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[MOM4780]大宮U18FW磯崎麻玖(3年)_土壇場で貫いたのは「自分を信じる力」。背番号9のエースがGS突破を手繰り寄せる劇的決勝点!

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劇的な決勝弾を沈めた大宮アルディージャU18FW磯崎麻玖(3年=大宮アルディージャU15出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.26 クラブユース選手権(U-18)GL第3節 大宮U18 2-1 磐田U-18 ロード宮城総合運動場 陸上競技場]

 若きオレンジ軍団は追い込まれていた。このままのスコアでは敗退が決まってしまう後半も、既にアディショナルタイムに突入している。だが、その男は不思議と何かが起きそうな予感があったという。そして、それを起こすのは絶対に自分だということも、また同時に確信していたのだ。

「なぜかわからないですけど焦りはなくて、『ワンチャンス来るな』ってずっと思っていました。そうしたらああいうクロスが来て、『チャンスだ!』と思いましたね」。

 トップチームへの昇格も決まっている、大宮アルディージャU18(関東1)のナンバー9。FW磯崎麻玖(3年=大宮アルディージャU15出身)の『自分を信じる力』が、苦しむチームに最高の歓喜をもたらした。


 ジュビロ磐田U-18(東海3)と対峙した、クラブユース選手権のグループステージ最終節。1位のみが勝ち抜けというレギュレーションの中、磐田U-18には勝点で上回られているため、勝利以外に次のラウンドへと駒を進める方法はなかったが、前半から大宮U18は押し込まれる展開を強いられる。

 それでも前半終了間際にはMF斎藤滉生(2年)のゴールで先制したものの、後半に入って同点弾を献上。再び1点が必要な状況に陥ったチームは、システムを3-4-3から3-5-2にシフト。磯崎とFW野口蒼流(2年)を最前線に並べ、高さという武器で勝負する道を選択する。

「後半の初めに追い付かれてしまってからは、ラフにボールが入ってくることはわかっていたので、良いポジショニングを考えていました」(磯崎)。

 雨の中のピッチコンディションと、チームが置かれている状況を考えれば、ロングボールでの勝負は想定内。持ち味の高さを生かすための最善を、ピッチの中で探り続けるが、そう簡単にチャンスは訪れない。70分間が経過した段階で、チームのシュート数はわずかに2本。9番はまだ1本のシュートも打てていなかった。


 今シーズンは思い描いていたようなパフォーマンスを発揮してきたとは言い難い。ケガの影響で戦線離脱していた時期もあり、チームもなかなか勝ち切れない試合が続く。本人も「やっぱりネガティブなことを考えていた時期も結構ありましたね」と正直な心情を明かしている。

 だが、指揮官の言葉が18歳の心に響く。「そういう時に(丹野友輔)監督とも話して、『結局やるのはオマエだぞ』と言われたんです。それでも、言われた後もなかなか結果は残せなかったんですけど、その言葉もあって、『自分を信じてやるしかないな』と思っていました」。すると、クラブユース選手権直前のリーグ戦では2試合連続ゴールを記録。確かな復調の兆しは見えていた。

 70+3分。キャプテンのDF大西海瑠(3年)とDF藤原朝日(2年)が左サイドを崩すのを見て、一瞬で狙いは定まった。「あそこに入って行くというのが、自分の武器でもありますから」。ポイントはニア。藤原がクロスを上げた瞬間に、全力で信じたポイントへ飛び込んでいく。

 頭にボールが当たった感触は間違いなくあった。放たれた軌道は左スミのゴールネットへ突き刺さる。「朝日が良いクロスを上げてくれたので、後は入って行くだけでしたし、ああいうプレーは今練習でもやっていて、狙い通りのゴールだったなと思います。マジで嬉しかったです!」。

 すぐさまチームメイトが興奮した顔で駆け寄ってくる。これがエースの仕事。土壇場で生まれた磯崎のゴールでとうとう勝ち越した大宮U18は、6分間のアディショナルタイムも確実に、丁寧に、潰していく。そして、聞こえてきたのは試合終了のホイッスル。この日唯一のシュートできっちり獲物を仕留めたオレンジのストライカーが、自身の存在を強烈にアピールして、一番大事な結果をチームに力強くもたらした。


 丹野監督がこの日の試合前に、磯崎と交わしたやり取りの話を可笑しそうに教えてくれた。「試合前に『まだクラブユースでゴール決めてないよね』という話をして、『今日決めてくれるんだろうな』って(笑)。でも、見事に決めてくれましたね。これが彼にとって自信に繋がってくれたら凄くいいなと思っていますし、彼の頑張りが結果に結び付いてくれて、それを自信に変えながら、もっと成長してくれたらいいなと思います」。つまりは指揮官も、この男の真価を心から信じていたのだ。

「ここからは歩みを止めちゃいけないというか、もう止まらずにとにかく成長していきたいと思いますし、このゴールを次のステップに繋げられればなと思っています」と個人のことについて触れたあと、すぐに視線はここから先の試合へと向けられる。

「自分たちのプレーをしたいですね。強いプレッシャーを掛けたり、相手コートでコンビネーションで剥がしていったり、そういうところにチャレンジしたいですし、そういうところをここからMAXで3試合、見せていきたいなと思っています」。

 いよいよ覚醒間近。192センチの体躯を誇る、若きオレンジ軍団の背番号9。磯崎麻玖のさらなる爆発は、チームみんなで掲げた日本一という揺るがぬ目標を成し遂げるためには、絶対に欠かせない。



(取材・文 土屋雅史)

●第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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