「J2では見えなかった世界も…」町田の左サイドに立ち向かった横浜FM井上太聖、劇的失点の悔しさ糧に世界基準のSBへ「自分次第で変えていける」
明本とマッチアップするDF
[9.12 J1第7節 町田 1-1 横浜FM MUFG国立]
首位・町田の最大のストロングポイントである左サイド攻撃に対し、J1リーグ1年目の右SBが堂々と立ち向かった。それでも試合後、横浜F・マリノスのDF井上太聖は「僕のところに友喜くんがすごく助けに来てくれたので」と謙虚にサイドハーフのMF近藤友喜への感謝を述べつつ、勝ち点1への悔しさを口にした。
横浜FMは12日、J1第7節で今季5勝1分と無敗の町田と対戦。前半12分にセットプレーからFW谷村海那が先制点を奪った。その後は町田にボールを握られる時間が続いたものの、相手の生命線であるサイド攻撃をミドルゾーンのブロックでほぼ完璧に封じ、ゴールを許さずに試合を進めていた。
特に井上が守る右サイドはMF相馬勇紀、MF明本考浩という欧州の舞台を経験してきたJリーグ屈指のサイドアタッカーに晒されるポジション。試合前から明確なプランを持ち、右サイドハーフの近藤やダブルボランチとの役割分担を準備していたという。
「相手は自分たちの4枚に対し、5枚出てきたりするので大外は遅れてしまうのは仕方ないということで、まずは相手のシャドーが抜け出すところで一発でやられないように意識して、外は僕も友喜くんも対人守備は自信を持っているので、そこは遅れても良いという判断で90分やっていた」
今季の町田はシャドーの相馬が大外に流れ、ウイングバックの明本が内側に入ってくる可変システムが強みだが、井上と近藤の2人は献身的なスライドを継続。またゴール前にはFW小川航基ら強力なFW陣が構えているため、突破を許さないだけでなく高精度のクロスも入れさせたくないなか、80分間以上をほぼ完璧な守備組織で凌いでいた。
しかし、最後は耐え切れなかった。町田は後半36分に明本が退場し、10人対11人の構図となったが、途中出場のFWテテ・イェンギを活かしたパワープレーを継続。そして同39分、横浜FMはセットプレー崩れでサイドのマークが甘くなったところを相馬のドリブルに突かれると、井上のクリアを拾ったMF望月ヘンリー海輝にボレーシュートを叩き込まれ、1-1の同点に追いつかれて試合を終えた。
結果はドロー。失点に絡む形となった井上は「相手が一人少ない中で優勝を目指す上でこういう勝ち点の落とし方はやってはいけないこと。失点のところも自分が大きく跳ね返せていたら失点はなかった。首位に勝ち点1を取れたのはチームとして良かったかもしれないけど、自分としては悔しいゲームになった」と責任を背負った。
町田のサイド攻撃に対しては十分に張り合えた自覚もあった。しかしそんな手応えも、落としてしまった勝ち点の前では無力。井上は取材エリアで失点以外の場面について問われても、何度も悔しさを口にしていた。
「こっちのサイドは相手のストロングで、攻撃力はJリーグでも一番と言ってもいいようなスペシャルな2人がいて、そこは友喜くんとも絶対に抑えようと話していたので、そこができていたからこそ悔しい」
「準備してきたものがちゃんと全部出たし、勝ちに値するゲームだったと思うので、それも全部含めて悔しいです」
失点シーンでは悔やまれる対応となった井上だが、普段は184cmの上背を活かしてクロスを跳ね返す場面が目立つ。それでも現段階では「自分の中でクロスの対応は課題にしているところ」との認識。この日の失点も踏まえ、さらなるレベルアップの必要性を痛感していた様子だった。
とはいえ、昨季までJ2鳥栖でプレーしていた井上は今年上半期の百年構想リーグが初のJ1挑戦。抑えなければならないウインガーの質も、ゴール前に上がってくるクロスの質も、ゴール前で競り合うターゲットマンの質も大きく違うJ1の舞台において、適応はまだ道半ばだと言える。
「僕は去年までJ2にいた中で、いま対峙している相手は自分の能力よりも上の選手が多いので、ポジショニングも少し変えないといけないし、来たボールに対して強く出るとか、そういった部分がまだまだ足りていないと思う。対人の守備でやられていなくてもそういったところでやられてしまうと意味がないので、自分次第で変えていけると思う」
そうした課題は日本人サイドバック共通のテーマでもある。世界を見渡せば菅原由勢、毎熊晟矢、関根大輝といった海外組のSB陣も守備強度の向上には長い時間をかけて取り組んでおり、世界基準に肩を並べようとする今の日本代表におけるニーズもそこにある。現在23歳の井上も高いモチベーションでその基準に近づこうとしている。
「サイズのあるSBは現代サッカーのトレンドだと思うし、自分でボールを動かせて、(攻撃を)組み立てられて、守れてというのができれば、自分がJ2では見えなかったような世界も見えてくると思う。そういった環境でやれているのはすごく楽しいし、充実している日々ですね」(井上)
横浜FMのチームスタッフも井上のレベルアップを手助けしてくれている様子だ。
「ヘッドコーチのダニー(・ヘイ)も自分のことをよく見てくれて、指摘してくれるし、他のコーチも自分の改善点や良いプレーをまとめて送ってくれるので、振り返りをするにはすごい環境が整っている。スタッフにも感謝しています」
自らの試合映像を通じた振り返りを習慣的に行っていく中で、今では徐々に「自分の中でこういった選手にはこういったポジショニングをしたほうがいいという引き出しは増えてきたと思う」と成長も感じられるようになってきたという。
それでも井上がいま重要にしているのは、その成長の実感を練習や試合の中でより確かなものにし続けることだ。
「目の前の相手に負けたくないと過ごしてきた日々が今の自分を作っているし、自信がなくなった瞬間にやられる世界だと思うので、自信を持ってやっていきたい。そこは日々の練習が自信を作ると思うのでもっと成長していきたい」
その自信をより強く持つには「やられると自信もつかなくなるし、ゼロで抑えることで自信につながると思う」とも話した井上。この先、さらに“J2で見えなかったような世界”に身を置くためにも、一つ一つの課題に向き合いながら己を高めていく構えだ。
(取材・文 竹内達也)
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首位・町田の最大のストロングポイントである左サイド攻撃に対し、J1リーグ1年目の右SBが堂々と立ち向かった。それでも試合後、横浜F・マリノスのDF井上太聖は「僕のところに友喜くんがすごく助けに来てくれたので」と謙虚にサイドハーフのMF近藤友喜への感謝を述べつつ、勝ち点1への悔しさを口にした。
横浜FMは12日、J1第7節で今季5勝1分と無敗の町田と対戦。前半12分にセットプレーからFW谷村海那が先制点を奪った。その後は町田にボールを握られる時間が続いたものの、相手の生命線であるサイド攻撃をミドルゾーンのブロックでほぼ完璧に封じ、ゴールを許さずに試合を進めていた。
特に井上が守る右サイドはMF相馬勇紀、MF明本考浩という欧州の舞台を経験してきたJリーグ屈指のサイドアタッカーに晒されるポジション。試合前から明確なプランを持ち、右サイドハーフの近藤やダブルボランチとの役割分担を準備していたという。
「相手は自分たちの4枚に対し、5枚出てきたりするので大外は遅れてしまうのは仕方ないということで、まずは相手のシャドーが抜け出すところで一発でやられないように意識して、外は僕も友喜くんも対人守備は自信を持っているので、そこは遅れても良いという判断で90分やっていた」
今季の町田はシャドーの相馬が大外に流れ、ウイングバックの明本が内側に入ってくる可変システムが強みだが、井上と近藤の2人は献身的なスライドを継続。またゴール前にはFW小川航基ら強力なFW陣が構えているため、突破を許さないだけでなく高精度のクロスも入れさせたくないなか、80分間以上をほぼ完璧な守備組織で凌いでいた。
しかし、最後は耐え切れなかった。町田は後半36分に明本が退場し、10人対11人の構図となったが、途中出場のFWテテ・イェンギを活かしたパワープレーを継続。そして同39分、横浜FMはセットプレー崩れでサイドのマークが甘くなったところを相馬のドリブルに突かれると、井上のクリアを拾ったMF望月ヘンリー海輝にボレーシュートを叩き込まれ、1-1の同点に追いつかれて試合を終えた。
結果はドロー。失点に絡む形となった井上は「相手が一人少ない中で優勝を目指す上でこういう勝ち点の落とし方はやってはいけないこと。失点のところも自分が大きく跳ね返せていたら失点はなかった。首位に勝ち点1を取れたのはチームとして良かったかもしれないけど、自分としては悔しいゲームになった」と責任を背負った。
町田のサイド攻撃に対しては十分に張り合えた自覚もあった。しかしそんな手応えも、落としてしまった勝ち点の前では無力。井上は取材エリアで失点以外の場面について問われても、何度も悔しさを口にしていた。
「こっちのサイドは相手のストロングで、攻撃力はJリーグでも一番と言ってもいいようなスペシャルな2人がいて、そこは友喜くんとも絶対に抑えようと話していたので、そこができていたからこそ悔しい」
「準備してきたものがちゃんと全部出たし、勝ちに値するゲームだったと思うので、それも全部含めて悔しいです」
失点シーンでは悔やまれる対応となった井上だが、普段は184cmの上背を活かしてクロスを跳ね返す場面が目立つ。それでも現段階では「自分の中でクロスの対応は課題にしているところ」との認識。この日の失点も踏まえ、さらなるレベルアップの必要性を痛感していた様子だった。
とはいえ、昨季までJ2鳥栖でプレーしていた井上は今年上半期の百年構想リーグが初のJ1挑戦。抑えなければならないウインガーの質も、ゴール前に上がってくるクロスの質も、ゴール前で競り合うターゲットマンの質も大きく違うJ1の舞台において、適応はまだ道半ばだと言える。
「僕は去年までJ2にいた中で、いま対峙している相手は自分の能力よりも上の選手が多いので、ポジショニングも少し変えないといけないし、来たボールに対して強く出るとか、そういった部分がまだまだ足りていないと思う。対人の守備でやられていなくてもそういったところでやられてしまうと意味がないので、自分次第で変えていけると思う」
そうした課題は日本人サイドバック共通のテーマでもある。世界を見渡せば菅原由勢、毎熊晟矢、関根大輝といった海外組のSB陣も守備強度の向上には長い時間をかけて取り組んでおり、世界基準に肩を並べようとする今の日本代表におけるニーズもそこにある。現在23歳の井上も高いモチベーションでその基準に近づこうとしている。
「サイズのあるSBは現代サッカーのトレンドだと思うし、自分でボールを動かせて、(攻撃を)組み立てられて、守れてというのができれば、自分がJ2では見えなかったような世界も見えてくると思う。そういった環境でやれているのはすごく楽しいし、充実している日々ですね」(井上)
横浜FMのチームスタッフも井上のレベルアップを手助けしてくれている様子だ。
「ヘッドコーチのダニー(・ヘイ)も自分のことをよく見てくれて、指摘してくれるし、他のコーチも自分の改善点や良いプレーをまとめて送ってくれるので、振り返りをするにはすごい環境が整っている。スタッフにも感謝しています」
自らの試合映像を通じた振り返りを習慣的に行っていく中で、今では徐々に「自分の中でこういった選手にはこういったポジショニングをしたほうがいいという引き出しは増えてきたと思う」と成長も感じられるようになってきたという。
それでも井上がいま重要にしているのは、その成長の実感を練習や試合の中でより確かなものにし続けることだ。
「目の前の相手に負けたくないと過ごしてきた日々が今の自分を作っているし、自信がなくなった瞬間にやられる世界だと思うので、自信を持ってやっていきたい。そこは日々の練習が自信を作ると思うのでもっと成長していきたい」
その自信をより強く持つには「やられると自信もつかなくなるし、ゼロで抑えることで自信につながると思う」とも話した井上。この先、さらに“J2で見えなかったような世界”に身を置くためにも、一つ一つの課題に向き合いながら己を高めていく構えだ。
(取材・文 竹内達也)
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