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ユース取材ライター陣が推薦する「クラセン注目の11傑」vol.2

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土屋記者が推薦するDF柴田翔太郎(川崎フロンターレU-18、3年)

 ゲキサカでは7月22日に開幕する夏のクラブユースチーム日本一を懸けた戦い、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の注目プレーヤーを大特集! 「クラセン注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター各氏に紹介してもらいます。第2回は(株)ジェイ・スポーツで『Foot!』ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任し、現在はフリーランスとして東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史記者による11名です。

 土屋記者「群馬、大阪、山口、宮崎と4会場での分散開催となったクラブユース選手権。今回も最高学年に当たる3年生の中から、11人の注目選手をチョイスしました。クラブユースのチームに所属する3年生の選手たちにとっては、2024年の中でも最初で最後の全国大会がこのクラセン。もちろん勝敗は付いてくるのですが、この真夏の10日間でいろいろな思い出を作ってほしいなあと思っています!」

以下、土屋記者が推薦する11人

GK後藤亘(FC東京U-18、3年)
既にトップチーム昇格も内定。この世代屈指の守護神であることは言うまでもないだろう。チームの副キャプテンを務めている今シーズンは、公式戦でキャプテンマークを巻くことも多く、トータルの高い能力に裏打ちされた安定感を放ちながら、昨シーズン以上に最後方からチームメイトを鼓舞する姿勢も頼もしい。印象的だったのは今季のプレミアリーグで柏レイソルU-18と3-3と引き分けた試合後。本人に感想を尋ねると、「メチャメチャ楽しい試合でした。3失点してしまった後に『みんなでもう1回顔を上げて、楽しんでやろう』ということを発信して、それが後半の最後に追い付くという形に繋がったんじゃないかなと思いますし、全体的には悔しいですけど、充実感はありました」という言葉が返ってくる。ある意味で自分のパフォーマンス以上に、チームとしての結果の引き寄せ方や、グループの成長へ視線が向いているあたりに、サッカー選手としてスケールアップしている様子が垣間見えた。

DF柴田翔太郎(川崎フロンターレU-18、3年)
川崎フロンターレU-18がゴールを奪った時に、必ずと言っていいほどカメラに向かってアピールするのがこの人だ。それは自分がその得点への流れに関わっていても、関わっていなくても。「このチームは僕が下を向いたら元気がなくなると思うので、どんなに調子が悪くても元気だけは見せてやろうと思っています」。チーム屈指のムードメーカーでもあるMF齊名優太(3年)と並んで、このグループに大きなエネルギーをもたらしている。昨季までは左サイドバックで出場することが多かった中で、今シーズンは右サイドバックに固定され、オーバーラップから繰り出すクロスと、正確な右足で蹴り込むセットプレーも含めて、ここまでの公式戦で8アシストを記録。夏前にはやや不調に陥ったが、「これを乗り越えた先にもっと大きな選手になれるという確信はあるので、まず自分に目を向けて、もっと上手くなってやろうという情熱は忘れていないです」と、前向きなメンタルでさらなる成長を期している。

DF山田海斗(ヴィッセル神戸U-18、3年)
191センチの長身を誇り、丁寧なビルドアップを繰り返せる足元の技術も装備しながら、凛々しい風貌も併せ持つ“ハイスペックセンターバック”。昨シーズンからレギュラーを確保し、プレミアの舞台で実力を伸ばしていく中で、昨秋にはクラブが提携するアストン・ビラ(イングランド)へと短期留学。「球際の部分では結構やれましたし、自分の強さは出せましたけど、向こうの選手はプレスも速いので、『次のプレーの選択肢を常に多くしよう』とは考えるようになりました」と小さくない経験を得た。今季はルヴァンカップでメンバーに入り、ピッチでのプレーは叶わなかったものの、「失点してから(佐々木)大樹くんが大きい声を出して盛り上げていて、その大樹くんが途中から出てPKも決めたので、『常にチームのために動いていたら、そういうチャンスも来るのかな』と思いました」とアカデミーの先輩から試合と向き合う意識も学びつつ、改めてトップチームでの出場機会を狙っている。

DF山崎遥稀(サガン鳥栖U-18、3年)
まさに「ポリバレントにも程がある」と言いたくなるような、マルチプレーヤーぶりを発揮し続けている。本来のオリジナルポジションはストライカー。中学時代は鳥栖U-15ゴールゲッターとして日本一も経験してきたが、残留争いに喘いでいた昨季のプレミア終盤戦は3バックの中央を任されると、「初めてのポジションでしたけど、プレッシャーは意外と感じなかったですし(笑)、挑戦する気持ちでポジティブにやっていました」と新たなポジションでも高さと強さを生かして残留に貢献。今シーズンはセンターバックに加えてボランチを務めることも多く、「もうフォワードへの未練はそこまでなく、切り替えてやっています」と新境地を開拓し続けている。さらに副キャプテンという役割にも意欲的。「ずっと試合に出てきた分、経験値もあると思うので、自分が一番声を出して、引っ張ってやっていきたいです」。何足もの草鞋を履く山崎の存在は、チームにとって絶対に欠かせない。

DF池間叶(名古屋グランパスU-18、3年)
若鯱のレフティが明らかに存在感を増してきた。昨シーズンは左サイドバックが主戦場。「前に陽人くん(鈴木陽人・名古屋グランパス)がいたりバシくん(石橋郁弥・関西学院大)がいて、中央には康介くん(内田康介・関西学院大)がいて、本当に大きな存在の選手からいろいろなものを受け取ってきました」と語るように、先輩たちから吸収してきた多くのものを力に変えながら、チームのシステム変更を経て、今シーズンからトライしている左ウイングバックでも正確な左足のクロスを武器に、攻撃の基点を作り続けている。もともとはボランチだったこともあって、サイドバック時にはジンチェンコ(アーセナル)を参考に、内側も外側も取れる“偽サイドバック”的に振る舞っていたサッカーIQの高さも特徴的。「去年から試合に出ている中で、チームを引っ張っていく存在になれるように、殻を破っていかないといけないと思っています」。本格ブレイク間近の注目株だ。

MF橋本日向(サンフレッチェ広島ユース、3年)
2年生だった昨シーズンは前期の終盤から左サイドバックの定位置を掴み、攻撃時には右サイドバックの石原未蘭(流通経済大)とドイスボランチのような立ち位置を取る、野田知監督がトライした特殊なビルドアップの形の中で、完璧な立ち回りを披露。「自分がもらっても、すぐ横にいる未蘭くんが何とかしてくれるので、あの形は結構やりやすいなと思っていました」とは本人だが、戦術理解度の高さでチームの重要なタスクをまっとうした。迎えた今季は、もともと中学時代から主戦場だったボランチの一角として、MF中島洋太朗(3年)とコンビを組み、「去年ぐらいからボランチの仕事をやっているので、ボランチだけというのも慣れてきています」と“本職”の中盤中央で安定したパフォーマンスを発揮。チームの好調の一翼を担っている。「去年自分が経験したことを今年もみんなに対して伝えていったり、見せていければなと思います」。主力の自覚も十分の“効いている系”ボランチ、要注目。

MF高橋友矢(横浜FCユース、3年)
プレミアリーグEASTの前半戦を首位で折り返した横浜FCユースの中で、全体のバランスを整える“中盤の心臓”的な役割を担う。自身も「前に行きたい選手が多いので、自分がリスク管理と二次攻撃に備えるところは多少意識しています」と話すように、アンカー気味の位置で守備を引き締めながら、機を見たタイミングでサイドへ展開するのも、相手の背後へ正確なフィードを落とすのもお手の物。攻撃では田中碧、守備では遠藤航を参考にしながら、攻守で試合に関わり続けるパフォーマンスは常にハイレベルをキープしている。ドイスボランチを組むMF笹歩睦(3年)とは小学生時代からこのクラブのエンブレムを付けて共闘してきた関係性であり、「ずっと一緒にやっているので、アイツが良いプレーをしたら悔しいですし、ライバル意識もありますけど、チームメイトとして良い関係でやれているのかなと思います」とのこと。彼らが取り仕切る中盤がハマブルー悲願の日本一のカギを握るのは間違いない。

MF望月耕平(横浜F・マリノスユース、3年)
数々の好選手が背負ってきた横浜F・マリノスユースの10番を、2年生から背負ってきた実力は本物だ。「どこでもできるのが自分でも強みだと思っています」と自身でも言い切るように、中盤であればどのポジションでも水準以上のパフォーマンスを発揮できるものの、やはりゴールに近い位置で仕事をできる際立った才覚が、相手にとっても脅威であることに疑いの余地はない。昨シーズンは主力としての自覚や10番のプレッシャーもあって、思うようなプレーを出し切れず、チームもプレミアリーグから降格。さらに目指してきたU-17ワールドカップのメンバーからも落選するなど、難しい時期を過ごしてきたが、最高学年になった今季はプリンスリーグ関東でも結果に繋がる活躍を続けている。2年前のクラブユース選手権では決勝で敗れて準優勝を味わっているだけに、望月は「自分は点を獲って、みんなでワーッてなるのが好きなんです」という歓喜のシーンを想像しながら、届かなかった頂点への再挑戦に意気込む。

FW寺下翔和(湘南ベルマーレU-18、3年)
「決定力だけは今年に入って誰にも負けないぐらい自信がありますね」。そう言い切るだけの結果を今シーズンは叩き出してきた。とりわけ圧巻だったのはクラブユース選手権の関東予選。柏レイソルU-18から2点、横浜F・マリノスユースから1点を奪うと、全国切符を懸けた東急SレイエスFC U-18との決戦でもきっちり1ゴールを奪って勝利に貢献。それでも「自分はプロを目指しているので、これぐらいやらないと見てもらえないですし、まだまだこんな結果と内容だけではトップに上がれないと思います」と口にするような、飽くなき向上心も備えている。利き足の左足は絶対的な武器だが、右足でも頭でも決め切れるゴールパターンの豊富さも魅力的。今回の夏の全国の目標も「去年の全国では最初の2試合がベンチで、3試合目はベンチ外だったので、必ずその借りをピッチで返したいなと思います。点を獲って、一番目立ちます」ときっぱり。アグレッシブにゴールを狙い続ける湘南の点取り屋から、目が離せない。

FW石井秀幸(ファジアーノ岡山U-18、3年)
実に軽やかにゴールをさらっていく印象のあるストライカーだ。参考にしているのは去年まで岡山でプレーしており、今季はJ1でも結果を残している坂本一彩(ガンバ大阪)。2年生だった昨季も優勝を決めたイギョラ杯の決勝や、プレミアリーグプレーオフの1回戦で、サラッと大事な得点を重ねていく。ただ、歓喜を爆発させる姿はどちらかというと派手な部類。そのギャップもなかなか面白い。一方で器用さも兼ね備えており、「タイミングを図って背後に抜けるとか、手前でビルドアップに参加するとか、そこを使い分けながら、ゴール前に入っていくところは自分の得意なプレーかなと思っています」と自身も語るように、ボールへと積極的に関わり、チャンスを演出していくことも少なくない。「昔から自分は勝負強いと思っていて、ビッグマッチになればなるほどできるというのは、自分に言い聞かせているところです」。チームが昨年度の大会で記録したベスト4を超えるためには、この男の得点が必要不可欠だ。

FW吉原楓人(柏レイソルU-18、3年)
左サイドで前を向いたら、ほとんどそのままドリブル勝負。縦に行き切れるスピードと推進力はもちろん、カットインで中央に潜ってそのままゴールを狙う力も完備。本人は「去年はドリブルで結構行けていたのに、今年は行けていないので、そこが今の課題ですね。相手が2枚で来ても、そこを抜き切らないといけないかなと思います」と話しているが、さらにパワーアップした感すらある突破力は、強力なサイドアタッカーの居並ぶプレミアリーグでも群を抜いていると言っていいだろう。U-15時代はチームのメインキャストではなかったが、「もともとみんなより上手くなかったので、ずっと練習していました」という積み重ねの成果が、昨シーズンの途中から一気に開花。チームを率いる藤田優人監督も「日本にいる高校生でも努力できる才能はベスト3に入るんじゃないですか」と高評価を口にしている。そのプレーを見れば、のびやかに解き放たれつつあるポテンシャルは一目瞭然。スペシャルなドリブラーが全国を席巻する。

土屋雅史
Text by 土屋雅史

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