「トップクラス」の環境とホテル…日本代表フィジカルコーチが明かす北中米W杯キャンプ地選びの舞台裏
日本代表のコンディション管理を担当する松本良一フィジカルコーチが21日、報道陣の取材に応じ、大会初戦まで1か月を切った北中米ワールドカップに向けて「この数年かけてアメリカに滞在し、いろいろな移動方法や気候を感じる中で我々のできる準備はできた」と手応えを語った。
福岡市北九州市出身の松本コーチは2012年から17年に森保一監督が率いた広島のフィジカルコーチを担当し、翌18年から東京五輪に臨むU-21日本代表のフィジカルコーチとして森保ジャパンに入閣。同年9月からはA代表兼任となり、東京五輪後はA代表専任として、選手のコンディション管理やフィジカルトレーニングを担当してきた。
北中米W杯は22年のカタール大会に続いて2度目のW杯。カタール大会では全てのスタジアムが車で1時間圏内に詰め込まれていたのに対し、北中米W杯は幅広い移動や時差調整を迫られる大会となるなか、松本コーチは選手のコンディション管理の専門家として、何度もアメリカ・カナダ・メキシコに渡ってキャンプ地選びにも深く関わってきた。
日本代表がグループリーグ期間中の練習拠点とする「ベースキャンプ地」には、FIFAの候補地になかったナッシュビルを独自で選んだ。
日本がグループリーグ第1戦オランダ戦と第3戦スウェーデン戦を戦うダラスにもFIFA公式候補地は複数あったが、ダラスは強度の高い練習を行うには気温が高く、比較的気温の低い近隣都市は、キャンプ地選びの優先権を持つポット1強豪国との競争に巻き込まれる可能性が高かったためだ。
またFIFAの候補地はホテルと練習場がセットで提示されており、「いいホテルを選んでも練習会場が悪かったり、いい練習会場を選んでもホテルが悪かったりというのがあった」と松本コーチ。アルゼンチン、イングランド、オランダなどが拠点を構えるカンザス・シティも有力候補に挙がっていたものの、「(ポット1)に候補として入れられたのでタイムラグで準備をしておかないと最終的になくなってしまうというのと、みんなで話し合って『良い』というところが良かった」と独自で調査していたナッシュビルに一本化したという。
日本人選手の需要に合ったホテルも選定し、練習場とホテルはいずれもナッシュビル国際空港から至近のロケーション。松本コーチは「クラブハウスにしても、ホテルにしても、トップクラスの選手が使っているような良い環境と良いホテルが選べた。普段から彼らが過ごしている環境づくりができた。ストレスを感じずに練習であったり、リラックスができるのではないかと考えている」と太鼓判を押した。
ベースキャンプ地の前に準備を行う「事前キャンプ地」には、グループリーグ第2戦チュニジア戦が行われるモンテレイを選んだ。
このキャンプ地選びはグループリーグ首位通過の場合、ラウンド32(決勝トーナメント1回戦)がモンテレイで行われることも見越した判断だった。チュニジア戦は午後10時キックオフだが、ラウンド32は午後7時キックオフ。松本コーチは「日没が8時過ぎなのでまだ日光が当たったり、気温も下がっていない状態なので、一番悪い環境の中で一度準備をするのは対策になる」と期待を口にする。
またグループリーグ2試合を行うダラスの試合会場は屋根と空調が完備されており、気温の影響を受けないロケーションだが、高温化でも強度の高い練習を行えるような“暑熱順化”は必須。松本コーチは「(ベースキャンプ地の)ナッシュビルも環境的には暑くて湿度の高い場所で、ダラスも試合会場こそ屋根がついてエアコンがついているが、前日練習は外ですることになる。テキサスの夏場は日差しが強くて暑いので、そこに対しての準備も含まれており、いい環境で準備ができるのかなと考えている」と述べた。
こうしたキャンプ地選びを経て、いよいよ本大会に臨む日本代表。松本コーチは「ここからFIFA(国際サッカー連盟)のお願いがあったり、この時間じゃないと移動がしにくいなど、いろいろな条件も出てくる。そのすり合わせの中で果たして選手にとっていいコンディションになるかという部分もあるので、何を優先させるかということにすごく気を遣いながら準備を進めている」と今も最終調整を続けながら、万全の準備で北米の地に渡る構えだ。
▼ライバル国の選択は…
日本代表は今月25日に国内での活動をスタートし、31日に国立競技場でアイスランド戦との壮行試合を実施。6月2日に事前キャンプ地のモンテレイに渡り、8日からベースキャンプ地のナッシュビルで活動する。14日の初戦オランダ戦に向け、約1週間ごとのセッションで準備を進めていく形だ。
一方、ライバル国の動向を見ると方法論はさまざまだ。同じF組のオランダは今月27日にメンバー発表を行い、活動を開始。その後は6月4日からニューヨークで事前キャンプ地を行った後、8日に同地でW杯出場国ウズベキスタンとの強化試合を行い、そこからカンザス・シティのベースキャンプ地に入るという。
チュニジアは今月から国内で事前キャンプを行った後、6月1日にオーストリア・ウィーンでオーストリア戦、同6日にベルギー・ブリュッセルでベルギー戦を行った後、初戦と第2戦を行うモンテレイでベースキャンプを実施。スウェーデンも同1日にノルウェー・オスロでノルウェー戦、同4日にスウェーデン・ソルナでギリシャ戦を行った後、ダラスでベースキャンプを行う。
こうした動向については松本コーチも入念に注視している様子。「ヨーロッパで準備の試合をする国が結構あり、そこから移動してこの日数で大丈夫かなというのを私は正直感じている部分もある。日本代表としては(W杯予選などを通じて)準備日数が短い中での対応策も持っていて、我々は対応できる自信はあるが、それをあまり経験していない国がどのような準備をするかは興味深い部分もある」と語る。
とはいえ、日本のほうが準備ができていると慢心するのではなく、各国の選択肢をフラットに見ているようだ。
「大会が終わったらちょっと聞きたい部分ではあるが、それぞれの国に専門家がいて、ヨーロッパはクラブW杯に出たチームが非常に多く、みんな第2言語で英語でコミュニケーションも取れているので、その辺の情報を持っているとも思う。また監督がどのようなイメージを持って対戦国の分析をして、どのようなマッチメイクをするかもあるので(何が正解かは)非常に難しいと思う。また暑い国は最初から暑いところに行ってたくさん練習するけど、それはそれで彼らの文化でもある」
そう各国の選択を位置付けた松本コーチは「いろいろな解決策をそれぞれの国が持っていて、最終的にどこが勝つかもわからないが、私個人にとっては勉強になる方法なのかなと思う。そこは次のW杯にも役立つと思うので、そのあたりはアップデートの一つの材料になると考えています」と展望。48か国制のW杯という史上初の経験は他国の情報も含め、日本サッカー協会(JFA)として受け継いでいく構えだ。
(取材・文 竹内達也)
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福岡市北九州市出身の松本コーチは2012年から17年に森保一監督が率いた広島のフィジカルコーチを担当し、翌18年から東京五輪に臨むU-21日本代表のフィジカルコーチとして森保ジャパンに入閣。同年9月からはA代表兼任となり、東京五輪後はA代表専任として、選手のコンディション管理やフィジカルトレーニングを担当してきた。
北中米W杯は22年のカタール大会に続いて2度目のW杯。カタール大会では全てのスタジアムが車で1時間圏内に詰め込まれていたのに対し、北中米W杯は幅広い移動や時差調整を迫られる大会となるなか、松本コーチは選手のコンディション管理の専門家として、何度もアメリカ・カナダ・メキシコに渡ってキャンプ地選びにも深く関わってきた。
日本代表がグループリーグ期間中の練習拠点とする「ベースキャンプ地」には、FIFAの候補地になかったナッシュビルを独自で選んだ。
日本がグループリーグ第1戦オランダ戦と第3戦スウェーデン戦を戦うダラスにもFIFA公式候補地は複数あったが、ダラスは強度の高い練習を行うには気温が高く、比較的気温の低い近隣都市は、キャンプ地選びの優先権を持つポット1強豪国との競争に巻き込まれる可能性が高かったためだ。
またFIFAの候補地はホテルと練習場がセットで提示されており、「いいホテルを選んでも練習会場が悪かったり、いい練習会場を選んでもホテルが悪かったりというのがあった」と松本コーチ。アルゼンチン、イングランド、オランダなどが拠点を構えるカンザス・シティも有力候補に挙がっていたものの、「(ポット1)に候補として入れられたのでタイムラグで準備をしておかないと最終的になくなってしまうというのと、みんなで話し合って『良い』というところが良かった」と独自で調査していたナッシュビルに一本化したという。
日本人選手の需要に合ったホテルも選定し、練習場とホテルはいずれもナッシュビル国際空港から至近のロケーション。松本コーチは「クラブハウスにしても、ホテルにしても、トップクラスの選手が使っているような良い環境と良いホテルが選べた。普段から彼らが過ごしている環境づくりができた。ストレスを感じずに練習であったり、リラックスができるのではないかと考えている」と太鼓判を押した。
ベースキャンプ地の前に準備を行う「事前キャンプ地」には、グループリーグ第2戦チュニジア戦が行われるモンテレイを選んだ。
このキャンプ地選びはグループリーグ首位通過の場合、ラウンド32(決勝トーナメント1回戦)がモンテレイで行われることも見越した判断だった。チュニジア戦は午後10時キックオフだが、ラウンド32は午後7時キックオフ。松本コーチは「日没が8時過ぎなのでまだ日光が当たったり、気温も下がっていない状態なので、一番悪い環境の中で一度準備をするのは対策になる」と期待を口にする。
またグループリーグ2試合を行うダラスの試合会場は屋根と空調が完備されており、気温の影響を受けないロケーションだが、高温化でも強度の高い練習を行えるような“暑熱順化”は必須。松本コーチは「(ベースキャンプ地の)ナッシュビルも環境的には暑くて湿度の高い場所で、ダラスも試合会場こそ屋根がついてエアコンがついているが、前日練習は外ですることになる。テキサスの夏場は日差しが強くて暑いので、そこに対しての準備も含まれており、いい環境で準備ができるのかなと考えている」と述べた。
こうしたキャンプ地選びを経て、いよいよ本大会に臨む日本代表。松本コーチは「ここからFIFA(国際サッカー連盟)のお願いがあったり、この時間じゃないと移動がしにくいなど、いろいろな条件も出てくる。そのすり合わせの中で果たして選手にとっていいコンディションになるかという部分もあるので、何を優先させるかということにすごく気を遣いながら準備を進めている」と今も最終調整を続けながら、万全の準備で北米の地に渡る構えだ。
▼ライバル国の選択は…
日本代表は今月25日に国内での活動をスタートし、31日に国立競技場でアイスランド戦との壮行試合を実施。6月2日に事前キャンプ地のモンテレイに渡り、8日からベースキャンプ地のナッシュビルで活動する。14日の初戦オランダ戦に向け、約1週間ごとのセッションで準備を進めていく形だ。
一方、ライバル国の動向を見ると方法論はさまざまだ。同じF組のオランダは今月27日にメンバー発表を行い、活動を開始。その後は6月4日からニューヨークで事前キャンプ地を行った後、8日に同地でW杯出場国ウズベキスタンとの強化試合を行い、そこからカンザス・シティのベースキャンプ地に入るという。
チュニジアは今月から国内で事前キャンプを行った後、6月1日にオーストリア・ウィーンでオーストリア戦、同6日にベルギー・ブリュッセルでベルギー戦を行った後、初戦と第2戦を行うモンテレイでベースキャンプを実施。スウェーデンも同1日にノルウェー・オスロでノルウェー戦、同4日にスウェーデン・ソルナでギリシャ戦を行った後、ダラスでベースキャンプを行う。
こうした動向については松本コーチも入念に注視している様子。「ヨーロッパで準備の試合をする国が結構あり、そこから移動してこの日数で大丈夫かなというのを私は正直感じている部分もある。日本代表としては(W杯予選などを通じて)準備日数が短い中での対応策も持っていて、我々は対応できる自信はあるが、それをあまり経験していない国がどのような準備をするかは興味深い部分もある」と語る。
とはいえ、日本のほうが準備ができていると慢心するのではなく、各国の選択肢をフラットに見ているようだ。
「大会が終わったらちょっと聞きたい部分ではあるが、それぞれの国に専門家がいて、ヨーロッパはクラブW杯に出たチームが非常に多く、みんな第2言語で英語でコミュニケーションも取れているので、その辺の情報を持っているとも思う。また監督がどのようなイメージを持って対戦国の分析をして、どのようなマッチメイクをするかもあるので(何が正解かは)非常に難しいと思う。また暑い国は最初から暑いところに行ってたくさん練習するけど、それはそれで彼らの文化でもある」
そう各国の選択を位置付けた松本コーチは「いろいろな解決策をそれぞれの国が持っていて、最終的にどこが勝つかもわからないが、私個人にとっては勉強になる方法なのかなと思う。そこは次のW杯にも役立つと思うので、そのあたりはアップデートの一つの材料になると考えています」と展望。48か国制のW杯という史上初の経験は他国の情報も含め、日本サッカー協会(JFA)として受け継いでいく構えだ。
(取材・文 竹内達也)
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