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[船橋招待]背負う覚悟を決めた「レイソルの4番でキャプテン」という重責。柏U-18DF上原伶央がみんなと乗り越えるのは「12月8日の記憶」

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柏レイソルU-18の新キャプテン、DF上原伶央(新3年=柏レイソルU-15出身)

[3.29 船橋招待U-18大会 柏U-18 4-0 帝京長岡高 千葉工業大学茜浜G]

 指揮官から大役に指名されたこの男が、そこに込められた想いを意気に感じないはずがない。太陽のエンブレムがあしらわれるユニフォームの左腕に、今シーズンから巻かれた鮮やかな腕章。もう、やるしかない。あと一歩届かなかったあの場所へ、絶対にたどり着いてやる。

「今年は4番を背負うキャプテンになったので、『レイソルの4番でキャプテン』というところで、それに恥ずかしくないプレーをして、チームを引っ張っていきたいと思っています」。

 プレミアリーグの覇権奪取を力強く見据える、柏レイソルU-18(千葉)の『4番でキャプテン』。DF上原伶央(新3年=柏レイソルU-15出身)は今まで培ったものすべてを懸けて、アカデミーラストイヤーに猛々しく向かっていく。


「正直、『自分ではないんじゃないかな』と思っていたんですけど、一度は経験したかった役割だったので、自分だと言われた時に『是非やらせてください』と言いました」。上原はその時のことを真剣な表情で振り返る。2025年シーズンを戦う柏U-18のキャプテンは、上原に託されることになる。

 チームを率いる藤田優人監督は、彼にその役割を任せた理由を次のように語っている。「まずレイソルのキャプテンなので、強く逞しくあってほしいなというところと、あとは彼の周りには笑顔が多いというか、私生活を見ている中で『場を明るくできる子』だと思うので、栗栖(汰志)とは違った彼のカラーで、チームにプラスの良さを与えてほしいなとは思っています」。

 指揮官も口にする昨季のキャプテン・栗栖汰志(現・藤枝)が発揮していた圧倒的なリーダーシップがチームに与えた影響は、一緒のピッチに立つことも多かった上原も強く実感している。ただ、もちろん同じことをするつもりもない。自分の色を打ち出しつつ、グループのバランスを整えていくイメージを膨らませている。

「去年はキーパーだった(栗栖)汰志がキャプテンをやっていたところで、キーパー練習もあるので練習中も途中から全体に合流する形で、いつもチームに声を掛ける場面にいたわけではなかったですけど、自分はフィールドプレイヤーなので、常にそういうリーダーシップも見せられたらいいのかなと思っています」。

「キャプテンになっても、普段通りにやればチームのみんなが付いてきてくれると信じてやるだけですし、自分が熱いプレーをしたり、熱い声掛けをすれば、チームも良い方向に持っていけるというのは感じているので、自分らしくというところを残しつつ、そういう熱さを見せられたらなと思っています」。



 今冬のキャンプには帯同しなかったものの、トップチームの練習には昨年も参加。プロの高いレベルを体感する中で、マーカーとして対峙したある“ベテランフォワード”のプレーがとにかく印象的だったそうだ。

「自分も小さなころからプレーを見ていた武藤雄樹選手(現・相模原)と対戦させてもらったんですけど、一瞬の動きで背後を取られて失点してしまったんです。自分もちゃんと見えていたはずなのに、いつの間にか消えていて、『やっぱり凄いな』と感じさせられましたし、『マジで上手いな!』と思いました」。

 フィジカルやアジリティの部分では明確な差を感じた一方で、自分でも自信を持っている空中戦や、正確なキックを生かしたサイドチェンジやロングフィードには、一定の手応えも掴んだという。まずは目の前のU-18での活動に全力を注ぎながら、2種登録を勝ち獲ることも、今季を戦う上での重要な目標だ。


 忘れられない、忘れたくない試合がある。2024年12月8日。プレミアリーグEAST最終節。アウェイで川崎フロンターレU-18と激突する一戦を前に、柏U-18は順位表の一番上に立っていた。2位・横浜FCユース、3位・鹿島アントラーズユースとは勝ち点で並んでいたものの、得失点差でアドバンテージがあったため、勝利すればリーグ制覇を引き寄せられる可能性は非常に高かったが、チームは前半に喫した先制点を跳ね返せず、川崎F U-18に0-1で敗戦。獲得目前だったタイトルは、その指の間からこぼれ落ちた。

「メチャメチャ悔しかったですね。あの試合に勝って、プレミアファイナルに行くことを自分たちは目標にしていましたし、それが叶いそうだったので、大事なところで勝てなかったのは悔しかったです」。スタメン起用され、60分までプレーしていた上原は、その大一番の経験をしっかりと心の奥底に刻んでいる。

「あの試合の自分は3年生を勝たせることができなかったわけで、『こんな経験はしたくない』という想いから、日々の練習や試合に対する想いが変わりました。たとえば練習1つをとっても、パスコントロールでミスをすると、それが試合にちゃんと出て、失点に繋がったり、得点できなかったりという、大きな場面に関わってくることもわかりましたし、1分も、1秒も、無駄にできないなと」。

 チームを支えるリーダーとして迎えた2025年。この1年で為すべきことは、完璧に理解している。

「藤田さんからは『得点は去年より獲る。失点は20失点以下に抑える』と言われていて、それを達成できれば必然的に優勝が近付いてくると思うので、そこをチームとして目標に掲げています。個人としてはこのキャプテンという立場を任せてもらったので、チームを引っ張る大変さもありますけど、自分の社会性もより成長させられれば、大学やプロに行った時により活躍できるのかなと。あとは、みんなも思っているはずですけど、自分も『藤田さんを男にしたい』と思っています」。

 もう覚悟なんて、とっくに決まっている。ともにシーズンを戦い抜く仲間たちに、確かな勇気とあふれる笑顔をもたらす『レイソルの4番でキャプテン』。最後の最後に歓喜の瞬間を手繰り寄せるため、上原伶央は自らに課せられた役割へ、明るく、楽しく、100パーセントで向き合っていく。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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