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[サニックス杯]見据えるのはJリーグ570試合出場の「偉大な父を超える」未来。新潟U-18MF田中琉磨がトップのキャンプ参加で感じた明確な基準

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アルビレックス新潟U-18の新司令塔、MF田中琉磨(1年=松本山雅FC U-15出身)

[3.13 サニックス杯 新潟U-18 0-1 青森山田高 グリーンフィールドA]

 恵まれた環境の中で、着実に成長を続けてきた感覚は、間違いなく自分の中に宿っている。それでも、目指すべき頂へとたどり着くためには、まだまだやるべきことが少なくない。もっと上手くなりたい。もっと強くなりたい。飽くなき向上心を軸に据え、とにかく行けるところまで突き進む。

「去年は3年生頼みだった部分もあったんですけど、今年は自分も2年生になる年で、トップチームに帯同させてもらったことで、そこで感じたこともありますし、今までとは全然違うプレーができていると思うので、『今年はオレがチームを引っ張ってやる』という気持ちは強いです」。

 相手と真っ向からやり合えるパッションと、相手を巧みにいなすテクニックを兼ね備えた、アルビレックス新潟U-18(新潟)の新司令塔候補。MF田中琉磨(1年=松本山雅FC U-15出身)は多くのものを手繰り寄せるための強い決意を携えて、勝負の2026年へと飛び込んでいる。


「北信越にはああいうチームはあまりいないですけど、バチバチした戦いは好きなので、楽しかったですね。勝ち切れなかったのは課題ですけど、次に繋がるような良い経験ができたと思います」。

 『サニックス杯国際ユースサッカー大会2026』(福岡)の予選リーグ3日目。新潟U-18が対峙したのは、高校年代の中でも屈指の強度を誇る青森山田高。田中は[4-1-4-1]システムの中盤アンカーに入り、密度の高いピッチの中を逞しく、しなやかに、泳ぎ回る。

「球際では意外と勝てたところもありましたし、相手をかわしてパスを出すことだったり、質はまだどうかわからないですけど、サイドへの展開も意識はできていたと思います」。適切なポジショニングでボールを受け、ビルドアップの基点を作りつつ、時には長いボールで左右へ展開する姿は、まさに司令塔のそれ。一方で相手と身体をぶつけ合うこともまったくいとわない。

 さらに、好プレーが出た時には雄叫びを上げるシーンも。「あれは岡崎(我徠)が『やるぞ』と言っていたんです(笑)。それでチームも良い雰囲気になるので、2人で叫んだりして、チームを良い方向に持っていこうと話していました」。そのあたりにも自分がチームを牽引していくという、確かな想いが滲む。

 試合には0-1で敗れたものの、敵将の正木昌宣監督も「あの14番はいい選手ですね」と高評価を口にしたように、一定以上のパフォーマンスを披露した田中の存在感は、80分間の中でも随所でキラリと輝いた。



 中学時代は松本山雅FC U-15でプレーしていた田中は、「北信越で一緒に戦う中で、僕らの代でも上手い選手が何人もいましたし、何回か練習参加させてもらった中で、他のクラブの練習にも行ったんですけど、アルビはレベルも高かったですし、凄く良い環境だったので、『サッカーのことだけを考えられるな』と思いました」と新潟の地で勝負することを選択する。

 1年生だった昨シーズンも公式戦の出場機会は掴んでいたが、本人の中では思い描いていたイメージと現実とのギャップがあったという。「『ユースに入ったら、もう絶対にすぐスタメンで出る』と意気込んでいたんですけど、なかなか出れなくて、メンタル的にも、プレー的にも、全体的にもっと自立してやっていかないといけないなと思いました」。

「中盤では颯優さんが本当に上手かったので、それを近くで見て、良い刺激をもらえた部分も大きかったですし、今は攻撃を作る部分やセカンドや球際の勝つところを意識してやっています」。とりわけキャプテンを務めていた竹ノ谷颯優スベディから学んだことは少なくなかったようだ。

 今季はトップチームのキャンプにも1週間近く参加。プロサッカー選手たちの息吹を間近で感じたことで、自身の携えるべき基準も一気に引き上げられた。

「もう強度がユースと全然違ったので、『トップに上がるにはこれぐらいのレベルの中でやらなきゃな』と思いましたし、その基準をユースにも持ち帰って、『これぐらいでやるぞ』ということを、今はみんなと頑張っていますね」。

「とにかく戦うところは意識してやっていたので、そこは結構できたと思いますけど、やっぱり小野裕二さんとマテウス・モラエス選手は練習から違いを見せてくれましたし、もっと上を見なきゃいけないなと。トップは今J2ですけど、それよりレベルの高いチームが日本にあると思うと、『このままじゃまだまだダメだな』と感じました」。

 16歳の柔らかい心に刺さった強烈な刺激は、本人がこれからもたゆまぬ努力を続ける限り、さらなる成長を約束してくれるはずだ。



 田中の父は、横浜F・マリノスや東京ヴェルディ、名古屋グランパス、松本山雅FCで22年間にわたって現役を続け、Jリーグ通算570試合出場を誇る田中隼磨氏。日本サッカー界にその名を刻んだレジェンドプレイヤーだ。

「松本にいる時は街を歩いていても『田中隼磨の息子だ』と言われることもあって、プレッシャーを感じることもあったんですけど、今は『お父さんより上を行くから』と言うようにしていますし、『オレは意識していないぞ』というスタンスを取っています(笑)」

 時にはアドバイスをもらうこともあるそうだが、やはり的確な課題を指摘されるという。「自分の中では守備が苦手なので、攻守の切り替えはメッチャ言われますね。それも自分のためを思って言ってくれているので、ちゃんと聞き入れて、もうやり続けるしかないと思っています」。

 偉大な功績にリスペクトを払いつつ、“息子”として“父”へのライバル心もはっきりと持ち合わせている。「お父さんは日本代表で1試合に出ていると聞いたので、その数字は絶対に超えたいです。もっと代表の試合に出ることで、お父さんは絶対に超えたいですね」。



 そのためには、もちろん目の前の日常を積み重ねていくことでしか、自分自身を進化させていく方法はない。高校2年生になる今シーズンへの意気込みと覚悟が、力強く響く。

「今年の個人の目標はトップで試合に出ることです。チームとしてはプレミアに上げることと、クラブユースは優勝という目標を掲げています。今はまだまだチームの練習で緩い部分があったりするので、その時に自分が声を掛けて良い雰囲気に持っていきたいですし、球際でも緩くなったら、ちゃんとみんなに『それじゃダメだぞ』と言えるような関係になりたいなと思っています」。

 登るべき山が高ければ高いほど、それを制そうとする過程は、過不足なく自分の力になる。確固たるサッカー観とあふれる闘志を合わせ持つ、新潟U-18のコンダクター。田中琉磨がこの世界を駆け上がっていく成長譚は、まだまだこれからが面白い。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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