一歩ずつステップをきっちり踏んだ確かな成長の証明。鹿島ユースは青森山田相手に3発快勝で歓喜の“オブラディ”!
[5.11 プレミアリーグEAST第6節 鹿島ユース 3-0 青森山田高 カシマサブグラウンド]
一歩ずつ一歩ずつ、丁寧に、着実に、前へ進んでいくほかに、チームが成長していく方法はない。勝って、負けて、得点を喜び合って、失点を悔しがって、その中で1人1人が次の試合に出るために、トレーニングから全力を尽くす。そのサイクルが自分たちの未来に繋がると信じて。
「いつも自分たちで自分たちを苦しめていたというか、チャンスはある中で決められなくて、結局最後に集中力や運動量が落ちた時に失点する試合が結構多かったので、無失点で勝てたのは良かったですね。みんな徐々にプレミアに慣れてきているというか、こういう環境の中で適応できるようになってきているのかなと思います」(鹿島ユース・大川佑梧)。
着々とステップを踏んだ上で掴んだ、会心の完封勝利。11日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 EAST第6節で、鹿島アントラーズユース(茨城)と青森山田高(青森)が激突した一戦は、2トップを組むFW長疾風(2年)とFW吉田湊海(1年)がゴールを重ねた鹿島ユースが、3-0で快勝を収めている。
「相手は先制点というところを当然狙ってくる中で、ちょっと受け身に立った部分は自分たちも反省しないといけないかなと思います」と鹿島ユースを率いる柳澤敦監督も言及したように、序盤は青森山田がセットプレーを中心に押し込む展開に。前半18分には右からMF川口遼己(3年)が蹴り込んだCKに、DF伊藤柊(3年)が合わせたヘディングはGKを破るも、カバーに入っていた吉田が決死のクリア。決定機をモノにできない。
すると、ワンチャンスを生かしたのはホームチーム。24分。長のキープからMF小笠原聖真(3年)が左サイドをえぐって中へ。こぼれをDF玉木亜門(3年)が枠へ収めたフィニッシュは青森山田のGK松田駿(3年)がファインセーブで防いだものの、粘った吉田のシュートを長がプッシュしたボールはゴールへと転がり込む「亜門が上がってきた時に『シュートを打つだろうな』と思ったので、そのこぼれを意識しました」という11番のプレミア初ゴール。鹿島ユースが1点のアドバンテージを握る。
追い掛ける展開となった青森山田だが、それでも前への推進力は落ちない。38分にはFW石川大也(3年)との連携からMF浅野瑠唯(3年)が、41分にもMF谷川勇獅(3年)の右クロスから再び浅野が、43分にもDF小沼蒼珠(3年)のロングスローから伊藤がシュートを放つも、いずれも得点には至らず。前半は鹿島ユースが1点をリードしたまま、ハーフタイムへと折り返す。
迎えた後半開始早々。次の歓喜も鹿島ユースに訪れる。1分。長が基点を作り、吉田が左へ流したパスから小笠原は得意の左足でピンポイントクロス。高い打点で叩いたMF中川天蒼(2年)のヘディングは右ポストに弾かれたものの、いち早く詰めていた長のダイビングヘッドがゴールネットをきっちり揺らす。完璧なサイドアタックから、大きな追加点。両者の点差は2点に広がった。
「何本も何本もチャンスがあっても入らなくて、相手にはボールを奪われて、前にボールを配球されたら必ずシュートまで行かれているという状況でしたね」と口にした青森山田の正木昌宣監督は、12分に2枚替え。FW大沢悠真(3年)とFW比嘉大陽(3年)を投入すると、14分には大沢が右サイドを持ち上がってグラウンダーのクロス。走り込んだ比嘉とMF三浦陽(3年)はわずかに届かなかったが、あわやというシーンを創出する。
18分は鹿島ユース。佐藤、吉田と動かしたボールからMF福岡勇和(1年)がテンポ良くラストパスを通し、走った長には届かなかったものの好トライ。22分は青森山田。川口の右FKに比嘉が合わせたヘディングはわずかに枠の左へ。28分も青森山田。ここも川口が蹴り入れた左FKから、小沼が狙ったヘディングはクロスバーの上へ。30分は鹿島ユース。左サイドを駆け上がったFW正木裕翔(2年)がクロスを送り、MF平島大悟(1年)が放ったシュートは松田がビッグセーブ。お互いにチャンスを作り合う。
ダメ押しの一撃を沈めたのは1年生ストライカー。32分。GK岸野瑛太(3年)のキックを巧みにDF佐藤海宏(3年)が収めて繋ぎ、右へ持ち出した平島が左足でクロスを入れると、「平島選手は右利きなんですけど、左足も蹴れるというところで、中にカットインした瞬間に『クロスが来るな』とわかりました」という吉田が気合のヘディングをゴールへ突き刺す。
守備陣も最後まで集中力を途切れさせない。「跳ね返す部分も声の部分もラインコントロールの部分も、佑梧も土橋(竜之介)も海宏も含めて、良い感じにできたと思います」(玉木)。ファイナルスコアは3-0。「今までも点が獲れていれば、これぐらいのゲームができていたのかなという印象なので、こういう試合がもっと増えればいいなと思います。でも、無失点は嬉しかったというか、ホッとしました」とDF大川佑梧(2年)も笑顔を見せた鹿島ユースが今季初の無失点で、応援に駆け付けたアカデミーの後輩たちと勝利を喜び合う結果となった。
鹿島ユースが3試合のホームゲームで辿ったステップは興味深い。第2節の市立船橋高(千葉)戦は先制しながらも、後半のアディショナルタイムに失点を許し、1-1のドロー決着。第4節の横浜FCユース(神奈川)戦は2点を先行したものの、終盤に1点を返される展開を強いられ、何とか逃げ切って今季初勝利。そしてこの日の試合ではまたも2点を先に奪うと、今度は自分たちが次の1点を手繰り寄せ、無失点で試合を締めた。
「市船戦で最後に失点したのは自分のミスでもあったんですけど、逆にプレミアリーグの高体連のチームはああやってくるというのがみんなも意識できたというか、あの試合があったからこそ集中力を切らさないというのも、より意識できたと思います」(大川)「市船戦の時は最後の最後で追い付かれたんですけど、今回は追加点も獲れましたし、無失点で終われたので、2回のホームゲームよりは成長したんじゃないかなと思います」(玉木)。
選手たちも口にした着実な成長は、指揮官も感じているようだ。「そのステップはみんなの意識の部分がそうさせてくれたのではないかなと。やっぱり反省から学んでいくという部分は大事ですし、頭でわかっていても経験しないとなかなか難しい部分はあると思うので、その学びの中で得たものを今日はしっかりピッチで表現してくれたのかなと思います」(柳澤監督)。反省し、学び、表現するというサイクルを、チームはこの高校年代最高峰のステージで繰り返している。
前回のホームゲーム同様に、この日もピッチサイドにはジュニアとジュニアユースの選手たちがズラリと並び、90分間を通じてユースの“先輩”たちに声援を送り続ける。試合後にはアカデミーの全員で“オブラディ”を歌い、踊り、最高の笑顔を弾けさせる光景がとにかく印象的だった。
「前回のスタジアムでやった横浜FC戦もアカデミーの選手たちが来てくれて、やっぱりアカデミーの縦の繋がりの関係性が非常に良いなと思いますし、『みんなにユースを目指したいと思ってもらえるようなゲームをしよう』ということは選手たちにも伝えています。当然その先にはプロを目指してほしい部分もありますけど、まずは段階を踏んでいくという意味では、ジュニア、ジュニアユース、ユースというステージをみんなが勝ち獲っていくわけで、我々は『ユースに入りたい』と思ってもらえるような試合をして、さらにジュニアやジュニアユースの選手たちもそういう気持ちが強くなっていってくれたら嬉しいなと思います」(柳澤監督)。
伝統のエンブレムが引き継いでいく、『鹿島アントラーズを背負って戦う』ということの意義と価値。一歩ずつ一歩ずつ、丁寧に、着実に、前へ。5年ぶりに帰ってきたプレミアの舞台で、鹿島ユースは間違いなく進化を続けている。
(取材・文 土屋雅史)
●高円宮杯プレミアリーグ2024特集
一歩ずつ一歩ずつ、丁寧に、着実に、前へ進んでいくほかに、チームが成長していく方法はない。勝って、負けて、得点を喜び合って、失点を悔しがって、その中で1人1人が次の試合に出るために、トレーニングから全力を尽くす。そのサイクルが自分たちの未来に繋がると信じて。
「いつも自分たちで自分たちを苦しめていたというか、チャンスはある中で決められなくて、結局最後に集中力や運動量が落ちた時に失点する試合が結構多かったので、無失点で勝てたのは良かったですね。みんな徐々にプレミアに慣れてきているというか、こういう環境の中で適応できるようになってきているのかなと思います」(鹿島ユース・大川佑梧)。
着々とステップを踏んだ上で掴んだ、会心の完封勝利。11日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 EAST第6節で、鹿島アントラーズユース(茨城)と青森山田高(青森)が激突した一戦は、2トップを組むFW長疾風(2年)とFW吉田湊海(1年)がゴールを重ねた鹿島ユースが、3-0で快勝を収めている。
「相手は先制点というところを当然狙ってくる中で、ちょっと受け身に立った部分は自分たちも反省しないといけないかなと思います」と鹿島ユースを率いる柳澤敦監督も言及したように、序盤は青森山田がセットプレーを中心に押し込む展開に。前半18分には右からMF川口遼己(3年)が蹴り込んだCKに、DF伊藤柊(3年)が合わせたヘディングはGKを破るも、カバーに入っていた吉田が決死のクリア。決定機をモノにできない。
すると、ワンチャンスを生かしたのはホームチーム。24分。長のキープからMF小笠原聖真(3年)が左サイドをえぐって中へ。こぼれをDF玉木亜門(3年)が枠へ収めたフィニッシュは青森山田のGK松田駿(3年)がファインセーブで防いだものの、粘った吉田のシュートを長がプッシュしたボールはゴールへと転がり込む「亜門が上がってきた時に『シュートを打つだろうな』と思ったので、そのこぼれを意識しました」という11番のプレミア初ゴール。鹿島ユースが1点のアドバンテージを握る。
追い掛ける展開となった青森山田だが、それでも前への推進力は落ちない。38分にはFW石川大也(3年)との連携からMF浅野瑠唯(3年)が、41分にもMF谷川勇獅(3年)の右クロスから再び浅野が、43分にもDF小沼蒼珠(3年)のロングスローから伊藤がシュートを放つも、いずれも得点には至らず。前半は鹿島ユースが1点をリードしたまま、ハーフタイムへと折り返す。
迎えた後半開始早々。次の歓喜も鹿島ユースに訪れる。1分。長が基点を作り、吉田が左へ流したパスから小笠原は得意の左足でピンポイントクロス。高い打点で叩いたMF中川天蒼(2年)のヘディングは右ポストに弾かれたものの、いち早く詰めていた長のダイビングヘッドがゴールネットをきっちり揺らす。完璧なサイドアタックから、大きな追加点。両者の点差は2点に広がった。
「何本も何本もチャンスがあっても入らなくて、相手にはボールを奪われて、前にボールを配球されたら必ずシュートまで行かれているという状況でしたね」と口にした青森山田の正木昌宣監督は、12分に2枚替え。FW大沢悠真(3年)とFW比嘉大陽(3年)を投入すると、14分には大沢が右サイドを持ち上がってグラウンダーのクロス。走り込んだ比嘉とMF三浦陽(3年)はわずかに届かなかったが、あわやというシーンを創出する。
18分は鹿島ユース。佐藤、吉田と動かしたボールからMF福岡勇和(1年)がテンポ良くラストパスを通し、走った長には届かなかったものの好トライ。22分は青森山田。川口の右FKに比嘉が合わせたヘディングはわずかに枠の左へ。28分も青森山田。ここも川口が蹴り入れた左FKから、小沼が狙ったヘディングはクロスバーの上へ。30分は鹿島ユース。左サイドを駆け上がったFW正木裕翔(2年)がクロスを送り、MF平島大悟(1年)が放ったシュートは松田がビッグセーブ。お互いにチャンスを作り合う。
ダメ押しの一撃を沈めたのは1年生ストライカー。32分。GK岸野瑛太(3年)のキックを巧みにDF佐藤海宏(3年)が収めて繋ぎ、右へ持ち出した平島が左足でクロスを入れると、「平島選手は右利きなんですけど、左足も蹴れるというところで、中にカットインした瞬間に『クロスが来るな』とわかりました」という吉田が気合のヘディングをゴールへ突き刺す。
守備陣も最後まで集中力を途切れさせない。「跳ね返す部分も声の部分もラインコントロールの部分も、佑梧も土橋(竜之介)も海宏も含めて、良い感じにできたと思います」(玉木)。ファイナルスコアは3-0。「今までも点が獲れていれば、これぐらいのゲームができていたのかなという印象なので、こういう試合がもっと増えればいいなと思います。でも、無失点は嬉しかったというか、ホッとしました」とDF大川佑梧(2年)も笑顔を見せた鹿島ユースが今季初の無失点で、応援に駆け付けたアカデミーの後輩たちと勝利を喜び合う結果となった。
鹿島ユースが3試合のホームゲームで辿ったステップは興味深い。第2節の市立船橋高(千葉)戦は先制しながらも、後半のアディショナルタイムに失点を許し、1-1のドロー決着。第4節の横浜FCユース(神奈川)戦は2点を先行したものの、終盤に1点を返される展開を強いられ、何とか逃げ切って今季初勝利。そしてこの日の試合ではまたも2点を先に奪うと、今度は自分たちが次の1点を手繰り寄せ、無失点で試合を締めた。
「市船戦で最後に失点したのは自分のミスでもあったんですけど、逆にプレミアリーグの高体連のチームはああやってくるというのがみんなも意識できたというか、あの試合があったからこそ集中力を切らさないというのも、より意識できたと思います」(大川)「市船戦の時は最後の最後で追い付かれたんですけど、今回は追加点も獲れましたし、無失点で終われたので、2回のホームゲームよりは成長したんじゃないかなと思います」(玉木)。
選手たちも口にした着実な成長は、指揮官も感じているようだ。「そのステップはみんなの意識の部分がそうさせてくれたのではないかなと。やっぱり反省から学んでいくという部分は大事ですし、頭でわかっていても経験しないとなかなか難しい部分はあると思うので、その学びの中で得たものを今日はしっかりピッチで表現してくれたのかなと思います」(柳澤監督)。反省し、学び、表現するというサイクルを、チームはこの高校年代最高峰のステージで繰り返している。
前回のホームゲーム同様に、この日もピッチサイドにはジュニアとジュニアユースの選手たちがズラリと並び、90分間を通じてユースの“先輩”たちに声援を送り続ける。試合後にはアカデミーの全員で“オブラディ”を歌い、踊り、最高の笑顔を弾けさせる光景がとにかく印象的だった。
「前回のスタジアムでやった横浜FC戦もアカデミーの選手たちが来てくれて、やっぱりアカデミーの縦の繋がりの関係性が非常に良いなと思いますし、『みんなにユースを目指したいと思ってもらえるようなゲームをしよう』ということは選手たちにも伝えています。当然その先にはプロを目指してほしい部分もありますけど、まずは段階を踏んでいくという意味では、ジュニア、ジュニアユース、ユースというステージをみんなが勝ち獲っていくわけで、我々は『ユースに入りたい』と思ってもらえるような試合をして、さらにジュニアやジュニアユースの選手たちもそういう気持ちが強くなっていってくれたら嬉しいなと思います」(柳澤監督)。
伝統のエンブレムが引き継いでいく、『鹿島アントラーズを背負って戦う』ということの意義と価値。一歩ずつ一歩ずつ、丁寧に、着実に、前へ。5年ぶりに帰ってきたプレミアの舞台で、鹿島ユースは間違いなく進化を続けている。
(取材・文 土屋雅史)
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