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クラブ史に残るダブルヘッダーの一戦で実現した「兄弟の共演」。岡山U-18MF堤涼太朗が貫くブレない軸とチームを束ねるしなやかな存在感

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ファジアーノ岡山U-18のキャプテンを務めるMF堤涼太朗(3年=ファジアーノ岡山U-15出身)

[5.18 プレミアリーグWEST第8節 岡山U-18 2-4 名古屋U-18 JFEス]

 いつでもピッチの中央で、チームを引き締めている。焦ることなく、落ち着いて、どっしりと構え、仲間に安心感を与えていく。いつもとは違う環境で迎えたこの日の90分間でも、ファジレッドのユニフォームを纏った背番号14は、いつもと変わらない佇まいで、そこに立っていた。

「もう、楽しかったです。初めてこのピッチでプレミアリーグの試合をやったので、良い経験になりましたし、勝ちたかったというのが一番の想いですけど、これだけ夜遅くまで皆さんが残ってくれて、自分たちの試合を最後まで見てくれて、応援し続けてくれて、僕自身は勝ち負けどうこうというより、やり切った印象が大きかったです」。

 プレミアリーグ参戦2年目を迎えたファジアーノ岡山U-18(岡山)不動のキャプテン。MF堤涼太朗(3年=ファジアーノ岡山U-15出身)はブレないメンタルを自分のど真ん中に据えながら、このチームで果たすべき役割を100パーセントで貫いていく。


「ゾクゾクするというか、高揚感みたいなものはありました」。ピッチへと入っていく時の感覚を、堤はそう思い出す。会場はJFE晴れの国スタジアム。この日は15時からJ1の岡山対新潟が開催され、19時半からプレミアWEST第8節の岡山U-18対名古屋グランパスU-18(愛知)が行われるという“ダブルヘッダー”が組まれた、クラブにとっても特別な1日だった。

 トップチームは新潟に2-1で競り勝って、実にリーグ戦7試合ぶりの勝ち点3を獲得。スタンドは熱狂に包まれる。「『僕たちも勝たなきゃ』というプレッシャーはちょっとだけありました」。堤も含めたU-18の選手たちはこの日の“連勝”を目指して、キックオフを迎えていた。

 前半20分に先制されたものの、23分にはMF坂本蓮太(3年)が同点弾を叩き込む。35分に再びリードを許しながら、45+1分にはMF末宗寛士郎(3年)が再び同点ゴールを記録する。

「自分たちは先制されることが多くて、そこは課題だと認識している中で、いつも監督に言われているリバウンドメンタリティを持つこともそうですし、連続失点しないことはチーム内でもしっかり意識できているところだと思うので、今日も続けて失点しなかったところは大きかったかなと思います」(堤)。900人を超える観衆が見守る一戦は、タイスコアで後半に折り返す。

 堤のプレーはいつも通り、安定していた。「楽しみな気持ちはいつもの試合と変わらないので、今日もそんなに緊張することもなくできたかなと思います」というメンタルも魅力的。中盤で積極的にボールを引き出しつつ、ピンチの芽を察知してはきっちり潰していく。



 U-15時代に続いて任されているキャプテンの役割についても、必要以上に気負うつもりはまったくない。「自分はそこまでキャプテンの役割を重くは捉えていなくて、もちろん自分が先頭に立ってやれればいいと思いますけど、みんな結構声を出すので、『全員がキャプテン』という意識でやれていると思います」。それでも、チームを陰日向からきっちりまとめているのは、やはりこの人だ。

 1点のビハインドを追いかける後半19分には、左から正確なFKを蹴り込み、合わせたDF小森翔太(3年)のヘディングは枠を捉えるも、相手GKのセーブに弾き出されてしまう。さらにもう1点を追加され、2点差で突入した最終盤の44分。ピッチサイドではある選手が交代を待っていた。

 背番号45。MF堤清史郎(1年)。2つ歳の離れた堤の弟だ。前節は涼太朗に代わって清史郎が出場したため、プレミアで同じピッチに立つのはこの試合が初めて。「『僕と交代かな』と思っていたんですけど、違いましたね」と笑った“兄”にとっても、特別な瞬間だったことは間違いない。

「今日は両親も、おじいちゃんおばあちゃんも、家族は全員見に来ていました。これからもっと兄弟で出る試合を増やしていけたらなと思います」。アカデミーが積み重ねてきたものの結晶のようなこの日の一戦で、『兄弟の共演』が実現したのも、非常に興味深い。

同時にプレミアのピッチに立った涼太朗と清史郎の「堤兄弟」


 結果的に試合は2-4で敗戦。スタンドのファン・サポーターに勝利を届けることはできなかったが、「率直にプロの選手たちがやっているピッチで、自分たちができることに喜びがありましたし、この90分は本当に楽しかったですね。それが一番です」という堤の言葉は、おそらく多くの選手の共通認識。JFE晴れの国スタジアムで戦った、ダブルヘッダーという貴重な経験をちゃんと今後へ繋げるため、また明日の練習から自分自身と向き合っていく。


 去年のプレミアでは12試合に出場。後期に入ってからはスタメン出場の機会も増加し、少しずつ力を付けていく。そしてキャプテンを託された今季は、ここまでリーグ戦全試合にスタメンで登場しており、実戦経験を積み重ねる中で、自分の現在地を測っている。

「去年は県リーグの試合によく出ていましたけど、球際やハードワークの部分では、やっぱりプレミアの方がやりがいがありますし、走る量は全然変わったので、そこもこれからもっともっと増やしていけたらなと思います。たとえば今日で言うと、相手のシャドーの位置の選手のポジショニングに付いていくことが課題だったんですけど、だんだんできるようになってきているので、もっともっと続けていきたいと思います」。

 今シーズンから背負っている14番には、2人の選手へのリスペクトが詰まっているという。「1つはトップの田部井涼選手が好きなのと、いつもお世話になっていた田原悠帆くん(広島大)という先輩が去年は14番を付けていて、自分が苦しい時にも声を掛けてくれた先輩なので、自分が引き継ごうかなと思いました」。

 アカデミーラストイヤーに、懸ける想いが乗っていないはずもない。岡山U-18の精神的支柱であり、ゲームをコントロールするプレーメイカー。堤涼太朗はいろいろなものを背負う役割を担いながらも、軽やかに、のびやかに、この1年を大事な仲間たちと一緒に、駆け抜ける。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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