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みんなでスマホのホーム画面に設定した「0-4の完敗」画像。八戸学院野辺地西は5か月の確かな成長を見せるも延長の末に力尽きる:青森

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八戸学院野辺地西高は延長戦の末に全国には一歩届かず

[11.1 選手権青森県予選決勝 青森山田高 2-0(延長) 八戸学院野辺地西高 カクヒログループアスレチックスタジアム]

 延長戦までもつれ込む激闘の末、青森山田高に敗れ、今年も全国切符にはあと一歩届かなかった試合後。チームを率いる三上晃監督が、こんなことを教えてくれた。

「子どもたちが、あの『0-4』をスマホのホーム画面にしながら、その悔しさを忘れないように日々頑張ってきた中で、80分を通して0-0で踏ん張って、最後に延長でやられはしましたけど、人間なのでどうしても甘えたくなる部分を、ちゃんと忘れないようにしながら努力してきてくれたので、彼らは本当に成長しましたし、頑張ってくれたなと思います」。

 完敗を喫した屈辱のファイナルから、5か月あまり。真剣に絶対王者へのリベンジを目指してきた八戸学院野辺地西高の選手たちは、突き付けられた大きな悔しさを糧に、選手権予選の晴れ舞台でも、力強く、堂々と、成長した姿を披露してみせた。


 6月8日。カクヒログループアスレチックスタジアム。ちょうど1年前に初めて青森制覇の歓喜を味わったオレンジ軍団は、屈辱的な結果に肩を落としていた。インターハイ予選決勝。青森山田と向かい合った一戦は、開始30秒で先制点を献上すると、次々に失点を重ね、0-4で敗戦。あらゆる面で差を見せ付けられる。

「完敗です。一人ひとりが気持ちの部分でも山田に負けていましたし、技術的な部分でも11人どのポジションでも上回ることができなかったので、そういった意味では心技体のすべてにおいて、個人としても、チームとしても、終始上回れなかったなというのが正直な感想です」(三上監督)

 このままでは、選手権予選も間違いなく同じ結果になってしまう。全員が強い危機感を抱いていた中で、選手たちはチームのオフィシャルインスタグラムにアップされた、青森山田戦の試合結果が記載された画像を、みんなでスマホのホーム画面に設定する。

「『みんなでやろう』みたいになって、画像をホーム画面にしたんですけど、もう携帯を開くたびに絶対に見ることになるので、選手権ではこの結果を覆して、必ず勝たないとなというモチベーションになりました」とディフェンスリーダーのDF三浦春樹(3年)が話せば、「やっぱりスマホは毎日使うものなので、その時に画像を見ることで、あの敗戦の記憶は忘れたことがなかったです」とは中盤のキーマン・MF関下煌己(3年)。『0-4の完敗』を自分の中に刻み込み、青森山田へのリベンジだけを見据えて、厳しいトレーニングとも必死に向き合っていく。

インターハイ予選決勝は0-4の完敗を突き付けられる


 11月1日。カクヒログループアスレチックスタジアム。10年連続同一カードとなった、高校選手権青森県予選決勝。オレンジ軍団は絶対王者と互角に渡り合っていた。

「山田さんは入りの15分がとても強いチームなので、チーム全体でそこは失点ゼロで抑えて、前半はリードか、0-0で折り返そうと話していた中で、それがうまくいったのは良かったと思います」とは三浦。右からDF小川拡哉(3年)、DF山本樹(3年)、三浦、MF小向蓮翔(3年)が並んだ3年生4バックは、高い集中力で青森山田の攻撃を1つ1つ凌いでいく。

八戸学院野辺地西のディフェンスリーダー、三浦春樹


「山田戦はセカンドボールの回収が絶対大事だと思ってたので、そこは意識して走りましたし、セカンドボールはいつも以上に拾えていたかなと思います」と口にした関下とFW里村斗望(3年)のドイスボランチも、相手の強度に真っ向から対抗。右のMF真船大駕(3年)、左のMF中原莉央(1年)の両サイドハーフも、プレスバックを一切怠らない。

八戸学院野辺地西の不動のボランチ、関下煌己


「自分がボールを触れる回数が増えると、攻撃にリズムが出てくることは、1年間通してわかっていたので、後悔しないように、絶対ボールにさわろうと思っていました」と語る絶対的エースのMF木村隆太(3年)が攻撃のリズムを作り、1トップに入ったMF野城怜(3年)も果敢なランニングで前線を活性化させる。

八戸学院野辺地西の10番でキャプテン、木村隆太


「試合が始まるまでは結構緊張していたんですけど、試合に入るとそんなに緊張はしないタイプですし、『今日は相手のシュートが入る気がしないな』という気持ちでプレーしていました」と言い切ったGK立花愛絆(1年)もファインセーブを連発。1年生守護神の躍動に、“先輩”たちも100パーセントの熱量で応え、拮抗した時間が続く。

八戸学院野辺地西の1年生守護神、立花愛絆


 小向は試合中に、この5か月間の確かな成長をはっきりと実感していたという。

「インハイの時はみんながひとつになっていなくて、チームのためというよりも、先に自分のやりたいことが出たりする選手が、自分も含めて多かったんですけど、選手権ではまず自分ではなくて、チームのことを優先してゴールを守ったり、攻撃していく選手がもう全員だったんです」。

「それはやっぱり守っている時に一番感じていて、全員が本気で勝ちたいと思って挑んだので、必死でゴールを守った時に、みんなで喜んだり、感情を表に出しながら叫んだり、それでさらにプレーも熱くなったりして、チームがひとつになったと思います」。

八戸学院野辺地西のサイドアタッカー、小向蓮翔


 最後はエクストラタイムで力尽きた。延長戦半5分と7分に相次いで失点。後半の終盤から足を攣らせる選手が続出し、ギリギリの戦いを強いられていた八戸学院野辺地西に、もう反撃するだけの力は、残されていなかった。





 負傷の影響で、この決勝が今大会初出場となった木村は、試合後の表彰式が始まっても、しばらく涙が止まらなかった。

「チームメイトのおかげで、自分も温存みたいな形でここまで来れたことには、本当にみんなに感謝していますし、だからこそこの試合では自分が誰よりも違いを見せて、チームを勝たせるという気持ちは、3年間で一番強い試合だったので、率直に悔しいとも思いましたし、本当に山田が強かったなとも思いましたし、楽しかったですし、いろいろな感情が一気にバーッと来ました」。

 確かな存在感を発揮した1年生の立花は、先輩たちの奮闘する姿を後ろから見ていて、強く感じたことがあったようだ。

「一番後ろで見ていても、ここ1年で一番いい試合でしたし、本当に選手みんなが頑張ってくれていたので、自分も『本当に先輩って凄いんだな』という気持ちになりました。そういう先輩のやり切る姿を見て、自分も人間性でもサッカーでも成長して、2年後のキャプテンを目指して頑張りたいなと思っています」。

 そんな後輩たちに、3年生はまだ大事なプレゼントを贈ることのできる機会が残されている。12月18日から宮城県で開催される『プリンスリーグ東北プレーオフ』に、八戸学院野辺地西は青森県代表として参加が決定。そこで2勝すれば、プリンスリーグ東北への昇格を引き寄せられるのだ。

 加えて、その舞台にはもう1つの大事な“勝つべき理由”が乗っかっている。八戸学院野辺地西高校は来年4月から五戸町に移転することが決まっており、『八戸学院ひばり野西高校』への校名変更が予定されているため、現校名で戦う大会はプレーオフが最後の機会となる。



 みんなとボールを追いかけられるのも、あと1か月だけ。このオレンジのユニフォームを纏って戦うことができるのも、あと2試合だけ。先輩たちが幾度となく跳ね返されてきたチャレンジを、今度こそはっきりとした形にして、『プリンスに上げた代』という称号とともに、胸を張って卒業したい。

「全国に行けなくて悔しい気持ちはあるんですけど。もう切り替えてやるしかないなって。絶対最後までやり切って、PK戦でも何でもいいので、絶対に勝ち上がって、野西をプリンスに参入させたいなと思っています」(関下)

「もうプリンス参入だけが自分たちにできる仕事だと思うので、自分たちは野西の最後の代として、この校名でプリンスに上げて、歴史をしっかり作って、後輩たちに置き土産を残したいです」(三浦)

「絶対にプリンスに参入して、後輩たちに置き土産をあげたいですし、野辺地西という名前でサッカーができるのも今年で最後になるわけで、このユニフォームを着られるのもあと2回だけなので、選手権の悔しさを全部ぶつけようと思っています」(小向)

「まだ引退じゃないので、もう本当にプリンスに上がることが最後に自分たちに残された役目ですし、今年はインターハイ、選手権、プリンス参入という3つの目標を掲げてやってきた中で、2つは逃してしまったんですけど、最後は絶対にプリンスに上がって、いい形で終われればなと思います」(木村)

 何度でも、何度でも、立ち上がる。最後の1試合まで、戦い抜く。野辺地への感謝を胸に、後輩たちの未来のために、次こそは歓喜の瞬間を、必ず。ラストイヤーの原点回帰。八戸学院野辺地西が紡いできた歴史の最終章は、みんなで咲かせる勝利の笑顔で、締めくくる。



(取材・文 土屋雅史)

●第105回全国高校サッカー選手権特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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