清水vs京都で10分、FC東京vs浦和で8分のVARオフサイド確認…JFA審判委が経緯説明「限界はあるにしても少しでも短く」
日本サッカー協会(JFA)審判委員会が8日、都内でメディア向けのレフェリーブリーフィングを開催した。J1百年構想リーグ第2節の2試合で発生した長時間のVARチェックについて経緯を説明し、両試合を受けてJ1担当審判員に「正しさだけ(を追求)で時間をどれだけかけてもいいということではない。いかに短くして少しでも僕らがやっていることを受け入れてもらえるかやっていこう」と伝えたことも明かした。
1つ目は清水エスパルス対京都サンガF.C.の後半19分のシーン。清水のFKでMF小塚和季が上げたクロスをDF住吉ジェラニレショーンが頭でゴールに流し込んだ。ところが10分以上を要したVARチェックの結果、最終判定は住吉のオフサイドで得点取り消しになった。
際どいオフサイド判定とはいえ最終判定までに10分を要するのは異例のこと。また、この試合のVAR担当は国際試合の経験も豊富な審判員だったこともあって経緯が注目されていたなか、佐藤隆治JFA審判マネジャーはシステムトラブルとVARの慎重な判断が重なったことを原因に挙げた。
このシーンでは住吉の手前にいる京都の選手と奥にいる京都の選手のどちらかがオフサイドラインとなる。使用可能なカメラの中で最も真横に近いペナルティエリア横のカメラ(16mカメラ)では手前にいる選手の全身が映っている一方、奥の選手は住吉に右半身が重なって見えない状況。したがってVARは角度がつくゴールラインの延長線上に設置されたカメラ(ゴールラインカメラ)から、選手の位置関係を立体的に捉える3Dラインを用いてオフサイドラインの対象者の特定とライン生成を試みた。
ところがゴールラインカメラでチェックを開始すると、当該カメラの3Dラインシステムで「キャリブレーションがずれている」ことが判明。つまり不適切なラインが表示される状態だったため、ゴールラインカメラでは3Dラインを投影することができなかった。
これを受けてVARは、事象から離れた中央付近に設置されているメインカメラ、そして16mカメラの両方を使ってオフサイドラインの対象となる選手を特定する作業を開始。使用不可だったゴールラインカメラでの作業を始めてから約7分後、手前の選手がオフサイドラインの対象と判明して3Dラインの投影が完了した。その後住吉の右肩を対象に3Dラインを投影した結果オフサイドポジションだと確定したため、全体のチェック開始から10分以上が経過したタイミングで最終的なオフサイド判定が下された。
佐藤氏は一連のチェックについて「ゴールラインカメラを使えられたらもっと早く決断できた」と述べ、システムトラブルを長期化の一因とした。すでにシステムのプロバイダーと原因などの話をしたという。
加えて「与えられた環境でベストを尽くしなさい」と指導しているなか、メインカメラと16mカメラの両方を駆使して慎重な確認をしたことも原因と指摘。ゴール取り消しという大きな判定に対して慎重な判断をした姿勢は称えつつ、今回の事象ではオフサイドラインを引かなくても攻撃側・住吉のラインのみ投影すればオフサイドの証拠になったと総括し、トラブル時の臨機応変な対応も短縮化のポイントになることを示した。
もう一つはFC東京対浦和レッズの前半10分のシーン。浦和のFKでMFマテウス・サヴィオが蹴ったボールにニアサイドのDF関根貴大がジャンプで反応。関根を通過したボールはゴール前にこぼれると最後はMF柴戸海が押し込んだ。だが、ここでもVARの長いチェックが行われると、ゴールインから8分以上を要して柴戸のオフサイドで得点取り消しとなった。
この事象では複雑なオフサイドチェックとVARルーム内のコミュニケーションの齟齬が長期化に繋がったという。
まず、サヴィオがボールを蹴ったタイミングで関根はオフサイドポジションだった。ただ関根がボールに触れているかは映像から判断が非常に難しく、触れていなかったとしても相手選手に影響を与える動きでオフサイドが成立するかの判断も求められた。VARは関根のオフサイドが成立するか2分ほどチェックした結果、ボールには触れておらず相手選手へのインパクトを与えてもいないことを確定した。
続いて柴戸に関するオフサイドチェックがスタート。佐藤氏によればセットプレーのためペナルティエリア内が密集状態だったこともあり、VARと映像を操作するリプレー・オペレーターの間で「誰に・どこに」ラインを引くかの認識が揃わず時間がかかったという。柴戸のチェック開始から4分後に3Dオフサイドラインが投影されたといい、「そこのコミュニケーションはもう少し改善できたと感じている」と改善点が示された。
その後、得点者である柴戸の3Dラインも投影されてオフサイドポジションだと判明。ゴールから8分以上を要してゴール取り消しに至った。
様々な原因が長期化に繋がった今回の2事象。佐藤氏によれば今季は各チームのセットプレーがよりデザイン化されており、VARチェックが複雑化している傾向にあるという。その上で極端な短縮化は現実的ではないとしつつ「限界はあるにしても少しでも短く」との共通認識を各審判員が持ち、全力を尽くしていくことを誓った。
なお今季の特徴ではもう一つ、危険なタックルが増加している点があるようだ。佐藤氏によれば全体のVARチェック割合のうち「著しく不正なプレー(危険なファウルよるに一発退場)の可能性」は昨季の12.8%から19.8%に増加。ノーカードやイエローカードにとどまる正しい判定を下した事象も一定数含まれているものの、今季は選手生命を脅かすチャレンジをレフェリングの重点項目としていることもあって気になる傾向だ。
「怪我や選手生命(を脅かすプレー)をどれだけ避けながら良いサッカー、激しいサッカーをレフェリーも作っていけるかというところで残り半分に向き合っていきたい」と佐藤氏。クラブとコミュニケーションを取っていくとともに、審判サイドとして適切な判定や選手のマネジメントをポイントに引き続き取り組んでいく方針を語った。
(取材・文 加藤直岐)
●Jリーグ百年構想リーグ特集
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1つ目は清水エスパルス対京都サンガF.C.の後半19分のシーン。清水のFKでMF小塚和季が上げたクロスをDF住吉ジェラニレショーンが頭でゴールに流し込んだ。ところが10分以上を要したVARチェックの結果、最終判定は住吉のオフサイドで得点取り消しになった。
際どいオフサイド判定とはいえ最終判定までに10分を要するのは異例のこと。また、この試合のVAR担当は国際試合の経験も豊富な審判員だったこともあって経緯が注目されていたなか、佐藤隆治JFA審判マネジャーはシステムトラブルとVARの慎重な判断が重なったことを原因に挙げた。
このシーンでは住吉の手前にいる京都の選手と奥にいる京都の選手のどちらかがオフサイドラインとなる。使用可能なカメラの中で最も真横に近いペナルティエリア横のカメラ(16mカメラ)では手前にいる選手の全身が映っている一方、奥の選手は住吉に右半身が重なって見えない状況。したがってVARは角度がつくゴールラインの延長線上に設置されたカメラ(ゴールラインカメラ)から、選手の位置関係を立体的に捉える3Dラインを用いてオフサイドラインの対象者の特定とライン生成を試みた。
ところがゴールラインカメラでチェックを開始すると、当該カメラの3Dラインシステムで「キャリブレーションがずれている」ことが判明。つまり不適切なラインが表示される状態だったため、ゴールラインカメラでは3Dラインを投影することができなかった。
これを受けてVARは、事象から離れた中央付近に設置されているメインカメラ、そして16mカメラの両方を使ってオフサイドラインの対象となる選手を特定する作業を開始。使用不可だったゴールラインカメラでの作業を始めてから約7分後、手前の選手がオフサイドラインの対象と判明して3Dラインの投影が完了した。その後住吉の右肩を対象に3Dラインを投影した結果オフサイドポジションだと確定したため、全体のチェック開始から10分以上が経過したタイミングで最終的なオフサイド判定が下された。
佐藤氏は一連のチェックについて「ゴールラインカメラを使えられたらもっと早く決断できた」と述べ、システムトラブルを長期化の一因とした。すでにシステムのプロバイダーと原因などの話をしたという。
加えて「与えられた環境でベストを尽くしなさい」と指導しているなか、メインカメラと16mカメラの両方を駆使して慎重な確認をしたことも原因と指摘。ゴール取り消しという大きな判定に対して慎重な判断をした姿勢は称えつつ、今回の事象ではオフサイドラインを引かなくても攻撃側・住吉のラインのみ投影すればオフサイドの証拠になったと総括し、トラブル時の臨機応変な対応も短縮化のポイントになることを示した。
もう一つはFC東京対浦和レッズの前半10分のシーン。浦和のFKでMFマテウス・サヴィオが蹴ったボールにニアサイドのDF関根貴大がジャンプで反応。関根を通過したボールはゴール前にこぼれると最後はMF柴戸海が押し込んだ。だが、ここでもVARの長いチェックが行われると、ゴールインから8分以上を要して柴戸のオフサイドで得点取り消しとなった。
この事象では複雑なオフサイドチェックとVARルーム内のコミュニケーションの齟齬が長期化に繋がったという。
まず、サヴィオがボールを蹴ったタイミングで関根はオフサイドポジションだった。ただ関根がボールに触れているかは映像から判断が非常に難しく、触れていなかったとしても相手選手に影響を与える動きでオフサイドが成立するかの判断も求められた。VARは関根のオフサイドが成立するか2分ほどチェックした結果、ボールには触れておらず相手選手へのインパクトを与えてもいないことを確定した。
続いて柴戸に関するオフサイドチェックがスタート。佐藤氏によればセットプレーのためペナルティエリア内が密集状態だったこともあり、VARと映像を操作するリプレー・オペレーターの間で「誰に・どこに」ラインを引くかの認識が揃わず時間がかかったという。柴戸のチェック開始から4分後に3Dオフサイドラインが投影されたといい、「そこのコミュニケーションはもう少し改善できたと感じている」と改善点が示された。
その後、得点者である柴戸の3Dラインも投影されてオフサイドポジションだと判明。ゴールから8分以上を要してゴール取り消しに至った。
様々な原因が長期化に繋がった今回の2事象。佐藤氏によれば今季は各チームのセットプレーがよりデザイン化されており、VARチェックが複雑化している傾向にあるという。その上で極端な短縮化は現実的ではないとしつつ「限界はあるにしても少しでも短く」との共通認識を各審判員が持ち、全力を尽くしていくことを誓った。
なお今季の特徴ではもう一つ、危険なタックルが増加している点があるようだ。佐藤氏によれば全体のVARチェック割合のうち「著しく不正なプレー(危険なファウルよるに一発退場)の可能性」は昨季の12.8%から19.8%に増加。ノーカードやイエローカードにとどまる正しい判定を下した事象も一定数含まれているものの、今季は選手生命を脅かすチャレンジをレフェリングの重点項目としていることもあって気になる傾向だ。
「怪我や選手生命(を脅かすプレー)をどれだけ避けながら良いサッカー、激しいサッカーをレフェリーも作っていけるかというところで残り半分に向き合っていきたい」と佐藤氏。クラブとコミュニケーションを取っていくとともに、審判サイドとして適切な判定や選手のマネジメントをポイントに引き続き取り組んでいく方針を語った。
(取材・文 加藤直岐)
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