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「佐野海舟さんみたいに」なでしこJ柳瀬楓菜、決勝起用で示した“回収”と“守→攻”…吹っ切れた先に見えた可能性

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MF柳瀬楓菜

[10.2 アジア大会決勝 日本女子 2-2(PK5-3) 北朝鮮女子 エコパ]

 鋭く奪い、すぐさま前へ。日本女子代表(なでしこジャパン)のMF柳瀬楓菜(サンフレッチェ広島レジーナ)が、アジア競技大会決勝の中盤で持ち味を示した。初戦以来5試合ぶりの先発で、FW上野真実と2ボランチを形成。北朝鮮との球際の勝負にもひるまず、先制点の起点にもなった。「そこで自分自身、負けている感覚はなかった。まだまだ戦えるなと思った」。3連覇を果たした大舞台で、手応えと成長への課題をつかんだ。

 これまで中盤の底を担ってきた上野とのコンビは、柳瀬の行動範囲を広げた。「真実さんが基本的にバランスを取ってくれるので、そこは任せながら自由に動いた」。相手のボールの動きを予測して奪い、1対1でも的確に体を寄せた。前半42分には徹底したマークでパスミスを誘い、狩野監督も拍手。奪って終わりではなく、「奪った後、下げるんじゃなくて、前に前にというのも自分の持ち味」と、攻撃への切り替えも速かった。

 その積極性が前半32分の先制点につながった。左サイドで広島Rの同僚MF中嶋淑乃が持つと、柳瀬は内側を走ってパスを受けた。「中嶋選手とずっとプレーしているので、相手が3枚引き連れられているのは見えていた。その背後が空いてくるのはわかっていた」。折り返しからMF塩越柚歩のシュートがブロックされ、こぼれ球を上野がミドルで仕留めた。狩野監督も「セカンドボールの回収が早く、そこから前に関わっていく、飛び出していく」ところを起用理由に挙げ、持ち味を最大限に生かそうとした狙いが実った。

 ボールを“回収”して前進する姿は、日本代表MF佐野海舟を彷彿とさせる。本人も「きのう男子の試合を見て勉強したんで」と笑い、「佐野海舟さんみたいに、もっと守備範囲を広くして、攻撃にもっと出ていけるようになりたい」と明かす。

 ただ、その力を大会中から十分に出せていたわけではない。「自分に自信がなくて」「自分に矢印を向けすぎちゃって」、アピールには物足りなさを感じていた。転機は監督の「吹っ切れろ」という言葉。「もう吹っ切れました」。不安が大きかった初戦とは違い、決勝ではピッチに入った時から「やれる」という自信があった。

 一方、後半は北朝鮮が前線の人数を増やし、ロングボールで中盤を越えてきた。FWに収められ、落としから背後を狙われる展開に「奪い切るところは難しかった」。ボランチが下がって対応するか、前から圧力をかけて蹴らせないか。試合中の修正には難しさが残った。

「相手のプレスの速さもあったので、より周りを認知するのは、もっと意識的にやっていきたい」。後半30分に交代した柳瀬は、守備範囲の拡大に加え、奪った後に味方を助ける位置へ早く動くことも課題に挙げた。

 国内組中心でつかんだ金メダルは、来年の女子ワールドカップへ向けた可能性を示したが、柳瀬は「今の自分の実力だったらまだまだ」と足元を見つめる。「簡単なミスがまだまだ多い」からこそ、プレーの質と周囲の認知にこだわり、ボランチでも得点という結果を求めたいという。「WEリーグで結果を残し続けないといけない。今のままじゃなくて、より成長した姿を見せられたら」。決勝で見せた力を、継続して発揮できる武器へ磨いていく。

 代表で感じた基準は、クラブにも持ち帰る。「強度だったりというのが、日頃の練習からまだまだ足りないなと思った。自チームのみんなに共有できるようにしていきたい」。運動量と球際への鋭い出足は、「そこをなくしちゃったら自分じゃなくなっちゃう」という譲れない持ち味。大舞台で吹っ切れたボランチは、その強みを広げ、課題を埋めながら、次の代表争いへと進んでいく。


(取材・文 石川祐介)

●第20回アジア大会特集
石川祐介
Text by 石川祐介

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