[MOM5387]帝京長岡MF稲垣純(3年)_指揮官から与えられたタスクは「長を止めてこい!」 世代屈指のドリブラーをマンマークで封じた仕事人が実感する「サッカーができる喜び」
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 選手権3回戦 帝京長岡高 1-0 昌平高 浦和駒場]
託された役割は、プロ入りが内定している大会屈指のアタッカーをとにかく止めること。もちろん簡単なタスクではないけれど、自分にもこの3年間で必死に積み上げてきたものがある。やってやる。止め切ってやる。信じてくれる監督やチームメイトのために。そして、サッカーを諦めなかった自分自身のために。
「監督には『長を止めてこい!』ということと、『1対1で絶対に剥がされるな!』と言われていたので、とにかく自分の長所である粘り強い守備をやろうと思っていました。1,2回戦はあまり調子が良くなかったんですけど、今日は少し良いプレーができたかなと思います」。
プレミア勢対決をウノゼロ勝利で制した、帝京長岡高(新潟)の信頼されるハードワーカー。MF稲垣純(3年=FC東京U-15むさし出身)が攻守で果たした大仕事が、チームを5年ぶりとなる全国8強へと逞しく導いた。
2回戦の高川学園高戦は、80分まで2点のビハインドを負いながら、アディショナルタイムの2発で追い付き、PK戦の末にこのラウンドへと勝ち上がってきた帝京長岡。次なる相手は同じプレミアリーグ勢の昌平高(埼玉)。多彩なタレントを揃えた攻撃に特徴を持つ難敵だ。
チームを率いる古沢徹監督は、相手を分析する中で思い切った策を講じる。高校年代でも一、二を争うドリブラーであり、得点力も兼備する川崎フロンターレ加入内定の長璃喜に、マンツーマンでマークを付けるというものだ。
白羽の矢が立ったのは、右ウイングバックを務める稲垣。「ウチの中でも守備センスはトップクラスなので、一番いい相手には、一番いい守備の選手を当ててという考えでした」。指揮官は『長を止めてこい!』という言葉とともに、背番号6を勝負のピッチへ送り出す。
「メチャクチャ速かったです」と苦笑気味に振り返ったように、一度スピードに乗せてしまったら、ファール以外で止めるのはかなり難しい。基本は左サイドに張り出してはいるものの、中央にも、時には右サイドにも動き回る長に対し、ある程度ポジションを崩しても、稲垣はとにかくターゲットを監視し続ける。
一方で、攻撃時には右サイドを駆け上がるというタスクも任されている。「守る時は長くんをずっとマークしていたんですけど、攻めになったら右がいなくなってしまうので、そこも自分の運動量を生かしてやろうと思っていました」。攻撃でも、守備でも、ピッチを文字通り縦横無尽に走り回っていく。


その攻撃性能を輝かせたのは前半15分。右サイドの深い位置にMF中澤昊介(3年)が侵入した流れから、稲垣はフルスプリントでインナーラップを敢行。中澤の高速パスをスムーズなトラップで前へ運び、そのまま丁寧にクロスを上げ切ると、粘り強く収めたMF樋口汐音(3年)のシュートがゴールネットを揺らす。
「1,2回戦は縦に行けなかったので、自分の中ではしっかりクロスを上げ切ろうと思っていました」という右ウイングバックが、アシストで先制点を演出。攻撃面でもきっちりと結果を出してみせる。
後半に入ると、長は前半よりも広範囲にポジションを取り、何とかボールを受けようと腐心するが、“マンマーカー”の集中力は途切れない。「長くんはとにかくスピードがあって、パスを出された後にマークを外されることがあると思ったので、そこには気を付けて守備していました」。一瞬でも気を抜いたらやられてしまうことは、肌を合わせている自分が一番よくわかっている。丁寧に、慎重に、自らの役割と向き合い続ける。
終盤には長に2度の決定機を作られたものの、どちらもGK仲七璃(2年)が好守で阻むと、3分のアディショナルタイムののち、奮闘した6番の耳にタイムアップの笛の音が届く。
「純は1対1に長けた能力がありますし、運動量も凄く豊富なので、そこをしっかり出してくれて、攻撃にもちゃんと参加してアシストもしてくれたので、本当に頼もしい存在だと思います」と語ったのはキャプテンマークを巻くDF西馬礼(3年)。相手のキーマン封じに、アシストまで記録した稲垣のいぶし銀の働きが、駒場のピッチで確かな輝きを放った。


ここまでの3年間は、入学前に思い描いていたような日々を過ごしてきたわけではない。度重なる脳震盪に見舞われたことで、2年の夏以降は1年近く公式戦に出場することが叶わず、「1回サッカーをやめようかなと考えた時もありました」と正直な気持ちを吐露している。
だが、苦しい時間を過ごす中で、同じようにプレーできない状況に置かれた“親友”の存在が、稲垣のサッカーに対する情熱を再燃させる。「ヒザの前十字靭帯を切ってしまった渡邉颯はプライベートでもずっと仲が良くて、ずっと一緒にいるんですけど、颯が自分の心の拠りどころというか、支えになった人かなと思います」。
大ケガでシーズンをほとんど棒に振り、今大会のメンバー入りも果たせなかった渡邉には、昌平戦の前にもメッセージを送られたという。「今日も試合前に『頼むぞ』と言われたので、『やってやろう』と思いましたね」。
「やっぱり周りの仲間とか家族、監督もそうですけど、いろいろな人に支えてもらったおかげで今日のピッチに立てているのかなという実感はあります」。改めてサッカーができる喜びを、誰よりも強く実感している自負もある。だからこそ、渡邉をはじめ、試合に出られなくても、スタンドから声援を送り続けてくれる3年生のためにも、ピッチの上では100パーセントを出し切る覚悟なんて、もうとっくに定まっている。
準々決勝の相手は尚志高(福島)に決まった。夏のインターハイでも同じ準々決勝で激突し、その際には0-0からPK戦で敗れている因縁の相手。当時はメンバー外だった稲垣も、改めて到来したリベンジの機会に気持ちは高まっている。
「自分はインターハイの時はまだ試合ができていなくて、尚志がどのぐらいの強さだったのかはわからないですけど、しっかり倒したいと思いますし、次に勝たないと国立にも行けないので、リベンジできるように頑張ります」。
高校3年間の、そしてここまで日常のすべてを捧げてきた、サッカーキャリアの集大成。攻撃でも、守備でも、託された役割は完璧にこなしてみせる。悲願の全国制覇を見据える帝京長岡を、力強く支える必殺仕事人。緑のピッチを全力で駆け抜ける稲垣純から、準々決勝も目が離せない。


(取材・文 土屋雅史)
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[1.2 選手権3回戦 帝京長岡高 1-0 昌平高 浦和駒場]
託された役割は、プロ入りが内定している大会屈指のアタッカーをとにかく止めること。もちろん簡単なタスクではないけれど、自分にもこの3年間で必死に積み上げてきたものがある。やってやる。止め切ってやる。信じてくれる監督やチームメイトのために。そして、サッカーを諦めなかった自分自身のために。
「監督には『長を止めてこい!』ということと、『1対1で絶対に剥がされるな!』と言われていたので、とにかく自分の長所である粘り強い守備をやろうと思っていました。1,2回戦はあまり調子が良くなかったんですけど、今日は少し良いプレーができたかなと思います」。
プレミア勢対決をウノゼロ勝利で制した、帝京長岡高(新潟)の信頼されるハードワーカー。MF稲垣純(3年=FC東京U-15むさし出身)が攻守で果たした大仕事が、チームを5年ぶりとなる全国8強へと逞しく導いた。
2回戦の高川学園高戦は、80分まで2点のビハインドを負いながら、アディショナルタイムの2発で追い付き、PK戦の末にこのラウンドへと勝ち上がってきた帝京長岡。次なる相手は同じプレミアリーグ勢の昌平高(埼玉)。多彩なタレントを揃えた攻撃に特徴を持つ難敵だ。
チームを率いる古沢徹監督は、相手を分析する中で思い切った策を講じる。高校年代でも一、二を争うドリブラーであり、得点力も兼備する川崎フロンターレ加入内定の長璃喜に、マンツーマンでマークを付けるというものだ。
白羽の矢が立ったのは、右ウイングバックを務める稲垣。「ウチの中でも守備センスはトップクラスなので、一番いい相手には、一番いい守備の選手を当ててという考えでした」。指揮官は『長を止めてこい!』という言葉とともに、背番号6を勝負のピッチへ送り出す。
「メチャクチャ速かったです」と苦笑気味に振り返ったように、一度スピードに乗せてしまったら、ファール以外で止めるのはかなり難しい。基本は左サイドに張り出してはいるものの、中央にも、時には右サイドにも動き回る長に対し、ある程度ポジションを崩しても、稲垣はとにかくターゲットを監視し続ける。
一方で、攻撃時には右サイドを駆け上がるというタスクも任されている。「守る時は長くんをずっとマークしていたんですけど、攻めになったら右がいなくなってしまうので、そこも自分の運動量を生かしてやろうと思っていました」。攻撃でも、守備でも、ピッチを文字通り縦横無尽に走り回っていく。


その攻撃性能を輝かせたのは前半15分。右サイドの深い位置にMF中澤昊介(3年)が侵入した流れから、稲垣はフルスプリントでインナーラップを敢行。中澤の高速パスをスムーズなトラップで前へ運び、そのまま丁寧にクロスを上げ切ると、粘り強く収めたMF樋口汐音(3年)のシュートがゴールネットを揺らす。
「1,2回戦は縦に行けなかったので、自分の中ではしっかりクロスを上げ切ろうと思っていました」という右ウイングバックが、アシストで先制点を演出。攻撃面でもきっちりと結果を出してみせる。
後半に入ると、長は前半よりも広範囲にポジションを取り、何とかボールを受けようと腐心するが、“マンマーカー”の集中力は途切れない。「長くんはとにかくスピードがあって、パスを出された後にマークを外されることがあると思ったので、そこには気を付けて守備していました」。一瞬でも気を抜いたらやられてしまうことは、肌を合わせている自分が一番よくわかっている。丁寧に、慎重に、自らの役割と向き合い続ける。
終盤には長に2度の決定機を作られたものの、どちらもGK仲七璃(2年)が好守で阻むと、3分のアディショナルタイムののち、奮闘した6番の耳にタイムアップの笛の音が届く。
「純は1対1に長けた能力がありますし、運動量も凄く豊富なので、そこをしっかり出してくれて、攻撃にもちゃんと参加してアシストもしてくれたので、本当に頼もしい存在だと思います」と語ったのはキャプテンマークを巻くDF西馬礼(3年)。相手のキーマン封じに、アシストまで記録した稲垣のいぶし銀の働きが、駒場のピッチで確かな輝きを放った。


ここまでの3年間は、入学前に思い描いていたような日々を過ごしてきたわけではない。度重なる脳震盪に見舞われたことで、2年の夏以降は1年近く公式戦に出場することが叶わず、「1回サッカーをやめようかなと考えた時もありました」と正直な気持ちを吐露している。
だが、苦しい時間を過ごす中で、同じようにプレーできない状況に置かれた“親友”の存在が、稲垣のサッカーに対する情熱を再燃させる。「ヒザの前十字靭帯を切ってしまった渡邉颯はプライベートでもずっと仲が良くて、ずっと一緒にいるんですけど、颯が自分の心の拠りどころというか、支えになった人かなと思います」。
大ケガでシーズンをほとんど棒に振り、今大会のメンバー入りも果たせなかった渡邉には、昌平戦の前にもメッセージを送られたという。「今日も試合前に『頼むぞ』と言われたので、『やってやろう』と思いましたね」。
「やっぱり周りの仲間とか家族、監督もそうですけど、いろいろな人に支えてもらったおかげで今日のピッチに立てているのかなという実感はあります」。改めてサッカーができる喜びを、誰よりも強く実感している自負もある。だからこそ、渡邉をはじめ、試合に出られなくても、スタンドから声援を送り続けてくれる3年生のためにも、ピッチの上では100パーセントを出し切る覚悟なんて、もうとっくに定まっている。
準々決勝の相手は尚志高(福島)に決まった。夏のインターハイでも同じ準々決勝で激突し、その際には0-0からPK戦で敗れている因縁の相手。当時はメンバー外だった稲垣も、改めて到来したリベンジの機会に気持ちは高まっている。
「自分はインターハイの時はまだ試合ができていなくて、尚志がどのぐらいの強さだったのかはわからないですけど、しっかり倒したいと思いますし、次に勝たないと国立にも行けないので、リベンジできるように頑張ります」。
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