レジェンドと同じチャントは「公立中出身ストライカー」への大きな期待の表れ。岡山U-18FW安西来起がアグレッシブに追い求める唯一無二の夢
[5.18 プレミアリーグWEST第8節 岡山U-18 2-4 名古屋U-18 JFEス]
ひとたびピッチに立ったら、その優先順位にはいささかのブレもない。足を振れるなら、振る。シュートを打てるなら、打つ。そのチャレンジが必ず実ると信じて、磨き続けてきた左足を信じて、とにかくゴールへと向かい続けていく。
「今シーズンはスタメンで出られる試合が多い中で、二桁得点が自分の目標でもあったんですけど、それにまだ全然届いていない数字なので、もっともっとゴールに貪欲になって、チームを勝たせられるように頑張っていきたいです」。
香川からプロサッカー選手になる夢を追い求めてやってきた、ファジアーノ岡山U-18(岡山)のアグレッシブなストライカー。FW安西来起(2年=さぬき市さぬき南中出身)はすべてのベクトルをゴールに向けて、プレミアリーグの舞台で輝くための準備を、少しずつ、着々と整えている。
「今は連敗が続いている中で、前の選手が点を決めないと絶対にチームは勝てないので、今日は『こういうしんどい時こそ、自分が絶対に点を決めて、チームを勝たせてやろう』という気持ちで臨みました」。3連敗中で迎えたプレミアリーグWEST第8節の名古屋グランパスU-18(愛知)戦。安西はいつも以上に気合を入れてピッチに向かう。
この一戦に意気込む理由は、もう1つあった。会場はJFE晴れの国スタジアム。しかもトップチームがJ1のリーグ戦を戦った直後に、“ダブルヘッダー”として組まれたのが今節のプレミアの試合だったのだ。
「いつもは自分たちがトップチームの試合で見ているピッチに立ってプレーできたというのは、本当に嬉しかったですし、グラウンドに立ってプレーしている時も『凄いことだな』と思っていました」。スタジアム独特の雰囲気が、安西を心地良く包む。


だが、最前線に入った前半はなかなかチャンスに絡むまでには至らず、両チームが2点ずつを奪い合う中、後半8分にようやく19番へ好機がやってくる。MF加納尚則(3年)のスルーパスが届くと、左サイドから単騎でゴリゴリと仕掛け、利き足とは逆の右足でフィニッシュ。ここは相手GKにキャッチされたものの、ようやく自身のファーストシュートを記録する。
さらに積極性が増したのは、右ウイングへとポジションを移してから。ボールを受けたら、まずはドリブル勝負。そこからタイミングを計って中央へ侵入し、多少強引にでも左足を振り抜く。ディフェンダーに弾かれても、何度でも、何度でも、とにかくゴールを狙い続ける。
2点のビハインドを追い掛ける最終盤の44分。加納の枠内ミドルは相手GKのファインセーブに遭ったものの、こぼれを拾ったDF千田遼(3年)のグラウンダークロスに、安西が合わせたボールはゴールネットを揺らす。沸き上がるスタンド。しかし、副審のフラッグが上がり、オフサイドという判定で得点は認められない。
「泥臭く押し込むゴールは、このレベルで生き抜いていくためにも一番大事な形だと思うので、練習から意識してはいたんですけど、あそこでオフサイドになってしまったのは、自分が日々の練習から1メートル走ることだったり、1つのパスだったりを怠っている証拠だと思うので、そこはもっともっと誰よりも意識高く、練習から1つのプレーへの意識を変えてやっていかないといけないと思いました」。あくまでも向き合うのは自分自身。16歳の携えている向上心が頼もしい。
試合は2-4で敗戦。「今日は本当にたくさんの人に見に来てもらって、いつもの試合では経験できないことを経験できたんですけど、その中で勝てなかったということは、まだまだ自分たちの力が足りてないということだと思うので、今日のこの敗北をしっかり受け止めて、次に繋げていきたいと思いますし、これだけの人たちが来てくれたことには本当に感謝したいと思います」。試合後の安西からは、この環境を作ってもらった感謝と、勝利を引き寄せられなかった悔しさが、同時に滲んだ。


安西が中学時代にプレーしていたのは、香川のさぬき市立さぬき南中のサッカー部。3年時にはU-15日本代表に選出され、夏の全国大会でもキャプテンとしてチームをベスト8まで導くなど、大きな注目を集めていた“中体連の星”が進路として選んだのは、プレミアリーグに上がったばかりの岡山U-18だった。
「結構いろいろなクラブから誘いをもらって、他のクラブの練習にも行ったんですけど、ファジアーノはいろいろな人が何度も自分を見に来てくれましたし、練習参加を何回かさせてもらった中で、本当に強いチームだと思ったのと、このクラブの育成のやり方にも惹かれました。あとはやっぱり試合に出ていないと代表にも入れないと思うので、1年生から試合に出るチャンスも考えて、ファジアーノを選びました」。
この冬にはトップチームのキャンプにも参加。プロ選手たちに混じってボールを蹴る中で、小さくない刺激を受けたことは言うまでもない。
「プロの人たちは仕事としてサッカーをやっているので、1つのプレーの質は自分とは違うなと。自分もそういうところにもっとこだわってやっていかないといけないですし、身体作りの部分でもプロの選手は意識が違うなと思いました。でも、自分の武器でもある背後の抜け出しだったり、左足のシュートは全然通用するなとも思いました」
「トップの選手はみんな上手かったですけど、自分と歳の近い佐藤龍之介選手は本当に上手いですし、自分は今なかなか代表に入れていなくて、悔しい想いをしているんですけど、代表も継続して入り続けているのは凄いなと。それにキャンプ中も自分からどんどん周りとコミュニケーションを取ったりして、そういうところは見習っていかないといけないなと思いました。あと、話してみたら優しかったです」。目指すのはやはりこの日の“1試合目”のピッチ。そのために日常を研ぎ澄ませ、すべてを成長に繋げていく。
今シーズンはここまでリーグ戦全試合に出場し、実戦経験を積み重ねているが、2得点を挙げた開幕戦の帝京長岡高戦以降はゴールを奪えていない。やはりストライカーであれば、求められるのは結果一択。ただ、そんなことは本人が一番よくわかっている。
「自分は『プロサッカー選手になりたい』という一心でこのクラブに来て、今はプレミアリーグという高校生の中で一番レベルの高いリーグでプレーできていることは、個人としてもチームとしても大きいことだと思うんですけど、開幕戦からは1点も獲れていないので、もっともっと自分の質を上げていって、もっと自分が点を獲って、チームを勝たせるフォワードになっていきたいと思います」。
『GATE10』からはクラブのレジェンド、赤嶺真吾ストライカーコーチと同じチャントが送られていたように、周囲からの期待も高い。ブレイクの時は、きっと来る。あとは間違いなく左足に秘められたポテンシャルを、いつ爆発させるかだけ。安西来起は自分で描いた夢を掴み取るまで、何度ピッチに倒れようとも、何度心が折れかけようとも、そのたびに必ず、力強く起き上がる。


(取材・文 土屋雅史)
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ひとたびピッチに立ったら、その優先順位にはいささかのブレもない。足を振れるなら、振る。シュートを打てるなら、打つ。そのチャレンジが必ず実ると信じて、磨き続けてきた左足を信じて、とにかくゴールへと向かい続けていく。
「今シーズンはスタメンで出られる試合が多い中で、二桁得点が自分の目標でもあったんですけど、それにまだ全然届いていない数字なので、もっともっとゴールに貪欲になって、チームを勝たせられるように頑張っていきたいです」。
香川からプロサッカー選手になる夢を追い求めてやってきた、ファジアーノ岡山U-18(岡山)のアグレッシブなストライカー。FW安西来起(2年=さぬき市さぬき南中出身)はすべてのベクトルをゴールに向けて、プレミアリーグの舞台で輝くための準備を、少しずつ、着々と整えている。
「今は連敗が続いている中で、前の選手が点を決めないと絶対にチームは勝てないので、今日は『こういうしんどい時こそ、自分が絶対に点を決めて、チームを勝たせてやろう』という気持ちで臨みました」。3連敗中で迎えたプレミアリーグWEST第8節の名古屋グランパスU-18(愛知)戦。安西はいつも以上に気合を入れてピッチに向かう。
この一戦に意気込む理由は、もう1つあった。会場はJFE晴れの国スタジアム。しかもトップチームがJ1のリーグ戦を戦った直後に、“ダブルヘッダー”として組まれたのが今節のプレミアの試合だったのだ。
「いつもは自分たちがトップチームの試合で見ているピッチに立ってプレーできたというのは、本当に嬉しかったですし、グラウンドに立ってプレーしている時も『凄いことだな』と思っていました」。スタジアム独特の雰囲気が、安西を心地良く包む。


だが、最前線に入った前半はなかなかチャンスに絡むまでには至らず、両チームが2点ずつを奪い合う中、後半8分にようやく19番へ好機がやってくる。MF加納尚則(3年)のスルーパスが届くと、左サイドから単騎でゴリゴリと仕掛け、利き足とは逆の右足でフィニッシュ。ここは相手GKにキャッチされたものの、ようやく自身のファーストシュートを記録する。
さらに積極性が増したのは、右ウイングへとポジションを移してから。ボールを受けたら、まずはドリブル勝負。そこからタイミングを計って中央へ侵入し、多少強引にでも左足を振り抜く。ディフェンダーに弾かれても、何度でも、何度でも、とにかくゴールを狙い続ける。
2点のビハインドを追い掛ける最終盤の44分。加納の枠内ミドルは相手GKのファインセーブに遭ったものの、こぼれを拾ったDF千田遼(3年)のグラウンダークロスに、安西が合わせたボールはゴールネットを揺らす。沸き上がるスタンド。しかし、副審のフラッグが上がり、オフサイドという判定で得点は認められない。
「泥臭く押し込むゴールは、このレベルで生き抜いていくためにも一番大事な形だと思うので、練習から意識してはいたんですけど、あそこでオフサイドになってしまったのは、自分が日々の練習から1メートル走ることだったり、1つのパスだったりを怠っている証拠だと思うので、そこはもっともっと誰よりも意識高く、練習から1つのプレーへの意識を変えてやっていかないといけないと思いました」。あくまでも向き合うのは自分自身。16歳の携えている向上心が頼もしい。
試合は2-4で敗戦。「今日は本当にたくさんの人に見に来てもらって、いつもの試合では経験できないことを経験できたんですけど、その中で勝てなかったということは、まだまだ自分たちの力が足りてないということだと思うので、今日のこの敗北をしっかり受け止めて、次に繋げていきたいと思いますし、これだけの人たちが来てくれたことには本当に感謝したいと思います」。試合後の安西からは、この環境を作ってもらった感謝と、勝利を引き寄せられなかった悔しさが、同時に滲んだ。


安西が中学時代にプレーしていたのは、香川のさぬき市立さぬき南中のサッカー部。3年時にはU-15日本代表に選出され、夏の全国大会でもキャプテンとしてチームをベスト8まで導くなど、大きな注目を集めていた“中体連の星”が進路として選んだのは、プレミアリーグに上がったばかりの岡山U-18だった。
「結構いろいろなクラブから誘いをもらって、他のクラブの練習にも行ったんですけど、ファジアーノはいろいろな人が何度も自分を見に来てくれましたし、練習参加を何回かさせてもらった中で、本当に強いチームだと思ったのと、このクラブの育成のやり方にも惹かれました。あとはやっぱり試合に出ていないと代表にも入れないと思うので、1年生から試合に出るチャンスも考えて、ファジアーノを選びました」。
この冬にはトップチームのキャンプにも参加。プロ選手たちに混じってボールを蹴る中で、小さくない刺激を受けたことは言うまでもない。
「プロの人たちは仕事としてサッカーをやっているので、1つのプレーの質は自分とは違うなと。自分もそういうところにもっとこだわってやっていかないといけないですし、身体作りの部分でもプロの選手は意識が違うなと思いました。でも、自分の武器でもある背後の抜け出しだったり、左足のシュートは全然通用するなとも思いました」
「トップの選手はみんな上手かったですけど、自分と歳の近い佐藤龍之介選手は本当に上手いですし、自分は今なかなか代表に入れていなくて、悔しい想いをしているんですけど、代表も継続して入り続けているのは凄いなと。それにキャンプ中も自分からどんどん周りとコミュニケーションを取ったりして、そういうところは見習っていかないといけないなと思いました。あと、話してみたら優しかったです」。目指すのはやはりこの日の“1試合目”のピッチ。そのために日常を研ぎ澄ませ、すべてを成長に繋げていく。
今シーズンはここまでリーグ戦全試合に出場し、実戦経験を積み重ねているが、2得点を挙げた開幕戦の帝京長岡高戦以降はゴールを奪えていない。やはりストライカーであれば、求められるのは結果一択。ただ、そんなことは本人が一番よくわかっている。
「自分は『プロサッカー選手になりたい』という一心でこのクラブに来て、今はプレミアリーグという高校生の中で一番レベルの高いリーグでプレーできていることは、個人としてもチームとしても大きいことだと思うんですけど、開幕戦からは1点も獲れていないので、もっともっと自分の質を上げていって、もっと自分が点を獲って、チームを勝たせるフォワードになっていきたいと思います」。
『GATE10』からはクラブのレジェンド、赤嶺真吾ストライカーコーチと同じチャントが送られていたように、周囲からの期待も高い。ブレイクの時は、きっと来る。あとは間違いなく左足に秘められたポテンシャルを、いつ爆発させるかだけ。安西来起は自分で描いた夢を掴み取るまで、何度ピッチに倒れようとも、何度心が折れかけようとも、そのたびに必ず、力強く起き上がる。


(取材・文 土屋雅史)
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