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鹿島相手に爪痕残した横浜FM樋口有斗は東海学生2部出身→早期プロ入りの“下剋上”ルーキー「J1でやれる手応えを持った上で来た」

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MF樋口有斗

[5.10 J1百年構想リーグ第16節 横浜FM 1-1(PK4-5) 鹿島 日産ス]

 首位を独走するJリーグ王者を相手に爪痕を残した。しかし、求めていた結果は最後の最後でこぼれ落ちた。

 横浜F・マリノスの21歳ルーキーMF樋口有斗はこの日、1-0で迎えた後半39分からトップ下で途中出場。投入された時間帯は相手の猛攻に押し込まれ続けていたなか、樋口はコンパクトなミドルブロックで相手の攻撃に制限を加えつつ、得意の攻撃で左に流れながら次々とボールを引き出し、カウンター攻撃の先陣を切って流れを変えた。

 果敢なフリーランからチャンスも作った。「もともとポケットに走るところは自分の持ち味なので、2回くらい形を作れたのは良かった」。しかし、結果にはつながらず。後半40分のクロスはFWディーン・デイビッドと息が合わずにクリアされ、同42分にはスルーパスに抜け出しながらもシュートが左ポストに直撃。その場面ではオフサイド判定も下され、最後は局面の駆け引きで相手が上回った。

「ずっと課題だけど、ラストの質のところ。オフサイドのところも(相手を)外すまでは行けるけど決め切れなかったり、ディーンに出したボールも一つ相手の頭を越すとか、もっと精度の良いボールを出せたと思う。抜け出しまではJリーグ首位の鹿島さん相手でもやれると思ったけど、ラストの質のところは全然足りないなと思いました」(樋口)

 結局、追加点を逃したチームは後半アディショナルタイム5分に同点弾を献上し、PK戦で敗れた。試合後、樋口は鹿島相手に持ち味を発揮したことよりも、「自分の中では失点した部分が大きすぎて……」と悔やみ、「今のところ途中から出た試合で全部自分が出た後に失点していて、得点がないので、改善されていないなというのが一番の印象」と結果と向き合っていた。

 ルーキーイヤーの今季はここまで1試合に先発、3試合に途中出場。先発した水戸戦は1-1で迎えた後半11分にピッチを退き、途中出場した試合はいずれも試合終盤にゴールを決められており、ピッチ上では悔しい思いをし続けてきた。この結果は樋口ばかりに責任があるわけではないが、プロは結果の世界。樋口は自らに矢印を向け、鹿島戦の勝敗を分けたディテールに目を向けた。

「もともとあの時間帯で出された意味というのは、もう1点取って試合を決めに行くところと、絶対に失点してはいけない場面でしっかりブロックを引いて守備で貢献するところだったけど、失点のFKの前の競り合いの場面で自分が最初にジョルディ(・クルークス)に任せようとして足が止まってしまって、ちょっと遅れて行った形になったことで相手が100の状態でヘディングできて、そのまま一本で自分たちが自陣に向かって後ろ向きに……という状態になってしまった。ああいうところで任せるのではなく、最初から自分で行かないと。鹿島さんが相手だとそういう細かいところから失点に繋がるので、改善していかないといけないと思った。あそこは完全に自分のミスかなと思います」

 痛恨の失点はMF荒木遼太郎からFWレオ・セアラへのセットプレー。しかし、樋口はその前の流れに責任を背負い、改善への糧にしようとしていた。

 2005年3月10日生まれの樋口は本来、今年が大学4年生の年。昨季までは東海学生リーグ1部の中部大でプレーし、デンソーチャレンジサッカーの東海選抜経験を持つ地域屈指のMFとして存在感を見せていたが、今季は卒業を待たずに横浜FMからのオファーを勝ち取り、一足先にプロの舞台に飛び込む決断をした。

「やっぱり関東1部の選手だとレベル自体が高いので(早期プロ入りを)迷ったりすると思うけど、東海となると関東2部下位から3部くらいのレベルになってしまうし、自分の大学はそこでも上位争いをするレベルではなかったので、そこでやるよりはもっと高いレベルでやりたいと思っていた。監督も4年までやらないでプロに呼ばれるようになれということはずっと言われていたので、チームのほうと自分の意思も合致していて、(オファーをもらって)すぐに決めました」(樋口)

 高校時代は埼玉栄高でプレーしており、関東から東海学生リーグを選んだのも珍しいキャリア。それも入学当時、中部大は東海2部リーグで。樋口自身は「サッカー人生で全国に行ったこともないし、全然知られていないチームを経てここまで来た」と謙遜気味に振り返るものの、自らの武器と進学先の環境を照らし合わせた現実的なキャリア選択が現在の下剋上キャリアにつながっている。

「もともとは関東2部、3部に推薦で行ければ良かったけど、最後の選手権で県ベスト4に行くまではずっと16とかで負けていたのでどこも声がかからず、セレクションを受けようと思っていたところで、自分の親と中部大の総監督につながりがあって、練習参加だけさせてもらったら、すぐにオファーをいただいた。中部大は技術に徹底的にこだわるという話もしてもらって、自分はこのまま関東2部、3部に行ってもフィジカルが足りないなというのも思っていたので、まずはフィジカルから入って平均的なプロサッカー選手になっていくよりも、自分は技術で勝負したいという気持ちがあったのでそこで中部大に決めました」(樋口)

 その選択が樋口を早期プロ入りに導くほどの強みを生み出し、J1の舞台にも自信を持って飛び込む原動力となった。「もともと大学の時もマリノスや他のJ1クラブの練習にも参加していて、J1でやれる手応えを持った上で来ていた。いまは正直、百年構想リーグが始まる前のイメージよりはちょっと足踏みしている状態かなと感じています」。レベルの異なる環境に適応しながら、順調に出場時間を伸ばしているようにも思われるが、強みを出す部分においては想定内の道のりだったようだ。

 また樋口はJ1レベルでも遜色ない技術やスピードに甘んじることなく、試合に出るための能力強化にも取り組んでいる。「フィジカルのところではもっと苦戦するかなと思っていたけど、技術のところとアジリティのところでそもそも強く当たらないところではうまくやれていると思う。でも攻撃では当たらなくていいで済むけど、守備では自分から当たりに行かなきゃいけないところもあるので、もう少し球際の強度は上げていかなきゃなと感じています」。日々の練習や試合でプロ基準との距離感を測りつつ、地道にフィジカル強化も進めていく構えだ。

 そして何よりアタッカーで起用されているからには、目に見える数字が求められるのもプロの現実だ。J1百年構想リーグは順位決定戦を入れて残り4試合。勝負の2026-27シーズンに少しでも良い形で臨むべく、「また同じようなチャンスをもらえたら次こそは結果のところ、そしてゼロで終わるところを徹底的にこだわってやっていきたい」と強い決意で終盤戦に挑む。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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