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リハビリ中も「W杯のレベルはこんなんじゃダメだと…」日本代表DF町田浩樹インタビュー 育成年代に伝えたい「常に目標を意識すること」(後編)

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DF町田浩樹(ホッフェンハイム)

前編から続く

―ちなみに冨安選手、毎熊選手とはリハビリも一緒にしていたんですね。
「JISS(国立スポーツ科学センター)で一緒にやっていました。トミは最近、復帰が進んで来る回数は減ったんですが、一緒にやっていましたし、マイクとは(取材時点で)毎日一緒にいます。また他の競技でも同じ前十字をやった選手がたくさんいて、僕はまだ2回目なんですが、スキーの選手では4回も切っている選手もいて、そういった選手と意見交換をしたり、このリハビリは良かったよとか、ここは痛くなるからこうしたほうがいいよという話をしたりできるのも良い機会になっています」

―すごく良い話です。町田選手はさきほどの治療法に関しても、自分の身体に向き合いつつ、さらに外からの情報を取り入れることにも積極的ですよね。プロ生活を並行して早稲田大の人間科学部通信教育課程を卒業していますが、そのあたりのキャリアも影響しているのでしょうか。
「確かに早稲田でトレーニング理論なども多少は勉強していたんですけど、そもそもそういう学術論文を読むのが好きなんですよね。たとえば膝の話で言うと、さっきお話ししたように膝蓋腱から移植したんですが、膝蓋腱から移植したら腱は当然細くなるじゃないですか。だからどうやったら太くなるのかなと思って学術論文を読んで、コラーゲンを何週間以上こうやって摂ると太くなるみたいな論文が出てきたので、まずはコラーゲンを摂ろうと。で、コラーゲンは何と一緒に摂るといいかと言ったら、ビタミンCと一緒に摂ったほうがいいと。そういった少しでも良いものがあれば取り入れるというのはずっとやっていますね」

―Xのアカウントで、前十字靭帯のケガの文脈で「iPS細胞など再生医療の進化により、数十年後にはまた違った未来が待っている気がしています」という投稿をしていたことも印象的でした。そのあたりも自分の身体を大事にするだけでなく、知的好奇心あってこそですよね。
「まず再生医療にはすごく注目しています。実際に20年前、30年前までは前十字靭帯を一回切ったら競技復帰するのは難しいと言われていたくらいだったと思いますが、今はそういう意味でも医療の進化がありますよね。膝蓋腱を取って手術をするのも自分が右足をケガした8年前はあまり推奨されておらず、やっぱり痛くなるよねという風潮だったんですが、今はこっちのほうが主流になりつつある。そうやって医療はここからもどんどん進むと思うので、そこにはすごく注目していますし、自分自身も新しいことは取り入れていこうとは思っています。そのあたりは僕自身、自分の身体を使って実験をしているという部分もありますね(笑)。もちろん新しいものは賛否もあるので、まずはしっかり情報を仕入れていくことが大事だと思いますし、そこで試してみて自分の身体で良くなったら他の人にも勧められますし、今後も試せるものは試していこうと思っています」


―このインタビューは育成年代の選手にも読んでもらいたいと思っているのですが、医療者や学術論文からも情報収集する姿勢は模範になるのではないかと思います。また若い選手向けにという点で言えば、町田選手はU-20W杯の時期にケガをしていましたし、東京五輪などの大きな大会でも悔しさを感じてきた選手だと思います。同じような境遇の選手にアドバイスを送るなら、どのようなことを伝えたいですか。
「まずはそこが終わりじゃないよ、ということですね。U-20W杯は右足の前十字をやったタイミングでしたし、東京五輪も目標にはしていたけど5分間しか出られずという結果でしたが、いまこうして代表で戦えるようになったのはU-20W杯や五輪もいずれ通過点になったということだと思います。だから一喜一憂はしてほしくないですね。僕もケガに多少は落ち込んだりしましたけど、結局はもう起こってしまったことなので、そこからどうリカバリーするかを考えるべきだと思っています。大きな大会を前にケガをしてしまう選手もいると思いますが、まずはそこがゴールじゃないよと伝えたいですね。もっと長いスパンで自分の未来を見つめてほしいなと思います」

―そのように考えられるようになったのは後天的な努力ですか。
「性格はありますね。楽観的なので(笑)。ただすごく楽観的な性格はあるんですが、やっぱり今回のW杯に関してはそれだけでなく、より情熱を持って目指している部分もあります。W杯予選でこれだけ試合に関わってきて、メンバーも東京五輪からずっと一緒にやっているメンバーがほとんどで、だからこそ今回のW杯には絶対に出たいという強いものを持っていますし、今までの楽観的な感じとは違うなと思っています」

―W杯という大会の価値を感じるお話です。
「予選でその過程を戦ってきたという点では、僕はそもそもW杯が決まった試合にもケガで出ていなくて、そこに立っていられなかった悔しさもありますし、W杯にはまだ出たことがないので経験してみたいという気持ちがあります。あと(内田)篤人さんがブラジルW杯の時ですかね。膝のケガで多分ギリギリの状態でやっていたと思うんですが、それだけ身を粉にしてまで出る価値のある大会なんだなというのを感じたので、どうしても経験したいなと思っています」

―率直にW杯はどのような大会に位置付けていますか。
「もう頂点、サッカーの頂点みたいなものだと思っていますね。もちろんUEFAチャンピオンズリーグもサッカーをしている人なら誰もが特別なものだと思いますが、チャンピオンズリーグは毎年あって、W杯は4年に一度なので、時期的に限られているという特別感もやっぱり違うなと思います」

―それだけの大会だからこそ、このケガも通過点にしてリハビリに取り組んでいると。おそらく町田選手と同様に大きな大会を控えたタイミングでケガをして、同じような思いを持つ育成年代の選手もいると思います。その時に大事なのはどのような心掛けでしょうか。
「常にその目標を意識することだと思いますね。常にその目標を頭に浮かべておくこと、常に考えておくことがすごく大事だと思います。脳はその時に意識したものが目に入ってきたり、耳に入ってきたりという機能があるというのを誰かが言っていたんですが、たしかに目標をイメージしてトレーニングしたり、日常生活を過ごすことで、それに活かせる何か些細なことを感じ取れたりすることもありますよね。だから普段の練習から、日常生活から目標を意識して取り組んでほしいと思います。僕も実際、リハビリ中は『W杯のレベルはこんなんじゃダメだ』と自分に発破かけながらやっているので、同じように取り組んでほしいなと思います」


―最後に気になっていたことをいくつか聞かせてください。まずは9月、10月の代表戦では守備に課題が出ていたなか、ファンの間から「町田がいれば」という声も多くありました。おそらく耳に入る部分もあったと思いますが、どう捉えていますか。
「まずは嬉しいですね。そのピッチに立てていない悔しさもありますが、今までの自分の代表戦のパフォーマンスを評価してくれる人が一定数いてくれるのはすごく嬉しいですし、ファンの方々だけじゃなく、他の選手だったり、監督だったり、コーチだったり、そういうふうに言ってくださることがあって、今までやってきたことが間違いじゃなかったんだなと感じています」

―その中では少し注目を浴びた、9月シリーズのアメリカ戦後のX投稿もありました。この件についても聞いてもいいですか。
「もちろんです」

―率直にどのような思いだったんでしょう。
「まずはチーム批判や監督批判という意図ではなかったことは伝えておきたいです。思いとしてはまず見ていてムズムズしたというか、おそらく見ている人も同じように楽しくなかった、ワクワクしなかったと思うので、普通にワクワクしなかったなという思いだったというのが本音です。僕もサッカーをしている中で、スポーツはエンターテインメントの一部だと思っているので、見ている人を楽しませなきゃいけない。勝利で楽しませるのか、内容で楽しませるのか、戦っている姿で楽しませるのか、いろいろな方法はあると思うんですが、楽しませることが大事なことだと思っています。あの時は見ていた一人としてワクワクを感じられなかったのであのように発信しました。そうしたら監督批判と書かれてしまい、そうじゃないんだけどなと思いながら……。ただ、受け取る人にはいろんな受け取り方があるので、今はSNSの勉強、ネット世論の性質についてしっかり勉強をしようと思い、いろんな本を読んだりしています」

―そこで本を読もうとするのも町田選手らしいです。ベルギーでの試合を見ていると、ピッチ上の振る舞いにはかなり気を払っている印象があったので、エンターテインメントの一部という感覚には納得感があります。
「そこまであの投稿に意図を込められていたかは分かりませんが、たしかに僕はピッチ内では結構アクトすると言いますか、演じることは多いですね。わざと相手チームに怒鳴りに行ったりもしますし、自分が失点に絡んだ時も強気に演じることはあります。でもあの投稿はそこまでの意図があって発したわけではなく、本当にワクワクが足りなかったなというものだったので、そこはまずピッチで見せられるようにしっかりリハビリに取り組んでいこうと思います」


―ちなみにリハビリ中は鹿島アントラーズの躍進も刺激になっているんじゃないでしょうか。
「まだタイトルを取ったわけじゃないのでここからですが、僕が鹿島にいる期間は僕がピッチに立ってタイトルをもたらすことができなかったので、そこはずっと僕の宿題ですね。いつかタイミングが合えば、鹿島に戻ってタイトルを掲げたいなという思いはずっとあります。ただ今年は国内だと9年ぶりですかね。一回タイトルを取ると、見える景色も変わってくるというのは僕も感じたところで、ベルギーではスーパーカップを入れれば3つのタイトルを取りましたが、クラブとしても本当に久々だったのでその経験からも分かります。なので、ぜひ今年はタイトルを取ってほしいですし、いまは純粋に応援しています」

(インタビュー・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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