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人知れず感じていたキャプテンとタイトルの重圧。鹿島ユースDF大川佑梧が最高の仲間と笑顔で掲げた日本一の優勝カップ

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鹿島アントラーズユースの頼れるキャプテン、DF大川佑梧(3年=鹿島アントラーズジュニアユース出身)

[7.31 クラブユース選手権(U-18)決勝 鹿島ユース 3-0 仙台ユース ニッパツ三ツ沢球技場]

 人知れず重圧を感じていたことは間違いない。キャプテンとして、ディフェンスリーダーとして、ジュニアからの生え抜きとして、この大会を制する意味は、誰よりもよくわかっていた。すべてが終わり、悲願のタイトルを獲得した瞬間、その人に浮かんだのは涙ではなく、満面の笑顔だった。

「自分1人ではこのタイトルは獲れなかったので、みんなに感謝したいですね。自分はこのチームが大好きですし、このチームメイトが大好きなので、みんなと優勝することができて、本当に幸せです」。

 鹿島アントラーズユース(関東4)を最後方から牽引する、生粋のリーダー。DF大川佑梧(3年=鹿島アントラーズジュニアユース出身)が掲げた日本一の優勝カップは、みんなの笑顔を映し出しながら、綺麗に、美しく、三ツ沢の夜空の下で輝いた。


 意外な告白だった。クラブユース選手権準決勝。プレミアリーグ勢対決となったFC東京U-18との一戦に競り勝った試合後。大川はこんなことを口にする。「正直、昨日は緊張でなかなか寝れなかったんです」。

 もともと緊張しやすいタイプだということは、本人も認めている。だが、今回の試合前に湧き上がってきたのは、普段感じているものとは異なるそれだったという。「準決勝ぐらいからは結構プレッシャーもあって、あまりいつもは感じたことのないような緊張を感じました」。

 みんながこの大会に懸けてきた想いも、周囲から寄せられている期待も、十分に理解している。そんなキャプテンには、知らず知らずのうちに、目に見えない重圧がかかっていたのかもしれない。試合は前半で先制しながら、追いつかれる展開。最後はPK戦で決勝進出を引き寄せたが、勝敗の決着がついた瞬間、大川の目には安堵の涙が浮かんでいた。

 ただ、一方でその緊張感や重圧を、成長の糧に繋げようとするマインドも持ち合わせているあたりが、実にこの人らしい。決勝に向けての意気込みを尋ねると、ポジティブで、力強い言葉が響く。

「でも、今は逆にそういう重圧を感じられることもいいことなのかなって。こういう経験は自分を成長させてくれると思いますし、アントラーズはタイトルを獲っていかないといけないチームなので、うまく自分の中でメンタルコントロールしていきながら、勝つことだけを考えて、次の1試合に全力で挑みたいと思います」。大川は改めて覚悟を定め、最後の1試合に向かっていく。


 ピッチに入ると、聞き慣れたチャントが耳に届く。クラブユース選手権決勝。ベガルタ仙台ユースと対峙する、今大会のラストゲーム。大川はゴール裏に詰めかけたアカデミーの後輩やユースの仲間たち、サポーターから送られる声援に、言いようのない高揚感を覚えていた。

 やはり決勝の前日も緊張感に襲われていたものの、それでも準決勝の前とは違う感覚が自分の中にあったそうだ。「今回もあまり寝られなかったですけど、前よりはネガティブな感じではなかったので、そこは良かったかなと思います」。もう仲間を信じて、自分を信じて、ただただ全力で戦うだけ。いたってすっきりとした感情で、キックオフの笛を聞く。



 試合が始まると、決勝の舞台で躍動するチームメイトたちが、いつも以上に頼もしく見える。そんな彼らと一緒に戦っていることも、そんなチームのキャプテンを務めていることも、いつも以上に誇らしかった。

「試合前に『今日は今までやってきたことが報われる日だと信じてやろう』という話はみんなにしました。このチームのキャプテンをやれることは凄く光栄なことですし、その分の責任や重圧もありますけど、それは当たり前のことなので、そういうことを感じながら試合ができたことも良かったなと思います」。

 18分、福岡勇和。37分、高木瑛人。53分、中川天蒼。次々に得点が重なり、そのたびにリードが広がる。守備でも大川と元砂晏翔仁ウデンバのセンターバックコンビを中心に、仙台ユースの攻撃の芽を、1つずつ、丁寧に、摘み取っていく。

 アディショナルタイムもすべて消え去り、タイムアップのホイッスルが鳴り響く。鹿島ユース初となるクラブユース選手権での日本一。「本当に嬉しかったですし、ホッとしたところもありましたね。やっぱり優勝を求められている中で優勝できたので、その安心感というか、『良かったな』という想いはありました」(大川)



 この日の試合終了直後。大川の目に準決勝の時のような涙はなく、その表情には大きな笑顔の花が咲いていた。涙ではなく、笑顔。その理由を問われたキャプテンは、嬉しそうに、誇らしげに、こんなことを話してくれた。

「正直、自分たちのチームメイトを見ると勝てるという自信も湧いてきますし、自分は1人ではなくて、みんなで戦っているので、そういうチームのおかげで、今日は『絶対勝ってやる』という気持ちでずっといられたからこそ、最後は笑顔になったのかなと思います」。

 向けられたカメラのレンズが並ぶ中、大川がみんなの中央に歩み出る。ためて、ためて、空高く掲げた日本一の優勝カップ。ピカピカに磨き上げられたそれは、みんなの最高の笑顔を映し出しながら、綺麗に、美しく、三ツ沢の夜空の下で輝いた。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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