「自分の役割がちゃんとできるようになった」11分の1の結集で掴んだウノゼロ勝利!関東一は多摩大目黒に競り勝って全国4強まで駆け上がった100回大会以来の西が丘へ!:東京A
[10.26 選手権東京都Aブロック予選準々決勝 多摩大目黒高 0-1 関東一高 NICHIBUN SAKURA FIELD]
3年前のチームが残した全国4強という偉大な結果。なかなか思うような成績に届かなかったこの2年間の悔しい結果。勝利へのプレッシャー。敗退へのプレッシャー。良いプレーができるかどうかの不安。高校選手権はいろいろなものが圧し掛かってくる大会だということは十分すぎるほどわかっているけれど、選手たちはいつしか今目の前のピッチでできることを、確実に遂行する力を身に付けてきたのだ。
「もう一度『自分たちのやるべきことは何なのかな』ということを自分自身で考えた時に、『今できる最大のことを彼らはできるようになったんだな』と。だから、『オレが壊さない方がいいな』って。『もうやれているから大丈夫だ』と言って送り出したので、それでああだこうだ言っていたらウソになってしまうじゃないですか。『大丈夫って言ったんだから、大丈夫!』と辛抱強く椅子に座っておりました」(関東一高・小野貴裕監督)
指揮官の期待に応えた、逞しいウノゼロ勝利!第103回全国高校サッカー選手権東京都予選Aブロック2回戦準々決勝が26日に行われ、後半8分にDF福士琉斗(3年)が先制ゴールを挙げた関東一高は、多摩大目黒高の猛攻を跳ね返し続け、1-0で逃げ切りに成功。全国ベスト4まで駆け上がった100回大会以来、3大会ぶりとなる準決勝へとコマを進めている。
序盤からこの一戦へのみなぎるモチベーションを発揮したのは多摩大目黒。前線に置いたFW押切拓也(3年)とFWヘンリー公太(2年)をシンプルに使いつつ、右のMF高橋寛生(3年)、左のMF小松翔(3年)の両ウイングを高い位置に押し出したサイドアタックにも迫力が。中盤もアンカー気味に構えるMF木伏啓彰(2年)がバランスを取りながら、インサイドハーフのMF武田一志(3年)、MF吉越巧(3年)が前方へと関わり、ギアを上げるタイミングを図っていく。


ただ、関東一は「最初は相手の方が勢いがあったので、それでちょっと押し込まれる時はあったんですけど、いったん乗り越えたら、前半の途中ぐらいからマイボールになってきたと思います」と福士が話したように、少しずつドイスボランチのMF佐々木蓮(2年)とMF田村優典(2年)がボールを動かし始め、ポゼッション率が上昇する。
ボール保持の割にはチャンスこそ作れなかったものの、ここにはチームとしての狙いがあった。「相手の出足を止めるために『ボールをちゃんと持つ』ということをやりたかったので、前半のやり方として点は来なかったですけど、ゲーム運びとしては相手の足を止めるというところでまずは良かったかなと思います」(小野監督)。キーマンとして捉えていた相手のインサイドハーフとウイングバックを動かすことには成功しつつ、最初の40分間はスコアレスで推移する。
後半に入ると、先にスコアを動かしたのは関東一。8分。右サイドの高い位置でボールを持った福士は、MF山口幸之助(3年)とのワンツーを経て中央へ切れ込むと、いったんは失いかけながらも目の前にこぼれてきたボールを左足でフィニッシュ。軌道は右スミのゴールネットへ転がり込む。
「1回ルーズボールになったんですけど、そこに自分が勢い良く突っ込んでいったら、ボールが来た感じです。興奮していたので、何が起きたかあまりわかっていないような状態でした。もう最高に気持ち良かったです」。この大会前から本格的にサイドバックへコンバートされたという背番号2が大仕事。1-0。関東一が1点のリードを手繰り寄せる。
ビハインドを負った多摩大目黒は、ロングスローや高い精度を誇るDF中野結心(3年)の正確なプレースキックも含めたセットプレーを中心に、ゴール前へシンプルに迫るアタックを打ち出し続け、28分には左サイドで高橋寛生が決定的なチャンスを迎えたものの、枠へ収めたシュートは「打った選手はブラインドの状態で見えなかったんですけど、出てきたボールに対してしっかり反応できるように構えていて、コースが正面付近だったのでしっかり弾くことができました」という関東一GK内海ジョシュア(3年)がビッグセーブ。同点ゴールは許さない。


31分は多摩大目黒。左サイドを運んだ吉越のシュートは枠の上へ。36分も多摩大目黒。中央やや左寄り、ゴールまで約25メートルの位置から中野が直接狙ったFKは枠の左へ。39分も多摩大目黒。高橋寛生のFKにDF川畠暖世(3年)が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。
「練習通りのパフォーマンスがチーム全体で出せて良かったですし、この大会は自分も結構ゾーンに入っていますね」と語るDFエバイェメウ賢人(3年)とDF茂木蓮音(1年)のセンターバックコンビに、ハイボールはほとんどキャッチで完結させていた内海の安定感も際立った関東一は、ゴールに強固な鍵を掛け続ける。


40+3分には関東一にビッグチャンス。右サイドを縦に持ち出したFW丘敦也(3年)のクロスに、キャプテンのDF岡崎礼暉(3年)が完璧なヘディングを枠内へ打ち込むも、多摩大目黒GK原田大輝(3年)が超ファインセーブで仁王立ち。守護神の意地。勝利の可能性を短い時間に繋いでみせる。
40+4分。多摩大目黒のラストチャンス。原田も前線へと駆け上がる中、高橋寛生のFKがエリア内へ送り込まれ、最後はDF高橋正陽(3年)が打ったシュートは、しかしクロスバーの上に外れると、それから少しあってタイムアップのホイッスルが吹き鳴らされる。
「この3年間は全国も遠くなっていて、そういう舞台に戻ってこれたということもそうですけど、ただただ西が丘に行けるのが嬉しかったです」(エバイェメウ)「ここを1つ超えようという想いでみんなでやっていたところもあるので、今日勝ったことはシンプルに嬉しかったです」(内海)。粘り強く戦った関東一が、難敵の多摩大目黒を振り切って、3年ぶりとなる西が丘の切符を手にする結果となった。
「自分たちが入学してきた時に見た景色と、この2年間というのは正直に言ってまったく違うものでした。でも、その舞台を見て入ったからこそ、自分たちもそこに行きたいという想いはずっと持っていたので、今日は全員の想いが一致して勝てたなと思っています」。
この日はキャプテンマークを巻いて奮闘した内海は、入学してからの時間についてこう振り返っている。今年の3年生は第100回大会の高校選手権で全国4強まで進出したチームを見て、関東一の門を叩いた世代。だが、1年時のインターハイこそチームは全国出場を掴んだものの、以降はどの大会でも都のベスト4に入ることもできず、苦しい時間を過ごしてきた。
「ここ何年間かを振り返ると、『もっと人のために』とか、いろいろ懸けてきちゃったところもありますし、ずっと結果が出ていなかった時間で『ああじゃない』『こうじゃない』というような、過度な要求を結構していたのかなと思ったんです。どうしても『選手権だから3年生が頑張らなくちゃ』とか、『アイツの分も頑張ろう』『オレがやらなきゃいけない』とか、よくあるじゃないですか。でも、今の子って『まず自分のことをちゃんとやりたい』というところで、その自分の役割がちゃんとできるようになったんですよ」(小野監督)
どうしても外から見られるハードルが上がったことで、自分たちで自分たちの手足を縛るような流れを醸成してしまっていたという反省が、指揮官の中には渦巻いていたという。ゆえに意識したのはベクトルをきちんと内側に向け直すこと。自分の役割をそれぞれがまっとうすることで、“11分の1”を過不足なく11人分揃えることが、何より大事だという考えにたどり着いた。
「今は自分たちらしいサッカーをやろうということで、相手のサッカーに付き合うのではなく、自分たちの持っているものをしっかり生かして出し切りたいなと思っているので、そこが一番チームとして成長したところだと思います」とは内海。この日の前半もあるいは消極的に見る向きもあるかもしれないが、関東一の選手たちは80分間をデザインした中で今やるべきことを遂行し、それを見事に結果に結び付けてみせたのだ。
次はいよいよセミファイナル。チームとしては3年ぶりの西が丘だが、今の選手たちにとっては初めてピッチを踏みしめる晴れ舞台。でも、もちろんやるべきことは変わらない。自分たちの持っているものをしっかり生かして、100パーセントの力を出し切るだけ。高校で本格的なサッカーに区切りを付けるというエバイェメウは、シンプルな言葉に強い想いを込める。「もうこれが最後の最後の大会なので、自分の持っている力をすべて出し切って、悔いのないような選手権にしたいと思っています」。
先輩たちが成し遂げた偉大な成果に最大限のリスペクトは払いながら、オレたちはオレたちにやれることを、最後までやり抜いてみせる。2024年の関東一が一歩ずつ上ってきた成長の階段の先には、まだまだ新しい景色へと続く扉が用意されているはずだ。


(取材・文 土屋雅史)
●第103回全国高校サッカー選手権特集
3年前のチームが残した全国4強という偉大な結果。なかなか思うような成績に届かなかったこの2年間の悔しい結果。勝利へのプレッシャー。敗退へのプレッシャー。良いプレーができるかどうかの不安。高校選手権はいろいろなものが圧し掛かってくる大会だということは十分すぎるほどわかっているけれど、選手たちはいつしか今目の前のピッチでできることを、確実に遂行する力を身に付けてきたのだ。
「もう一度『自分たちのやるべきことは何なのかな』ということを自分自身で考えた時に、『今できる最大のことを彼らはできるようになったんだな』と。だから、『オレが壊さない方がいいな』って。『もうやれているから大丈夫だ』と言って送り出したので、それでああだこうだ言っていたらウソになってしまうじゃないですか。『大丈夫って言ったんだから、大丈夫!』と辛抱強く椅子に座っておりました」(関東一高・小野貴裕監督)
指揮官の期待に応えた、逞しいウノゼロ勝利!第103回全国高校サッカー選手権東京都予選Aブロック2回戦準々決勝が26日に行われ、後半8分にDF福士琉斗(3年)が先制ゴールを挙げた関東一高は、多摩大目黒高の猛攻を跳ね返し続け、1-0で逃げ切りに成功。全国ベスト4まで駆け上がった100回大会以来、3大会ぶりとなる準決勝へとコマを進めている。
序盤からこの一戦へのみなぎるモチベーションを発揮したのは多摩大目黒。前線に置いたFW押切拓也(3年)とFWヘンリー公太(2年)をシンプルに使いつつ、右のMF高橋寛生(3年)、左のMF小松翔(3年)の両ウイングを高い位置に押し出したサイドアタックにも迫力が。中盤もアンカー気味に構えるMF木伏啓彰(2年)がバランスを取りながら、インサイドハーフのMF武田一志(3年)、MF吉越巧(3年)が前方へと関わり、ギアを上げるタイミングを図っていく。


高いキック精度を誇る多摩大目黒のキャプテン、DF中野結心
ただ、関東一は「最初は相手の方が勢いがあったので、それでちょっと押し込まれる時はあったんですけど、いったん乗り越えたら、前半の途中ぐらいからマイボールになってきたと思います」と福士が話したように、少しずつドイスボランチのMF佐々木蓮(2年)とMF田村優典(2年)がボールを動かし始め、ポゼッション率が上昇する。
ボール保持の割にはチャンスこそ作れなかったものの、ここにはチームとしての狙いがあった。「相手の出足を止めるために『ボールをちゃんと持つ』ということをやりたかったので、前半のやり方として点は来なかったですけど、ゲーム運びとしては相手の足を止めるというところでまずは良かったかなと思います」(小野監督)。キーマンとして捉えていた相手のインサイドハーフとウイングバックを動かすことには成功しつつ、最初の40分間はスコアレスで推移する。
後半に入ると、先にスコアを動かしたのは関東一。8分。右サイドの高い位置でボールを持った福士は、MF山口幸之助(3年)とのワンツーを経て中央へ切れ込むと、いったんは失いかけながらも目の前にこぼれてきたボールを左足でフィニッシュ。軌道は右スミのゴールネットへ転がり込む。
「1回ルーズボールになったんですけど、そこに自分が勢い良く突っ込んでいったら、ボールが来た感じです。興奮していたので、何が起きたかあまりわかっていないような状態でした。もう最高に気持ち良かったです」。この大会前から本格的にサイドバックへコンバートされたという背番号2が大仕事。1-0。関東一が1点のリードを手繰り寄せる。
ビハインドを負った多摩大目黒は、ロングスローや高い精度を誇るDF中野結心(3年)の正確なプレースキックも含めたセットプレーを中心に、ゴール前へシンプルに迫るアタックを打ち出し続け、28分には左サイドで高橋寛生が決定的なチャンスを迎えたものの、枠へ収めたシュートは「打った選手はブラインドの状態で見えなかったんですけど、出てきたボールに対してしっかり反応できるように構えていて、コースが正面付近だったのでしっかり弾くことができました」という関東一GK内海ジョシュア(3年)がビッグセーブ。同点ゴールは許さない。


関東一の守護神を任されているGK内海ジョシュア
31分は多摩大目黒。左サイドを運んだ吉越のシュートは枠の上へ。36分も多摩大目黒。中央やや左寄り、ゴールまで約25メートルの位置から中野が直接狙ったFKは枠の左へ。39分も多摩大目黒。高橋寛生のFKにDF川畠暖世(3年)が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。
「練習通りのパフォーマンスがチーム全体で出せて良かったですし、この大会は自分も結構ゾーンに入っていますね」と語るDFエバイェメウ賢人(3年)とDF茂木蓮音(1年)のセンターバックコンビに、ハイボールはほとんどキャッチで完結させていた内海の安定感も際立った関東一は、ゴールに強固な鍵を掛け続ける。


関東一の守備陣を束ねるディフェンスリーダー、DFエバイェメウ賢人
40+3分には関東一にビッグチャンス。右サイドを縦に持ち出したFW丘敦也(3年)のクロスに、キャプテンのDF岡崎礼暉(3年)が完璧なヘディングを枠内へ打ち込むも、多摩大目黒GK原田大輝(3年)が超ファインセーブで仁王立ち。守護神の意地。勝利の可能性を短い時間に繋いでみせる。
40+4分。多摩大目黒のラストチャンス。原田も前線へと駆け上がる中、高橋寛生のFKがエリア内へ送り込まれ、最後はDF高橋正陽(3年)が打ったシュートは、しかしクロスバーの上に外れると、それから少しあってタイムアップのホイッスルが吹き鳴らされる。
「この3年間は全国も遠くなっていて、そういう舞台に戻ってこれたということもそうですけど、ただただ西が丘に行けるのが嬉しかったです」(エバイェメウ)「ここを1つ超えようという想いでみんなでやっていたところもあるので、今日勝ったことはシンプルに嬉しかったです」(内海)。粘り強く戦った関東一が、難敵の多摩大目黒を振り切って、3年ぶりとなる西が丘の切符を手にする結果となった。
「自分たちが入学してきた時に見た景色と、この2年間というのは正直に言ってまったく違うものでした。でも、その舞台を見て入ったからこそ、自分たちもそこに行きたいという想いはずっと持っていたので、今日は全員の想いが一致して勝てたなと思っています」。
この日はキャプテンマークを巻いて奮闘した内海は、入学してからの時間についてこう振り返っている。今年の3年生は第100回大会の高校選手権で全国4強まで進出したチームを見て、関東一の門を叩いた世代。だが、1年時のインターハイこそチームは全国出場を掴んだものの、以降はどの大会でも都のベスト4に入ることもできず、苦しい時間を過ごしてきた。
「ここ何年間かを振り返ると、『もっと人のために』とか、いろいろ懸けてきちゃったところもありますし、ずっと結果が出ていなかった時間で『ああじゃない』『こうじゃない』というような、過度な要求を結構していたのかなと思ったんです。どうしても『選手権だから3年生が頑張らなくちゃ』とか、『アイツの分も頑張ろう』『オレがやらなきゃいけない』とか、よくあるじゃないですか。でも、今の子って『まず自分のことをちゃんとやりたい』というところで、その自分の役割がちゃんとできるようになったんですよ」(小野監督)
どうしても外から見られるハードルが上がったことで、自分たちで自分たちの手足を縛るような流れを醸成してしまっていたという反省が、指揮官の中には渦巻いていたという。ゆえに意識したのはベクトルをきちんと内側に向け直すこと。自分の役割をそれぞれがまっとうすることで、“11分の1”を過不足なく11人分揃えることが、何より大事だという考えにたどり着いた。
「今は自分たちらしいサッカーをやろうということで、相手のサッカーに付き合うのではなく、自分たちの持っているものをしっかり生かして出し切りたいなと思っているので、そこが一番チームとして成長したところだと思います」とは内海。この日の前半もあるいは消極的に見る向きもあるかもしれないが、関東一の選手たちは80分間をデザインした中で今やるべきことを遂行し、それを見事に結果に結び付けてみせたのだ。
次はいよいよセミファイナル。チームとしては3年ぶりの西が丘だが、今の選手たちにとっては初めてピッチを踏みしめる晴れ舞台。でも、もちろんやるべきことは変わらない。自分たちの持っているものをしっかり生かして、100パーセントの力を出し切るだけ。高校で本格的なサッカーに区切りを付けるというエバイェメウは、シンプルな言葉に強い想いを込める。「もうこれが最後の最後の大会なので、自分の持っている力をすべて出し切って、悔いのないような選手権にしたいと思っています」。
先輩たちが成し遂げた偉大な成果に最大限のリスペクトは払いながら、オレたちはオレたちにやれることを、最後までやり抜いてみせる。2024年の関東一が一歩ずつ上ってきた成長の階段の先には、まだまだ新しい景色へと続く扉が用意されているはずだ。


(取材・文 土屋雅史)
●第103回全国高校サッカー選手権特集


