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指揮官の愛あるメッセージを受け取った16歳の「真夏の蹉跌」。FC東京U-18北原槙はまだまだ、もっと、強くなる

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試合後には悔しさを滲ませたFC東京U-18MF北原槙(1年=FC東京U-15むさし出身)

[7.29 クラブユース選手権(U-18)準決勝 鹿島ユース 1-1 PK4-2 FC東京U-18 ニッパツ三ツ沢球技場]

 指揮官の愛あるメッセージを受けて、奮い立たないはずがない。自分がチームを勝たせる。不退転の覚悟で、この大会に挑んでいた。だからこそ、悔しい。優勝できなかったことも、納得のいくパフォーマンスが出せなかったことも。もう1試合、みんなで戦いたかった。

「ユキさん(佐藤由紀彦監督)にこのクラブユースが始まる前に、『グループステージで敗退すればオマエのせいで、優勝したらオマエのおかげだよ』という、個人としても凄く嬉しい言葉をもらった中で、今日の試合もそうですし、この大会は本当に何もできなかったなという想いです」。

 既にトップチームとプロ契約を締結している、FC東京U-18(関東5)の33番を背負った確かな才能。MF北原槙(1年=FC東京U-15むさし出身)はこの日味わった、忘れたくない経験を糧に、まだまだ、もっと、高く羽ばたいていく。


「1戦目はスタメンで出て、ひどいプレーをして、その後の2戦目、3戦目はスタメンを外れて、自分でもパフォーマンスがひどかったのはわかっていました」。北原は今大会のグループステージを振り返って、そう語る。

 初戦の愛媛FC U-18戦はスタメン起用されたものの、1点をリードされた後半13分に交代を命じられ、チームはその後に同点に追いついて、1-1のドロー。ベンチスタートとなった第2節の三菱養和SCユース戦は、残り15分での登場にとどまる。

 迎えた第3節のアビスパ福岡U-18戦。北原は2点ビハインドの後半途中でピッチに解き放たれると、チームは3点を挙げて逆転したものの、得失点差の関係でもう1点を奪わないとグループ突破は叶わない。そんな後半アディショナルタイムに、5点目を叩き出したのが北原。この1点でチームは辛うじて準々決勝進出を引き寄せる。

 それでも本人は「悔しい想いをあの1点で多少は晴らせたと思いますけど、あれを当たり前にしていかないといけないと思います」ときっぱり。再びスタメンに戻り、2-0で勝利した準々決勝の東京ヴェルディユース戦も含めて、今回の大会は消化不良感が付いて回ってきた。

 準決勝の相手は鹿島アントラーズユース(関東4)。「プレミアで凄い逆転劇をされて、みんな凄く悔しい想いをしたアントラーズに、この早いタイミングでリベンジの機会が来たと思いました」と北原も口にしたように、1か月前にプレミアリーグで対戦した時には、終盤まで2点をリードしながら、後半40分から3失点を喫し、まさかの逆転負け。同じ相手に2度も続けて負けるわけにはいかない。

 左サイドハーフの位置に入った33番は、積極的な仕掛けを繰り返す。後半7分には左サイドを単騎で切り裂き、中央へ丁寧なラストパス。MF田中希和(3年)のシュートは枠を外れたものの、持ち味のドリブルから決定機を演出してみせる。

 23分にはMF友松祐貴(2年)の投入に伴い、指揮官から任されたのはボランチ。「ユキさんからは『ボールを触りつつ、サイドチェンジでリズムを作ってくれ』と言われましたし、1点ビハインドというところもあったので、点を獲りに行くしかないというところで、(二階堂)凛太郎とも話して、『できるだけ前でプレーしていいよ』と言われました」。攻撃に軸足を置きつつ、全体のバランス維持にも気を配る。

佐藤由紀彦監督から指示を受ける北原(33番)


 30分にFW尾谷ディヴァインチネドゥ(3年)のゴールで追いつき、以降も攻勢を強めたものの、「内容としても圧倒までは行かなかったですけど、自分たちのゲームに持っていけた中で、決め切れずにPKになってしまいました」と北原。PK戦では2人のキックが相手GKに止められ、無念の敗退。FC東京U-18と北原の夏は、準決勝で終わりを告げることとなった。


「ユキさんに嬉しい言葉をもらった中で、結局は優勝してこその恩返しだったと思うので、それを考えると準決勝までは来ましたけど、僕が何かをしたかと言われたら、何もしていないですし、何か違いを生み出せたかと言われたら、そんなこともないですし、ただただ悔しい大会になりました」。

 懸けていたものが大きかっただけに、喪失感もまた小さくない。加えて今季はJ1でもここまで7試合に出場するなど、基本的にトップチームで活動してきた中で、U-18の選手たちに対しても、今までとは違う感情を抱いていたという。

「僕は今シーズンほぼほぼトップチームの方でやっていますけど、ユースの人と切磋琢磨してきた今までがなかったら、今の自分もないですし、僕がトップチームで試合に出れないからユースに来ているわけで、そういった意味で本当にお世話になっている先輩たちにも、監督にも、スタッフにも、優勝という結果で恩返ししたかったので、悔しいの一言です」。



 それでも、サッカーと生きる日常はこれからも続いていく。自分を信頼してくれているU-18の監督やスタッフ、チームメイトたちの想いに報いるためには、とにかく結果で示すしかないが、そんなことは本人が一番よくわかっている。

「今年は2種登録されて、試合に出初めて、多少掴んで、でも、また外されてという、正直凄いシーズンを過ごさせてもらっている中で、プロ契約もさせていただきましたし、このユースで何もできなかった自分の不甲斐なさを糧に、トップチームの素晴らしい先輩方たちとしっかり切磋琢磨して、成長して、トップチームでまた結果を残せば、U-18のチームメイトのみんなも、多少は納得してくれると思うので、そういうことを意識していきたいと思います」。

 真夏に味わった蹉跌は、青赤の未来を担い得る16歳にとって、必ず意味のあるものに変わっていく。向き合うのはいつだって今の自分。北原槙は、まだまだ、もっと、強くなる。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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