beacon

いつでも全ての力を注ぎ込むのは「目の前の練習」と「目の前の試合」。RB大宮U18DF酒井舜哉がトップチームの指揮官から学んだ「プロとして試合を戦うこと」の意味

ポスト
Xに投稿
Facebookでシェア
Facebookでシェア
URLをコピー
URLをコピー
URLをコピーしました

RB大宮アルディージャU18を束ねるキャプテン、DF酒井舜哉(3年=大宮アルディージャU15出身)

[5.10 プリンスリーグ関東1部第6節 RB大宮U18 2-1 帝京高 オレンジキューブアルディージャ練習場]

 1年でプレミアリーグに戻りたいとか、トップチームに昇格したいとか、2025年に掲げている目標はいくつもあるけれど、先のことを考えすぎても仕方ない。まずは目の前の練習を、目の前の試合を、100パーセントでやり切る。その積み重ねが望んだ未来に繋がっていくと信じて、今日のピッチで全力を出し尽くすだけだ。

「今日の試合もそうですし、明日はまた練習があるので、1日1日をしっかり練習して、生活して、今年が終わった後にプロになるのか、大学に行くのかわからないですけど、この1年は『もっとやっておけば良かったな』という後悔がないような年にしていきたいなと思っています」。

 190センチという圧倒的なサイズを誇る、RB大宮アルディージャU18(埼玉)の大型センターバック。DF酒井舜哉(3年=大宮アルディージャU15出身)はキャプテンという重責も担いながら、チームと自身の成長にフォーカスして、アカデミーラストイヤーを戦い抜く。


「自分たちの守備から攻撃へというチームコンセプトのところから良い攻撃ができたかなと思っていて、複数得点を獲るというところと、まずは守備から失点しないというところで必死でやって、70分ぐらいまでは良いゲームができたかなと思います」。

 酒井は終わったばかりの試合を、まずはそう振り返る。帝京高(東京)と対峙したプリンスリーグ関東1部第6節。前節でシーズン初黒星を喫し、必勝を期して挑んだホームゲームは、序盤からお互いに探り合うような展開の中、前半40分に良い形の守備からの流れで、MF田中奏良(3年)が先制ゴールを奪うと、後半8分にも田中がFKを直接流し込み、RB大宮U18が2点をリードする。

 守備陣も前半は何度か際どいシーンを作られたものの、先制以降は酒井とDF萩原央太朗(3年)のセンターバックコンビを中心に、きっちり安定感を打ち出しながら、相手のアタックをチャンスの芽の段階で、1つずつ丁寧に摘み取っていく。

 だが、29分にセットプレーの流れから失点を喫すると、終盤は危ないシーンも増加。1点差というシビアな状況で、必死のディフェンスが続く。最後は2-1で何とか逃げ切ったものの、試合終了の瞬間に背番号3が怒りにも似た、厳しい言葉を発したのが印象的だった。

「センターバックなので失点は単純に悔しかったのと、失点から一気に相手に流れを持っていかれてしまいましたし、来週も試合があるので、『もう1回締め直さないと、このままじゃダメだな』と思って、言いました」。自分たちが目指しているのは、こんな内容と結果ではない。勝利を収めた試合後でも、危機感にも似た感情を露わにするあたりに、今シーズンに懸ける強い想いが滲んだ。



 前述したように、今シーズンの酒井はチームのキャプテンを任されている。「私生活のところも、プレーのところでも自分が引っ張るのは大切だと思っていて、自分がミスをして下を向いたら、チームも下を向いてしまいますし、そういう意味で試合や私生活でも自分を律するところは意識してできているかなと思います」。

 ジュニアユース時代は副キャプテンを務めており、当時のキャプテンのMF平家璃久斗(3年)を支えることを意識していたそうだが、今季は自分が先頭に立っていく立場に変化した。ただ、本人はここまでいたってポジティブにその役割をこなせているという。

「キャプテンは思ったより全然大丈夫ですね。今のところはそんなにツラいこともないですし、そういう時が来たとしても、ずっと上を向いてやれればなと思っています」。試合前も、試合後も、チームには明るい雰囲気が漂っていた。新キャプテンもグループの一体感には手応えを感じているようだ。

 トップチームの活動にも定期的に参加している。シーズン前のキャンプにも帯同し、3月と4月にはルヴァンカップの2試合でメンバー入り。プロの試合の空気感を間近で味わったことで、かけがえのない経験値を得たことは言うまでもない。

「実際にNACK5でルヴァンカップを経験してみて、『あれだけ多くの人たちの前で試合に出るには、責任感がないとプレーできないな』とは改めて感じました。1試合目のいわき戦は、逆転もしましたし、1人退場してもPK戦で勝ったりと、強いメンタリティは学べたんですけど、FC東京戦はセンターバックがあまりいない中で、ボランチの中山昂大くんがセンターバックに入ってしまったので、まだ徹さん(長澤徹監督)の信頼を勝ち獲り切れていないことを感じました」。



 トップチームを率いる長澤徹監督からは、プレシーズンのトレーニングに参加した際に、個別に声を掛けられたという。「キャンプに入る前の練習でうまくいかないことがあって、話を聞いたんですけど、『結局は意志とか気持ちの部分が大事だ』ということを教えてもらったんです」。

『ミスしてもいいから切り替えるとか、ボールを奪われたらすぐに奪い返しに行くとか、サッカーの中で当たり前のことをもう一度しっかりやっていけば、チャンスは来る』と言われました。ルヴァンカップでベンチに入った時も、徹さんが一言言っただけで、それがチーム全体を巻き込んで、良い雰囲気が作られていましたし、本当に凄い監督だなと思います」。当事者として目の当たりにした『プロとして試合を戦うこと』の意味は、酒井の中にしっかりと刻まれている。

 今シーズンのJリーグでは同年代の選手たちが、次々にトップチームでの公式戦デビューを飾っている。もちろんそこを意識しないはずはないけれど、あくまでもベクトルを向けるのは自分自身。少し先の未来も見据えながら、今やれることを、コツコツと、全力で、やり続ける。

「僕の代には2種登録されている選手も多くて、センターバックだと大川佑梧(鹿島アントラーズユース)や秦樹(横浜FC)が注目されているので、そういう人たちには負けたくないですね。2人はビルドアップとかパスを繋ぐところが上手いと思うんですけど、僕は身体を張るところだったり、守備として基本的なところが強みだと思っているので、そういうところをどんどん出していって、自分なりのセンターバック像を確立できたらいいなと。大切なのはプロになることではなくて、プロになってから活躍することだと思うので、そのための準備を常に意識してやっていきたいと思います」。

 いつだって、向き合うのは今の自分。まずは目の前の練習を、目の前の試合を、100パーセントでやり切るだけ。RB大宮U18の守備陣を束ねるディフェンスリーダー。酒井舜哉が着実に描いていく成長曲線が長く伸びれば伸びるほど、チームも、個人も、より高いステージへとたどり着くはずだ。



(取材・文 土屋雅史)

●高円宮杯プリンスリーグ2025特集
▶ゲキサカでは高校サッカーの最新情報を伝えるポッドキャスト番組も配信中
土屋雅史
Text by 土屋雅史

「ゲキサカ」ショート動画

TOP