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名古屋内定で高まった「魅せるプレー」への意欲。前橋育英DF久保遥夢はみんなで掲げた「選手権連覇」を引っさげてプロの世界へ飛び込む!

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前橋育英高のディフェンスリーダー、DF久保遥夢(3年=前橋FC出身/名古屋内定)

[11.24 プレミアリーグEAST第19節 前橋育英高 2-1 FC東京U-18 アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

 もうプロの内定選手として見られることは、ハッキリと意識している。ピッチ内外での自覚は間違いなく増してきた中で、やはり一番大事なのは圧倒的なパフォーマンス。得意な部分をより伸ばし、極めて、多くの人を自身のプレーで魅了するような存在に、必ずなってみせる。

「相手のエースを圧倒して、無失点で抑えて勝つことだったり、自分の持ち味のロングフィードとか、大事な場面でもヘディングで点を決めるということを意識しながら、プロとしての『魅せるプレー』に繋げていって、もっと逞しい選手になっていきたいと思います」。

 来季からの名古屋グランパス加入が内定している、前橋育英高(群馬)を最後方から支えるディフェンスリーダー。DF久保遥夢(3年=前橋FC出身)は残された高校生活を最高の結果で彩って、堂々と、胸を張って、プロの世界へと飛び込んでいく。


 超高校級のマッチアップだったと言っていいだろう。高円宮杯プレミアリーグEAST第19節。まだ優勝の可能性が残っているFC東京U-18をホームで迎え撃つ一戦。久保と対峙したのは、既にトップチーム昇格が決まっており、今月はU-18日本代表の海外遠征にも参加していた尾谷ディヴァインチネドゥ。190センチを超える世代屈指のストライカーだ。

 前橋育英は前半10分にMF平林尊琉(3年)のゴールで幸先良く先制したものの、その2分後には尾谷に同点ゴールを献上。久保も「少し選手権予選の感覚でやっていた中で、強くて速いですし、大きさも上手さもあって、最初はワンテンポ遅れる場面もあったと思います」と振り返ったように、改めて気持ちを引き締め直す。

「後半はプレー強度にも慣れてきて、危ないシュートの場面も作られたんですけど、しっかり対応はできたのかなと思います」と話す久保は、空中戦でもきっちり尾谷に対抗。「キツかったですけど、今後のことを考えた時に、ああいう選手を上回れないといけないと思うので、楽しさはありました」と激しいつば競り合いに、充実感も覚えていたという。

 前半のうちにMF竹ノ谷優駕(3年)のゴールで勝ち越していたホームチームは、勝利への執念を見せる相手に押し込まれる時間もあったが、最後の一線は越えさせず、そのまま2-1で逃げ切りに成功。「もう1点は絶対にやらせたくないと思っていましたし、チームを勝たせるためには、もう2失点目は許されなかったので、最後まで失点せずに勝てて良かったなと思います」という背番号5のハイパフォーマンスが、勝利の一翼を担っていたことは間違いない。



 高校ラストイヤーとなる2025年シーズンは、悔しい“落選”からスタートした。高校選手権の決勝から1か月も経たないうちに実施された、U-17日本高校選抜の候補合宿。日本一に貢献した前橋育英の2年生レギュラーの大半が参加した中、久保には招集の声が掛からなかった。

「選抜に呼ばれないことがわかった日は、ずっと自主練をするぐらいメッチャ悔しかったですね」。結果的にこの時の悔しい経験は、自身のさらなる成長を促す契機となった。プレミアリーグで安定感のあるプレーを披露し続けると、6月には欧州遠征に臨むU-18日本代表に招集され、同世代のタレントと時間をともにしたことで、大きな刺激を得る。

 名古屋への練習参加も、よりサッカー選手としての意識を高めることに繋がったそうだ。「名古屋には同い年の森壮一朗がいるので、いち早くプロの環境でやっているのは凄いなと感じましたし、あとは永井(謙佑)さんが足が速過ぎて、全然追い付けなかったですね(笑)」

 そんな中でJ1のビッグクラブから届いたオファー。大学も含めた選択肢を比較し、熟考したうえで、1つの後押しになったのは、一足先にJリーグの舞台で活躍している、同い年のある選手のアドバイスだったという。

新川志音(鳥栖)は、代表の遠征で一緒になった時にお互い初招集で、いろいろ喋って仲良くなったので相談したんですけど、『いち早く自分がなりたい自分になれるのはプロだと思うよ』と言ってくれたので、それも自分の後押しになったのかなと思います。新川選手ももうJリーグで活躍しているので、自分も早く追い付きたいですね」。

「名古屋グランパスが自分を選んでくれたことは凄く嬉しいです。でも、プロになるところがゴールではないですし、そこから活躍するのが目標なので、すぐプロに行ったら活躍できる準備をしっかりとしていきたいと思います」。内定リリース以降は私生活でも自分を見つめ直し、プロ内定選手としての振る舞いも強く意識してきたそうだ。



 シビアな世界へと身を投じる前に、久保には大きな仕事が残っている。彼らだけに許された選手権連覇という偉業。この仲間と一緒にボールを蹴ることができるのも、あと2か月弱。笑顔で高校生活を締めくくるためにも、携えている決意は固い。

「まずは『国立に戻りたい』という気持ちでやる中で、結果的に連覇できたらいいなと思います。ゲキサカとか、そういうところでニュースを見て、期待されていることはわかっていますけど、プレッシャーを感じ過ぎずに、自分たちのサッカーをやれば自ずと結果は出ると思うので、そこはブレずにやっていきたいですね」。

「選手権は自分にとっての夢の舞台でもありますし、『魅せるプレー』を出せる場所でもあると思うので、その『魅せるプレー』の部分もあと1か月で成長していきたいなと思いますし、まず一番はチームのために、自分自身が何をできるかということを考えて、自分の強みを全国の舞台で発揮することで、チームが勝てたらそれが一番いいなと思います」。

 タイガー軍団のディフェンスラインを束ねてきた、高さと強さを兼ね備える世代有数のセンターバック。久保遥夢は3年間の集大成として、再び頂点を目指す戦いに挑みながら、その先に見据えている遥かな夢へとたどり着く日まで、たゆまぬ努力を積み上げていく。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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