拍手無しの北朝鮮も…なでしこJ祝った李誠雅、試合前に送った短い笑顔、流した涙と本音の一言
[10.2 アジア大会決勝 日本女子 2-2(PK5-3) 北朝鮮女子 エコパ]
金メダルを手にする仲間たちへ、たった一人で拍手を送っていた。アジア競技大会決勝で日本女子代表(なでしこジャパン)に敗れた北朝鮮女子代表。表彰式で日本の選手たちに金メダルが授与される際、北朝鮮の選手たちの中で唯一、手を叩いて祝福していたのがFW李誠雅(広島R)だった。準決勝に続いて決勝も出場機会はなし。自身はピッチに立てないまま終えた大舞台で、クラブの仲間たちの優勝を祝った。
試合後の取材エリアでは、北朝鮮の選手たちが足早に通り過ぎていった。その一番後ろを歩いていた李誠雅は涙を流していた。問いかけにも俯きながら「悔しいです」と一言。それ以上、言葉は続かなかった。逆転しながら終盤に追いつかれ、PK戦で逃した優勝。最後の2試合で出場を果たせなかった思いも含め、その胸中を語ることはなかった。
李誠雅は大阪府出身の27歳。セレッソ大阪堺ガールズでプレーした後、日本体育大に進学した。日体大FIELDS横浜、日体大SMG横浜で経験を積み、2024年1月に広島Rへ加入。25-26シーズンはWEリーグ20試合3得点を記録し、優秀選手賞にも選ばれていた。代表では16年のU-17女子ワールドカップで北朝鮮の一員として優勝を経験。今年3月の女子アジア杯でフル代表入りすると、日本開催のアジア大会メンバーにも加わった。
今大会は3試合に先発し、いずれもフル出場した。グループリーグ初戦のバングラデシュ戦では後半6分に代表での初得点を記録し、第2節のミャンマー戦では前半18分にPKを成功。準々決勝の台湾戦にも出場し、計270分で2得点を挙げた。しかし、準決勝の中国戦、決勝の日本戦はともにベンチで戦況を見守った。日本側ではサンフレッチェ広島レジーナの同僚、上野真実、中嶋淑乃、柳瀬楓菜、神谷千菜の4人全員が出場したが、ピッチ上での対戦は実現しなかった。
試合前には、仲間に笑顔を向ける場面もあった。ウォーミングアップのために先にピッチへ出た北朝鮮は、ゴール裏のサポーターへの挨拶に向かった。最後尾を歩く李誠雅は、後ろから反対側のゴール裏へ向かう日本の選手たちに気づき、振り返って笑顔でアイコンタクト。すぐに前を向き、北朝鮮のサポーターからエールを受けると、拍手でチームを鼓舞した。それでもときおり、アップ中には日本側へ視線を送っていた。
神谷も「今日ピッチに入る前にちょうどソンアさんと目が合って、ちょっとニコってし合ったぐらい。会話はまったくできなかった」と明かす。同じホテルに宿泊していたものの、神谷によると大会側の配慮もあり、顔を合わせる機会はほとんどなかったという。それぞれの代表として決勝を迎えた仲間同士。短い笑顔が、この日の数少ない交流だった。
涙を流した仲間を、神谷は慮った。「ソンアさんも北朝鮮を代表して戦いたいという気持ちは強く持っていますし、本当にサッカーに対して熱い選手」と語る。「一緒のチームにいたら心強いですし、敵にいたら手強い相手」。その選手が、決勝では最後まで出番を待つ側にいた。銀メダルで幕を閉じたが、表彰式では優勝した相手に自ら拍手を送った。その気持ちを、チームメイトである神谷は理解する。
代表での戦いを終えれば、広島Rで再び同じ目標へ向かう。「ここからはまた同じチームに戻れるので、しっかりとひとつになって、自分らはレジーナでリーグ優勝を掲げているので、そこに一緒に戦えたらいいかなと思います」(神谷)。決勝では拍手で祝った仲間たちと、次はともに喜びを分かち合うために、再びピッチに立つ。
(取材・文 石川祐介)
●第20回アジア大会特集
金メダルを手にする仲間たちへ、たった一人で拍手を送っていた。アジア競技大会決勝で日本女子代表(なでしこジャパン)に敗れた北朝鮮女子代表。表彰式で日本の選手たちに金メダルが授与される際、北朝鮮の選手たちの中で唯一、手を叩いて祝福していたのがFW李誠雅(広島R)だった。準決勝に続いて決勝も出場機会はなし。自身はピッチに立てないまま終えた大舞台で、クラブの仲間たちの優勝を祝った。
試合後の取材エリアでは、北朝鮮の選手たちが足早に通り過ぎていった。その一番後ろを歩いていた李誠雅は涙を流していた。問いかけにも俯きながら「悔しいです」と一言。それ以上、言葉は続かなかった。逆転しながら終盤に追いつかれ、PK戦で逃した優勝。最後の2試合で出場を果たせなかった思いも含め、その胸中を語ることはなかった。
李誠雅は大阪府出身の27歳。セレッソ大阪堺ガールズでプレーした後、日本体育大に進学した。日体大FIELDS横浜、日体大SMG横浜で経験を積み、2024年1月に広島Rへ加入。25-26シーズンはWEリーグ20試合3得点を記録し、優秀選手賞にも選ばれていた。代表では16年のU-17女子ワールドカップで北朝鮮の一員として優勝を経験。今年3月の女子アジア杯でフル代表入りすると、日本開催のアジア大会メンバーにも加わった。
今大会は3試合に先発し、いずれもフル出場した。グループリーグ初戦のバングラデシュ戦では後半6分に代表での初得点を記録し、第2節のミャンマー戦では前半18分にPKを成功。準々決勝の台湾戦にも出場し、計270分で2得点を挙げた。しかし、準決勝の中国戦、決勝の日本戦はともにベンチで戦況を見守った。日本側ではサンフレッチェ広島レジーナの同僚、上野真実、中嶋淑乃、柳瀬楓菜、神谷千菜の4人全員が出場したが、ピッチ上での対戦は実現しなかった。
試合前には、仲間に笑顔を向ける場面もあった。ウォーミングアップのために先にピッチへ出た北朝鮮は、ゴール裏のサポーターへの挨拶に向かった。最後尾を歩く李誠雅は、後ろから反対側のゴール裏へ向かう日本の選手たちに気づき、振り返って笑顔でアイコンタクト。すぐに前を向き、北朝鮮のサポーターからエールを受けると、拍手でチームを鼓舞した。それでもときおり、アップ中には日本側へ視線を送っていた。
神谷も「今日ピッチに入る前にちょうどソンアさんと目が合って、ちょっとニコってし合ったぐらい。会話はまったくできなかった」と明かす。同じホテルに宿泊していたものの、神谷によると大会側の配慮もあり、顔を合わせる機会はほとんどなかったという。それぞれの代表として決勝を迎えた仲間同士。短い笑顔が、この日の数少ない交流だった。
涙を流した仲間を、神谷は慮った。「ソンアさんも北朝鮮を代表して戦いたいという気持ちは強く持っていますし、本当にサッカーに対して熱い選手」と語る。「一緒のチームにいたら心強いですし、敵にいたら手強い相手」。その選手が、決勝では最後まで出番を待つ側にいた。銀メダルで幕を閉じたが、表彰式では優勝した相手に自ら拍手を送った。その気持ちを、チームメイトである神谷は理解する。
代表での戦いを終えれば、広島Rで再び同じ目標へ向かう。「ここからはまた同じチームに戻れるので、しっかりとひとつになって、自分らはレジーナでリーグ優勝を掲げているので、そこに一緒に戦えたらいいかなと思います」(神谷)。決勝では拍手で祝った仲間たちと、次はともに喜びを分かち合うために、再びピッチに立つ。
(取材・文 石川祐介)
●第20回アジア大会特集



