beacon

[MOM5240]名古屋U-18FW大西利都(3年)_「今季5度目のハットトリック」プラスワンでプレミアの歴代記録を更新する「シーズン23点目」に到達!

ポスト
Xに投稿
Facebookでシェア
Facebookでシェア
URLをコピー
URLをコピー
URLをコピーしました

プレミアのシーズン得点記録を更新した名古屋グランパスU-18FW大西利都(3年=名古屋グランパスU-15出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.11 プレミアリーグWEST第17節 静岡学園高 0-4 名古屋U-18 時之栖スポーツセンター 時之栖Aグラウンド]

 17試合で積み重ねたのは、圧巻の23ゴール。この年代では今、最も得点の匂いのするストライカーだと言っていいだろう。ただ、ここまでの記録は過去のもの。もう既にその目線は先を見据えている。獲れるだけ、獲る。行けるだけ、行く。このエンブレムを纏って戦った6年間の感謝を、圧倒的な数字で示してみせる。

「個人の数字として、30点というのはもちろん難しいとは思うんですけど、一番はチームのためにプレーして、その中で自分の特徴を出しながら、最終的に30点という目標を達成できればなと思います」。

 名古屋グランパスU-18(愛知)が大事に育んできた、背番号11の特別なストライカー。FW大西利都(3年=名古屋グランパスU-15出身)は前人未到の1シーズン30ゴールを明確に目指し、ここからもひたすら自分自身を磨き続ける。


「意識はしていましたけど、意識しすぎると固くなっちゃうなと思っていたので、あまり気にしないようにしていました」。プレミアリーグWESTの得点ランキング首位を快走する大西が、第16節終了時までで叩き出したゴールは19。過去のプレミアにおける1シーズンの最多得点記録は、2012年の松村亮(ヴィッセル神戸U-18、当時のリーグ戦は全18試合)が挙げた22ゴールであり、本人もそろそろ見えてきた“記録更新”を意識していなかったといったら嘘になる。

 とはいえ、夏の中断期間が空けた第12節からの3試合は、チームが3連敗を喫する中で、大西もノーゴール。第15節の東福岡高戦ではハットトリックを決め、連敗ストップに貢献したものの、後半戦の5試合で得点を奪えたのは1試合だけという状況もあり、自身の得点をチームの勝利に結びつけることを最優先に考え、この日のピッチに立つ。

 最初のチャンスは前半11分。DF神戸間那(3年)のボールカットを起点に、右サイドでボールを動かし、前を向いたMF神谷輝一(2年)のスルーパスに反応した大西は、エリア内へするりと潜っていく。

「輝一がボールを持った時に、オープンに持ってくれたので、自分から動き出しました。そこで良いパスが来たので、最初のシュートは止められましたけど、こぼれが良いところに落ちてきて、流し込むだけでした」。

 左足で枠へ収めたシュートは、相手GKのファインセーブに阻まれたものの、足を止めずにそのままリバウンドに誰よりも速く反応し、ボールをゴールへ蹴り込む。まずは、1点目。

シーズン20点目を沈めて両手で「20」のポーズ


 次の得点機は42分。キャプテンのMF野村勇仁(3年)からボールを引き出したMF八色真人(3年)が右方向へスルーパスを通すと、エリア内で大西はマーカーに引っ掛けられ、PKを獲得する。

「真人のスルーパスが出た時に、相手が足を出してきそうだと思ったら、そこで足が引っかかりました。PKはクロスバーに当たって、ちょっと怖かったですけど、雨でスリップしたのか、良いコースに飛んでくれました。雨じゃなかったら危なかったですね」。

 自らキッカーに名乗り出たPK。右方向を狙ったキックは、クロスバーに当たったものの、勢いよくバウンドしたボールが、雨粒を切り裂きながらゴールネットへ弾み込む。続いて、2点目。

 さらなる歓喜は後半20分。3バックの左センターバックに入ったMF鶴田周(3年)がインターセプトからそのまま持ち上がると、八色とのワンツーでさらに前進。大西は逆サイドから、自分の走り込むべきポイントを冷静に、丁寧に、見極める。

「あの場面はセンターバックの鶴田周が良い感じで上がってきてくれて、本当に完璧なクロスを上げてくれたので、しっかりキーパーを見ながら、良いコースに流し込めました」

 左から鶴田が正確に流し込んだグラウンダーのクロスに、完全にフリーの状態で反応し、ダイレクトのインサイドキックでGKの届かないゴール左スミへ流し込む。これで、3点目。今シーズン5度目のハットトリックを達成してしまう。



 止まらないラッシュを締めたのは29分。中盤のルーズボールをMF恒吉良真(2年)が頭で残すと、前を向いた八色と大西が狙う場所のイメージは、一瞬で共有される。

「あのゴールは真人のパスで勝負がついたなという感じで、シュートコース自体はあまりなかったですけど、良い感じで、良いところにボールが飛んでくれました」。

 マーカーの視界から消え、背後を取ったタイミングで、八色が完璧なアウトサイドスルーパス。フリーで抜け出し、確実にボールをゴールネットへ送り届ける。とどめの、4点目。記録更新を知っていたチームメイトたちも、次々に祝福へと訪れる。

「本当に自分の力だけではないですし、みんなが良いパスをくれるので、みんなに感謝したいなと思います」。プレミアの舞台で1試合4ゴールという驚異的なパフォーマンスを披露し、リーグ戦での得点数も23まで伸ばした大西の大車輪の活躍が、チームに3連勝という結果を力強くもたらした。



 驚異的なペースで得点を獲り続けている中で、大西にはその日の出来を測るはっきりとした“バロメーター”があるそうだ。「1本目のシュートを自分は大事にしていて、1本目のシュートを決めると、その後も気持ち良くプレーできますし、『まだまだ行けるぞ』と思えるので、そこは意識しています」。

 加えて最高学年になったことで、自分のプレーがチームの勝敗のカギを握るエースとしての自覚も、間違いなく携えてきた。「去年で言うと、点を獲る選手としては杉浦駿吾くんもいたんですけど、3年生になったことで、『自分がチームを勝たせないといけないな』という自覚が芽生えたから、ゴールに向かう姿勢や回数も多くなったと思いますし、シュートで終わる意識も上がったかなと思います」。

 ここから先は未知のゾーン。前述したように、個人としてはシーズン30ゴールの大台を目指すことになるが、日に日に残された時間が短くなっていくアカデミーでの活動に対しても、大西は確かな決意を定めている。

「やっぱりユースでの活動には、これからのキャリアでは味わえないことだったり、このチームでしか味わえないことがあると思うので、そこを大事に噛み締めながら、この最高の仲間たちとサッカーしていきたいなと思います」。

 プレミアリーグの歴史に、確かな名を残した名古屋U-18の絶対的ストライカー。残された5試合でどこまで記録を伸ばし続けるのか。大西利都はこれからもチームの勝利のために、とにかく目の前の1点にフォーカスして、獲れるだけゴールを獲り尽くす。



(取材・文 土屋雅史)

●高円宮杯プレミアリーグ2025特集
▶高校サッカーの最新情報はポッドキャストでも配信中
土屋雅史
Text by 土屋雅史

「ゲキサカ」ショート動画

TOP