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開幕戦ゴラッソの18歳ルーキーがJリーグのピッチで重ねる「学びの時間」。仙台FW古屋歩夢は指揮官から求められる「プレーの理由」を突き詰めていく

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開幕戦から3試合連続スタメンの18歳ルーキー、ベガルタ仙台FW古屋歩夢(写真は開幕戦時)

[2.22 J2・J3百年構想リーグEAST-A第3節 栃木SC 1-2 仙台 カンセキ]

 インパクト抜群だった開幕戦の1点が、自身のハードルを大きく上げたことは、もちろん重々承知している。そのうえで求めるのはさらなる結果と、さらなる躍動。18歳だとか、ルーキーだとか、そんなことは関係ない。とにかく目の前にあるゴールネットを揺らし続けるだけだ。

「この先ももっとどんどん得点を決めていかないと、自分の価値も上がっていかないですし、今日も最初に打ったあの1本のシュートで、点を決められるか、決められないかが、勝負を分けてくると思うので、ああいう場面でゴールを決められるように練習していきたいです」。

 ベガルタ仙台に突如として現れた、アカデミー育ちの獰猛なストライカー。FW古屋歩夢は成長に繋がる糧を日々探し求めながら、ゴールという明確な成果に向かって、ひたすら突き進んでいく。


「メチャメチャみんなにほめられましたけど、あそこで一気に自分に対する期待度が上がったなとは思います」。古屋は“プロ初ゴール”がもたらした影響を、そんな言葉で表現する。2月7日。明治安田J2・J3百年構想リーグEAST-Aグループ開幕戦。栃木シティとの一戦でスタメンに抜擢された背番号34は、後半7分にJリーグでの経験も豊富なマテイ・ヨニッチに競り勝つと、GKの位置を冷静に見極め、ループでのミドルを選択。ボールは無人のゴールへと弾み込む。

 プロデビュー戦で挙げたJリーグ初ゴールの衝撃は絶大だったが、実はこの1点の陰には、ちょうど10歳年上の“先輩”からのアドバイスがあったそうだ。「マサくん(菅田真啓)には常に練習から声を掛けてもらっているんですけど、開幕戦も自分が何本もシュートを打って、なかなか決められなかった時に『絶対にまだチャンスはあるからどんどん狙っていけ。10本打って1本でも決めれば、フォワードはヒーローだ』と言われたんです。マサくんにはサッカー以外のところでも、ちょっかいをかけてもらっているので、好きな先輩ですね」。笑顔でそう話す表情には、まだ18歳のあどけなさを残している。

 その立ち位置は自身の想像を上回っていく。「キャンプの最初は自分のプレーをなかなか出せなかった中で、だんだんみんなと話し合って、打ち解けてきて、ボールをもらえるようになってからは自分のプレーができてきたので、ベンチに入って途中から出るイメージはしていたんですけど、開幕3試合連続スタメンというのはあまり考えていなかったです」とは本人だが、チームを率いる森山佳郎監督は、この日の第3節・栃木SC戦でも古屋をスタートからピッチへと送り出す。

 いきなりのファーストシュートは開始10秒。2トップを組んだFW宮崎鴻のパスを受けると、左足一閃。軌道は枠の左へ外れたものの、「1試合目も2試合目もチャンスは何本もあった中で、まだ1点しか決められていなかったので、今日は『何が何でも点を獲ってチームを勝たせたい』と思っていました」という得点への意欲を強く滲ませる。

 だが、以降はなかなか良い形でチャンスに絡むまでには至らない。「鴻くんともなかなかうまく連携が取れていなかったという印象ですし、なかなかフォワードにボールが入らずに前半が終わってしまった感じでした」。

 仙台が1点のビハインドを負って、迎えたハーフタイム。「宮崎も結構自由人という感じなので、動きが重なって、ちょっと2人の良さを生かし合うところが足りなかったですね」と前半の2トップについて言及した指揮官は2枚代えを決断。古屋は45分間での交代を余儀なくされる。

 森山監督は古屋に対して「彼はフォワード気質で、何しろ強気で、『相手がプロだろうと関係ねえ』みたいな感じで、背負ってからもしっかりキープもしてくれますし、そこから強引にシュートまで持っていけるようなフォワードらしいプレーもできるところも良さだと思います」と一定の評価を口にしながら、今の課題についてもこう話している。

「もう少し攻守に判断材料を持つというか、“プレーの理由”をしっかりと持ってほしいですね。自分の中で『今はこうだったから、次はこうしよう』とか、『味方がこうしたから、こうしよう』というようなものをしっかり見ながら、そこに反応できるようになればいいかなと」。

「ゴールに向かっていけと言わなくても、向かっていく選手ですけど、レギュラー争いもなかなか厳しくなりますし、ケガ人もだいぶ戻ってきていて、本当に練習から勝負していかないと簡単ではないよ、と。チャンスはプレゼントされるものではないので、掴み取らないといけないと思います」。

 古屋もそのことは十分に理解しているようだ。「ボックスの中で身体を使ってキープして、潜っていくプレーと、ボールをもらった時に攻撃の基点になれるような身体の使い方はプロでも通用している部分もありますけど、このチームのフォワードは守備も求められるので、もっと周りと連携を取って、自分が方向を決めて、後ろが奪いやすいようにやっていきたいです」。

「あとはボールウォッチャーになってしまうことが多いので、『フォワードの相方の動きを見ておけ』『1個1個のプレーの判断の質を上げていけ』と言われていて、そこは自分の中でも課題だと思っているので、練習でそういう部分も合わせていけたらなと思っています」。逆転勝ちを収めたチームの中で、この日の45分間も18歳にとっては貴重な“現場体験”。少しずつ見えてきた『プレーの理由』を、日常の練習の中から突き詰めていく。


 古屋には中学時代を同じFC多摩ジュニアユースで過ごした、1歳年下の意識すべき“後輩”がいる。その選手は昨季の鹿島アントラーズユースで高校年代三冠に貢献し、既にトップチームとプロ契約を締結している吉田湊海。将来を嘱望されているストライカーだ。

「湊海から開幕戦が終わった後に電話が来たんですけど、そこから3日ぐらい電話が続いて。アイツはいろいろな代表にも選ばれていますし、鹿島の最年少出場記録も叩き出しているので、『今はオマエに負けてるわ』とか言われたんですけど、『オマエの方がスゲーよ』と言って、最後は『お互い頑張ろう』という話になりました(笑)」

「本音を言うと、湊海とはいつかまた一緒にプレーしたいなと思っています」。また同じユニフォームに袖を通し、1つのゴールを、1つの勝利を目指し、ともに戦える日を夢見て、それぞれの場所で努力を積み上げ、切磋琢磨する日々を重ねていく。あるいは代表でその夢が叶うのならば、それ以上に最高なことはないだろう。

クラブユース選手権決勝を前に談笑する古屋と鹿島ユースの吉田湊海(40番)


 2025年の仙台ユースは、数々の新たな歴史の扉をこじ開けた。夏のクラブユース選手権では、過去最高成績となる全国準優勝を経験。さらに昨年末のプレミアリーグプレーオフでは、8度目の挑戦にして悲願のプレミア初昇格が決定。その躍進を中心で担った“先輩”も、“後輩”たちの新たなチャレンジに大きな期待を隠さない。

「寮生活を一緒にしているユースの選手もいるので、最近もいろいろな話を聞いています。きっとこの先いろいろキツいこともあると思いますけど、僕らの代も最初から良かったわけではないですし、どんどん試合を重ねるごとに成長できると思うので、どんどんチャレンジしていってほしいなと思います」。

「自分もユースの時のトップのホームゲームは毎試合見に行っていましたし、そういうことが自分の力になって、今はこの舞台に立てているので、次は自分がアカデミーの選手たちに『ユース育ちでもできるんだぞ』ということを見せていきたいですし、希望を与えていきたいです」。

昨夏のクラブユース選手権は飛躍の大会に


 次節は今季初となる、ユアテックスタジアム仙台でのホームゲームが待っている。いよいよ地元のサポーターの前で、自らの力を披露するチャンス。その先をも見据える18歳が、口にした決意も頼もしい。

「最初は『出た試合は全部点を獲りに行く』と言っていたんですけど、この3試合が終わって、まだ1得点しか獲れていないので、次こそは絶対に何が何でも点を決めたいですし、この百年構想リーグで成長して、J2リーグが始まった時には二桁得点を獲れるように、頑張っていきたいと思っています」。

 ルーキーだと思って対峙したら、そのディフェンダーはきっと後悔することになる。いつだって突き進む方向は、前へ、前へ。2026年のベガルタ仙台に射し込んできた、眩い希望の光。古屋歩夢はプロの世界ではっきりと描き始めた夢に向かって、着実に、力強く、歩みを進めていく。

(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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