RB大宮の幕開け告げた「人生最高のゴール」…90+7分弾の東海大出身23歳FW藤井一志が“下剋上キャリア”で見つけ、貫いた強み
FW
[2.15 J2第1節 大宮 2-1 山形 NACK]
“レッドブル改革元年”の幕開けをど派手に告げる劇的なゴールにより、RB大宮アルディージャがJ2復帰初陣を白星で飾った。
歴史的一発を決めたのは大卒2年目のFW藤井一志。試合後、勝利のレッドブル缶を手にしたまま取材に応じた23歳は「泥臭いゴールではあったけど、ストライカーとして勝利に導くゴールは普段から意識していること。今日は自分の仕事ができた」と素直な喜びを口にした。
1-1のまま迎えた後半アディショナルタイムも6分間が過ぎ、ほぼラストプレーという時間帯だった。左CKキッカーのMF谷内田哲平が鋭いクロスをゴール前に送り込むと、身体を投げ出しながら飛び込んだMF小島幹敏のシュートは山形の新守護神GKトーマス・ヒュワード・ベルがスーパーセーブ。しかし、そのこぼれ球に藤井がいち早く詰めた。
「セットプレーが今日の試合のカギを握るというのはチーム内のミーティングでもあったし、僕自身もこぼれてきそうだなという感覚があったので、相手より早くスタートを切って、押し込むことができました」(藤井)
足元に転がってきたボールを冷静にゴールへ蹴り込むと、藤井は生まれ変わったエンブレムにキスをしながらゴール裏を疾走。「新しいRBアルディージャの第一歩を僕のゴールで勝利に結びつけられたのは格別。点を決めた瞬間は頭が真っ白というか、時が止まったような……。人生最高のゴールだったなと思います」。相手のキックオフ直後にタイムアップの笛が鳴り、23歳のストライカーは改革元年、歴史的初陣の主役となった。
東海大から大宮に加入した昨季はJ3リーグで28試合6得点4アシストを記録。この日はJ2デビュー戦だった。開幕スタメンにこそ選ばれなかったが、1トップで先発していたFWファビアン・ゴンザレスが前半途中に負傷。突然のアクシデントを受け、前半42分から出番を掴んだ。
「正直、サブで悔しい気持ちがなかったかと言ったら嘘になるけど、その中でも自分がピッチに立ったらできることは常に考えながらゲームに入ったし、ラッソ(ゴンザレス)がああやって相手をかき回してくれていたおかげで僕自身もすごく楽にプレーに入ることができた。チームメートにも感謝したいです」(藤井)
そうして迎えた後半33分には、谷内田とのワンツーからペナルティエリア右に侵入し、最初のビッグチャンスを迎えた。ここでは鋭いターンから左足で懸命に放ったシュートがGKベルのスーパーセーブに阻まれる形に終わったが、そこで気持ちが落ちることはなかった。
「あのまま試合が終わったらストライカーとして僕自身の責任だと思っていた。でも気持ちの切り替えはプレシーズンから意識していることだったので、もう一度チャンスがあるとずっと心の中で思っていた。それを信じてよかったです」。その意気込みどおり、最後の最後でストライカーとしての役目を遂げた。
昨年はシーズン最終盤に左ハムストリングスの肉離れで負傷離脱。J3優勝後のウイニングランとなった試合に加わることはできず、公式戦復帰戦でのゴールはその離脱期間を支えてくれた人々への感謝や、今年こそは長いシーズンを戦い抜くという覚悟を表現したものでもあった。
「今日が怪我明け初めての試合ということで、ピッチに立てるようにリハビリのサポートに励んでくれたトレーナーの方々に感謝したい。ただ僕自身のプレースタイル的にガツガツ行くので、怪我を恐れていたら良さは消えると思う。そこのところは変えずに、身体のケアや食事のところを見直してプレシーズンやってきたので、そういった面で自分がやってきたことは間違っていなかったと思えた。今後もそういったところからこだわってやっていきたいです」(藤井)
▼“下剋上キャリア”で見つけた「強み」
1年目でJ3、2年目でJ2と順調にステップアップを遂げる藤井。しかし、過去を振り返れば長い年月をかけて積み重ねてきた取り組みが現在の活躍につながっていると言える。
東海大高輪台高時代は1年時から主力を務め、サイドやボランチでのプレーが中心。3年時には主将を務め、全国高校選手権予選準決勝では得点を決めながらも、決勝で惜しくも敗れ、全国大会に出場できなかったという悔しい思い出を持つ。
その後、進学先の東海大では1年時から控えウイングバックとして徐々に頭角を表し、関東2部リーグ昇格に加え、コロナ禍特例全国大会『#atarimaeniCUP』で日本一を達成。全国決勝では1年生で唯一ピッチに立ち、知名度を高めた。
その後も出場機会を重ねながら地道な身体づくりに励んだ結果、転機となったのは大学3年時のFWへのコンバートだった。当時の取材では「FWとして結果を残すビジョンはなかった」という言葉を残しているが、同年の関東2部リーグでさっそく13ゴールを記録し、得点王を受賞。最終学年は膝の怪我で苦しみながらも、プロ内定と1部残留を勝ち取り、“下剋上”の4年間を過ごしてきた。
もともとはヴィッセル神戸伊丹U-15出身で、関西で生まれ育ったバックグラウンドも持つ藤井。環境を変えることをいとわず、新たなポジションに挑戦することも恐れず、着実に積み重ねてきた努力がプロの舞台で実を結ぼうとしている。そんな藤井によると、着実に積み重ねる日々の中で見つけ、貫いてきたのは「自分の強み」だったという。
「いろいろなことがあってここまで来ましたけど、僕自身の強みとしてあるのはどういった環境であれ、先の成長、目の前のことをしっかり見て、その課題に向かって取り組めるところ。そういった面ではどこで試合に出ようが、チームがどんな状況であろうが、僕自身は成長のためにやるべきことをずっと見失わずにここまでやってこられているので、そういうところもこれからも継続してやっていければと思います」(藤井)
そうした自負があるからこそ今季、J3からJ2というカテゴリの変化に対しても、柔軟に、ひたむきに、そして前もって対応できていたようだ。
「J2のほうがゴール前のDFの質は高いと思っていたし、昨季までなら簡単に打てるところでもブロックされるというふうになってくると思っていたので、プレシーズンから最後の相手との駆け引きだったり、ギリギリまで相手を見てフェイントでかわしたりというのもやってきました。大宮のディフェンス陣もそういうところはこだわってやっているので、練習からやれれば試合でも出せると思っていましたし、今日もそれがしっかり出せたと思います」(藤井)
そうした積み重ねによって奪ったゴールは、奇しくもこの日、NACK5スタジアムのスタンドでレッドブルグループグローバルサッカー部門責任者として視察していた元リバプール監督のユルゲン・クロップ氏の目にも映るものともなった。
劇的な決勝ゴールの直後、クロップ氏はメインスタンドのVIPルームで喜びを爆発させ、リバプール監督時代のような豪快な笑顔を見せていたが、プロフィールの趣味欄に「プレミアリーグ観戦」と記すほどの藤井にとって、同氏はテレビの向こうの偉大な存在。目の前で活躍を見せられた喜びはひときわ大きなものだったようだ。
「クロップさんが来ているのも僕たちの耳に入っていて、絶対に勝利を届けないといけないと思っていたので、テレビで見ていたような人が自分のゴールで喜んでくれたというのが率直にすごく嬉しいです」(藤井)
劇的な決勝ゴールに思わぬご褒美もついてきた藤井だが、プロキャリアは2年目、J2キャリアは1試合目とまだ始まったばかり。ここで慢心するつもりはない。「しっかり自分のやるべきことを続けてきた結果が今日、ああやって自分の目の前にボールがこぼれてきたかなと思うので、しっかり今後も継続して、自分の足元を見てやっていきたいです」。目の前のピッチが世界につながっているという兆しを感じさせた一戦を経て、自ら「真面目」と称する23歳は次の試合にもひたむきに挑む。
(取材・文 竹内達也)
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“レッドブル改革元年”の幕開けをど派手に告げる劇的なゴールにより、RB大宮アルディージャがJ2復帰初陣を白星で飾った。
歴史的一発を決めたのは大卒2年目のFW藤井一志。試合後、勝利のレッドブル缶を手にしたまま取材に応じた23歳は「泥臭いゴールではあったけど、ストライカーとして勝利に導くゴールは普段から意識していること。今日は自分の仕事ができた」と素直な喜びを口にした。
1-1のまま迎えた後半アディショナルタイムも6分間が過ぎ、ほぼラストプレーという時間帯だった。左CKキッカーのMF谷内田哲平が鋭いクロスをゴール前に送り込むと、身体を投げ出しながら飛び込んだMF小島幹敏のシュートは山形の新守護神GKトーマス・ヒュワード・ベルがスーパーセーブ。しかし、そのこぼれ球に藤井がいち早く詰めた。
「セットプレーが今日の試合のカギを握るというのはチーム内のミーティングでもあったし、僕自身もこぼれてきそうだなという感覚があったので、相手より早くスタートを切って、押し込むことができました」(藤井)
足元に転がってきたボールを冷静にゴールへ蹴り込むと、藤井は生まれ変わったエンブレムにキスをしながらゴール裏を疾走。「新しいRBアルディージャの第一歩を僕のゴールで勝利に結びつけられたのは格別。点を決めた瞬間は頭が真っ白というか、時が止まったような……。人生最高のゴールだったなと思います」。相手のキックオフ直後にタイムアップの笛が鳴り、23歳のストライカーは改革元年、歴史的初陣の主役となった。
東海大から大宮に加入した昨季はJ3リーグで28試合6得点4アシストを記録。この日はJ2デビュー戦だった。開幕スタメンにこそ選ばれなかったが、1トップで先発していたFWファビアン・ゴンザレスが前半途中に負傷。突然のアクシデントを受け、前半42分から出番を掴んだ。
「正直、サブで悔しい気持ちがなかったかと言ったら嘘になるけど、その中でも自分がピッチに立ったらできることは常に考えながらゲームに入ったし、ラッソ(ゴンザレス)がああやって相手をかき回してくれていたおかげで僕自身もすごく楽にプレーに入ることができた。チームメートにも感謝したいです」(藤井)
そうして迎えた後半33分には、谷内田とのワンツーからペナルティエリア右に侵入し、最初のビッグチャンスを迎えた。ここでは鋭いターンから左足で懸命に放ったシュートがGKベルのスーパーセーブに阻まれる形に終わったが、そこで気持ちが落ちることはなかった。
「あのまま試合が終わったらストライカーとして僕自身の責任だと思っていた。でも気持ちの切り替えはプレシーズンから意識していることだったので、もう一度チャンスがあるとずっと心の中で思っていた。それを信じてよかったです」。その意気込みどおり、最後の最後でストライカーとしての役目を遂げた。
昨年はシーズン最終盤に左ハムストリングスの肉離れで負傷離脱。J3優勝後のウイニングランとなった試合に加わることはできず、公式戦復帰戦でのゴールはその離脱期間を支えてくれた人々への感謝や、今年こそは長いシーズンを戦い抜くという覚悟を表現したものでもあった。
「今日が怪我明け初めての試合ということで、ピッチに立てるようにリハビリのサポートに励んでくれたトレーナーの方々に感謝したい。ただ僕自身のプレースタイル的にガツガツ行くので、怪我を恐れていたら良さは消えると思う。そこのところは変えずに、身体のケアや食事のところを見直してプレシーズンやってきたので、そういった面で自分がやってきたことは間違っていなかったと思えた。今後もそういったところからこだわってやっていきたいです」(藤井)
▼“下剋上キャリア”で見つけた「強み」
1年目でJ3、2年目でJ2と順調にステップアップを遂げる藤井。しかし、過去を振り返れば長い年月をかけて積み重ねてきた取り組みが現在の活躍につながっていると言える。
東海大高輪台高時代は1年時から主力を務め、サイドやボランチでのプレーが中心。3年時には主将を務め、全国高校選手権予選準決勝では得点を決めながらも、決勝で惜しくも敗れ、全国大会に出場できなかったという悔しい思い出を持つ。
その後、進学先の東海大では1年時から控えウイングバックとして徐々に頭角を表し、関東2部リーグ昇格に加え、コロナ禍特例全国大会『#atarimaeniCUP』で日本一を達成。全国決勝では1年生で唯一ピッチに立ち、知名度を高めた。
その後も出場機会を重ねながら地道な身体づくりに励んだ結果、転機となったのは大学3年時のFWへのコンバートだった。当時の取材では「FWとして結果を残すビジョンはなかった」という言葉を残しているが、同年の関東2部リーグでさっそく13ゴールを記録し、得点王を受賞。最終学年は膝の怪我で苦しみながらも、プロ内定と1部残留を勝ち取り、“下剋上”の4年間を過ごしてきた。
もともとはヴィッセル神戸伊丹U-15出身で、関西で生まれ育ったバックグラウンドも持つ藤井。環境を変えることをいとわず、新たなポジションに挑戦することも恐れず、着実に積み重ねてきた努力がプロの舞台で実を結ぼうとしている。そんな藤井によると、着実に積み重ねる日々の中で見つけ、貫いてきたのは「自分の強み」だったという。
「いろいろなことがあってここまで来ましたけど、僕自身の強みとしてあるのはどういった環境であれ、先の成長、目の前のことをしっかり見て、その課題に向かって取り組めるところ。そういった面ではどこで試合に出ようが、チームがどんな状況であろうが、僕自身は成長のためにやるべきことをずっと見失わずにここまでやってこられているので、そういうところもこれからも継続してやっていければと思います」(藤井)
そうした自負があるからこそ今季、J3からJ2というカテゴリの変化に対しても、柔軟に、ひたむきに、そして前もって対応できていたようだ。
「J2のほうがゴール前のDFの質は高いと思っていたし、昨季までなら簡単に打てるところでもブロックされるというふうになってくると思っていたので、プレシーズンから最後の相手との駆け引きだったり、ギリギリまで相手を見てフェイントでかわしたりというのもやってきました。大宮のディフェンス陣もそういうところはこだわってやっているので、練習からやれれば試合でも出せると思っていましたし、今日もそれがしっかり出せたと思います」(藤井)
そうした積み重ねによって奪ったゴールは、奇しくもこの日、NACK5スタジアムのスタンドでレッドブルグループグローバルサッカー部門責任者として視察していた元リバプール監督のユルゲン・クロップ氏の目にも映るものともなった。
劇的な決勝ゴールの直後、クロップ氏はメインスタンドのVIPルームで喜びを爆発させ、リバプール監督時代のような豪快な笑顔を見せていたが、プロフィールの趣味欄に「プレミアリーグ観戦」と記すほどの藤井にとって、同氏はテレビの向こうの偉大な存在。目の前で活躍を見せられた喜びはひときわ大きなものだったようだ。
「クロップさんが来ているのも僕たちの耳に入っていて、絶対に勝利を届けないといけないと思っていたので、テレビで見ていたような人が自分のゴールで喜んでくれたというのが率直にすごく嬉しいです」(藤井)
劇的な決勝ゴールに思わぬご褒美もついてきた藤井だが、プロキャリアは2年目、J2キャリアは1試合目とまだ始まったばかり。ここで慢心するつもりはない。「しっかり自分のやるべきことを続けてきた結果が今日、ああやって自分の目の前にボールがこぼれてきたかなと思うので、しっかり今後も継続して、自分の足元を見てやっていきたいです」。目の前のピッチが世界につながっているという兆しを感じさせた一戦を経て、自ら「真面目」と称する23歳は次の試合にもひたむきに挑む。
(取材・文 竹内達也)
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