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苦しい時間帯にも選手の足を衝き動かしたのは「ピッチとスタンドの一体感」。愛媛U-18は清水ユースをPK戦で撃破して7年ぶりのプレミア復帰まであと1勝!

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愛媛FC U-18は激闘をPK戦で制して7年ぶりのプレミア復帰に王手!

[12.12 プレミアリーグプレーオフ1回戦 清水ユース 0-0 PK1-3 愛媛U-18 ホットスタッフフィールド広島]

 苦しい時は、ピッチの仲間の顔を見ればいい。くじけそうな時には、スタンドの仲間の顔を見ればいい。みんなでここまで一歩ずつ、一歩ずつ、掲げた目標に向かって、メチャメチャ努力してきたんだ。もうやるしかない。もう走り切るしかない。もう勝つしかない。

「ウチはチームで戦うところをベースにしていて、本当にみんな仲が良いですし、この1年で積み上げてきたお互いへの信頼があるんです。全員が声を掛け合うことも普段から意識していることですし、PKに入る前にも自分たちは『大丈夫!行ける!行ける!』という声掛けをしていたので、もう勝つ気しかしなかったですね」(愛媛FC U-18・青木壱清)

 110分間の激闘をPK戦で制して、最後の1試合へ!高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグプレーオフの1回戦が12日に広島県内で開催され、清水エスパルスユース(東海1/静岡)と愛媛FC U-18(四国/愛媛)が対峙した一戦は、延長戦を終えても決着がつかず、PK戦で守護神のGK亀山雄汰(3年)が相手のキックを2本ストップした愛媛U-18が粘り勝ち。14日の決勝ではベガルタ仙台ユース(東北2/宮城)と対戦する。


「オレンジ同士の対決に負けるなと言われていました」と愛媛U-18のMF嵐亮太朗(3年)が話したように、オレンジ色をチームカラーに持つ両チームの一戦は、立ち上がりから愛媛U-18の勢いが鋭い。

 DF佐藤優馬(1年)とDF石原拍(2年)の両センターバックからきっちりボールを動かせば、ドイスボランチの嵐とMF仙波隼太郎(1年)がことごとくセカンドボールを回収し、右サイドのDF瑞慶覧長汰(3年)とMF浦添朝仁(3年)で攻撃をテンポアップ。「4-4-2でマッチアップしてくる相手に対して、どういうふうにポジションを取っていくのか、どういうふうに崩していくのかというところで、相手を見てプレーすることが凄くできたのかなと思います」とは北内耕成監督。早々にゲームリズムを引き寄せる。

 一方の清水ユースはややイージーに前へと蹴り込む回数が少なくない中で、左サイドハーフのMF山崎瑛晴(1年)とトップ昇格内定のMF土居佑至(3年)にボールが入った時には、単騎で崩す形も。16分には左から山崎がクロスを上げると、FW中村扇大(3年)のヘディングは枠の左へ外れたが、前半のチャンスらしいチャンスはこれぐらい。なかなか攻撃の時間を作れない。

清水ユースの攻撃を牽引するアタッカー、土居佑至


 26分には愛媛U-18に連続で決定機。右サイドから佐藤がロングスローを投げ込むと、仙波のシュートはクロスバーを叩き、こぼれを拾ったFW青木壱清(3年)が打ち切ったシュートも再びクロスバーに弾かれたが、どよめくスタンド。31分にも嵐が右へ振り分け、俵の折り返しに青木が枠へ収めたシュートは、清水ユースのGK後藤悠貴(3年)がキャッチしたものの、相次いで惜しいシーンを作り出す。

 43分も愛媛U-18。今度は佐藤が左からロングスローを放り込み、ニアでDF平野皓大(1年)が合わせたヘディングは、ゴールカバーに入った清水ユースDF岩永京剛(3年)がかろうじてクリア。「奪ったボールを前にどんどん運ぶことで、ゴールに向かって進んでいくことができていたのかなと思っています」とは青木。それでも愛媛U-18ペースの前半は、スコアレスで推移する。


 後半は先に清水ユースが決定的なチャンスを迎える。4分。岩永を起点に土居が右からラストパス。中村が打ち込んだ枠内シュートは、亀山がファインセーブで応酬するも、劣勢の前半を経た王国の若武者たちに、オレンジの希望の灯がともる。

 6分はまたも愛媛U-18に連続で決定機。MF田中碧(3年)の丁寧なラストパスから、抜け出した俵のシュートは後藤が果敢にキャッチ。さらにその一連から相手ボールを高い位置で奪い返した俵が、またも枠内へシュートを打ち込むも、ここも後藤が好セーブ。どうしても1点が奪えない。

果敢にチャンスへ顔を出した愛媛U-18FW俵拓斗


 ただ、ここからは清水ユースの押し込む時間が増加。「後半に11番が入ってから、相手のプレッシングが速くなった印象がありました」と亀山が話したように、後半開始から投入されたFW宇山桂介(3年)と中村の2トップが前線から積極的にプレスへ奔走しつつ、さらに途中出場のMF望月蒼太(2年)とDF針生涼太(3年)が縦に並んだ左サイドが活性化したことで、少しずつチャンスの芽が生まれ始める。

 39分は清水ユース。左サイドを切り裂いた望月がクロスを送り込み、ニアに潜った宇山はわずかに触れなかったものの好トライ。44分も清水ユース。切れ味の増す望月が前に運びながらラストパスを通し、宇山がエリア内で反応するも、飛び出した亀山が間一髪でクリアする。

「目の前の相手に負けないことだったり、球際で負けないことだったり、そういうところはずっと声を掛けてやってきたので、ゼロで抑えてくれたところは良かったです」とは愛媛U-18のキャプテンマークを巻いた青木。前後半の90分間と、延長の20分間を終えても最後までスコアは動かず。決勝進出の行方はPK戦へと委ねられる。


 『11メートルのロシアンルーレット』の主役をさらったのは、愛媛U-18の守護神だった。相手の1人目のキッカーに中央へと蹴り込まれたことで、亀山は自身の中での思考を改めて整理する。

「最初はサイドネットの方の際どいところまで思い切り飛んで止めようと考えていたんですけど、1本目が真ん中に来たことで、最後までしっかりボールを見て、そこから飛ぼうと思い直しました」。

 清水ユース2人目のキッカーがクロスバーにぶつけると、3人目のキックは「相手と駆け引きしながら、自分が1回止まって、相手のキックモーションと身体の向きを最後までしっかり読んで、止めたという感じでした」と明かす亀山が渾身のシュートストップ。さらに4人目のキックも完璧に弾き出すと、チームメイトたちが殊勲の背番号1の元へ駆け寄ってくる。

「PK練習は1回もしないで来たんです。もうPKになったら運なので、彼らには『思い切り蹴ってき!』と言って、僕はPK戦を怖くて見られずにロッカーへ下がっていたら、サブの選手が『入ったよ!止めたよ!』と言いに来てくれました」と笑ったのは北内監督。愛媛U-18がシビアな110分間プラスアルファの激闘を制して、仙台ユースが待つ決勝へと駒を進める結果となった。



試合後に健闘を称え合う両守護神。清水ユースの後藤悠貴も素晴らしいGKだった



 印象的なシーンがあった。延長戦が始まる直前。ピッチサイドに近い位置で愛媛U-18の11人が作っていた円陣から、「アイツらのためにやるぞ!」という声が上がると、選手たちは揃ってスタンドの方を向きながら、もう一度勝利のために戦う気持ちを奮い立たせる。声の主の青木は、その時のことをこんな言葉で振り返る。

「キャプテンの森実を筆頭に、ケガで出れない人もいましたし、メンバーに入れない人もいる中で、そういう人たちのためにも責任を持って、自分たちがピッチに立っていることに感謝しながら、全力で戦わないといけないと思ったので、そういう声かけをみんなとしましたね。サポーターのみなさんも含めて、本当にああいう声援が力になりましたし、頑張ろうと思えました」。

延長開始直前の円陣。スタンドの仲間に想いを馳せる


 プレーオフを控えた練習中に肉離れを負ってしまい、この日はスタンドから声援を送り続けていたキャプテンの森実昊(3年)は、何度も感情を揺さぶられながら、チームメイトたちの雄姿を頼もしく見つめていたという。

「今年はキャプテンをやらせてもらった自分もそうですし、3年生の福石(拳太郎)もケガばかりで、なかなか試合に絡めなかったんですけど、出ているみんなが僕らの想いも背負って、チームを1つにして戦ってくれたので、みんなを信じていましたし、勝てて良かったです。試合前の円陣の時には、自分が出られない悔しさで涙が出てしまって、勝った時も嬉しくて涙が出てしまって、今日は感情があふれる日になりました」。

試合後はピッチに下りて仲間と喜びを分かち合った愛媛U-18のキャプテン、森実昊


 選手たちから自発的に仲間を想う気持ちが出てきたことは、指揮官にとっても嬉しいシーンだったようだ。「もうずっと言っているんですけど、『田舎のチームは個ではなく、チームで戦わないといけない』と。『試合に出られないヤツらの分もやらないといけない。そういうところがJクラブでも必要なんだ』ということは常日頃から言っているので、それを表現してくれたことは凄く嬉しいですね」。このチームが纏っている確かな一体感が、シビアな試合を勝ち抜くうえで大きな武器になっていることは、あえて言うまでもないだろう。

 次の1試合は、プレミアリーグ昇格を懸けた一戦であると同時に、3年生にとってはこのアカデミーで戦うことのできる最後のゲームでもある。もうやるしかない。もう走り切るしかない。もう勝つしかない。

「同じ学年のみんなとは本当に楽しくやってきて、後輩も本当にみんな面白いヤツが多くて、とにかく仲が良いチームだと思っているので、最後にみんなで笑って終わりたいなと思います」(亀山)

「仙台もクラ選準優勝ということで、本当にいいチームだと思います。でも、ウチもそこは全然負けていないので、本当に楽しみですし、次がみんなでできる最後の試合なので、勝って終わりたいですね。もうプレミアに行ける気しかしないです」(青木)

「トップチームがJ3にいるタイミングで、ユースがプレミアに昇格するというのは、今までに1回もないと聞いているので、みんなで歴史を作ろうと思います。もう絶対にプレミアへ行きます!」(森実)

 この5年間でプレーオフ進出は実に4度目。機は十分に熟したと言っていいだろう。ピッチでも、スタンドでも、全員が自分の役割をまっとうできるオレンジ軍団が挑む、2025年のラストダンス。果たすべきはまさに『4度目の正直』。愛媛U-18は堂々と、胸を張って、新たな歴史の扉を逞しくこじ開ける。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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