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欧州の調査機関がJ1若手CBでトップ評価…昨季コンバートで急台頭の湘南21歳DF鈴木淳之介「やり続けるだけ」

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DF鈴木淳之介

[4.2 J1第8節 川崎F 2-0 湘南 U等々力]

 チームを救う場面は何度もあったが、3連敗という結果を正面から受け止めていた。「すぐに試合が来るのでいい準備をして、勝てるような気持ちと心と体を作ってやり続けるしかない」。湘南ベルマーレの最終ラインで全試合先発出場が続く21歳のDF鈴木淳之介は地道な継続を誓った。

 個人能力の高いタレントが強固な守備組織を構築する川崎Fとの一戦、鈴木は随所で光る動きを見せていた。開始直後には鋭い持ち上がりで相手のプレスを逆用し、まずは攻撃の持ち味を発揮すると、守備でも鋭い出足のインターセプトを連発。前半15分にはFWマルシーニョからの決定的なクロスを素早い反応でヘディングクリアしたかと思えば、その後はFW伊藤達哉のドリブル突破やFW山田新の空中戦にも懸命に食らいつき、危険なシーンを作らせなかった。

 後半は立ち上がりに失点したが、鈴木自身は集中力の高い対応を継続。反対サイドのマルシーニョがますます猛威を奮う中、クロスにはしっかりと絞って処理しつつ、後半27分にはGKをかわしたFWエリソンのシュートをゴールカバーで阻むなど、劣勢が続く中でも接戦に持ち込む試合展開に大きく貢献していた。

 それでもチームは終了間際にPKでも失点し、0-2で敗戦。開幕3連勝の首位スタートから一転、5戦勝ちなしの3連敗で順位は10位にまで転落した。鈴木は試合後、チームを救う働きにも「ディフェンダーとしてやることをやっているだけなので当たり前のこと」と控えめに振り返りつつ、「やり続けるしかない」という言葉を何度も口にしていた。

 帝京大可児高出身で高卒4年目の鈴木は今季、開幕節から左CBで全7試合に先発出場中。高校時代はボランチが主戦場だったが、当たり負けしない180cmの上背とフィジカルが評価され、昨季中盤戦にコンバートされたCBでさらに成長した姿を見せている。

 その成長は客観的な評価にもつながっている。国際サッカー連盟(FIFA)や欧州サッカー連盟(UEFA)の研究も担うスイスのサッカー専門調査機関『CIES Football Observatory』は今月、独自の指標に基づいてJ1リーグでプレーする25歳以下のCBランキングを発表。鈴木は日本代表DF高井幸大(川崎F)を2位に押しのけ、トップの評価を与えられていた。

 試合前、このランキングはチームメートのMF奥野耕平を通じて鈴木の耳にも入っていた様子。「さっき耕平くんからスタジアムに来てから言われて『へぇー』って。でも見てくれている人が評価してくれているのはありがたいですね。やり続けたらこうなるのかなと思ったし、もっとやり続ければ評価も上がるだろうし、さらに上の景色も見えると思うのでやり続けるだけですね」(鈴木)。浮かれるわけでもなく、気にかけないわけでもなく、冷静にその評価を受け止めていた。

 出場機会がなかなか得られなかったプロ1〜2年目を経て、「とにかく試合に出たかったのでありがたい」と前向きに受け入れたというCBへのコンバート。ボランチで鍛えた左右の足でのキック、プレッシャーに動じない配球力は引き続き発揮しつつ、いまや対人守備でも本職さながらのパフォーマンスを見せるようになっている。

「(キム・)ミンテさんに尻を叩かれながら、その中でやることをしっかりやってきた中、自分の良さを出そうという意識は持ってきたので、その積み重ねがこういった形になってきているのかなと思います」。いまもなお「強力な外国人選手と競り合った時にまだ勝てないのでそういうところを伸ばしていきたい」と課題を口にするものの、少なからずCBへの手応えを重ねてきているようだ。

 現在のパフォーマンスが続けられれば、今年7月に控えるEAFF E-1選手権の日本代表入りの可能性も開かれる。鈴木は2021年にU-18日本代表候補のトレーニングキャンプに一度参加したことがあるものの、同世代が中心だった23年のU-20W杯に至る活動は選外。もし代表入りが実現すれば、“下剋上”での初代表となる。

 それでも鈴木自身は冷静に先を見据えている。「目指すところは高いところだし、代表だったりというところなので、もちろん行きたいは行きたいですけど、そういって変なプレッシャーがかかったら良くないので、これからも変わらずにやり続けられれば。やり続けていけばそういう道もあると思うので」。目の前の役割と真摯に向き合い続け、代表はその先についてくるものという考え方だ。

 湘南と言えばかつてJリーグで3バックを務め、ボランチで世界に羽ばたいたMF遠藤航(リバプール)というロールモデルもいるが、「まだそこまでは自分としては見えていないので、与えられたポジションでしっかりとプレーして、また違うポジションになったらなったで新しい自分を探していけたらいいかなと思う」と鈴木。さらなるステップアップにも「行けるチャンスがあるならチャレンジはしたいけど、そのためにはJリーグで圧倒的な選手にならないといけないのでもう一段階レベルを上げたい」と焦るつもりはなく、まずはJリーグで地道にレベルアップを続けていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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