beacon

名古屋U-18時代の後輩のA代表選出に「負けているとは言いたくない。自分ももっとやってやる」。東京国際大GK北橋将治が磨き上げるのは飛び抜けた「スーパーストロングポイント」

ポスト
Xに投稿
Facebookでシェア
Facebookでシェア
URLをコピー
URLをコピー
URLをコピーしました

定位置を掴みつつある東京国際大GK北橋将治(3年=名古屋U-18)

[7.5 関東大学L1部第9節延期分 東京国際大 0-3 明治大 東京国際大学第1グラウンド]

 ゴールマウスの前に立つことができるのは、チームでたった1人だけ。最後は自分の出来に勝敗が懸かっているという、その強烈な責任感を背負えるだけの準備と覚悟は、この2年間できっちり整えてきた。とにかく止める。とにかく防ぐ。守護神という役割をまっとうして、必ずみんなの笑顔を手繰り寄せる。

「まずはこの関東リーグで後期は全部の試合に出続けることと、結果を出さないと評価してもらえないので、数字としての結果を出すことは考えていますし、自分のストロングポイントをプロでも飛び抜けて評価してもらえるぐらいの“スーパーストロングポイント”にできるぐらいまで、この半年間は練習に取り組んでいきたいと思います」

 シビアなポジション争いの中で、定位置を掴みつつある東京国際大のビッグセーバー。GK北橋将治(3年=名古屋U-18)は試合に出ることの重要性を改めて感じながら、圧倒的な成長の先にある、さらなるステップアップを誓っている。


「とにかく苦しかったですね。何をやってもうまく行かないというか、ケガも凄く多かったので、筋トレの量も増やしていたんですけど、それがプレーの向上に結び付かなかったですし、ミスが多くてなかなか周囲の信頼を勝ち獲れなくて、1,2年の時はものすごく苦しかったです」。

 北橋は大学入学後の2年間を、そう振り返る。埼玉県の公立中・さいたま市立宮前中から、スカウトされた名古屋グランパスU-18へと入団。プレミアリーグでも経験を積み重ね、トップチームへの昇格は叶わなかったものの、その高いポテンシャルは多くの人の知るところとなった中で、東京国際大へと入学してきたが、実力者の揃う先輩たちの壁は高かった。

 3つ上には志賀一允(群馬)、2つ上には松本崚汰(いわき)とのちのJリーガーが居並び、1つ上にも今季のキャプテンを務めるGK大畑神唯(4年)が。1年時こそ関東大学リーグで2試合に出場したものの、昨シーズンの出場はゼロ。なかなかアピールする機会を得られない。

 今シーズンも開幕から大畑がスタメン出場を続けていたが、5節で国士舘大に0-5というスコアで敗れると、そこから3日後に行われた6節の東海大戦で、とうとう北橋に出番が回ってくる。

「いつチャンスが来てもいいように、自分の課題の部分にコーチと一緒に取り組んでいましたし、自分のストロングを練習や紅白戦でコンスタントに発揮し続けていれば。チャンスはいつか絶対来ると思いながら、ずっと練習していました」。



 そう話す北橋が、特にこれまでの2年間で見直してきたのは、ゴールキーパーとしての基本技術の徹底だった。「ユースまではキックが得意だったんですけど、ケガしてからキックがうまく行かなくなってしまったので、そういう時にキーパーは失点しないことが一番だと思って、練習後もシュートをひたすら受けたりとか、キャッチングや弾くところの基礎技術をもっと徹底して練習していました」。

「そのおかげでCKのキャッチもこぼさなくなったりとか、良い方向に弾けたことでセカンドシュートを受けなかったりとか、そういう細かいところにもコーチに協力してもらって取り組んできたので、やっぱり失点しないことが第一というところに改めてたどり着いたというか、原点に戻ろうと思えたんです」。

 東海大との一戦には1-3で競り負けたものの、翌節の東洋大戦でも先発に指名されると、完封勝利にきっちり貢献。続く筑波大戦で2試合連続クリーンシートを達成し、チームを連勝に導いてからは、リーグ戦のゴールマウスに立ち続けている。

「東京国際のキーパーはクロスボールに出てほしいという要望が監督とコーチからあって、そこの対応は1年生の時からずっと取り組んでいたものだったので、自分も自信を持ってやれましたし、そこでチャレンジできたから無失点で抑えられた試合もあると感じているので、それが少しずつ結果に結び付いてきたのかなと思います」。

 この日の明治大戦も、北橋はスタメンで登場。いつも通りゴールに一礼するルーティンを経てキックオフされたゲームは、序盤から東京国際大が好リズムで立ち上がったものの、37分にはPKを献上。「方向も予測も合っていたんですけど、触っても失点しては意味がないので、そこを止められるようにならないとなというのは自分の課題ですね」と自ら振り返ったように、ボールには触ったが、弾き切れずに先制を許す。

キックオフ直前にゴールへ一礼する北橋


 さらに5分後にはCKから2失点目。「スカウティングでも明治さんのセットプレーは強いということはわかっていたのに、ああいう失点をしてしまって……。特にCKは自分が主導となって指示を出さないと守れないと思うので、そこも課題が出たと思います」。悔しい失点に北橋は唇を噛む。

 後半にも1点を追加され、ファイナルスコアは0-3。「3失点もしたということで、自分の力が足りないことが数字で出てしまったので、また無失点に持っていけるように、これからもっと練習に取り組んでいかないとなと思いました」。リーグ戦では好調が続いていた中での完敗に、何とか前を向こうとする姿勢が印象的だった。


 名古屋U-18時代の“後輩”からも、小さくない刺激を受けている。1学年下に当たるピサノアレックス幸冬堀尾は今季の途中から名古屋でスタメンを勝ち獲ると、J1でも好パフォーマンスを続けたことで、『EAFF E-1選手権』に臨む日本代表にも選出。一躍その名前を知られる存在になった。

「今年に入ってからリーグでベンチに入ったりしていて、その時から『アイツもメチャメチャ頑張っているんだな』と思っていたんですけど、実際に試合に出始めてからプレーを見たら、ユースの時とは見違えるほど頼りがいがあるなと思える凄いプレーをしているので、そこは感心してしまったというか、『肝が据わっているな』と思いました」

「でも、やっぱり負けていられないですよね。ピサノは1個下なので、負けているとは言いたくないですけど、自分ももっとやってやるぞと。もっと活躍して有名になってやるぞという気持ちで今も頑張っているところです」。そのためにも大事なのは日常。目の前のトレーニングへ、地道に向き合っていくだけだ。



 総理大臣杯の出場を逃したチームは、ここから後期リーグに向かって、よりシビアなチーム内競争を繰り広げていく。実力者が揃うゴールキーパーのポジション争いも、熾烈を極めていくことは間違いない。

「今は神唯くんも絶対に悔しいはずですし、その分も戦わなきゃいけないなという覚悟は常に持って戦うようにはしています。神唯くんは尊敬している先輩で、日々の練習からうかうかしていられないというか、常にポジションを奪われるんじゃないかという緊張感を持ってやっているんですけど、ポジションを奪えた実感は今もないですし、今日みたいに負けていては、また代えられるかもしれないので、勝ち負けにもっとこだわらないとなというのは感じています」。

「あと、自分はクロスボールに出るのが好きで、そこがストロングだと思っているので、もうセンターバックやディフェンダーに競らせるのではなくて、全部自分がキャッチして、チームに流れを持ってくるぐらいのキーパーになりたいですね」。

 目指すのは“スーパーストロングポイント”で勝負できる、東京国際大の絶対的な守護神。恵まれた体格に秘められた可能性は無限大。さまざまな周囲からの刺激も糧に、北橋将治は仲間から任されたゴールを、これからも全身全霊で守り抜く。

 

(取材・文 土屋雅史)

●第99回関東大学リーグ特集
▶お笑いコンビ・ヤーレンズのサッカー番組がスタート!
土屋雅史
Text by 土屋雅史

「ゲキサカ」ショート動画

TOP