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W杯の組み合わせに直結する”消化試合”…日本のポット1浮上は望み薄、ポット3転落を避けるには?

ポット分けには選手たちも意識を向けており、MF久保建英(写真中央手前)も再始動日に言及

 アジア最終予選3試合を残して2026年の北中米ワールドカップ出場を決めた日本代表だが、いわゆる“消化試合”に入っても負けられない戦いは続きそうだ。ここからは1年3か月後の本大会を見据え、戦術の浸透、オプションのテスト、新戦力の抜擢に取り組んでいくことになるものの、目の前の一戦の勝敗も重要。勝敗によって左右するFIFAランキングが、年末に予定されているW杯本大会の組み合わせ抽選会のポット分けに大きく影響するためだ。

 W杯出場権を獲得したバーレーン戦(◯2-0)を経て再始動した22日、報道陣の取材に応じたMF久保建英(ソシエダ)はサウジアラビア戦(25日)の位置付けに言及。FIFAランキングを踏まえて「(W杯抽選会の)ポット分けにも影響する試合になると思うので、突破が決まって安堵するのはいいと思うけど慢心するのではなく、しっかり勝ち点3、勝利を狙っていきたい」と意気込んでいた。

 選手も気になるW杯組み合わせ抽選会のポット分けは、組み合わせ抽選会時点でのFIFAランキングに基づいて行われるのが通例となっている。北中米W杯のグループリーグは12組制で行われるため、開催国3か国を含めた出場国中上位12か国がポット1へ。そして次点の12か国がポット2、続いてポット3、ポット4と振り分けられ、同じポットの国(=FIFAランキングが近い国)同士は対戦しない仕組みとなる。

 たとえば日本は前回カタールW杯の際、FIFAランキング23位で大会に参加していたが、出場国中19位だったためポット3で組み合わせ抽選会に入った。その結果、7位でポット1のスペイン、12位でポット2のドイツと同じ組に。実際、この大会では日本がドイツ、スペインを破り、大陸間プレーオフ経由の出場によりポット4となったコスタリカに敗れるという波乱につながったが、これは例外的ケースであり、本来は上位ポットに入るほうが有利となる。

 前回大会を経験した久保もその考えだ。選手としてFIFAランキングをどれほど意識するかと問うと、「個人的な意見ですけど、上に入れば入るほどいいんじゃないですかね」とシンプルな回答。「それこそ“下剋上”みたいに強い国とやりたい人もいるかもしれないけど、それはグループリーグを突破すればいい話。より公平にというためのポットだと思うので、上のポットに入れば入るほど楽になると思う」と展望していた。

 では、日本が上位ポットに入るためにはどうすればいいのか。

 日本は現在、FIFAランキング15位につけており、2018年以降に導入された現行ルール下では圧倒的最高水準を記録しているが、それでもポット2相当の順位。現時点ではどの国がW杯に参加するかが決まっていないため、厳密にポット分けを想定するのは不可能だが、上位国が順当にW杯に出場すると仮定した場合、開催国3か国とFIFAランキング上位9か国までがポット1に入るため、その次点になるとみられる。

 日本にとって現実的な目標は、このポット2を死守することになる。その理由はFIFAランキングの算出方法において、上位勢は勝ち続けても順位を上げることは難しく、逆に負ければ順位が下がりやすい仕組みになっているからだ。

 FIFAランキングはFIFAが考案の算出方法ではじき出されたポイントに基づいて決まり、そのポイントは試合ごとに増減するという仕組みとなっている。それも勝ち点のように勝利、引き分け、負けに固定のポイントが付与されるのではなく、対戦相手とのポイント差、試合の重要度(W杯予選か、親善試合かなど)によって増減幅が変化。上位に勝てば大幅なポイント増、下位に負ければ大幅減となる。

 たとえば日本が81位のバーレーンに勝利するのと、59位のサウジアラビアに勝利するのとで比較すれば、ポイント増加は後者のほうが大きい。一方、日本がバーレーンに敗れるのと、サウジアラビアに敗れるのを比較すると、ポイント減少は前者のほうが大きくなる。また試合の重要度に関しては、W杯予選は親善試合の2.5倍の係数がかけられ、これがそのまま増減幅に直結するという仕組みだ。

 日本は20日のバーレーン戦に勝利したことで、すでに+5.25のポイント加算を獲得している(正式に算入されるのは次回のFIFAランキング発表時)。そして25日のサウジアラビア戦では、勝敗によって次のようなポイント増減が見込まれる。

▼サウジアラビア戦のポイント増減
勝ち:+7.09
引き分け:-5.41
負け:-17.91

 もし日本がサウジアラビアに勝てば、バーレーン戦に勝利した時以上のポイント加算を勝ち取れることになる。一方、もし敗れることになれば、バーレーン戦で勝ち得た3試合分以上のポイントを一気に喪失することになってしまう。

 なお今年6月には現在26位のオーストラリア戦に加え、127位のインドネシア戦を控えている中、さらにリスキーな連戦となる。6月時点での正確な係数は次回のFIFAランキングが発表され次第、確定する見込みだが、便宜上現在のポイントで計算すると、対戦結果によって以下のような増減が見込まれる。

▼オーストラリア戦のポイント増減
勝ち:+9.91
引き分け:-2.59
負け:-15.09

▼インドネシア戦のポイント増減
勝ち:+2.88
引き分け:-9.62
負け:-22.12

 これを踏まえると、もしサウジアラビア戦からインドネシア戦まで3連勝を収めたとしても、ポイント加算は合計19.88ポイントにとどまる一方、もし3連敗を喫した場合は合計-55.21ポイントという大打撃となる。これを現時点でのFIFAランキング(以下記載)に照らし合わせると、3連勝しても15位にとどまるものの、3連敗すれば21位転落となり、他国のポイント加算次第ではポット3相当(24位)まで一気に転落する可能性もある状況だ。

▼現状のFIFAランキング(10位〜25位を抜粋)
10.ドイツ 1703.79
11.ウルグアイ 1695.91
12.コロンビア 1694.44
13.クロアチア 1691.59
14.モロッコ 1688.18

15.日本 1652.79

16.アメリカ 1645.48
17.セネガル 1637.25
18.イラン 1635.31
19.メキシコ 1627.40
20.スイス 1625.16
21.デンマーク 1611.49
22.オーストリア 1589.84
23.韓国 1585.45
24.エクアドル 1560.13
25.ウクライナ 1554.94

 なお、日本は最終予選終了後にも7月にEAFF E-1選手権、9月、10月、11月に親善試合を控えており、特に親善試合では係数の大きい上位国との対戦が組まれるとみられているため、一定のポイント加算は期待できる。もっとも親善試合はW杯予選よりも係数の小さい試合となるため、増加幅は限定的。その一方、日本がFIFAランキングを争う欧州強豪国は係数の大きいW杯予選をここから数多く戦う予定となっており、特に予選突破をするような国は大幅なポイント加算が見込まれているため、日本が親善試合で連勝していてもポイント加算で差をつけることは難しくなる。

 したがって、日本がここからポット1相当の順位を目指すのは現実的に難しいと言える。もしポット1入りの可能性があるとすれば、上位国が揃って予選敗退するという大波乱に期待するしかない状況だ。一方、ここから連敗が続けばポット3落ちの可能性は十分に残されている。そのため、まずは最終予選の残り3試合で着実に勝利を重ね、このまま15位水準を死守することが有利なポット分けを引き寄せることにつながる。
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(取材・文 竹内達也)

●北中米W杯アジア最終予選特集
竹内達也
Text by 竹内達也

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