痛恨ミスから立て直した激動の90分間…鹿島22歳DF溝口修平を支えた周囲の声、体現した「自分たちから崩れない」
DF
[2.28 J1百年構想EAST第4節 浦和 2-3 鹿島 埼玉]
苦しい戦況に追い込まれた責任はもちろん感じていた。しかし、決して崩れない強さがあった。鹿島アントラーズの22歳DF溝口修平はJ1百年構想リーグ第4節・浦和戦で、プロ5年目にして初の90分間フル出場。前半14分には自らのサイドから相手の突破を許し、一時2点ビハインドに追い込まれる流れを作ってしまったが、揺るがずピッチに立ち続けたことで、劇的な逆転勝利に導いた。
52841人の大観衆が詰めかけたアウェーでの注目対決。前節・柏戦(◯2-0)から左サイドバックの先発を掴んだ22歳は試合序盤から厳しい立場に追い込まれた。
前半14分、浦和の右SB関根貴大にロングフィードを蹴り込まれ、強風に乗ったボールを追いかけた溝口だったが、MF金子拓郎をゴールライン際に追い込もうと減速したところで相手が一気に急加速。一発で振り切られてボックス内への侵入を許してしまい、クロスからFW肥田野蓮治に先制ゴールを決められた。
1対1の対応が悔やまれた先制被弾。その後も浦和は明らかに右サイドを中心に攻撃を組み立て、昨季までJ1リーグ戦出場15試合にとどまっていた22歳を狙っており、そこで流れを失った鹿島は同19分にもセットプレーから失点し、開始わずか20分間足らずで重い2点のビハインドを背負った。
ところが、この悪い流れは長くは続かなかった。苦しんでいるようにも見えた溝口によると、大きな動揺はなかったという。その時心の支えになったのは、若手のミスに全く揺らぐ様子もない、経験豊富なチームメートたちの振る舞いだった。
「自分のミスだなというのは正直思っていたし、ただその後の失点(2失点)も含めて、チーム内でも声はあって『これ以上はなしにしよう』と。自分たちの流れに持っていけるという認識は話してはいないけど全体の中にあったので、ここで崩れないのが大事だなと思っていました」(溝口)
守備陣だけを見渡しても、最終ラインで絶大な存在感を誇るDF植田直通、ボランチで輝きを取り戻したMF三竿健斗、昨季JリーグMVPに輝いた現日本代表GK早川友基と、数々の修羅場を乗り越えてきた選手たちが並ぶ現在の鹿島。個人のミスに帰することのできるような失点後にも冷静なコミュニケーションが取れていたようだ。
「周りから見えている認識といいますか、『どうですか?』と自分から聞きに行ったのもありますし、植田くんからは『もっと蹴られた時に下げていいよ』とか、その辺のすり合わせもできたので、ああいうので助かるところはありますね。ミスをすると孤立してしまうところもあるので、喋るだけでもメンタルは助かりますね。健斗くんも含めて、本当にワンプレーワンプレーで声をかけてくれて。『全然いいぞ』とか、いいプレーをした時は褒めてくれるし、そういう一言一言で救われていると思います」(溝口)
そうした先輩たちからの心強いアプローチに加え、鬼木達監督が昨季の就任当初から強調し続けてきた言葉も溝口の胸に深く刻まれていた。
「監督からミーティングのところで『自分たちから崩れない』というのは常に言われていたので。失点の後に連続失点しないとか、自分たちから試合を放棄しない、勝手に崩れていかないというのはオニさんの1年目からすごくずっと言われてきたことなので、自分は試合に出ていない時間も多かったですけど、これは今のメンバーも含めて全員の共通認識にあることなのかなと思います」
そうしてミスを乗り越えた溝口は、一息つくことのできるハーフタイムを待つことなく、「自分から崩れない」姿勢を体現することで見事にパフォーマンスを立て直した。特に際立っていたのはビルドアップへの関与。鹿島が強みとするロングフィードでの陣地回復は強風下では難しいという状況のなか、風の影響を受けにくいショートパスに活路を見出した。
「自分の武器は攻撃なので。チームの得点を何らかで生むというのが次にやるべきことだなと切り替えて、ちょっとずつ小さい成功から立て直して持っていこうと思っていた。一発目にリスクのあることをやってしまうと成功率も低いし、そこでミスをするとまた乗れなくなってしまうので、ちょっとずつ掴めるようにというのを意識していました」(溝口)
相手が狙いとする背後へのロングフィードには警戒しつつも、溝口は積極的に高い位置を取り、時には内側にも絞りながら安定したビルドアップを構築。「どの相手も自ずと中に行けば一つずつ相手はズレていく。特に今日はかなりスペースが空いていたのでそこは上手くできたと思う」。細かいポジショニングを怠ることなく、的確に時間を作って押し返す役目を果たしたことで、前半のうちに1点を返し、後半の逆転劇につながる流れを作った。
そうして終わってみれば、J1初のフル出場で勝ち点3を獲得。自らのミスを取り返した仲間たちに「感謝です。点を取ってくれたみんなにも、守ってくれたみんなにも感謝」と安堵の表情で感謝を告げた22歳にとって、サッカー人生を大きく前に進められる90分間となった。
「もちろん失点のところも含めて課題は多くある。ただ、それ以上に武器は出せた試合でもあったと思うので、大きな自信にもなった。個人的には90分出ることがこれまでなかったので、そこをクリアできたのも大きかった。何より自分が出た直近2試合で勝てたのが一番。もちろん自分のアピールもあるけど、そのため(勝利のため)にやっているので。それも含めて大きな試合になったなと思います」(溝口)
(取材・文 竹内達也)
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苦しい戦況に追い込まれた責任はもちろん感じていた。しかし、決して崩れない強さがあった。鹿島アントラーズの22歳DF溝口修平はJ1百年構想リーグ第4節・浦和戦で、プロ5年目にして初の90分間フル出場。前半14分には自らのサイドから相手の突破を許し、一時2点ビハインドに追い込まれる流れを作ってしまったが、揺るがずピッチに立ち続けたことで、劇的な逆転勝利に導いた。
52841人の大観衆が詰めかけたアウェーでの注目対決。前節・柏戦(◯2-0)から左サイドバックの先発を掴んだ22歳は試合序盤から厳しい立場に追い込まれた。
前半14分、浦和の右SB関根貴大にロングフィードを蹴り込まれ、強風に乗ったボールを追いかけた溝口だったが、MF金子拓郎をゴールライン際に追い込もうと減速したところで相手が一気に急加速。一発で振り切られてボックス内への侵入を許してしまい、クロスからFW肥田野蓮治に先制ゴールを決められた。
1対1の対応が悔やまれた先制被弾。その後も浦和は明らかに右サイドを中心に攻撃を組み立て、昨季までJ1リーグ戦出場15試合にとどまっていた22歳を狙っており、そこで流れを失った鹿島は同19分にもセットプレーから失点し、開始わずか20分間足らずで重い2点のビハインドを背負った。
ところが、この悪い流れは長くは続かなかった。苦しんでいるようにも見えた溝口によると、大きな動揺はなかったという。その時心の支えになったのは、若手のミスに全く揺らぐ様子もない、経験豊富なチームメートたちの振る舞いだった。
「自分のミスだなというのは正直思っていたし、ただその後の失点(2失点)も含めて、チーム内でも声はあって『これ以上はなしにしよう』と。自分たちの流れに持っていけるという認識は話してはいないけど全体の中にあったので、ここで崩れないのが大事だなと思っていました」(溝口)
守備陣だけを見渡しても、最終ラインで絶大な存在感を誇るDF植田直通、ボランチで輝きを取り戻したMF三竿健斗、昨季JリーグMVPに輝いた現日本代表GK早川友基と、数々の修羅場を乗り越えてきた選手たちが並ぶ現在の鹿島。個人のミスに帰することのできるような失点後にも冷静なコミュニケーションが取れていたようだ。
「周りから見えている認識といいますか、『どうですか?』と自分から聞きに行ったのもありますし、植田くんからは『もっと蹴られた時に下げていいよ』とか、その辺のすり合わせもできたので、ああいうので助かるところはありますね。ミスをすると孤立してしまうところもあるので、喋るだけでもメンタルは助かりますね。健斗くんも含めて、本当にワンプレーワンプレーで声をかけてくれて。『全然いいぞ』とか、いいプレーをした時は褒めてくれるし、そういう一言一言で救われていると思います」(溝口)
そうした先輩たちからの心強いアプローチに加え、鬼木達監督が昨季の就任当初から強調し続けてきた言葉も溝口の胸に深く刻まれていた。
「監督からミーティングのところで『自分たちから崩れない』というのは常に言われていたので。失点の後に連続失点しないとか、自分たちから試合を放棄しない、勝手に崩れていかないというのはオニさんの1年目からすごくずっと言われてきたことなので、自分は試合に出ていない時間も多かったですけど、これは今のメンバーも含めて全員の共通認識にあることなのかなと思います」
そうしてミスを乗り越えた溝口は、一息つくことのできるハーフタイムを待つことなく、「自分から崩れない」姿勢を体現することで見事にパフォーマンスを立て直した。特に際立っていたのはビルドアップへの関与。鹿島が強みとするロングフィードでの陣地回復は強風下では難しいという状況のなか、風の影響を受けにくいショートパスに活路を見出した。
「自分の武器は攻撃なので。チームの得点を何らかで生むというのが次にやるべきことだなと切り替えて、ちょっとずつ小さい成功から立て直して持っていこうと思っていた。一発目にリスクのあることをやってしまうと成功率も低いし、そこでミスをするとまた乗れなくなってしまうので、ちょっとずつ掴めるようにというのを意識していました」(溝口)
相手が狙いとする背後へのロングフィードには警戒しつつも、溝口は積極的に高い位置を取り、時には内側にも絞りながら安定したビルドアップを構築。「どの相手も自ずと中に行けば一つずつ相手はズレていく。特に今日はかなりスペースが空いていたのでそこは上手くできたと思う」。細かいポジショニングを怠ることなく、的確に時間を作って押し返す役目を果たしたことで、前半のうちに1点を返し、後半の逆転劇につながる流れを作った。
そうして終わってみれば、J1初のフル出場で勝ち点3を獲得。自らのミスを取り返した仲間たちに「感謝です。点を取ってくれたみんなにも、守ってくれたみんなにも感謝」と安堵の表情で感謝を告げた22歳にとって、サッカー人生を大きく前に進められる90分間となった。
「もちろん失点のところも含めて課題は多くある。ただ、それ以上に武器は出せた試合でもあったと思うので、大きな自信にもなった。個人的には90分出ることがこれまでなかったので、そこをクリアできたのも大きかった。何より自分が出た直近2試合で勝てたのが一番。もちろん自分のアピールもあるけど、そのため(勝利のため)にやっているので。それも含めて大きな試合になったなと思います」(溝口)
(取材・文 竹内達也)
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