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悔しさを味わった既存戦力と台頭してきた新戦力のエネルギッシュな融合がもたらした執念の同点劇。川崎F U-18と東京Vユースの晩夏の熱戦は3-3のドロー決着!

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激しく打ち合った好ゲームは3-3のドロー決着!

[9.6 プレミアリーグEAST第12節 東京Vユース 3-3 川崎F U-18 ヴェルディグラウンド]

 いきなり2点を先行されても、1点を返しながら再び突き放されても、下を向くわけにはいかない。折れそうなメンタルを立て直し、体の奥からエネルギーを絞り出し、ピッチを走り続ける。自分たちならできると信じて。このチームなら逆転できると信じて。

「相手が1人退場したとはいえ、よく2点差を追い付いてくれたかなと。そこには感謝していますし、やっぱり今のウチの順位や勝点を考えると、勝点1は本当に大事なので、再開のゲームということで、欲を言えば勝ちたかったですけど、アウェイで勝点1を積めたのは大きかったかなと思います」(川崎フロンターレU-18・森勇介監督)

 90分の同点ゴールで、アウェイチームが執念の勝点1を獲得。6日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025 EAST第12節で、東京ヴェルディユース(東京)と川崎フロンターレU-18(神奈川)が対峙した一戦は、双方が積極的に攻め合う好ゲームの末に、3-3のドロー決着となっている。


「前半の入りから結構良い試合ができていたと思います」とMF広瀬怜音(2年)が話したように、序盤からリズムを掴んだのは東京Vユース。前半8分に右サイドを運んだMF今井健人(3年)のクロスが、相手のハンドを誘発してPKを獲得すると、MF仲山獅恩(3年)がゴール左上へ豪快に叩き込み、早々に1点のアドバンテージを手にする。

 畳みかける緑。20分。最終ラインのビルドアップからDF渡邉春来(2年)、MF下吉洸平(2年)とスムーズにパスが回り、今井が右へスルーパス。駆け上がったMF木下晴天(2年)の正確なクロスに、「良いボールを上げてくれたので、決めるだけでした」という仲山がダイレクトボレーで合わせ、ゴールを陥れる。背番号10の絶対的エースは、これで得点ランキング首位に立つ今季10点目。2-0。点差が開く。



 小さくないビハインドを追いかける格好となった川崎F U-18は、前線のFW恩田裕太郎(3年)や、左サイドに位置するFWステンパー・ルカ大翔(3年)にボールが入った時は推進力が生まれるものの、なかなかフィニッシュを取り切れない中で、37分に決定機。

 プレミアデビュー戦のMF加藤昊(1年)が中盤で前向きにボールを奪い、ステンパーが相手DFラインの背後へ。走ったMF新堀翔(3年)が粘って残すと、フリーでボールを拾ったMF木下勝正(2年)が、冷静にゴール右スミへシュートを突き刺す。こちらもプレミア初スタメンの2年生が一仕事。2-1。川崎F U-18が1点を返す。

追撃の1点を挙げた川崎F U-18MF木下勝正


 ところが、ホームチームもそう簡単に尻尾を掴ませない。41分。右サイドから仲山が蹴ったフィードを、DF原田爽潤(1年)が丁寧に落とすと、MF舛舘環汰(3年)が打ち切ったミドルは相手に当たってコースが変わり、ゴールネットへ到達する。「失点した後も焦らず3点目が獲れたのは、凄く良かったと思います」とはDF中村宗士朗(3年)。3-1。再び東京Vユースが2点差を取り戻し、最初の45分間は終了した。




「まずは『自分たちのミスでやられちゃったのはもったいないよね』という話はして、『もう1回守備からしっかりやろう』ということは言いました」と森勇介監督も振り返ったように、ハーフタイムに改めて守備面での約束事を共有しつつ、ギアを巻き直した川崎F U-18は、後半に入ると右のMF平内一聖(3年)、左のDF柏村涼太(3年)と両サイドバックの攻撃参加も増え、少しずつゲームリズムを引き寄せていく。

 次の1点を手にしたのは川崎F U-18。後半16分。右CKを新堀が蹴り込むと、ゴール前はこぼれ球を争う両チームの選手たちで大混戦に。最後はその密集から抜け出したFW廣瀬寧生(2年)が、執念でボールをゴールネットへ送り届ける。3-2。アウェイチームもそう簡単には諦めない。

 1点差に迫られた中で、東京Vユースは23分に退場者を出してしまい、残された20分近い時間を10人で戦うことに。「まずゴールを守る、それで隙あらばもう1点獲りに行くという中で、失点しないことが第一だったので、しっかりブロックを敷いて、入ってくるところを跳ね返すことを繰り返すプランではありました」と小笠原資暁監督も言及したように、前線に仲山を残した5-3-1の布陣で、勝利への道筋を歩みに行く。

 30分は川崎F U-18。右から平内が中央へ折り返し、こちらもプレミアデビュー戦のMF今廣遥碧(1年)が枠へ収めたシュートは、東京VユースのGK山崎琉聖(3年)がビッグセーブで回避。33分も川崎F U-18。新堀のFKにキャプテンのDF林駿佑(3年)が競り勝ち、恩田が放ったボレーはゴール右へ外れるも、得点への意欲をチーム全体で打ち出していく。

 意地の同点弾は終了間際の45分。平内が右から中央へと果敢に仕掛け、MF小川尋斗(2年)が残したボールを、今廣はダイレクトで左へ。その6分前に投入されたばかりのDF長崎亘佑(2年)が利き足とは逆の右足で打ち切ったシュートは、右スミのゴールネットへ吸い込まれる。

「次々にチームメイトが祝ってくれたので、そこで実感がちょっとずつ湧いてきたかなと。入って良かったです」と笑った長崎は、この日が17歳の誕生日。途中出場の2年生左サイドバックが挙げたバースデーゴールで、とうとう川崎F U-18が追い付いてみせる。

 ファイナルスコアは3-3。「いろいろありますけど、メンタル的にもう少しタフにならないといけないなと。得点も入りましたし、練習していたことも出ていたので、もったいない試合だなという感じです」(小笠原監督)「前期は自分たちが流れをなかなか持ってくる力強さがないという中で、夏にみんなでそういうところをもう1回意識してきたので、今日は全員で頑張って、勢いを持って追い付けたことは評価できると思います」(林)。晩夏の夜の熱戦は、激しい打ち合いの末に、両者へ勝点1ずつが振り分けられる結果となった。



 川崎F U-18の前半戦終了時点での成績は3勝3分け5敗で、降格圏の11位・浦和レッズユースとは勝点2差の9位。第6節以降は一度も勝利を手にすることが叶わない中で、迎えたクラブユース選手権のグループステージ初戦でも、ベガルタ仙台ユースに0-1で敗戦。チームは極めてシビアな状況に置かれていた。

「仙台に負けた後、ふがいなさ過ぎて、そこでメンバーをガラッと変えて、エネルギッシュなヤツで行こうと」(森監督)、次節のファジアーノ岡山U-18戦ではスタメン5人を変更して臨むと、チームは恩田の2ゴールで久々の白星をゲット。同じ11人が先発に並んだV・ファーレン長崎U-18戦も5-0で快勝を収め、グループステージ突破とはならなかったものの、川崎F U-18は浮上のきっかけとなりうる2つの勝利を手にすることとなる。

 もちろん岡山U-18戦からスタメン落ちを味わったメンバーも、そのままで終わっていいはずがない。「あそこで外されたヤツらがまた踏ん張って出てきてくれましたし、またさらにもっともっとエネルギーのある選手が上がってくると思いますし、ケガ人ももう戻ってくるので、そうしたらもっともっとチーム内競争もできると思います」(森監督)

 この日の東京Vユース戦では、MF楠田遥希(3年)や柏村、新堀と真夏の悔しさを味わった3年生が躍動し、長崎や加藤、今廣といった新戦力も好パフォーマンスを披露。「最後のところで頑張れるような、追い付けるようなメンタリティは付いてきたのかなと思います。少しずつエネルギーが出てきていることは感じていますね」と指揮官が口にすれば、「一人ひとりを見れば、観客を沸かせるようなプレーができる選手も、戦うところで魅せられる選手もいますし、あとはその力をどう出すかというメンタルの部分だけだと思うので、そこが前半戦を経て吹っ切れて、全員で勢いを出せたのは前期から変わったところだと思います」とはキャプテンの林。チームは確実に一歩ずつ前へと進んでいる。

 残された10試合のリーグ戦に向けて、指揮官が力強く言葉を紡ぐ。「まずはこの簡単に失点してしまうところは、もう1回反省しないといけないんですけど、『もっと点が獲れたよね』『もっとゴールに向かえたよね』というところをもう1回突き詰めて、あとは相手と同じ人数でも、もっともっとエネルギッシュに行けるとオレは信じているので、それをさせてあげられるようなトレーニングをやっていきたいと思います」。

 全員の力を結集して、敵地で掴んだ勝点1にどういう意味を持たせるかは、すべて自分たちの姿勢次第。もっともっとエネルギッシュに、パワフルに。虎視眈々と逆襲の進撃を狙うヤンフロの2025年は、ここからが間違いなく面白い。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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