[MOM4702]鹿児島城西DF柳真生(3年)_奄美育ちのレフティサイドバックがロングスローにキーマン封じとプレミアのピッチで躍動!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.18 プレミアリーグWEST第7節 岡山U-18 1-1 鹿児島城西高 岡山県総合グラウンド補助陸上競技場]
その左足から繰り出すキックの精度は、プレミアリーグを初めて戦うチームの重要な武器になっている。加えて標準を遥かに超える飛距離を誇るロングスローも有しているのだから、このスペシャルな“セットプレーヤー”を生かさない道はない。
「左足には結構自信があります。ただ、まだプレミアではクロスやコーナーとか自分の武器からのアシストができていないので、精度は高めたいなと思っていますし、練習からの質が結構大事だと思っています」。
奄美大島からやってきたポテンシャル十分のレフティサイドバック。鹿児島城西高DF柳真生(3年=T・S・C奄美出身)の磨いてきた武器は、高校年代最高峰の舞台でも輝きを放ち始めている。
「前半の10分ぐらいまでは良かったんですけど、そこから流れを相手に持っていかれて、守備もいつもより集中力が切れていたので、後半に向けて喝を入れられました」。柳はハーフタイムの雰囲気をそう振り返る。プレミアリーグWEST第7節。ファジアーノ岡山U-18(岡山)と対峙するアウェイゲーム。鹿児島城西は1点をリードされて、後半へと折り返す。
開始早々の2分。右サイドで獲得したスローイン。左サイドバックを務めている6番は、ピッチを小走りで縦断して、スポットへと到着する。前半から何本か投げていたロングスロー。ただ、後半はターゲットの顔ぶれに変化があった。180センチのFW浮邉泰士(2年)がピッチへ送り込まれていたのだ。
「大石と泰士がいたんですけど、大石の頭を狙ったら、良い感じで逸らせてくれましたね」。柳のロングスローにニアでFW大石脩斗(2年)が競り勝ち、こぼれを拾ったDF當眞竜雅(3年)のクロスにDF吉田健人(2年)が合わせたヘディングが、ゴールネットへ吸い込まれる。
得点に絡んだロングスローは、この試合を通じてかなりの数を投げていたのだが、本人に聞けばトライし始めたのはごくごく最近のことだという。「もともとロングスローはそこまで投げていなかったんですけど、遠征で『1回ロングスローを投げてみろ』みたいになって、そうしたら結構飛んだので、今年の2月か3月ぐらいから投げ始めています」。以前は自分のその能力にもほとんど気付いていなかったというのだから、個人の特性というのはわからないものだ。
この左サイドバックはセットプレー時のキッカーも務めており、右サイドからはインスイングで、左サイドからはアウトスイングで、ゴール前に際どいボールを蹴り入れていく。対峙する相手のレベルを考えても、プレミアではそう多くのチャンスを作れるわけではない。そこで柳のプレースキックが、大きな武器になるというわけだ。
もちろん守備面でもきっちり仕事を果たさなくてはならない。この日の岡山U-18の右サイドには、既にトップチームの公式戦にスタメン起用されているMFミキ・ヴィトルが配されており、柳はマッチアップすることに。前半はやや分が悪かったと感じていたようだが、そこで得た反省を残された45分間に生かしてみせる。
「前半は最初の入りで縦に行かれる場面が多くて、ちょっと距離が遠かったので、後半から距離を近めにして、自分が届く距離を意識してやっていました。それもあって後半は結構抑えられたかなと思います」。試合の中で修正を図り、相手のキーマンを封殺する対応力も披露。攻守に任されたタスクを確実にまっとうしていく。
結果的に試合は1-1のドロー。本人は「後半最後の付近になるにつれて、声も落ちてきて、自分自身も最後まで走れなかったので、そういうところは課題かなと思います」と反省を口にしたものの、相手に脅威を突き付け続けたロングスローとプレースキックの威力を考えれば、勝ち点獲得に大きく貢献したのは間違いない。
中学時代の柳は奄美大島に居を置くT・S・C奄美というチームでプレー。「中学校の時は最後の最後で呼んだんですよ。3年の10月とか11月ぐらいかな。それで練習に呼んだら左足が素晴らしくて、『ああ、センスはあるな』と思って、持ち方から運び方からドリブルから見ていると、『これはかなり時間がかかるだろうけどいいな』と思ったんです」とチームを率いる新田祐輔監督は、当時の印象をそう語っている。
柳が明かした入学理由も興味深い。「最初はあまり城西のことを知らなかったんですけど、話が来て、体験しに行って、『良いチームだな』と思ったので来ました。高校サッカーは知っていたんですけど、『鹿児島と言えば神村』のイメージしかなくて、話が来てから調べたりして、城西も強いことを知って、ここに来ました。『話が来たらそこに行こう』と思っていましたけど、話がなかったら島に残っていたと思います」。そのチームでプレミアリーグにまで出場することになるのだから、人生は不思議なものだ。
新田監督は続けてあることも教えてくれた。「柳はもともとボランチなんですよ。九州新人まではボランチをしていて、捌きはできますし、ヘディングも強いんですけど、彼の攻撃力をもっと生かしたいなと思って、それでサイドバックに置いているんです。まだまだできる選手ですし、今後への可能性を感じるなと思っています」。それを聞けば、そのプレースタイルも納得。左サイドからゲームを作るタスクも一定のレベルでこなしている。
今年は高校ラストイヤー。向き合うコンペティションはたくさんあるが、もう柳が掲げた手繰り寄せるべき目標は明確だ。「城西自体が全国に長く出られていないので、自分たちの代で全国に出たいですし、プレミアもここまでいろいろな経験をしてきているので、早く初勝利をゲットして、そこから総体も優勝して、プレミアも成績を出して、選手権に良い形で臨みたいと思っています」。
成長の余地はまだまだ残されている。6番を背負った左利きの左サイドバック。ここからさらに数々の経験を重ねていく柳真生が、その過程を経てどういう変化を遂げていくのかは、注意深く見つめていく必要がありそうだ。
(取材・文 土屋雅史)
●高円宮杯プレミアリーグ2024特集
[5.18 プレミアリーグWEST第7節 岡山U-18 1-1 鹿児島城西高 岡山県総合グラウンド補助陸上競技場]
その左足から繰り出すキックの精度は、プレミアリーグを初めて戦うチームの重要な武器になっている。加えて標準を遥かに超える飛距離を誇るロングスローも有しているのだから、このスペシャルな“セットプレーヤー”を生かさない道はない。
「左足には結構自信があります。ただ、まだプレミアではクロスやコーナーとか自分の武器からのアシストができていないので、精度は高めたいなと思っていますし、練習からの質が結構大事だと思っています」。
奄美大島からやってきたポテンシャル十分のレフティサイドバック。鹿児島城西高DF柳真生(3年=T・S・C奄美出身)の磨いてきた武器は、高校年代最高峰の舞台でも輝きを放ち始めている。
「前半の10分ぐらいまでは良かったんですけど、そこから流れを相手に持っていかれて、守備もいつもより集中力が切れていたので、後半に向けて喝を入れられました」。柳はハーフタイムの雰囲気をそう振り返る。プレミアリーグWEST第7節。ファジアーノ岡山U-18(岡山)と対峙するアウェイゲーム。鹿児島城西は1点をリードされて、後半へと折り返す。
開始早々の2分。右サイドで獲得したスローイン。左サイドバックを務めている6番は、ピッチを小走りで縦断して、スポットへと到着する。前半から何本か投げていたロングスロー。ただ、後半はターゲットの顔ぶれに変化があった。180センチのFW浮邉泰士(2年)がピッチへ送り込まれていたのだ。
「大石と泰士がいたんですけど、大石の頭を狙ったら、良い感じで逸らせてくれましたね」。柳のロングスローにニアでFW大石脩斗(2年)が競り勝ち、こぼれを拾ったDF當眞竜雅(3年)のクロスにDF吉田健人(2年)が合わせたヘディングが、ゴールネットへ吸い込まれる。
得点に絡んだロングスローは、この試合を通じてかなりの数を投げていたのだが、本人に聞けばトライし始めたのはごくごく最近のことだという。「もともとロングスローはそこまで投げていなかったんですけど、遠征で『1回ロングスローを投げてみろ』みたいになって、そうしたら結構飛んだので、今年の2月か3月ぐらいから投げ始めています」。以前は自分のその能力にもほとんど気付いていなかったというのだから、個人の特性というのはわからないものだ。
この左サイドバックはセットプレー時のキッカーも務めており、右サイドからはインスイングで、左サイドからはアウトスイングで、ゴール前に際どいボールを蹴り入れていく。対峙する相手のレベルを考えても、プレミアではそう多くのチャンスを作れるわけではない。そこで柳のプレースキックが、大きな武器になるというわけだ。
もちろん守備面でもきっちり仕事を果たさなくてはならない。この日の岡山U-18の右サイドには、既にトップチームの公式戦にスタメン起用されているMFミキ・ヴィトルが配されており、柳はマッチアップすることに。前半はやや分が悪かったと感じていたようだが、そこで得た反省を残された45分間に生かしてみせる。
「前半は最初の入りで縦に行かれる場面が多くて、ちょっと距離が遠かったので、後半から距離を近めにして、自分が届く距離を意識してやっていました。それもあって後半は結構抑えられたかなと思います」。試合の中で修正を図り、相手のキーマンを封殺する対応力も披露。攻守に任されたタスクを確実にまっとうしていく。
結果的に試合は1-1のドロー。本人は「後半最後の付近になるにつれて、声も落ちてきて、自分自身も最後まで走れなかったので、そういうところは課題かなと思います」と反省を口にしたものの、相手に脅威を突き付け続けたロングスローとプレースキックの威力を考えれば、勝ち点獲得に大きく貢献したのは間違いない。
中学時代の柳は奄美大島に居を置くT・S・C奄美というチームでプレー。「中学校の時は最後の最後で呼んだんですよ。3年の10月とか11月ぐらいかな。それで練習に呼んだら左足が素晴らしくて、『ああ、センスはあるな』と思って、持ち方から運び方からドリブルから見ていると、『これはかなり時間がかかるだろうけどいいな』と思ったんです」とチームを率いる新田祐輔監督は、当時の印象をそう語っている。
柳が明かした入学理由も興味深い。「最初はあまり城西のことを知らなかったんですけど、話が来て、体験しに行って、『良いチームだな』と思ったので来ました。高校サッカーは知っていたんですけど、『鹿児島と言えば神村』のイメージしかなくて、話が来てから調べたりして、城西も強いことを知って、ここに来ました。『話が来たらそこに行こう』と思っていましたけど、話がなかったら島に残っていたと思います」。そのチームでプレミアリーグにまで出場することになるのだから、人生は不思議なものだ。
新田監督は続けてあることも教えてくれた。「柳はもともとボランチなんですよ。九州新人まではボランチをしていて、捌きはできますし、ヘディングも強いんですけど、彼の攻撃力をもっと生かしたいなと思って、それでサイドバックに置いているんです。まだまだできる選手ですし、今後への可能性を感じるなと思っています」。それを聞けば、そのプレースタイルも納得。左サイドからゲームを作るタスクも一定のレベルでこなしている。
今年は高校ラストイヤー。向き合うコンペティションはたくさんあるが、もう柳が掲げた手繰り寄せるべき目標は明確だ。「城西自体が全国に長く出られていないので、自分たちの代で全国に出たいですし、プレミアもここまでいろいろな経験をしてきているので、早く初勝利をゲットして、そこから総体も優勝して、プレミアも成績を出して、選手権に良い形で臨みたいと思っています」。
成長の余地はまだまだ残されている。6番を背負った左利きの左サイドバック。ここからさらに数々の経験を重ねていく柳真生が、その過程を経てどういう変化を遂げていくのかは、注意深く見つめていく必要がありそうだ。
(取材・文 土屋雅史)
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