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チームを最前線から照らし続けた「タイガー軍団のライトハウス」。前橋育英FW佐藤耕太が国立で示した3年間の確かな成長

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前橋育英高が誇るストライカー、FW佐藤耕太(3年=浦和レッズジュニアユース出身、左)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.13 選手権決勝 前橋育英高 1-1(PK9-8)流通経済大柏高 国立]

 自分の成長は、誰よりも自分が一番感じてきた。国立競技場で奪ったゴールの感触は、必ずこれからのキャリアを力強く支えてくれる。みんなで手にした日本一の思い出を胸に、新しいステージでもより大きく羽ばたいてやる。

「初戦からどんどんパフォーマンスが上がっていきましたし、この大人数の観衆の中でも、自分がこれぐらいできるということを証明できた大会だったのかなと思います。優勝できて良かったです」。

 前橋育英高(群馬)を最前線で牽引し続けた、15番の頼れるストライカー。FW佐藤耕太(3年=浦和レッズジュニアユース出身)は高校最後の晴れ舞台で、確かな爪痕を刻んでみせた。


「1つ1つのプレーでスタンドが沸いているのを見たら、何か楽しくなってきちゃって(笑)。どんどん乗っていけるような感じで、楽しかったです」。実に5万8347人の観衆を飲み込んだ国立ファイナル。ピッチに足を踏み入れた佐藤は、昂る気持ちを抑え切れない。

 前半30分。ビッグチャンスがやってくる。右サイドからDF瀧口眞大(2年)が蹴り込んだクロスへ、ニアに潜ってダイレクトでシュート。だが、軌道はゴールの右へ外れていく。

 自信はあった。この2年間はプレミアリーグのほとんどの試合に出場し、世代有数のディフェンダーたちと肌を合わせてきたことで、着実に力を付けてきた。「落ち着いて周りが見えるようになってきて、どこにスペースがあるかも、どこに味方がいるかも、わかってやれているので、相手が来てもそこまでプレッシャーを感じなくなったようなところはあります」。

 幅の広がったポストワークはこの世代でも有数のレベル。佐藤が時間を作ることで、その周囲をFWオノノジュ慶吏(3年)が、MF黒沢佑晟(3年)が、MF平林尊琉(2年)が泳ぎ回り、攻撃に厚みを加えていく。その存在感は『タイガー軍団のライトハウス』と言っていいだろう。

 押し込まれる展開の中で奮闘していた佐藤だが、後半42分に交代でピッチを後にする。「相手のヒザが自分のヒザに入ってしまったような感じでしたね。もう自分が出続けるより、他の選手が出たほうがいいかなと思いました」。以降はチームメイトに勝利を託し、ベンチからピッチを見つめ続ける。

 緊迫のPK戦も楽しむことができたという。「自分は蹴っていないので何とも言えないですけど、みんな吹っ切れたように蹴っていたので、そこまで緊張感は感じていないのかなと思いましたね。藤原(優希)が止めてくれると思っていたので、結構安心して見ていました」。

 10人目までもつれ込んだPK戦は、GK藤原優希(3年)が止め、MF柴野快仁(2年)が決めて、決着が付く。「足は痛かったですけど、本当に嬉しくて、嬉しくて、そんなのは忘れて飛び出していました。まだ実感があまりない感じです。『アレは夢だったのかな?』って(笑)」。日本一の景色は、とにかく最高だった。



 佐藤にとって今大会のハイライトは、間違いなく準決勝の東福岡高(福岡)戦だ。1点ビハインドで迎えた後半3分。相手DFにプレッシャーを掛け、かっさらったボールをゴールにねじ込み、同点弾を挙げてみせると、その6分後にはオノノジュからのパスを巧みに収め、美しい軌道を描くシュートで逆転ゴールまで奪ってしまう。

 実は準決勝の前日練習で、佐藤はこんなことを話していた。「今大会ではファーストタッチのミスがあって、そこでシュートを打ち切れていないところもあるので、そういうちょっとしたところを修正したいと思っています」。

 ファーストタッチが完璧に決まった一撃に、「とにかく力を抜いていたというか、肩に力が入っていなかったので、良い感じでトラップとシュートに持っていけたと思います。修正できて良かったですね。あんなの、初めて決めましたよ」と笑顔を浮かべる。この2シーズンで積み重ねてきたものが、国立での2ゴールには過不足なく詰まっていた。

「去年の選手権は緊張で何もできなかった部分があったので、そういった意味で成長を感じられる大会だったのかなと思いますね。3回戦ぐらいまでは少し緊張して、硬い部分もあったんですけど、試合を重ねるごとに、1試合1試合楽しんでやれるようになったので、そういったところでも成長できたかなと思っています」。6試合を戦い抜いた高校最後の大会で、自信を深めたことは想像に難くない。

 卒業後は高校の先輩に当たる2人のストライカー、守屋練太郎山本颯太も進学している神奈川大で、さらなる研鑽を積むことになる佐藤が強く意識するのは、一足先にプロ入りを果たすことになった、小学生時代からの“盟友”の存在だ。

「トシとはジュニアのころからずっと一緒にやってきたので、トップに昇格したのは嬉しいですけど、トシがそういうステージに行くなら、自分もちゃんとプロの世界に行きたいなと思うところはあります。身近にいい目標がいるので、そこは意識しますね」。

 佐藤とは浦和レッズジュニアとジュニアユース時代のチームメイトだった“トシ”こと照内利和は、ユースからのトップチーム昇格を勝ち獲り、今年からJリーガーとしてのキャリアを歩み出す。いつかは追い付き、追い越すためにも、次の4年間で今まで以上の努力を積み上げてみせる。

 この2年のタイガー軍団を一番前から明るく照らし続け、全国の頂へとたどりついた努力のストライカー。“サトコウ”は国立でのゴラッソを超える結果を追い求め、新たな大学サッカーの世界へと飛び込んでいく。



(取材・文 土屋雅史)

●第103回全国高校サッカー選手権特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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