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初降格の危機から這い上がってきた横浜FM…ピッチ内外で束ねる主将・喜田拓也の統率術「うるせえと思われてもいい。みんなも聞く耳を持っている」

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ダメ押しゴールのMF天野純を称えるMF喜田拓也(写真右)

[10.25 J1第35節 横浜FM 3-0 広島 日産ス]

 シーズン中盤まで最下位に沈んでいた名門クラブが、ついにJ1残留争いから大きく這い上がった。横浜F・マリノスは25日、サンフレッチェ広島に3-0で圧勝。前節・浦和戦(◯4-0)に続いて大量得点差での完封勝利を収め、シーズン3試合を残して降格圏18位・横浜FCとの勝ち点差を5ポイントに広げた。

 鬼門とみられた大勝後の一戦にも、気の緩みは感じさせなかった。

 横浜FMは今季、クラブ史上初のJ2降格がちらつく低迷の中でも2点差以上の完封勝利を4度記録。ところが続いて行われた試合には4試合とも敗れており、大勝による良い流れを持続できないどころか、そこから再び停滞期に突入するというサイクルを続ける形で浮上のきっかけを逃し続けていた。

 ところがこの日は立ち上がりから明確な意思統一と高い集中力で上位の広島と対峙。その中心にいたのがピッチ内外でチームを束ねる主将MF喜田拓也の存在だった。

「それ(大勝後の苦戦)にはいろんな要因があるとは思っていましたけど、そこは自分もうまくチームを導ければなとは思っていましたね。ああいうゲームをした後、こうやって佳境に入って、いろんなものがかかってきて、いろんな思いがあるゲームの難しさは容易に想像できたので、入り方だったり、ゲームの進め方というところで成長を見せよう、と。今季は苦しい思いをした試合もあったなか、それを無駄にしないようにと。ただの悔しい試合じゃなく、そこから学んだものも確実にあるので、それすらも成長に繋げたいと思っていたし、それはチームのここにきてのたくましさにも繋がっていると思う。そこは意識していました」(喜田)

 立ち上がりはボールが両陣内を行ったり来たりの落ち着かない流れが続いたが、前半12分のワンプレーが大きく勝負を分けた。前線からのプレスで広島にバックパスを出させると、GK大迫敬介の低弾道キックを喜田がカット。すかさず縦パスを出し、そこからFW植中朝日の果敢な先制ゴールが決まった。

「よく朝日が決めてくれたと思いますし、あの時に意識したのは速く出すこと。間髪入れずにつけることは意識しましたね。どうしてもああいうイレギュラーなボールだと、一つタイミングを逃すとオフサイドになってしまったり、チャンスを逃すことになるので、十分にいろんな状況も見えていたし、朝日もいい位置をとってくれていたのでオフサイドはないだろうと、とにかく速くつけることを意識した。彼もそれを感じて、いろんな選択もあったと思うけど、迷わずに最後振ってくれて決めてくれた。僕のアシストどうこうというより、チームを勢いづけてくれた点で意味があったと思う」(喜田)

 先制後は広島にボールを握られる時間が大幅に増えたが、ミドルブロックで冷静に対応。前線の植中とFW谷村海那が絶えず相手のパスコースを消すポジショニングを取り続け、サイドにパスを出させる仕事を徹底すると、両サイドハーフのFW井上健太とFWジョルディ・クルークスの上下動、ダブルボランチの喜田とMFジャン・クルードによるカバーリングで危険なシーンを作らせなかった。

 こうした外誘導の守り方をさせる場合、相手に逆を突かれて中央に通された時の対応が鍵になるが、そこでも喜田の状況判断力が際立っていた。

「そこが一つポイントでしたね。どこまで食いつくか、食いつかないかのタイミングと使い分けはもちろんともに意識して、(広島は)結構前にパワーをかけてくるチームで人数もかけてくるので、食いつくタイミングと後ろとの連係は常にコミュニケーションを取りながら。もちろん準備しているもの(守り方)もあったけど、そうではないシーンも動きの中では多々あるので逐一喋って、受け渡しなのか、ついていくのか、自分たちが前に出るのか、ステイするのかはみんなでコミュニケーションを取りながらある程度怖さを消せていたのかなと思います」(喜田)

 後半10分過ぎからは横浜FMから向かって左サイドで起点を作られ、大きく右サイドに振られる形でピンチを招く場面が続いたが、ギリギリのオフサイドで失点を免れるなど、スコアを動かされることはなかった。

「最後のところを割らせなかったのは自分たちがやってきたことが結果に直結したと思う。もちろんオフサイドのところもあったけど、ライン設定はこだわってやってきたので。オフサイドになるシーンは多かったと思うし、疲れた時こそそういうところをしっかりやろうと練習からコミュニケーションを取ってきたので一つ表れたと思います。突破されたり、最後に危ない局面もあるとは思うけど、その時はシンプルに身体を張ろうと。それも守備のところで共通理解はできていました」(喜田)

 オフサイドで失点を免れたシーンではVARチェックの時間を使い、ベンチと話し合いながら修正したのもさすがの統率力だった。その場面では単に危険なエリアを共有するだけでなく、必要なリスク管理の方向性も統一できていた様子。喜田は「あの後のタイミングは攻守ともに少しバタバタするかなと思っていたので、要所を押さえるのもそうだし、どういうプレー選択をするかを話していた。ゲームのポイントとなるところはチームとしてしっかり押さえられたのかなという印象がある」と手応えを語った。

 心身ともに極限状態に陥りがちな残留争いという状況下で、こうしたピッチ上のディテールに向き合いながら適切な対応策を打ち続けるのは決して簡単なことではない。それでも喜田によると、苦しみ抜いたシーズン序盤戦の試行錯誤がここでも活かされているのだという。

「それはもう本当にうるさいくらいに言ってますね。もう別にそこでうるせえと思われてもいいし、分かってるよって思われてもいいから。分かっていても言うし、ちゃんとみんなも聞く耳を持っている。僕自身ももちろん周りからの意見を聞く耳を持っている。そういう集団であらねばならない。絶対にここで崩れるな、と。もう崩れたら(これまでと)一緒だ、と。それも声はかけていたので。それもさっきの話ですね。やっぱり学びになっているし、痛い目に遭って、こういうところがポイントだというところをしっかり押し返せていたのもそうだし、2点を追加できたのもそう。みんなの今の取り組みみたいなものを表せているのかなと思います」(喜田)

 この日の横浜FMは1-0で守り切って終わるのではなく、同点を狙ってくる相手を押し返し、後半41分からの反転攻勢で2点を追加。上位争いを続けていた例年のような勝ちパターンに持ち込んだのも象徴的だった。

 そんなすがすがしい圧勝劇により、横浜FMは2試合7得点0失点での連勝を達成。今節は18位の横浜FCが敗れたため、両者の勝ち点差は5ポイントに広がり、残り3試合でのJ1残留決定に大きく近づいた。
それでも喜田に「残り3試合で勝ち点5差の捉え方」を聞くと、明確な視座の伴った言葉が返ってきた。

「どうも捉えていないですね。シンプルに次、勝ちたいしかない。もうそれしかないので。もっとマリノスとして試合に挑んで勝ちたいし、そこに周りどうこうというのは僕には一切関係なくて。その欲しかない。少し期間が空くけど、もう勝つための準備をしたい。そこに甘さ、ぬるさがあるようだったら許さない空気を作りたいし、そうあらなければいけない」(喜田)

 次節は2週間後の11月9日、シーズン終盤まで優勝争いを繰り広げる京都サンガF.C.とのアウェーゲーム。同じく鬼門とされていた“中断明け後”の一戦を克服した前々節・浦和戦と同様、準備期間も緩みなくビッグマッチに挑む構えだ。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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