心に刻んできた「ラインの外に出てしまったボール」の景色。大津MF福島京次が3年間で手にした「苦しい時にどう振る舞うのか」の答え
[1.4 選手権準々決勝 大津高 1-2 流通経済大柏高 浦和駒場]
どんなものをチームに残せるのか、どんな姿勢を後輩に見せられるのか、ずっと考えてきた。一番高いところからの景色には届かなかったけれど、全力でやり切ったから悔いはない。信じられないような数の観客の前でプレーする晴れ舞台は、やっぱり最高だった。
「結果的に日本一は獲れなかったですけど、このチームに残せたものもたくさんあるのかなって。自分たちも先輩にいろいろな経験をさせてもらったので、全国のこういう強いチームとやって、後輩たちにその試合を直に経験させることができたことは良かったのかなと思います」。
2025年の大津高(熊本)をしなやかなリーダーシップで引っ張ってきた、背番号10のプレーメイカー。MF福島京次(3年=ロアッソ熊本ジュニアユース出身)は心も身体も鍛え抜かれたこの3年間の経験を糧に、フットボーラーとしてのさらなる飛躍を期す。
流通経済大柏高(千葉)と対戦した準々決勝。夏のインターハイでも、昨年度の選手権でも顔を合わせた因縁の相手との一戦は、「やりたいことはできて、進めたい流れでしっかり進められたので、そこは良かったかなと思います」と福島が振り返るように、大津は悪くないリズムでゲームを立ち上げる。
7分にはDF渡部友翔(2年)とのワンツーから、福島が放ったミドルは枠を外れるも、この試合への強い意欲をファーストシュートに滲ませると、流れそのままに21分にはMF山本翼(2年)のゴールで先制点を奪う。ところが、以降はやや押し込まれる時間が続き、前半のうちに逆転を許す展開に。1点のビハインドを負って、最初の40分間は終了する。
福島は1年前の苦い思い出を心に刻んで、ここまで戦ってきた。「去年の選手権の流経戦は、最後に自分に当たったボールがラインの外に出てしまって、それで負けたので、このチームが立ち上がった時から、流経へのリベンジは考えてきました」。インターハイの準決勝では勝利を収めたものの、選手権の借りは選手権でしか返せない。もう一度気合を入れ直し、背番号10は勝負のピッチへ駆け出していく。
後半もボールを握り、チャンスの芽までは作り出すものの、決定機はなかなか訪れない。「ちょっとボールを持った選手が孤立したり、フリーで走った選手がいても、自分でやってしまったりというプレーが多かったかなと思うので、流経の圧を破るにはまだまだ足りない部分はあったと思います」と福島。時間は刻一刻となくなり続ける。
77分。ピッチサイドの交代ボードに“10”の数字が浮かび上がる。「攻撃の枚数を増やすうえで、ボランチのどちらかを削らないといけないという中で、(福島)悠士の方が少しドシッとあそこに構えられるので、とても心苦しかったですけど、点を獲りに行かないとというところでカードを切りました」という山城朋大監督は、福島とMF有村颯太(3年)のスイッチを決断する。




「『えっ?』とは思いましたけど、チームが勝つことが大事なので、しっかり走って外に出て、そこからはチームのみんなにやってくれと願うしかなかったです」。福島は全速力でピッチサイドへ戻り、仲間にすべてを託してピッチを見つめ続ける。だが、最後まで次の1点は生まれず。1-2。大津が1年越しで追い掛けた選手権でのリベンジは、叶わなかった。
スタンドに向かい、応援団のみんなの顔を見たら、もう我慢できなかった。「去年も同じ光景を見たので、その時のことを思い出しましたし、もちろん悔しいという想いもありましたけど、何も感じられないような心境でした」。あいさつが終わると、大津を支えてきたキャプテンは、涙がこぼれないように、ユニフォームでそっと目元をぬぐった。






「夏はかなり押し込まれての勝ちでしたけど、今回は内容でも勝てると信じられるぐらい準備もしてきましたし、今日はしっかりやりたいサッカーもできたので、流経さんに負けたなら仕方がないかなという感じです」。取材エリアに現れた福島は、穏やかな顔つきで終わったばかりの試合を振り返る。
プレミアリーグ王者に輝いた前年度を受けて、小さくない重圧を感じながらスタートした今年のチームを束ねてきたからこそ、この1年でグループが着実に成長してきた手応えも、十分に得てきたという。
「最初は去年から出ている選手が(村上)慶しかいなくて、不安からの始まりだったんですけど、サニックス杯で優勝したり、プレミアでも自分たちがやりたいサッカーがしっかりできて、自信を持って臨んだインターハイでも準優勝することができましたし、結果的にこうやって流経さんとやり合えるようなチームになったので、みんなで成長できたと思います」。
1年前は無力感を突き付けられた、この選手権のステージ。レギュラーとして、キャプテンとして臨んだ最後の冬は、やっぱり最高だった。「選手権、メッチャ楽しかったですね。もう1つ1つのプレーでワーッと沸くので、それがもう本当に楽しかったです」。12,176人の観衆の中でプレーした、この日の80分間で味わったさまざまな感情は、これからも絶対に忘れない。
卒業後は兵庫の甲南大に進学し、改めてプロサッカー選手を目指す4年間を過ごすことになる。「この高校で礼儀の部分とか、『苦しい時にどう振る舞うのか』ということを学んだので、苦しい時でも簡単に逃げるのではなくて、立ち向かっていくことの大事さを自分の中でも強く持って、プロに向けての準備をしっかりしていきたいと思います」。
苦しいことも、逃げ出したいことも、たくさんあったけれど、それでも今とちゃんと向き合い続けてきたから、高校サッカーを全力でやり切ったと胸を張って言える。今シーズンの大津の中盤に君臨してきた、10番のキャプテン。福島京次は自分自身の未来を信じて、次の新たな航海へと力強く漕ぎ出していく。


(取材・文 土屋雅史)
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「結果的に日本一は獲れなかったですけど、このチームに残せたものもたくさんあるのかなって。自分たちも先輩にいろいろな経験をさせてもらったので、全国のこういう強いチームとやって、後輩たちにその試合を直に経験させることができたことは良かったのかなと思います」。
2025年の大津高(熊本)をしなやかなリーダーシップで引っ張ってきた、背番号10のプレーメイカー。MF福島京次(3年=ロアッソ熊本ジュニアユース出身)は心も身体も鍛え抜かれたこの3年間の経験を糧に、フットボーラーとしてのさらなる飛躍を期す。
流通経済大柏高(千葉)と対戦した準々決勝。夏のインターハイでも、昨年度の選手権でも顔を合わせた因縁の相手との一戦は、「やりたいことはできて、進めたい流れでしっかり進められたので、そこは良かったかなと思います」と福島が振り返るように、大津は悪くないリズムでゲームを立ち上げる。
7分にはDF渡部友翔(2年)とのワンツーから、福島が放ったミドルは枠を外れるも、この試合への強い意欲をファーストシュートに滲ませると、流れそのままに21分にはMF山本翼(2年)のゴールで先制点を奪う。ところが、以降はやや押し込まれる時間が続き、前半のうちに逆転を許す展開に。1点のビハインドを負って、最初の40分間は終了する。
福島は1年前の苦い思い出を心に刻んで、ここまで戦ってきた。「去年の選手権の流経戦は、最後に自分に当たったボールがラインの外に出てしまって、それで負けたので、このチームが立ち上がった時から、流経へのリベンジは考えてきました」。インターハイの準決勝では勝利を収めたものの、選手権の借りは選手権でしか返せない。もう一度気合を入れ直し、背番号10は勝負のピッチへ駆け出していく。
後半もボールを握り、チャンスの芽までは作り出すものの、決定機はなかなか訪れない。「ちょっとボールを持った選手が孤立したり、フリーで走った選手がいても、自分でやってしまったりというプレーが多かったかなと思うので、流経の圧を破るにはまだまだ足りない部分はあったと思います」と福島。時間は刻一刻となくなり続ける。
77分。ピッチサイドの交代ボードに“10”の数字が浮かび上がる。「攻撃の枚数を増やすうえで、ボランチのどちらかを削らないといけないという中で、(福島)悠士の方が少しドシッとあそこに構えられるので、とても心苦しかったですけど、点を獲りに行かないとというところでカードを切りました」という山城朋大監督は、福島とMF有村颯太(3年)のスイッチを決断する。




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スタンドに向かい、応援団のみんなの顔を見たら、もう我慢できなかった。「去年も同じ光景を見たので、その時のことを思い出しましたし、もちろん悔しいという想いもありましたけど、何も感じられないような心境でした」。あいさつが終わると、大津を支えてきたキャプテンは、涙がこぼれないように、ユニフォームでそっと目元をぬぐった。






「夏はかなり押し込まれての勝ちでしたけど、今回は内容でも勝てると信じられるぐらい準備もしてきましたし、今日はしっかりやりたいサッカーもできたので、流経さんに負けたなら仕方がないかなという感じです」。取材エリアに現れた福島は、穏やかな顔つきで終わったばかりの試合を振り返る。
プレミアリーグ王者に輝いた前年度を受けて、小さくない重圧を感じながらスタートした今年のチームを束ねてきたからこそ、この1年でグループが着実に成長してきた手応えも、十分に得てきたという。
「最初は去年から出ている選手が(村上)慶しかいなくて、不安からの始まりだったんですけど、サニックス杯で優勝したり、プレミアでも自分たちがやりたいサッカーがしっかりできて、自信を持って臨んだインターハイでも準優勝することができましたし、結果的にこうやって流経さんとやり合えるようなチームになったので、みんなで成長できたと思います」。
1年前は無力感を突き付けられた、この選手権のステージ。レギュラーとして、キャプテンとして臨んだ最後の冬は、やっぱり最高だった。「選手権、メッチャ楽しかったですね。もう1つ1つのプレーでワーッと沸くので、それがもう本当に楽しかったです」。12,176人の観衆の中でプレーした、この日の80分間で味わったさまざまな感情は、これからも絶対に忘れない。
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