試合に出られないキャプテンがなくさなかった「笑顔」の理由。柏U-18DF上原伶央は8試合ぶりのスタメンで完封勝利とプレミア残留を手繰り寄せる!
[11.29 プレミアリーグEAST第20節 流通経済大柏高 0-2 柏U-18 流通経済大柏高G]
刻一刻とみんなと過ごす時間が短くなっていく中で、とにかく試合に出たかった。でも、置かれた立場を考えた時に、笑顔で、元気良く、チームを引っ張っていくことが一番だとわかっていたから、余計な感情は心の内側に閉じ込めて、前を向く。上を向く。みんなのために。そして、自分自身のために。
「本当にツラかったというか、心の中では周りの目も気になりますし、『自分はキャプテンなのに何で試合に出ていないんだろう……』という想いはあったんですけど、それでも自分がレイソルの6年間でやってきたものを出し続けて、今日までしっかり日常に取り組めたかなと思います」。
2025年の柏レイソルU-18(千葉)を明るく牽引してきた、頼れるキャプテン。DF上原伶央(3年=柏レイソルU-15出身)は8節ぶりに巡ってきたスタメンのチャンスできっちり完封勝利に貢献し、チームのプレミアリーグ残留を力強く手繰り寄せた。
「プレミアの試合の日は、自分のルーティンみたいなものがあるんですけど、それをいつも通りやって、いつもと変わらないようにここに来て、準備していく中でも、『自分が一番戦える選手だということを証明してやろう』という、強い気持ちでここに来ました」。
高円宮杯プレミアリーグEAST第20節。流通経済大柏高と対峙する“柏ダービー”。残留争いに巻き込まれている状況の中で、上原は後半戦の初戦となる前橋育英高戦以来となる、8試合ぶりのスタメンに指名されていた。
苦しい1年だった。キャプテンを務めることになり、並々ならぬ決意で挑んだ今シーズン。前半戦はチームも思ったような結果が付いてこない中で、5月に入るとヒザを負傷。そこからも何とかプレーし続けたものの、前述の前橋育英戦を終えると、指揮官に直接“一時休養”を志願する。
「トレーナーと相談しながら、自分の状態を確かめて、練習も調整して、夏までやってきたんですけど、自分の良い時のMAXのプレーが全然出ないというところで、チームも大事な時期だったんですけど、『1回休ませてほしい』と藤田さん(藤田優人監督)に伝えました」。
上原がスタメンを外れたタイミングから、柏U-18は好調に転じる。第13節から第17節までは3勝2分けと無敗をキープ。そのうちの4試合でクリーンシートを達成した守備陣の奮闘は際立ち、戦線に復帰したキャプテンにスタメンの座は確保されていなかった。
もちろんそんな状況に、心中が穏やかだったはずもない。ただ、上原は改めてメンタルを整え直す。「もちろん復帰した時に、すぐに試合に出たい気持ちはありましたけど、チームの状況も良かったので、自分がやってきたことを練習で毎週毎週出し続けて、チャンスをもらえたところで、結果を残そうと思っていました」。
口で言うのは簡単かもしれないが、18歳がそれを貫くのは決して容易なことではない。だが、本人はシーズンの頭に自分の中で決めていたある“テーマ”を軸に据え、シビアな毎日を前向きに過ごしていたという。
「試合に出られない時は、ふてくされたり、表情に出てしまったり、プレーでもイラつきが出てしまう選手が多いと思うんですけど、自分はそこで1回グッとこらえて、気持ちを自分の心の中に閉じ込めながら、チームが良い方向に行くようにできたのかなと。今シーズンの自分のテーマの『笑顔』は絶対になくさないで、チームに少しでも良い影響を与えられるようにと思ってやってきました」。
その先で掴み取った、久々のスタメンの機会。だが、まず考えるべきはチームの勝利。「自分が久々にスタメンで出るからとかではなくて、このチームでプレーできるのもあと3試合でしたし、特にこの1試合は、残留を考えても非常に大きいものがあったので、結果を残すことだけを考えていました」。上原はキャプテンマークを左腕に巻き、勝負のピッチへと足を踏み入れる。


立ち上がりから柏U-18のペースで進む展開の中、「ちょっと緊張していて、入りはペースを掴めなかったんですけど、自分のこれまでの経験を生かして、早く試合に入れましたし、周りのチームメイトのサポートもありながら、自分のいつものプレーはすぐに出せたと思います」と話す上原は、前半30分過ぎからやや押し込まれる時間帯を強いられるも、DF丸山寿貴斗(2年)とうまく役割も棲み分けながら、相手の強力アタッカー陣にも冷静に対応。失点を許さない。
すると、後半7分にMF徳田波音(3年)のゴールで柏U-18が先制。前節の横浜FCユース戦では、2回にわたって得点直後に失点を喫したことが敗戦の要因になったため、同じ轍を踏まないよう、チーム全体で意識を統一させ、慎重に、丁寧に、時計の針を進めていく。
終盤に差し掛かった36分。FW巻渕彪悟(2年)が粘り強くボールをゴールに押し込み、アウェイチームのリードは2点に広がる。「前の選手は後ろが守ってくれるからと信じてくれていますし、僕らもしっかり守れば前が点を獲ってくれるといつも信じていて、それを実行してくれたので、『絶対守らなきゃ』という意識がもう一段階上がりましたね」。上原も含めた柏U-18守備陣の集中力も、時間を追うごとにグングンと高まっていく。
ファイナルスコアは2-0。他会場で11位の浦和レッズユースが引き分けたため、2試合を残して残留が決定する。
「非常に嬉しいですね。ホッとした気持ちの方が大きいですけど、ケガもして、復帰してからもなかなか試合に絡めなくて、自分の表情には出していないですけど、悔しい気持ちはあったので、今日はスタメンで出て、結果を残すことだけを考えていた中で、無失点で勝つというのは本当に気持ちいいですし、自分の価値を示せたと思います」。キャプテンの勝利の咆哮が、アウェイのグラウンドに轟いた。




この日の試合後。藤田優人監督が上原について話した言葉が印象深い。
「今日はアイツがキャプテンの姿を見せたということに尽きると思います。どんなプレーが良かったとかではなくて、発する声とか、その声の内容も含めて、今日はキャプテンでしたね」。
「スタメンを外れている時も、『気持ちが折れることがあったら』というプランも持ちながら進んできましたけど、しっかり折れずにやっていましたし、思うところはかなりあったと思うんですけど、弱音を見せずに、日々の練習から先頭に立ってやっていて、その時間があったからこうなるというのも、彼にとっての学びになると思うので、今日は一番良い90分を過ごせていたんじゃないですか」。


もちろんこの1試合で、次からのスタメンが約束されているわけではない。また週明けの練習から激しいポジション争いが待ち受けているが、それすらも11月も終わろうとしている今は、大事な、大事な、かけがえのない時間だ。上原は残されたU-18での日々に、想いを馳せる。
「自分は“いつも通り”を大切にしていて、いつも通りやればチームのみんなは付いてきてくれますし、今週もそうでしたけど、練習も楽しみながら、強度を出してやっていければ、良い試合ができるとわかっているので、スタッフが考えてくれる良い練習を全力で楽しんでやりたいですね」。
「本当にチームの雰囲気も凄く良いですし、あと2試合で終わってしまうのが寂しいですけど、それでも毎日の2時間の練習と試合を噛み締めながら、最終節までのあと2試合をしっかり勝って、最後はみんなで笑って終わりたいです」。
思い描いていたようなシーズンではなかったかもしれない。望んだような結果は得られなかったかもしれない。でも、このチームのキャプテンとして、悩みながら、もがきながら、それでも前へと進んできた毎日は、きっとこれからの自分を助けてくれるはずだ。柏U-18を全力で束ねてきた、漢気あふれる不動のキャプテン。上原伶央は最後の最後まで、明るく、笑顔で、みんなとボールを追い掛け続ける。


(取材・文 土屋雅史)
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刻一刻とみんなと過ごす時間が短くなっていく中で、とにかく試合に出たかった。でも、置かれた立場を考えた時に、笑顔で、元気良く、チームを引っ張っていくことが一番だとわかっていたから、余計な感情は心の内側に閉じ込めて、前を向く。上を向く。みんなのために。そして、自分自身のために。
「本当にツラかったというか、心の中では周りの目も気になりますし、『自分はキャプテンなのに何で試合に出ていないんだろう……』という想いはあったんですけど、それでも自分がレイソルの6年間でやってきたものを出し続けて、今日までしっかり日常に取り組めたかなと思います」。
2025年の柏レイソルU-18(千葉)を明るく牽引してきた、頼れるキャプテン。DF上原伶央(3年=柏レイソルU-15出身)は8節ぶりに巡ってきたスタメンのチャンスできっちり完封勝利に貢献し、チームのプレミアリーグ残留を力強く手繰り寄せた。
「プレミアの試合の日は、自分のルーティンみたいなものがあるんですけど、それをいつも通りやって、いつもと変わらないようにここに来て、準備していく中でも、『自分が一番戦える選手だということを証明してやろう』という、強い気持ちでここに来ました」。
高円宮杯プレミアリーグEAST第20節。流通経済大柏高と対峙する“柏ダービー”。残留争いに巻き込まれている状況の中で、上原は後半戦の初戦となる前橋育英高戦以来となる、8試合ぶりのスタメンに指名されていた。
苦しい1年だった。キャプテンを務めることになり、並々ならぬ決意で挑んだ今シーズン。前半戦はチームも思ったような結果が付いてこない中で、5月に入るとヒザを負傷。そこからも何とかプレーし続けたものの、前述の前橋育英戦を終えると、指揮官に直接“一時休養”を志願する。
「トレーナーと相談しながら、自分の状態を確かめて、練習も調整して、夏までやってきたんですけど、自分の良い時のMAXのプレーが全然出ないというところで、チームも大事な時期だったんですけど、『1回休ませてほしい』と藤田さん(藤田優人監督)に伝えました」。
上原がスタメンを外れたタイミングから、柏U-18は好調に転じる。第13節から第17節までは3勝2分けと無敗をキープ。そのうちの4試合でクリーンシートを達成した守備陣の奮闘は際立ち、戦線に復帰したキャプテンにスタメンの座は確保されていなかった。
もちろんそんな状況に、心中が穏やかだったはずもない。ただ、上原は改めてメンタルを整え直す。「もちろん復帰した時に、すぐに試合に出たい気持ちはありましたけど、チームの状況も良かったので、自分がやってきたことを練習で毎週毎週出し続けて、チャンスをもらえたところで、結果を残そうと思っていました」。
口で言うのは簡単かもしれないが、18歳がそれを貫くのは決して容易なことではない。だが、本人はシーズンの頭に自分の中で決めていたある“テーマ”を軸に据え、シビアな毎日を前向きに過ごしていたという。
「試合に出られない時は、ふてくされたり、表情に出てしまったり、プレーでもイラつきが出てしまう選手が多いと思うんですけど、自分はそこで1回グッとこらえて、気持ちを自分の心の中に閉じ込めながら、チームが良い方向に行くようにできたのかなと。今シーズンの自分のテーマの『笑顔』は絶対になくさないで、チームに少しでも良い影響を与えられるようにと思ってやってきました」。
その先で掴み取った、久々のスタメンの機会。だが、まず考えるべきはチームの勝利。「自分が久々にスタメンで出るからとかではなくて、このチームでプレーできるのもあと3試合でしたし、特にこの1試合は、残留を考えても非常に大きいものがあったので、結果を残すことだけを考えていました」。上原はキャプテンマークを左腕に巻き、勝負のピッチへと足を踏み入れる。


立ち上がりから柏U-18のペースで進む展開の中、「ちょっと緊張していて、入りはペースを掴めなかったんですけど、自分のこれまでの経験を生かして、早く試合に入れましたし、周りのチームメイトのサポートもありながら、自分のいつものプレーはすぐに出せたと思います」と話す上原は、前半30分過ぎからやや押し込まれる時間帯を強いられるも、DF丸山寿貴斗(2年)とうまく役割も棲み分けながら、相手の強力アタッカー陣にも冷静に対応。失点を許さない。
すると、後半7分にMF徳田波音(3年)のゴールで柏U-18が先制。前節の横浜FCユース戦では、2回にわたって得点直後に失点を喫したことが敗戦の要因になったため、同じ轍を踏まないよう、チーム全体で意識を統一させ、慎重に、丁寧に、時計の針を進めていく。
終盤に差し掛かった36分。FW巻渕彪悟(2年)が粘り強くボールをゴールに押し込み、アウェイチームのリードは2点に広がる。「前の選手は後ろが守ってくれるからと信じてくれていますし、僕らもしっかり守れば前が点を獲ってくれるといつも信じていて、それを実行してくれたので、『絶対守らなきゃ』という意識がもう一段階上がりましたね」。上原も含めた柏U-18守備陣の集中力も、時間を追うごとにグングンと高まっていく。
ファイナルスコアは2-0。他会場で11位の浦和レッズユースが引き分けたため、2試合を残して残留が決定する。
「非常に嬉しいですね。ホッとした気持ちの方が大きいですけど、ケガもして、復帰してからもなかなか試合に絡めなくて、自分の表情には出していないですけど、悔しい気持ちはあったので、今日はスタメンで出て、結果を残すことだけを考えていた中で、無失点で勝つというのは本当に気持ちいいですし、自分の価値を示せたと思います」。キャプテンの勝利の咆哮が、アウェイのグラウンドに轟いた。




この日の試合後。藤田優人監督が上原について話した言葉が印象深い。
「今日はアイツがキャプテンの姿を見せたということに尽きると思います。どんなプレーが良かったとかではなくて、発する声とか、その声の内容も含めて、今日はキャプテンでしたね」。
「スタメンを外れている時も、『気持ちが折れることがあったら』というプランも持ちながら進んできましたけど、しっかり折れずにやっていましたし、思うところはかなりあったと思うんですけど、弱音を見せずに、日々の練習から先頭に立ってやっていて、その時間があったからこうなるというのも、彼にとっての学びになると思うので、今日は一番良い90分を過ごせていたんじゃないですか」。


もちろんこの1試合で、次からのスタメンが約束されているわけではない。また週明けの練習から激しいポジション争いが待ち受けているが、それすらも11月も終わろうとしている今は、大事な、大事な、かけがえのない時間だ。上原は残されたU-18での日々に、想いを馳せる。
「自分は“いつも通り”を大切にしていて、いつも通りやればチームのみんなは付いてきてくれますし、今週もそうでしたけど、練習も楽しみながら、強度を出してやっていければ、良い試合ができるとわかっているので、スタッフが考えてくれる良い練習を全力で楽しんでやりたいですね」。
「本当にチームの雰囲気も凄く良いですし、あと2試合で終わってしまうのが寂しいですけど、それでも毎日の2時間の練習と試合を噛み締めながら、最終節までのあと2試合をしっかり勝って、最後はみんなで笑って終わりたいです」。
思い描いていたようなシーズンではなかったかもしれない。望んだような結果は得られなかったかもしれない。でも、このチームのキャプテンとして、悩みながら、もがきながら、それでも前へと進んできた毎日は、きっとこれからの自分を助けてくれるはずだ。柏U-18を全力で束ねてきた、漢気あふれる不動のキャプテン。上原伶央は最後の最後まで、明るく、笑顔で、みんなとボールを追い掛け続ける。


(取材・文 土屋雅史)
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