国立初勝利で逆転優勝に望みつないだ町田・黒田監督、終盤5戦大ブレーキに「不安と重圧に押しつぶされる心境があった」
[11.9 J1第36節 町田 3-0 FC東京 国立]
敗れれば優勝の望みが絶たれるという国立決戦、直近5試合勝ちなし(2分3敗)だったFC町田ゼルビアが6試合ぶりの白星を収め、奇跡の逆転優勝への可能性をなんとかつないだ。
試合後、黒田剛監督は「ここまでの5試合、引き分けを挟めど、なかなか勝ち点3という結果をもたらすことができず、監督としてもかなりの不安を抱えていた。選手たちも正解というものがわかっていても、見失いながら足踏み状態が続いていた」と苦悩を吐露しつつ、この勝利の価値と向き合った。
町田はこの日、3-5-2の新システムでFC東京と対戦。逆三角形の中盤3枚で相手のビルドアップをマンツーマン気味に抑え込みつつ、攻撃ではFWオ・セフンとFWエリキの2トップを活かしたダイナミックな展開や、右はウイングバック起用のDF望月ヘンリー海輝、左はインサイドハーフ起用のMF相馬勇紀が流れるサイド攻撃を使い分け、一方的に主導権を握った。
「システム的には今までの4バックから3バックにチェンジしながら、しっかりと相手の特徴を消しながら、我々のストロングにしっかり持って行こうといいことで、多少メンバーをいじって彼らの特徴がしっかりと出るような配置とゲームプランを構築しながらゲームに入った」
そう振り返った黒田監督は「我々がやっていたことを触りざわりやるのではなく、しっかり振り切って、ミスを恐れず果敢にチャレンジすることが必要だということで、何度も映像を見せながら、彼らを奮起させながら今日この日を迎えることになった」とメンタリティーへの働きかけも行った様子。その結果、ここ数試合で鳴りをひそめていたセカンドボール回収でも圧倒的な勝率を誇り、町田らしい戦法で前後半に3ゴールを重ねた。
「ゲームを通じて本当に果敢にプレーしてくれる選手たちの姿が本当に目に焼き付いている。『これぞ町田の魂なんだ』というのを彼らが身をもって表現してくれたと思う」。そう選手たちを称えた黒田監督は試合後会見で「吹っ切れた」という言葉を何度も口にした。
「この5試合、連敗も一つあり、なかなか意図する結果をファン・サポーターに届けられることができなかった。この期間、不安と重圧に押しつぶされるような心境が、もちろん我々スタッフも選手もあった。これだけのお客さんの前で、しかも国立というところで、しっかりと無失点で、3-0と複数得点を挙げて、なかなか一つの得点を取れない時期が続いたので、そういう意味ですごく肩の荷が降りたというか、全てというわけではないけど、今までの苦労から解放された一瞬だった。これでもう一回吹っ切れてラスト2試合に臨めるぞというような、改めてこの一歩を歩めたことにすごく感動したし、ありがたい気持ちになった」
前日8日には自身の契約更新が発表され、来季も引き続き指揮を執ることが決定した中での一戦。指揮官は「そういうことよりも、みんなが一つになること、一丸になることのほうが優先だった」と振り返りつつも、「ファン・サポーターから来年もよろしく頼むという声があちこちで聞こえたので、そのことは嬉しかったし、私自身も吹っ切れた」とも話し、スタンドからの声援も停滞ムードを打破する要因になっていたようだ。
また黒田監督にとって国立競技場は、青森山田高時代に全国高校サッカー選手権で何度も立ち、歓喜も悔しさも味わった場所。プロの指導者としては5試合目で初の白星となったが、その背景には高校サッカー指導者時代の成功体験もあった。
「ここで触り触りプレーすることはファン・サポーターに対しても申し訳ない。この国立では戦う姿勢を持って、走りに走って、そういう気持ちでやらないと勝利の女神は微笑まないということが今日の戦うためのベースだった。高校時代からここでは何回もプレーさせていただいて、勝利に導いた時にはそういう気持ちで取り組んでいた。そういったあの時代が頭をよぎりながらテクニカルエリアに立たせていただいた」(黒田監督)
そんな聖地での勝利に「本来やってきたサッカー、戦うベースが散漫になったというか、自分たちから作り出したミスから失点するケースがあまりにも多く、改善するには難しい状況もあったが、チームが一つにまとまってくれて、我々の戦うベース、勝利の方程式というものをもう一度見直して歩みを進めてくれたことに今日の勝因がある」と大きな手応えを口にした。
もっとも、シーズンは2試合が残されており、上位勢の結果次第では逆転優勝の可能性もある状況。指揮官は「この戦い方が来年のベースにもなるので、自分たちのサッカーを今一度捉えて、次の試合に向けて改めて確認したい」とも述べ、ここから国際Aマッチウィーク、天皇杯決勝の影響で3週間の中断期間が設けられる中でも、まずは11月30日のホーム最終戦・京都戦に全力を注いでいく。
「決して油断することなく、驕ることなく、最後に野津田でのホーム戦も一つ控えているが、もう一度ファン・サポーターの前で同じ思いができるように、笑顔を見せられるように実直に取り組んでいきたい」(黒田監督)。フォーカスするのは他の上位勢の結果ではなく、驚異の快進撃を演じたJ1昇格1年目におけるホーム最終戦の価値。ひたむきに準備を進め、歴史的シーズンを少しでも良い形で締めくくる構えだ。
(取材・文 竹内達也)
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●2024シーズンJリーグ特集
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試合後、黒田剛監督は「ここまでの5試合、引き分けを挟めど、なかなか勝ち点3という結果をもたらすことができず、監督としてもかなりの不安を抱えていた。選手たちも正解というものがわかっていても、見失いながら足踏み状態が続いていた」と苦悩を吐露しつつ、この勝利の価値と向き合った。
町田はこの日、3-5-2の新システムでFC東京と対戦。逆三角形の中盤3枚で相手のビルドアップをマンツーマン気味に抑え込みつつ、攻撃ではFWオ・セフンとFWエリキの2トップを活かしたダイナミックな展開や、右はウイングバック起用のDF望月ヘンリー海輝、左はインサイドハーフ起用のMF相馬勇紀が流れるサイド攻撃を使い分け、一方的に主導権を握った。
「システム的には今までの4バックから3バックにチェンジしながら、しっかりと相手の特徴を消しながら、我々のストロングにしっかり持って行こうといいことで、多少メンバーをいじって彼らの特徴がしっかりと出るような配置とゲームプランを構築しながらゲームに入った」
そう振り返った黒田監督は「我々がやっていたことを触りざわりやるのではなく、しっかり振り切って、ミスを恐れず果敢にチャレンジすることが必要だということで、何度も映像を見せながら、彼らを奮起させながら今日この日を迎えることになった」とメンタリティーへの働きかけも行った様子。その結果、ここ数試合で鳴りをひそめていたセカンドボール回収でも圧倒的な勝率を誇り、町田らしい戦法で前後半に3ゴールを重ねた。
「ゲームを通じて本当に果敢にプレーしてくれる選手たちの姿が本当に目に焼き付いている。『これぞ町田の魂なんだ』というのを彼らが身をもって表現してくれたと思う」。そう選手たちを称えた黒田監督は試合後会見で「吹っ切れた」という言葉を何度も口にした。
「この5試合、連敗も一つあり、なかなか意図する結果をファン・サポーターに届けられることができなかった。この期間、不安と重圧に押しつぶされるような心境が、もちろん我々スタッフも選手もあった。これだけのお客さんの前で、しかも国立というところで、しっかりと無失点で、3-0と複数得点を挙げて、なかなか一つの得点を取れない時期が続いたので、そういう意味ですごく肩の荷が降りたというか、全てというわけではないけど、今までの苦労から解放された一瞬だった。これでもう一回吹っ切れてラスト2試合に臨めるぞというような、改めてこの一歩を歩めたことにすごく感動したし、ありがたい気持ちになった」
前日8日には自身の契約更新が発表され、来季も引き続き指揮を執ることが決定した中での一戦。指揮官は「そういうことよりも、みんなが一つになること、一丸になることのほうが優先だった」と振り返りつつも、「ファン・サポーターから来年もよろしく頼むという声があちこちで聞こえたので、そのことは嬉しかったし、私自身も吹っ切れた」とも話し、スタンドからの声援も停滞ムードを打破する要因になっていたようだ。
また黒田監督にとって国立競技場は、青森山田高時代に全国高校サッカー選手権で何度も立ち、歓喜も悔しさも味わった場所。プロの指導者としては5試合目で初の白星となったが、その背景には高校サッカー指導者時代の成功体験もあった。
「ここで触り触りプレーすることはファン・サポーターに対しても申し訳ない。この国立では戦う姿勢を持って、走りに走って、そういう気持ちでやらないと勝利の女神は微笑まないということが今日の戦うためのベースだった。高校時代からここでは何回もプレーさせていただいて、勝利に導いた時にはそういう気持ちで取り組んでいた。そういったあの時代が頭をよぎりながらテクニカルエリアに立たせていただいた」(黒田監督)
そんな聖地での勝利に「本来やってきたサッカー、戦うベースが散漫になったというか、自分たちから作り出したミスから失点するケースがあまりにも多く、改善するには難しい状況もあったが、チームが一つにまとまってくれて、我々の戦うベース、勝利の方程式というものをもう一度見直して歩みを進めてくれたことに今日の勝因がある」と大きな手応えを口にした。
もっとも、シーズンは2試合が残されており、上位勢の結果次第では逆転優勝の可能性もある状況。指揮官は「この戦い方が来年のベースにもなるので、自分たちのサッカーを今一度捉えて、次の試合に向けて改めて確認したい」とも述べ、ここから国際Aマッチウィーク、天皇杯決勝の影響で3週間の中断期間が設けられる中でも、まずは11月30日のホーム最終戦・京都戦に全力を注いでいく。
「決して油断することなく、驕ることなく、最後に野津田でのホーム戦も一つ控えているが、もう一度ファン・サポーターの前で同じ思いができるように、笑顔を見せられるように実直に取り組んでいきたい」(黒田監督)。フォーカスするのは他の上位勢の結果ではなく、驚異の快進撃を演じたJ1昇格1年目におけるホーム最終戦の価値。ひたむきに準備を進め、歴史的シーズンを少しでも良い形で締めくくる構えだ。
(取材・文 竹内達也)
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