beacon

ブラジルの猛攻を完封、岩清水「W杯で攻め込まれる経験はしていた」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[8.3 ロンドン五輪準々決勝 日本2-0ブラジル カーディフ]

 耐えに耐えての完封勝利だ。立ち上がりの約20分間はブラジルの勢いに押し込まれ、防戦一方。我慢の時間が続いた。DF熊谷紗希は「苦しかったし、相手も勢いがあった」と認める。それでも「DF4人で声をかけ合って、『今、耐えよう』と言い続けた。(大儀見)優季の1点が入って流れが変わった。あの時間帯をゼロに抑えたことが勝ちにつながったと思う」と力説した。

「耐えに耐えながら、相手の隙を突くサッカーになったけど、選手がよく結果を出してくれた」。佐々木則夫監督は選手を称える。後半の途中からは「サッカーを切り替えて、リトリートしてカウンターというサッカーをしないと、この状況を回避できないと思って徹底した」と、ベンチから指示を出したという。

「現在のなでしこの状況ではそれが一番いいのではないかと、切り替えた」。前からむやみにプレッシャーをかけるのではなく、ある程度引いてブロックをつくり、ブラジルの攻撃を跳ね返す。「相手の持ち方が悪ければ、ラインを上げて、プレスをかけて狙う。ダメならすぐにリトリートしてカウンター。その切り替えを徹底した中で、選手はよく我慢しながらやってくれた」。ある意味、現実的な戦い方だったが、選手は冷静さを失わず、最後まで集中してブラジルの反撃を跳ね返した。

 DF岩清水梓は言う。「W杯のアメリカ戦でも、攻め込まれる経験はしていた。『しのぐ』ということに関しては、経験値がまさったと思う」。粘り強く耐え、少ないチャンスを生かす。世界一に上り詰めた昨年の女子W杯でも、この日のような試合展開の中、準々決勝ではドイツ、決勝ではアメリカに競り勝ってきた。

「耐えるサッカーというのは、ドイツ(での女子W杯)でも数試合やっている。あの状況でどう対応するかは、感覚の中で彼女たちの体にしみ込んだものがあるだろうし、精神的にも肉体的にも戦術的にも培ったものがあるのではないかと思う」。佐々木監督もそう指摘した。

「やばいのは何回もあった。そこはみんなの気迫だと思う」。岩清水は胸を張る。世界の頂点に立った女子W杯を彷彿とさせる気持ちの勝利。グループリーグまではどこか波に乗り切れていなかったなでしこジャパンに、世界女王らしい“強さ”が戻ってきた。

(取材・文 西山紘平)

▼関連リンク
ロンドン五輪特集ページ

TOP