ディフェンスラインの背後で弾んだボールに、菊田の飛び出すタイミングが遅れたことで、長身FWに頭で先にさわられてしまったのだ。
「ああやって自分のミスで失点してしまったので、多少マイナスな気持ちはありましたけど、もう望みを託したというか、前線の選手が点を獲ってくれるという信頼はありましたし、みんなのためにここから無失点で行こうという気持ちはありました。ただ、そういうメンタルでいようと思いましたけど、実際のところ、それができていたかは、自分でもよくわかりません」。
結局、80分間を終えて、スコアは1-1のドロー。大会規定で準決勝まで延長戦の実施はないため、決勝へと勝ち上がる権利の行方は、PK戦に委ねられる。
菊田は不思議な因縁を感じていた。今回の対戦相手となったFC東京は、小学校6年生の時にアドバンススクールのゴールキーパークラスに通っていた、ある意味で“古巣”とも言うべきクラブだという。
「FC東京のアドバンススクールにいたのは6年生だけですけど、ちょうどその時にキーパーのクラスができたので、キーパークラスの初めての代として通っていました。そこから深川のジュニアユースのセレクションを受けたんですけど、落とされてしまったので、自分としては『見返してやる』という想いはありましたね」。
FC東京U-15深川のセレクション落選を突き付けられた菊田は、同じ東京の街クラブ・ジェファFC U-15へと進み、そこで着実に実力を伸ばしていったことで、高校進学時には複数のJクラブユースからオファーが届くまでに。その中で「いろいろなところに自分で行ってみて、環境的にも一番いいなと自分で思ったので、ここを選びました」と鹿島ユースで勝負する決断を下す。
それから2年半。全国大会の準決勝で対戦するだけでも特別なシチュエーションなのに、奇しくも最もGKにスポットの当たるPK戦で、“古巣”と向かい合うのだ。燃えないはずがない。
1人目のキックは逆を突かれた。以降も全員が成功し、2-1で迎えた後攻のFC東京2人目。巧みなフェイントを見て、先に動きかけたものの、何とか踏みとどまって、ボールが来た方向へ懸命に手を伸ばす。
「一瞬自分も逆に動いたかなと思ったんですけど、それこそ時が止まったというか、いつもだったら逆を取られたら動けなかったのに、結構今回は動けて良かったなと思います。本当に失点を取り返さなきゃと思っていましたし、PK戦の前には市川(友也)コーチから話があって、それを信じてやったところもあるので、止められて嬉しかったです」。ガッツポーズにも思わず力が入る。


3人目のキックは、ボールにこそ触ったものの、止め切れず。ここからも成功が続き、3-2という状況でスポットにFC東京4人目のキッカーが向かう。止めれば勝利という局面。ただ、菊田の頭の中は意外なくらいにクリアだった。
「上に蹴るのは難しいと思うので、『下に来たら絶対に止める』という気持ちで飛んだら、ちょうどドンピシャで止められました」。自分の右下に飛んできたボールを、背番号1が右手1本で弾き出す。
気づいたら、もう叫びながら走り出していた。向かってきたチームメイトたちが、次々に殊勲の守護神の上へと折り重なっていく。


因縁の相手に披露した2本のPKストップ。試合後には少し照れ臭そうに、メガホンで勝利の『オブラディ』の音頭を取る。チームを率いる中野洋司監督が、インタビューに応える菊田の横で「まあ、自作自演でしたね」と笑いながら口にするあたりに、このチームの中での立ち位置が垣間見える。話を聞いても、今日のヒーローは自分ではないと、ひたすら恐縮する姿も印象的だ。
「菊田自身もたぶん思うところもあったでしょうし、菊田もプレッシャーを感じやすいタイプかなと思うので、ここでPKを止めてチームを救ってくれたことで、自信を付けたと思います。菊田がいてくれれば止めてくれるという想いも僕らにありますし、そういう積み重ねでチームって強くなっていくと思うので、今日は菊田のおかげかなと思います」とはキャプテンのDF大川佑梧。悔しい失点こそあったものの、やはり決勝進出に背番号1が大きく貢献したことは間違いない。


もう残るは、最後の1試合のみ。このチームで、この仲間たちと切磋琢磨してきた2年半の集大成となる晴れ舞台。菊田はこの日の反省も含めて、決勝への意気込みをこう口にする。
「今日のああいう失点をなくさないといけないというのは市川コーチとも話していて、そこは改善できるかなと思っています。この大会ではソガさん(曽ケ端準・トップチームGKコーチ)の代が決勝に行って、負けてしまったと聞いているので、僕らはこの勢いを続けたいですし、このチームは優勝できるチームだと思っているので、このまま優勝目指して、みんなでベクトルを合わせていきたいと思います」。
もう同じ過ちは繰り返さない。必ず三ツ沢の夜空に、みんなで優勝カップを掲げてやる。鹿島ユースの背番号1を託されている、成長著しいゴールキーパー。菊田修斗がチームをしなやかに救うシーンは、日本一の懸かった決勝でも必ずやってくるはずだ。


(取材・文 土屋雅史)
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[7.29 クラブユース選手権(U-18)準決勝 鹿島ユース 1-1 PK4-2 FC東京U-18 ニッパツ三ツ沢球技場]
自らのミスで喫した失点の借りを返す絶好のチャンス。集中力は研ぎ澄まされていく。11メートル先の相手を見据え、心を落ち着かせる。大丈夫。止められる。みんなの想いも全部背負って、オレがチームを決勝へと連れていく。
「気づいたらもう手に当たって、気づいたら走り出していました。もう嬉しすぎましたし、『ああ、よかった……』と。もうそれだけです。自分がやらかして、今までみんなが頑張ってきたものを無駄にしなくて良かったなと思いました」。
鹿島アントラーズユース(関東4)のゴールマウスを任されている、ポテンシャル抜群の正守護神。GK菊田修斗(3年=ジェファFC U-15出身)が強い気持ちで繰り出した2つのPKストップが、実に28年ぶりとなるチームの決勝進出を逞しく引き寄せた。
「自分のミスで失点してしまったので、どうにか取り返せないかなと思っていました」。菊田は何とも言えない感情の中で、必死に自分自身を保ちながら、ピッチに立っていた。FC東京U-18(関東5)と対峙したクラブユース選手権準決勝。終盤まで1点をリードしていた鹿島ユースは、後半30分に同点に追い付かれる。
失点は一瞬の判断の迷いから生まれていた。相手GKのフィードが伸び、ディフェンスラインの背後で弾んだボールに、菊田の飛び出すタイミングが遅れたことで、長身FWに頭で先にさわられてしまったのだ。
「ああやって自分のミスで失点してしまったので、多少マイナスな気持ちはありましたけど、もう望みを託したというか、前線の選手が点を獲ってくれるという信頼はありましたし、みんなのためにここから無失点で行こうという気持ちはありました。ただ、そういうメンタルでいようと思いましたけど、実際のところ、それができていたかは、自分でもよくわかりません」。
結局、80分間を終えて、スコアは1-1のドロー。大会規定で準決勝まで延長戦の実施はないため、決勝へと勝ち上がる権利の行方は、PK戦に委ねられる。
菊田は不思議な因縁を感じていた。今回の対戦相手となったFC東京は、小学校6年生の時にアドバンススクールのゴールキーパークラスに通っていた、ある意味で“古巣”とも言うべきクラブだという。
「FC東京のアドバンススクールにいたのは6年生だけですけど、ちょうどその時にキーパーのクラスができたので、キーパークラスの初めての代として通っていました。そこから深川のジュニアユースのセレクションを受けたんですけど、落とされてしまったので、自分としては『見返してやる』という想いはありましたね」。
FC東京U-15深川のセレクション落選を突き付けられた菊田は、同じ東京の街クラブ・ジェファFC U-15へと進み、そこで着実に実力を伸ばしていったことで、高校進学時には複数のJクラブユースからオファーが届くまでに。その中で「いろいろなところに自分で行ってみて、環境的にも一番いいなと自分で思ったので、ここを選びました」と鹿島ユースで勝負する決断を下す。
それから2年半。全国大会の準決勝で対戦するだけでも特別なシチュエーションなのに、奇しくも最もGKにスポットの当たるPK戦で、“古巣”と向かい合うのだ。燃えないはずがない。
1人目のキックは逆を突かれた。以降も全員が成功し、2-1で迎えた後攻のFC東京2人目。巧みなフェイントを見て、先に動きかけたものの、何とか踏みとどまって、ボールが来た方向へ懸命に手を伸ばす。
「一瞬自分も逆に動いたかなと思ったんですけど、それこそ時が止まったというか、いつもだったら逆を取られたら動けなかったのに、結構今回は動けて良かったなと思います。本当に失点を取り返さなきゃと思っていましたし、PK戦の前には市川(友也)コーチから話があって、それを信じてやったところもあるので、止められて嬉しかったです」。ガッツポーズにも思わず力が入る。


3人目のキックは、ボールにこそ触ったものの、止め切れず。ここからも成功が続き、3-2という状況でスポットにFC東京4人目のキッカーが向かう。止めれば勝利という局面。ただ、菊田の頭の中は意外なくらいにクリアだった。
「上に蹴るのは難しいと思うので、『下に来たら絶対に止める』という気持ちで飛んだら、ちょうどドンピシャで止められました」。自分の右下に飛んできたボールを、背番号1が右手1本で弾き出す。
気づいたら、もう叫びながら走り出していた。向かってきたチームメイトたちが、次々に殊勲の守護神の上へと折り重なっていく。


因縁の相手に披露した2本のPKストップ。試合後には少し照れ臭そうに、メガホンで勝利の『オブラディ』の音頭を取る。チームを率いる中野洋司監督が、インタビューに応える菊田の横で「まあ、自作自演でしたね」と笑いながら口にするあたりに、このチームの中での立ち位置が垣間見える。話を聞いても、今日のヒーローは自分ではないと、ひたすら恐縮する姿も印象的だ。
「菊田自身もたぶん思うところもあったでしょうし、菊田もプレッシャーを感じやすいタイプかなと思うので、ここでPKを止めてチームを救ってくれたことで、自信を付けたと思います。菊田がいてくれれば止めてくれるという想いも僕らにありますし、そういう積み重ねでチームって強くなっていくと思うので、今日は菊田のおかげかなと思います」とはキャプテンのDF大川佑梧。悔しい失点こそあったものの、やはり決勝進出に背番号1が大きく貢献したことは間違いない。


もう残るは、最後の1試合のみ。このチームで、この仲間たちと切磋琢磨してきた2年半の集大成となる晴れ舞台。菊田はこの日の反省も含めて、決勝への意気込みをこう口にする。
「今日のああいう失点をなくさないといけないというのは市川コーチとも話していて、そこは改善できるかなと思っています。この大会ではソガさん(曽ケ端準・トップチームGKコーチ)の代が決勝に行って、負けてしまったと聞いているので、僕らはこの勢いを続けたいですし、このチームは優勝できるチームだと思っているので、このまま優勝目指して、みんなでベクトルを合わせていきたいと思います」。
もう同じ過ちは繰り返さない。必ず三ツ沢の夜空に、みんなで優勝カップを掲げてやる。鹿島ユースの背番号1を託されている、成長著しいゴールキーパー。菊田修斗がチームをしなやかに救うシーンは、日本一の懸かった決勝でも必ずやってくるはずだ。


(取材・文 土屋雅史)
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