プロ入り後初の「古巣対決」で心に沁みた温かい拍手とエール。仙台の新9番・FW宮崎鴻が見据える「ベガルタのエース」への一本道
[2.22 J2・J3百年構想リーグEAST-A第3節 栃木SC 1-2 仙台 カンセキ]
一昨年までホームとして戦っていたスタジアムへの凱旋。気持ちが昂らないはずがない。このチームで培ったものをベースに、今のチームでさらなる成長を遂げた姿をちゃんと見せるため、とにかく走って、とにかく戦って、とにかく勝つ。
「こういう状況はプロに入って初めてだったので、正直緊張していたんですけど、温かく受け入れてもらって、最後に挨拶に行った時もあれだけたくさんの声援を送っていただいたので、『宮崎鴻は栃木が育てた』と誇ってもらえるように、もっともっと頑張りたいです」。
プロサッカー選手になってから、初めての“古巣対決”に臨んだベガルタ仙台の心優しきハイタワー。FW宮崎鴻はこの日味わった新たな感情をさらなるモチベーションに、エースストライカーとしての確固たる立ち位置を、杜の都で築き上げていく。
「いやあ、ゴール決めたかったですねえ」。宮崎は少しだけ悔しげな表情を浮かべながら、終わったばかりの試合を振り返る。明治安田J2・J3百年構想リーグEAST-Aグループ第3節。仙台にとってアウェイ3連戦のラストゲーム。栃木SC戦は2-1と逆転勝利を収めたものの、背番号9に得点は付いてこなかった。
この日の試合が特別な一戦だったのは間違いない。宮崎にとって栃木SCは、大学卒業後にJリーガーへの扉を開いてくれたチームであり、ルーキーイヤーから3シーズンを過ごした大事な古巣。昨季はカテゴリーが違ったため、対戦する機会は訪れなかったが、今季は百年構想リーグの同じグループに入ったことで、刃を交える機会が実現したのだ。
『2月22日、カンセキスタジアムとちぎ』というキーワードは、スケジュールが発表された時から強く意識してきた。「自分の今シーズンはリハビリスタートで、出遅れてしまった部分があったんですけど、(森山佳郎)監督からも『しっかりコンディションを上げて、栃木戦に間に合わせよう』と言われていました」。
開幕戦こそメンバー外だったが、第2節の横浜FC戦で途中出場から決勝点を叩き込むと、森山監督はこの日の試合のスタメンリストに宮崎の名前を書き込む。「そこまで考えて起用してくださった監督にも感謝したいですし、ここに無事コンディションを持ってこれたのは非常に良かったです」。胸を高鳴らせながら、懐かしい会場へと足を踏み入れる。
ウォーミングアップ中に自分の名前が呼ばれると、ホームのゴール裏から拍手が送られる。「もしかしたらブーイングされるんじゃないかと思ったんですけど(笑)、凄く大きな拍手で迎えていただいて、本当に嬉しかったですね」。だからこそ、より成長した姿を、あの人たちへ見せないといけない。内側からみなぎる力を感じながら、キックオフの笛を聞く。
「本当に栃木さんの守備が堅くて、やりづらかったですね。フォワードがサイドに流れて、3バックの両脇のところに抜けないとどうしても崩せないので、『今日は潰れ役の日だな』ということは感じていました」。2トップを組む古屋歩夢との連携も意識しつつ、ボールが入った時には屈強な身体を生かして基点を創出しながら、虎視眈々とゴールを狙い続ける。
インサイドハーフに入った荒木駿太は、駒澤大時代からコンビを組んできた、いわば“盟友”的存在。「自分の特徴を一番理解してもらっている選手だと思いますし、一緒にやっていても非常にやりやすいですね。去年は初めての移籍でしたけど、彼がいたので困らなかった面もありましたし、大学時代はメチャメチャキツい練習をともにしてきた仲なので(笑)、これからも切磋琢磨して頑張りたいです」。そんな2人がプロの世界で、再び同じユニフォームを纏って共闘しているのも興味深い。
試合は前半のうちに先制点を献上したものの、後半に入って69分にセットプレーから岩渕弘人のゴールで追いつくと、75分には大卒ルーキーの杉山耀建が華麗なドリブルシュートを沈めて逆転に成功。宮崎は終了間際まで身体を張り続け、88分に中田有祐へ後を託し、ピッチを後にする。
ファイナルスコアは2-1。「もう少しフォワードから何かのアクションを出せたら良かったなという試合でしたね。久しぶりに80分ぐらいまで出て、ちょっとしんどかったですけど、それなりにスプリントの本数は出せていたので、ここから徐々にコンディションを上げていけたらいいかなと思います」。自身のゴールは生まれなかったものの、チームの勝利を笑顔で喜ぶ姿に、高校時代から変わらない人柄が滲んだ。
ひとしきりチームメイトとベガルタゴールドのサポーターと歓喜を分かち合ったあと、宮崎は逆側のゴール裏へ小走りで向かっていく。拍手しながら、深々と一礼。すると、その視界には“懐かしい景色”が飛び込んでくる。
「多くの方が自分の栃木で付けていた32番のユニフォームと、名前の入ったタオルマフラーを掲げてくれて、本当に嬉しかったですし、自分がプロにしてもらったクラブで、育ててもらったクラブに関わるみなさんに、元気な姿を見せられたのは非常に良かったと思います」。降り注ぐ温かい拍手とエールが、メチャメチャ心に沁みた。
仙台への移籍初年度となった2025年シーズンは、J2で32試合に出場してキャリアハイの8ゴールを記録。とりわけ第34節のサガン鳥栖戦では、0-2の状況から1人で2点を叩き込み、大逆転勝利の立役者に。ユアスタを熱狂の渦に巻き込んだ。
「去年はボックスで勝負するストライカーとして、非常に成長できた1年だったと思いますし、何よりも再現性のある形を何度も作れたことが、大きな自信に繋がりましたね。昨年のJ2は例年にないぐらいハイレベルでしたし、そういった中でもキャリアハイの数字を出せたということも凄く自信になりました」。
今季はプロ5年目のシーズン。プレーの幅は以前と比較にならないぐらい広がっている。「特に前から落ちてきて、受けて捌くというところを求められてきたことで、そこは向上していると思いますし、一時期はシャドーのポジションでもプレーさせてもらっていたので、総合的にいろいろなことはできる選手になれてきているのかなって」。
だからこそ、より求めるのは明確な結果。チームを勝利に導くゴールをどれだけ挙げられるかが、自身の価値を上げることも、仙台をいるべき場所へ戻す未来に繋がることも、十分すぎるほどに理解している。
「間違いなく去年は1つ壁を超えられたかなというシーズンでしたけど、J1に昇格するためには、フォワードは二桁ゴールを獲る必要があると思うので、まずそこにフォーカスして、もっともっとゴールに積極的に向かっていけるような選手になれるように練習していきたいですね」。
「百年構想リーグは18試合ということで、最低でも3試合に1点のペースではゴールを決めたいと思っているので、まずは6ゴールを目標にしながら、それ以上の数字を目指して頑張りたいです」。
ストライカーとしての感覚が研ぎ澄まされつつあることは、ハッキリと感じている。あとはそれを勝負すべき場所と、勝負すべきタイミングで、思い切り解き放つだけ。屈強な身体と、繊細な心遣いを併せ持つ、ベガルタ仙台の新9番。着実に努力を積み重ねてきた宮崎鴻の進撃は、まだまだこれからが抜群に面白い。
(取材・文 土屋雅史)
●Jリーグ百年構想リーグ特集
▶話題沸騰!『ヤーレンズの一生ボケても怒られないサッカーの話』好評配信中
一昨年までホームとして戦っていたスタジアムへの凱旋。気持ちが昂らないはずがない。このチームで培ったものをベースに、今のチームでさらなる成長を遂げた姿をちゃんと見せるため、とにかく走って、とにかく戦って、とにかく勝つ。
「こういう状況はプロに入って初めてだったので、正直緊張していたんですけど、温かく受け入れてもらって、最後に挨拶に行った時もあれだけたくさんの声援を送っていただいたので、『宮崎鴻は栃木が育てた』と誇ってもらえるように、もっともっと頑張りたいです」。
プロサッカー選手になってから、初めての“古巣対決”に臨んだベガルタ仙台の心優しきハイタワー。FW宮崎鴻はこの日味わった新たな感情をさらなるモチベーションに、エースストライカーとしての確固たる立ち位置を、杜の都で築き上げていく。
「いやあ、ゴール決めたかったですねえ」。宮崎は少しだけ悔しげな表情を浮かべながら、終わったばかりの試合を振り返る。明治安田J2・J3百年構想リーグEAST-Aグループ第3節。仙台にとってアウェイ3連戦のラストゲーム。栃木SC戦は2-1と逆転勝利を収めたものの、背番号9に得点は付いてこなかった。
この日の試合が特別な一戦だったのは間違いない。宮崎にとって栃木SCは、大学卒業後にJリーガーへの扉を開いてくれたチームであり、ルーキーイヤーから3シーズンを過ごした大事な古巣。昨季はカテゴリーが違ったため、対戦する機会は訪れなかったが、今季は百年構想リーグの同じグループに入ったことで、刃を交える機会が実現したのだ。
『2月22日、カンセキスタジアムとちぎ』というキーワードは、スケジュールが発表された時から強く意識してきた。「自分の今シーズンはリハビリスタートで、出遅れてしまった部分があったんですけど、(森山佳郎)監督からも『しっかりコンディションを上げて、栃木戦に間に合わせよう』と言われていました」。
開幕戦こそメンバー外だったが、第2節の横浜FC戦で途中出場から決勝点を叩き込むと、森山監督はこの日の試合のスタメンリストに宮崎の名前を書き込む。「そこまで考えて起用してくださった監督にも感謝したいですし、ここに無事コンディションを持ってこれたのは非常に良かったです」。胸を高鳴らせながら、懐かしい会場へと足を踏み入れる。
ウォーミングアップ中に自分の名前が呼ばれると、ホームのゴール裏から拍手が送られる。「もしかしたらブーイングされるんじゃないかと思ったんですけど(笑)、凄く大きな拍手で迎えていただいて、本当に嬉しかったですね」。だからこそ、より成長した姿を、あの人たちへ見せないといけない。内側からみなぎる力を感じながら、キックオフの笛を聞く。
「本当に栃木さんの守備が堅くて、やりづらかったですね。フォワードがサイドに流れて、3バックの両脇のところに抜けないとどうしても崩せないので、『今日は潰れ役の日だな』ということは感じていました」。2トップを組む古屋歩夢との連携も意識しつつ、ボールが入った時には屈強な身体を生かして基点を創出しながら、虎視眈々とゴールを狙い続ける。
インサイドハーフに入った荒木駿太は、駒澤大時代からコンビを組んできた、いわば“盟友”的存在。「自分の特徴を一番理解してもらっている選手だと思いますし、一緒にやっていても非常にやりやすいですね。去年は初めての移籍でしたけど、彼がいたので困らなかった面もありましたし、大学時代はメチャメチャキツい練習をともにしてきた仲なので(笑)、これからも切磋琢磨して頑張りたいです」。そんな2人がプロの世界で、再び同じユニフォームを纏って共闘しているのも興味深い。
試合は前半のうちに先制点を献上したものの、後半に入って69分にセットプレーから岩渕弘人のゴールで追いつくと、75分には大卒ルーキーの杉山耀建が華麗なドリブルシュートを沈めて逆転に成功。宮崎は終了間際まで身体を張り続け、88分に中田有祐へ後を託し、ピッチを後にする。
ファイナルスコアは2-1。「もう少しフォワードから何かのアクションを出せたら良かったなという試合でしたね。久しぶりに80分ぐらいまで出て、ちょっとしんどかったですけど、それなりにスプリントの本数は出せていたので、ここから徐々にコンディションを上げていけたらいいかなと思います」。自身のゴールは生まれなかったものの、チームの勝利を笑顔で喜ぶ姿に、高校時代から変わらない人柄が滲んだ。
ひとしきりチームメイトとベガルタゴールドのサポーターと歓喜を分かち合ったあと、宮崎は逆側のゴール裏へ小走りで向かっていく。拍手しながら、深々と一礼。すると、その視界には“懐かしい景色”が飛び込んでくる。
「多くの方が自分の栃木で付けていた32番のユニフォームと、名前の入ったタオルマフラーを掲げてくれて、本当に嬉しかったですし、自分がプロにしてもらったクラブで、育ててもらったクラブに関わるみなさんに、元気な姿を見せられたのは非常に良かったと思います」。降り注ぐ温かい拍手とエールが、メチャメチャ心に沁みた。
仙台への移籍初年度となった2025年シーズンは、J2で32試合に出場してキャリアハイの8ゴールを記録。とりわけ第34節のサガン鳥栖戦では、0-2の状況から1人で2点を叩き込み、大逆転勝利の立役者に。ユアスタを熱狂の渦に巻き込んだ。
「去年はボックスで勝負するストライカーとして、非常に成長できた1年だったと思いますし、何よりも再現性のある形を何度も作れたことが、大きな自信に繋がりましたね。昨年のJ2は例年にないぐらいハイレベルでしたし、そういった中でもキャリアハイの数字を出せたということも凄く自信になりました」。
今季はプロ5年目のシーズン。プレーの幅は以前と比較にならないぐらい広がっている。「特に前から落ちてきて、受けて捌くというところを求められてきたことで、そこは向上していると思いますし、一時期はシャドーのポジションでもプレーさせてもらっていたので、総合的にいろいろなことはできる選手になれてきているのかなって」。
だからこそ、より求めるのは明確な結果。チームを勝利に導くゴールをどれだけ挙げられるかが、自身の価値を上げることも、仙台をいるべき場所へ戻す未来に繋がることも、十分すぎるほどに理解している。
「間違いなく去年は1つ壁を超えられたかなというシーズンでしたけど、J1に昇格するためには、フォワードは二桁ゴールを獲る必要があると思うので、まずそこにフォーカスして、もっともっとゴールに積極的に向かっていけるような選手になれるように練習していきたいですね」。
「百年構想リーグは18試合ということで、最低でも3試合に1点のペースではゴールを決めたいと思っているので、まずは6ゴールを目標にしながら、それ以上の数字を目指して頑張りたいです」。
ストライカーとしての感覚が研ぎ澄まされつつあることは、ハッキリと感じている。あとはそれを勝負すべき場所と、勝負すべきタイミングで、思い切り解き放つだけ。屈強な身体と、繊細な心遣いを併せ持つ、ベガルタ仙台の新9番。着実に努力を積み重ねてきた宮崎鴻の進撃は、まだまだこれからが抜群に面白い。
(取材・文 土屋雅史)
●Jリーグ百年構想リーグ特集
▶話題沸騰!『ヤーレンズの一生ボケても怒られないサッカーの話』好評配信中



