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「決勝にとっておいた」今大会初ゴールは豪快なダイビングヘッド!鹿島ユースMF中川天蒼がこの代で獲りたかった日本一の価値

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豪快なダイビングヘッドを沈めた鹿島アントラーズユースMF中川天蒼(3年=鹿島アントラーズジュニアユース出身)

[7.31 クラブユース選手権(U-18)決勝 鹿島ユース 3-0 仙台ユース ニッパツ三ツ沢球技場]

 自分たちの代でタイトルを獲りたいと、ずっと思っていた。アカデミーで過ごすのも6年目。長いようで短かったこの時間の中に、確かな足跡を刻みたいと願い、みんなで切磋琢磨してきたのだ。きっと実感は、これからゆっくりと湧いてくる。オレたちが日本一だ!

「タイムアップの瞬間は、あまり実感が湧かなかったですね。素直に勝ったことが本当に嬉しかったのと、ああやって僕らの背中を押してくれた応援組が喜んでいるのをみて、そこで『本当に優勝したんだ』という実感が湧いてきた感じでした」。

 昨シーズンから鹿島アントラーズユース(関東4)の右サイドを支え続けてきた、背番号14の技巧派レフティ。MF中川天蒼(3年=鹿島アントラーズジュニアユース出身)の勝利への執念は、ダイビングヘッドという形のゴールで結実した。


 中川の今シーズンはケガからスタートした。2月に骨折に見舞われてしまい、そこから3か月近い戦線離脱を強いられる。

「自分自身初めての大ケガということもあって、最初は精神的な辛さとかを味わっていました。だけど、スタッフや家族、学校の友だちやすべての人が自分を支えてくれて、前を向くことができたんです」。苦しい経験でもあったその期間は、周囲の人たちの温かさを、改めて感じる機会にもなった。

 プレミアリーグEASTでは、5月10日の昌平高戦で今季初出場を果たすと、翌週の川崎フロンターレU-18戦では、スタメン起用に応えて圧巻の3アシストを記録。6-1の大勝を演出してみせ、以降は一貫して先発出場を続ける中で、コンディションを着実に上げてきた。

 迎えたユース最後のクラブユース選手権。「自分たち3年生の代は、アントラーズとしてのタイトルが獲れていなかった中で、今回のチームは力を見ても、『タイトルを獲れる力があるな』と思っていたので、『クラブユースを絶対獲ってやろう』という気持ちで、みんなで頑張ってきました」と中川も話したように、強い決意を抱いて臨んだ今大会は、グループステージを3連勝で首位通過。準々決勝ではヴィッセル神戸U-18との打ち合いを5-3で制し、準決勝もFC東京U-18にPK戦の末に勝利を収め、実に28年ぶりの決勝進出を手繰り寄せる。



 勝利すれば初優勝となる、ベガルタ仙台ユースと対峙したファイナル。「今大会の自分はアシストしかしていなくて、シュートを打っても全然入らなくて、『ヤバいな』と思っていたんですけど(笑)、途中から『点は決勝で獲ってやろう』と自分で決めていました」という中川は、虎視眈々とその時が来るのを狙っていた。

 前半のうちにMF福岡勇和(2年)とFW高木瑛人(1年)の得点で鹿島ユースが2点をリードした中、14番の元へ決定機が到来したのは後半13分。左サイドでMF平島大悟(2年)がボールを持つと、もうゴールへの道筋は自分の中で見えていた。

「大悟が持った瞬間に、自分の前のスペースが空いていたんですけど、もう考える暇もなく、『ゴールを獲りたい!』という気持ちで自分の身体が動いて、そこに大悟がドンピシャのボールをくれたので、あとは押し込むだけでした」。頭から突っ込んだダイビングヘッドが、鮮やかにゴールネットを揺らす。

「ネットが揺れた瞬間はマジで嬉しかったです!この大会はどんな形でもゴールを獲りたいと思っていた中で、ここまで1点も獲れていなかったので、自分では『決勝にとっておいているんだ』という気持ちでずっとやっていたら、実際にああいう形の気持ちで押し込むゴールが決められました。鹿島神宮に行って、みんなで必勝祈願してきた時に、自分もお願いしていたので、神様のおかげかなと思います」。中川が奪った執念の大会初ゴール。3-0。さらに点差が開く。




 40+3分。“14”の数字を示す交代ボードが掲げられる。ピッチサイドで待っていたのは、まだ14歳のFW土井空芽(中学3年)。「空芽は中3ですけど、十分ユースでやれる力はあると思いますし、今日の良い経験を生かして、空芽の下の選手たちにもどんどんそういう影響を繋げていってほしいなって思います」と話す中川に代わり、一際大きな55番という番号を背負った土井がピッチへ走り出す。こうやってアカデミーのバトンは着々と受け継がれていくわけだ。

 ほどなくして、タイムアップのホイッスルが三ツ沢の夜空に鳴り響く。鹿島ユース、クラブユース選手権初制覇。試合後には応援に駆けつけてくれたアカデミー生と一緒に、ユースの選手たちも日本一の喜びに浸る。中川の表情にも、最高の笑顔が弾けた。

 ただ、まだシーズンは続いていく。9月からはプレミアリーグも再開。現時点では首位に立っているだけに、この勢いをリーグ戦に繋げるべく、中川はもう一度気持ちを引き締め直す。

「このメンバーで日本一が獲れたことは素直に嬉しいです。でも、ここで満足してはダメだと思いますし、プレミアとの二冠を獲って、今年を自分にとって素晴らしい年にしたいですし、この代をチームの歴史に名を刻む代にしていきたいと思います」。

 まだ、足りない。このチームなら、もっと先までたどり着ける。確かな技術とハードワークを兼ね備えた、鹿島ユースの攻撃を彩る14番のレフティ。中川天蒼は頼れる仲間と一緒に、残されたアカデミーでの時間を、望んだ景色が広がっているはずの綺麗な空の下まで、全速力で駆け抜ける。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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